地球人が育てた女神様

モルモット

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モルモット市場とクモルモット

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リフトとバールは 用事があるとか言って別れたけど先に宿はとってあるからゆっくりモルモットを見て帰れるわ。

プイプイ プイプイ

「いらっしゃいませ。お嬢様方。素晴らしい日よりですなぁ~ 当店ではモルモットから装備アイテムまで幅広くご用意いたしております 」

店に入ると子供のモルモットの声が聞こえて1階2階と 沢山の子供たちとお母さんモルモットが一緒の檻に入れられているわ。
モルモットは 耳が垂れているけど赤ちゃんんや小さなモルモットは耳がネズミの様に立っているのよ。
1年未満の子を買うなら 耳が年齢を見分ける一つの目安になるわね。
でもミリアは 幸せそうなモルモットたちを見ていてもあまり浮いた顔をしないのよ。
金貨5枚で買える子でもいい子は沢山いるのにどうしてかしら?

「おやおや お客さん。どうしました?ん~ 魔族のお嬢さん、お嬢さんは心が欠けてしまっているようですな」
「え! メアリーも言っていたけどどうしてそんなことがわかるのよ!心が欠落するってどういうことなの?」
「うんうん。。 そうですなぁ。見てもらったほうが早いでしょう」

店主は そう言うと私たちを地下1階へ連れて行ったの。
地下があるなんて 気が付かなかったわ。

プイ

プイ・・

地下と言っても換気もしっかりしていて清潔だけど
モルモットたちは寄り添うように隅っこに固まって動かないのよね。
まるで 最後の時を待っているかのようだわ。。

「こちらのモルモットたちは・・ 飼い主に見捨てられたモルモットなのです・・上の階が光ならば、こちらは闇と言ったところでしょうか。裏切られてしまったモルモットたちがひっそりと暮らしているのです」

寄り添うモルモットたちを見て私は ミリアの過去が少しわかった気がした。
バールやリフトとも一緒にお風呂に入ろうとしたときには驚いたけど
心を殺し過ぎちゃって、素直な自分の気持ちを感じる感覚がマヒしてしまっていたのね。
でも ミリアは上の階にいたときよりも興味をそそられたように いろんな子たちのところへ行ったわ。
「お姉ちゃん ミリア 一人で探したい」
「ええ 気に入った子がいたのなら お姉ちゃんが足りない分のお金を出してあげるわ。だって 人助けならぬ。モル助けですものね」

「モル助けですか・・ 本当は人助けでもあり、モルモットとは人のパートナーなのです。いやはや はっはは。これは 理屈っぽい事を行ってしまいました。ミリアのお嬢様が選んでいるあいだは、わたくしたちは上の階にいることにしましょう。 とびっきりの商品がございますぞ」

がめついお金第一主義な、おじさんって感じがしたけど この店主はただ者じゃないかもしれないわ。
それで とびっきりの商品っていうのは ポーション類だったのよね。
スピードポーション パワーポーション・・色々とあるのね。
でもね モルモットに水気の多い物ばかり与えるのは厳禁なのよ。
しいて欲しいといえば 金のニンジンというアイテムくらいかしらね。
このニンジン すごく 美味しいのよ。
だから モルモットと親密になりたいときに使うと効果抜群だわ。

そうだ ミリアにプレゼントしましょう。
新しいモルモットと早く仲良くなれるはずよ。ふふふ
「これ! いただくわ!」
「これはお目が高いです。うちの店で一番いい 金のニンジンですな。毎度ありがとうございます。」

店長と立ち話を続けていると大国を破壊したのは やっぱり 古代の魔物じゃないかって話だったわ。
「古代の魔物で 間違いないでしょう。とりでを破壊できたとしても聖女の結界はダテじゃない。わたし・・いいえ 何でもありません。ですが ・・・意味をなさないのですから。これは大事件ですぞ」

眠っているはずの古代の魔物が なぜ目覚めたのかしら?
国の次は 小さな村が潰されていくという話を聞いたのよ。
魔導都市メキストには 来てほしくないものだわね。

「お姉ちゃん この子に決めた」
「シャァーーー!!」

今日は 決まらないと思っていたけどミリアにも運命の出会いがあったみたいなの。
よかったわ  これからはその子と人生を生き・・

え! シャァーーー!!ってなに? モルモットの鳴き声ってそんなんだっけ?

ミリアは モルモットの首に抱き着き、「首ったけ」の語源を教えてくれるように愛情をその子に注いで見せてくれた。

「この子 大好き・・」
「シャァーーー!!」

えええ!! 私の目が可笑しいのかしら?
「ミリア それ・・ 大型のクモじゃないの!!」

ミリアの連れてきた子わ!大型のクモじゃない?
きっと 地下だから住み着いていたのよ。
人が乗れない事はないけど、乗っちゃダメなほうのヤツよ それ。

「おやおや クモルモットですな。その子は中々人には懐かないのですよ。お嬢さんはさすがですな。もしやその年でモルモットレースの御経験があるのですか?」

クモルモットって初耳なんですけど!!
知らないのは私だけなの?
魔導都市メキストの記念大会に出場できるほどの腕前の私でも知らなかったのよ?

「シャァーーー!!」
「これは素晴らしい。 この子が喜んでいますよ。いいや 魅了されていると言ってもいいかもしれない」

店主は 何度もうなずくと契約書を持ってきた。
契約書には 「オベーセル・アングリア・ジョンソン・オーディン一世」という名前が書かれていた。
そうか 捨てられたモルモットって言ってたわよね? 前の飼い主さんが付けた名前かしら?
って なが~い名前付けちゃって前の飼主さん この子に期待し過ぎよ!

「どうします? ミリアのお嬢さん。名前を変えることも出来ますよ」
「ミリア このままがいい。だって この子のすべて 受け止めてあげたい」
「おおお!!!! この商売を始めて30年。。なんて いい日なんだぁ」

店主はオイオイ シクシクと泣き出してしまった。
話がすっかり進んでしまったけど クモルモットってなに?

「そうだ ミリア。先輩の私からあなたへ プレゼントがあるのよ。はい 金のニンジン」

金のニンジンは輝きを放ったわ。
クモルモットの瞳もウルウルし始めたし、肉食じゃなくてよかったわ
「はい オーディン。食べて」
「シャァーーー!!ムシャムシャ・・」

オーディンって呼ぶことにしたのね。
仲良くなれてよかったわ。
「どうしたのミリア?」
「お姉ちゃん 大好き。ミリア お姉ちゃんが欲しい」
「私はミリアのお姉ちゃんよ 改まってどうしたの?」
ミリアは首を横に大きく振ったわ。

「お姉ちゃん 無くなったら 悲しい。ミリアの ものになって・・お願い」

ミリアのものになってですって。新手の告白ね。
でも 「もの」っていうのはちょっと違うかな?そう思ったので「私はどこへも行かないわ」といいつつ 
「もの」というのはよくないわよって 柔らかく伝えたの。
少し悲しそうな顔をしていたけど 宿に向かって帰るうちにケロリと機嫌が直っていたわ。
宿に着いたら先にバールとリフトが戻っていたの。

バール「おう クモルモットじゃぇねか!」
リフト「クモルモットですね 懐かしい」

「シャァーーー!!」

新しい仲間に 二人もすぐに打ち解けたわ。
え? クモルモットのほうが常識なの?何この感じ?

バールは仕事を探しに、リフトは古代の魔物の情報を集めに街を回っていたらしいわ
でも どうして仕事なんて探そうと思ったのかしら?
それが 魔導都市メキストは魔導都市だけあって最初は魔石の採掘所だったらしいのよ。
私にはわからないけど 地下の魔石の採掘が再開されてダンジョン内の魔物と戦える兵士の募集があったんですって。
古代の魔物の情報を集めるなら 噂を集めるよりも組織に潜り込んだほうがいいと思ったらしいわ。
バール「・・という訳だ。勇者も住んでいるあの大国から聖女も呼び寄せるらしいし、メキストは騒ぎが収まるまでロウジョウを決め込むみたいだぜ」

よくわからないけど ピョンタがこの状況にいたら残念そうな顔をしてそうね。
私は お金の知識はないけど酔っぱらったピョンタが生前にダラダラと愚痴を言ってそうな光景が脳裏に浮かんだ。
つまり、、そう言うことね。
1.魔石が掘られたのは 魔法の代わりになる便利な魔石の需要が増えたから。
2.お金の価値が下がって物の値段が上がる。
3.魔石が増えることで 都の外に現れる魔物が増えたり強くなったりする。
4.都に立てこもって、魔石が減るまでやり過ごす。
つまり 物件が買えなくなったピョンタは お酒を飲んで愚痴をこぼすことになるわ。


トントン!
トン!トン!

部屋のドアをノックする音がしたから開けてみたら 宿屋の店主だったの。
貴族の使いの者が訪ねてきたらしいくて 手紙を持ってきてくれたわ。
読んでみると、ミリアのチビッ子モルモットレースを見ていた貴族がミリアの走りを見て感心したらしく
話を聞きたいから 食事に誘ってくれたのよ。

「私たちを食事に招待したいですって!」

まずいわね。貴族A・Bの親だったら 皮肉をたっぷり言われそうだわ。
名前を覚えておけばよかった。。。

リフト「エリータ・テレーザ・ディ・ローナ・・先走りましたね・・。いいえ 何でもありません。私は行くところがありますので失礼します。。」

手紙に書かれていた名前を読んだ リフトはそそくさと出て行ってしまったわ。
知り合いなのかしら?
チビッ子モルモットレースの話をしたときに「仕返しかしら?」といったら
「それはないでしょう」と言っていたけど自信がありそうだったし信じてもいいかもしれない

バールも付いてきてくれるみたいだし 私たちは貴族の家に向かうことにしたの

マリア! 出番よ!!
私は 「マリアの笛」を吹いたわ。

ピロリロリ♪

「お嬢様 コスチュームチェンジですね!」

私とミリアは ゴシックな正装になったの。
着せ替えが終わったマリアま満足げに去ろうとしたけど 宿の前にいるクモルモットと鉢合わせになってしまったのね。
大変 きっと キャーとか叫んじゃうわ。

マリア「あれ? クモルモットだぁ 懐かしいな」
ようやく私と同じ人が現れたと思ったのに それはないわよ。

「マリア 無理しなくていいのよ。あなたも初めて見たでしょ?でも ちょうどよかったわ」

コスチュームチェンジ!!
パッ!!

クモルモットのオーディンは モルモットの着ぐるみを着た可愛い姿になった。
これで 貴族のところへ行けるわね。ふふふ
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