地球人が育てた女神様

モルモット

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メアリーの館とパズルの解き方

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私たちは メアリーの館へ通された。
館の庭には奇麗な花が咲いていて 中は中で家具の一つ一つが質のいいものが揃えられていた。
センスのいい女性の家と言った感じね。
テーブルに座ると 奥からコツコツと床にいい音を響かせて歩くミリアという使用人が出てきたの。
年の頃は私より 2つくらい上かしら。さっきの リフトを拘束した女性ね。
「ミリア 失敗して悲しい。お姉ちゃんは凄いのね」と言って私たちに紅茶を出してくれた。

メアリーは 「このミリアはちょっと訳ありでね」と事情は聞かないでほしい風な前置きをしてから本題に入った。
「単刀直入に聞くけど、ここへ来たと言うことは すべてを知りに来たと言うことでいいんだね??」

ええ そうよ。スタイル抜群の女性じゃなかったけど、心の浮気という線は消えていないわ。

「そうですか。。。ですが私も人族として一つ聞いておきたい? 連れの二人は魔族のようだけどトモちゃんは 滅ぼしたいのですか?それとも。。。救いを恵んでくださりますか?」

滅ぼすか?救うか?ですって? 何を言っているのかしら??
そうか 旦那と離婚するのか?愛人との三角関係をつづけるのかって聞いてきているのね。
18歳の私に 三角関係を要望してくるなんて年上の女性は怖いわ。

「メアリーさん あなたはどうしたいのですか?」

「ほっほほ。困った質問ですね。 私はピョンタの意思を継いであげたい。剣も魔法も使えない凡人が起こした奇跡にワタシはワクワクしてしまったのさ」

素朴な人にワクワクしてしまった。出来心だったといいたいのね?
旦那がいない今となっては 事を荒立てずに三角関係のまま終わらせることも出来るわ。
でもね 私の方があなたよりもピョンタと過ごした時間は長いのよ。

「あら ピョンタは魔法 使えたわよ!爆発系の魔法なの。その魔法でガレキから私の命を助けてくれたこともあるのよ」

メアリーは目を丸くして驚いているようだった。
そうよね。あなたが知っているのは昔の旦那。
人はね 変わるのよ。あなたがワクワクした魔法の使えない旦那はもういないの。ふふふ。

リフト「爆発系といいましたか!?いったい何を爆発・・?」
メアリー「リフトさん!!黙って。。おそらくあなたの勘は正しい」

メアリーはさらに優しい口調で話をつづけた。
「そのあと。。ピョンタはどうなったんだい?」

「さあ 私も気絶してしばらく眠っていたし、ピョンタは部屋からしばらく出てこなかったわ。旅行に行っている間に溜まった仕事が忙しかったらしいの」

メアリー「そうかい そうかい。トモちゃん あなたは本当に愛されていたんだねぇ・・」
メアリーの瞳に涙が見えた気がした。


私の方が愛されていると認めたわね。
本妻VS愛人の勝負は 私の勝で幕を閉じた!
だけど嬉しくないわ。 メアリーが可哀そうに思えた。
三角関係は勝っても負けても 不幸な気持ちになってしまうものなのね。。
あれ? だけど 会話がなんか変じゃない??
どうやら私たち 勘違いして会話をしてしまっていたみたい。

「そうだったの そんな使命なんて、知らないわよ。勇者とか魔王って何様なの? 笑っちゃうわ」
「ワタシはてっきり 世界に終末をもたらす「古代の魔物」の居場所を聞きに来たのかと思ったよ」
「滅んで喜ぶのは うちの旦那くらいでしょ? 物件が安く買えたぜ!とか言ってね」
「はっはは。 そうだねぇ ピョンタなら言いそうだねぇ」

誤解が解けると会話が弾んで お茶も何杯 お代わりしたのかわからなくなったわ。
「お茶が進みますね。お代わりをお持ちします」
「ミリアはとても気が利くのね。私も行くわ」
「一緒に来てくれて、、ミリア嬉しい」

リフト「ところで 岩の化け物や 綿毛の化け物はメアリーさんの魔法ですか?」

「そうよ。 精霊に肉体を持たせて具現化する魔法。それが私のスキルなの。実はね コウモリ意外にも色々と用意していてね、あなたたちの実力を見せてもらっていたのよ」

バール「わかっていたのか?のぞき見なんて趣味が悪いぜ」
メアリー「あら あなただってトモちゃんを押し倒していい思いしてたじゃない?」
バール「はぁ?・・ そっそんなんじゃねぇ~から・・・本気だ・から」
トモちゃん「え?二人で何を話してるのよ。バール その顔なに?笑っちゃうわ」

メアリーは 浮気相手ではなかった。
義賊とか野蛮な呼び方はされているけど それは有名になった事で名前が独り歩きをしてしまっただけで
本当は 心優しい革命家だったの。
それと・・ メアリーって見た目と違って私より年下だったのね・・。

日もすっかり傾いちゃって この日はメアリーさんの家に泊めてもらう事になったの。
メアリーの館には 私の家と同じようにお風呂があって一緒に入ったわ。
革命家時代の話は楽しかったし、「ピョンタにもらったパズルが全く解けないの」と話すとお風呂から上がったら一緒にパズルを解いてくれるって約束してくれるし、優しかったの。
ミリアは 少し後からお風呂に入って来て体を洗ってくれたから「一緒に入りましょうよ」って誘ったけど
でも裸なのに 一緒には入らないのよね。
私たちの後から バールとリフトもお風呂に入ったわ。
お風呂は初めての経験だったみたいね。
普段は水風呂なんですって。


「これが そのパズルです」
「ん~ ただのキューブのパズルとは勝手が違うようだね。ただのパズルとは思えない。
 そうだ、精霊に聞いたほうがよさそうだね」
メアリーは私の肩に手を伸ばしてホコリをつまんだように何かをつかむと呪文を唱え始めたの。
すると 小さな人族のような可愛いぬいぐるみが現れて照れくさそうな表情をしていたわ。
「ぽっくるぅぅ~」

「・・・そうかい。マインドフルネスを授けるためのパズルだったとわね。人前に現れて恥ずかしかったでしょう。さあ もう消えてもいいよ」

「ぽっくるぅぅ~・・・」

メアリーは こちらに穏やかな視線を向けると「さあ パズルの解き方がわかったよ」と楽しげな笑みを浮かべた。
・・・・・
メアリーさんのマインドフルネスメモ。
1.ゆったりと座る
2.心と体が落ち着いている事を感じる
3.パズルを見つめて観察をする(色は?形は?重さは?)
4.観察することに全身全霊を注ぐ
5.雑念が現れたら何もせずに再びパズルに気持ちを戻す。以降は5の繰り返し
・・・・・
私の手のひらにパズルを乗せて 心を静めていくとあれだけ難しかったパズルが自分のほうから解け始めたの。
カチ♪ カチ♪ カチ♪

多面体の複雑な休部がどんどん 形を変えていく。見ていて楽しい。
カチ♪ ・・・ カチ♪

多面体の数がだいぶ減ってきたわね。動きも遅くなって・・なんだか単調だわ・・。

・・・・
「さあ 今日も サム特製の花びら入りのジャムを食べてください」
カチ♪
「求婚を断り続けましたね?。。 あなたの価値はなくなってしまいました、残念だメェ~」
カチ♪
「精霊の農園を潰してしまうなんて。。残念だよ。。」
・・・・

はっぁ!!! 今のはなに??

「確りするんだよ!トモちゃん」
「今のはなに? 怖い映像が脳裏に流れてきたの。怖い・・怖いよ。。」

メアリーは私を優しく抱きしめてくれた。
私は 悩んでいることを全部 メアリーに話したわ。
漠然とした不安だったから、今まで誰にも話せなかったことばかりだったけど
そんな話でも メアリーは何も言わずに聞いてくれたの。
そして 最後まで聞いてくれたメアリーの答えは。

「それは 本物のトモちゃんの悩みじゃないのさ、実はね、心の中にはもう一人の自分がいる。
ただ その子は いつも不安で寂しくてね。
だから トモちゃんも一緒に不安や心配になってほしいと、あの手この手を使ってくるのさ。
でも 本物のトモちゃんはよく気の利く愛情深い子だとワタシは思うがね。」

私は私よ。 もう一人の自分なんて信じられないわ。
私が不安だから 脳裏に怖い映像が映ったんでしょ?
でも メアリーはそれは本当の私じゃないと言う。
マインドフルネスはもう一人の自分との付き合い方を学ぶ方法だとメアリーは教えてくれた。
でも 結局のところマインドフルネスをすることに、どんな価値があるのかしら??

突然 二人の大声がする。
バール・リフト「うわぁぁぁぁ!!」

なに? 何があったの?? お風呂場から大声がして二人はタオル一枚の恥ずかしい恰好で飛び出してきた。

ミリア「背中を流そうとしたら二人が急に飛び出していったの。ミリア、悲しい・・」

メアリー「やれやれ・・。 お二人さん。ミリアは一部の感情が欠落しているんだよ。この子の過去に比べたら背中の一つや二つくらい 平然と流させてあげればいいのさ! 
ミリアぁ・・親切な気持ちを裏切られたのかい?悲しかったね。あっちの部屋でおばあちゃんと紅茶を飲もうじゃないか。。。」

樹木族の人たちといい。怖い噂の流れる「メアリーの館」には訳ありの人達が集まって来ていた・・。
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