キャンプ喫茶「異世界店」

モルモット

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第4話 隣人と聖女

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モキチにカップを手渡すとモキチは紅茶をすすった。
「新しく引っ越してきたお隣さんの挨拶でもらったお菓子は紅茶にピッタリで美味しかったでござる。そろそろ 帰るでござるよ」

テントを片付けてテナントを外し山を下りて帰路につくと部屋の前の玄関のドアにカギを差し込む。

ガチャガチャ

ドアが開かない。
再びカギを反対方向にひねってから 回すと ガチャ!と音がしてドアが開いた。

カーテンが空いていて月明かりのさす畳の部屋に壁にもたれかかる様に横たわる人いる。
体のラインはくびれていてその先は風船に水を入れて膨らませたような胸がダラリと垂れてシャツに覆われており、顔を覗き込むと目を閉じている。
近寄ると寝息が聞こえてきた。

窓からそよ風が入ってくる。。
窓から顔を出して見渡すとお隣の部屋の窓が開いていた。
カーテンを閉めて再び女性を見ると暗闇に目が慣れたのか黒のミニスカートと内もものラインがハッキリ見えた。
俺はスマートフォンを取り出すと「明かり、6割」と叫ぶ。
部屋は明るくなり モキチは寝床に潜ると女性は目を開けた。
キリリとした視線をこちらに送るとすっくと立ちあがって「ドアのカギが開いてたわよ。隣の部屋のよしみでお留守番してたけど。眠っちゃったのね。だけど 明日、改めてお礼をするわ。おやすみなさい」

次の日
歯を磨いていると部屋のチャイムが鳴る。
ドアを開けると隣の女性が現れて段ボール箱を持っていた。
「それ お礼だから。まだ部屋が片付いてないからこれくらいしかないの。でもちゃんとしたお礼はするから」

段ボールには「カップラーメン24個入」と書かれていた。


仕事から帰ってくると通販で買った紅茶の茶葉をリュックに詰める。
「モキチ キャンプいこう」
・・・・・
テントを立てて 「ルマ・スエート」と書かれてテナントを付ける。


焚火に鍋をかけるとグツグツ・・・ お湯の音がする。
秋田県産 力水の音だ。
モキチが俺のとなりに座り、焚火の炎を見ているようだ。
俺も焚火の炎を見た。

ヒヒーン!ブルブル!

遠くから馬車と護衛をするように鎧と剣を持った男たちがいる。
馬車には 大きな角と大きなウロコが積まれており男たちは
破れた服に割れた盾、先っぽが折れた剣を持っているが怪我をしている人は見当たらない。

男が一人がこちらに駆け寄ってきた。
「我らは ドラゴン討伐の帰りなのだ。お前はここで何をしている?」
「コーヒーを淹れている。よかったら飲んでいかないか?」
「それはちょうどいい。 それより。紅茶と食べられる物は何か持っておらぬか?
モキチは立ち上がると トンと胸を叩いた。
「紅茶なら 拙者に任せるでござるよ」
男たちはオレの方を見る。
「カップラーメンならある」

すると男は仲間のところへ戻り 笑い声が聞こえると焚火の火を借りに来たり湖の水を汲んだりし始めた。
馬車のドアが開くと老人に手を引かれて白い修道服とドレスをミックスしたような服を着た女性がおりてきた。
こちらに女性は歩いてくると「私は ミリシア・ペン・・・と言います。人々は私を聖女と呼びますわ」
「この度の紅茶を務める モキチもうす。ささ そこに腰をかけられよ」

モキチは紅茶を淹れ始めた。
焚火の炎が 茶葉のダンピングを照らし徐々に茶色く染まる。
俺のとなりに座ったミリシアは焚火の炎を見つめる
「聖女というのは 結界を張るのが主な役目ですが人の心を癒すこともします。・・・今回は私が結界を張りましたですのでドラゴン討伐は一方的な討伐だったのです」

ミリシアが俺に近寄り耳打ちをする
「人を癒しておきながら 実は私の心は痛みました・・」

モキチがカップを両手に抱えてこちらへくると座ってミリシアにカップを手渡した。

「紅茶が出来たでござるよ」
「まあ 美味しいわ。 そうだ お礼にこの聖女の力を込めた小瓶をあげましょう。辛いとき、疲れているときに使えば心が癒される事でしょう」 

ミリシアは 立ち上がって重ね重ね丁寧なお礼の言葉を述べると馬車に戻っていった。
モキチはニンマリと口角を上げると「ヤッタでござる」といって聖女を眺めているようだった。

聖女を馬車に乗せた老人が鳥かごを持ってこちらへやってくる。
カゴの中は 羽の生えたトカゲが眠っているようだ。
「あなた様がそちらにお持ちの鉱石ですが ミスリルとお見受けしました。アミュレットの製作にピッタリの素材でございまして、こちらのレッドドラゴンの子供と交換していただきたいのです。子供の頃は非力で子供でも扱えますし もしも 大人になるまで育てることができたなら あなた様を乗せて空を飛んでくれることでしょう。将来への投資と思って交換なされませんか?」

ミスリルとレッドドラゴンを交換した。
・・・・・
家について階段を上ると俺のとなりの部屋のドアが開いていて
男がドアから何かを引っ張り出そうとしている。
引っ張った男の手の先に 女性の手が見えた。
ドアからサンダルが通路に飛び出し 続いて女性の足が見えた。

俺は駆け寄り小瓶のフタを開けると男にかける。

男の腕はダラリと下がり 姿勢は猫背になり目は死んだ魚のようになった。
隣の部屋の女性が俺の顔を見る。
俺も隣の女の顔を見る。
目には涙、くちびるは 口紅を失敗したと勘違いしそうになるアザ、Tシャツの首元は伸びて胸が本物だと言うことがはっきりと認識できた。

後ろから足音が聞こえてくるので振り返ると大家と管理会社の職員がこちらへやってくる。
女性は 男を引っ張りこんでドアを閉めると ガチャ とカギの音がした。

「何でもありません」
「お知り合いですか?本当に大丈夫なんですね?」
「はい」
「プライベートには我々は関わりませんが 大きな音や誤解や不安を招くようなことには気負付けてくださいよ」

大家と管理会社の職員は 帰っていった。。。

俺は モキチをゲージに戻すと水差しとは別にお皿にモキチ特性のグリーンティーを入れてやる。
モキチは ぺろぺろとなめていた。

カァー カァー グカァー!!
ドスン! うがぁぁぁ!!

カラスのケンカする声がして同時に隣の部屋を仕切る壁からドスンという音が響いた。
モキチが 巣の中へ逃げた。

次の日 洗濯物を持って窓へ行くとレンタカーと一目でわかる車が止まっている。
トランクが空いており 旅行カバンが数個と小さなアタッシュケースが2つ。

それに スコップが二つ。

それから白い袋が積まれていて袋には石灰と書かれていた。
ドアのチャイムがなる。
モキチは巣に隠れた。
ドアを開けると 隣に住んでいる女性が現れて「昨日は助けてくれてありがとう」と言って封筒を手渡してきた。
茶封筒で厚みはない。
封筒を握った俺の手を取ると少し引っ張って 自分の胸元のすぐそばまで引き寄せる。
みずみずしい瞳を浮かべて「本当に あなたに感謝しているの・・」と言う。
彼女の額から汗がこぼれた。
女性の呼吸の音が少しずつ大きくなってきて ツバを飲み込むとゴクリと胸元の方へ流れていく。。
胸元にある俺の手を握る手が震えて見える。

「俺は 何もしていませんよ」

女性は俺の手を放して廊下を歩いて行ってしまった。
洗濯カゴには洗濯物が残っている。
洗濯もをクリップでとめると、隣に住んでいる女性が一人で車に乗り込みどこかへ車を走らせていくのだった。
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