地球人が育てた女神様

モルモット

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乗馬は貴族のたしなみ。ミリアの正体は?

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魔導都市メキストの半分から向こう側は 元採掘所とは思えないほど緑があって整備のされた住宅街だったの。
そして奥へ進んでいくと 広い庭のあるお屋敷にたどり着いたわ。
鉄の柵を進んでいくと柵の奥の庭には乗馬のコースもあるわね。
練習風景を見ていると 馬が障害物を超えるためにジャンプしたのよ。
馬もジャンプが出来るなんて知らなかったわ。
門に到着すると 執事が待っていて私たちは屋敷に通されたの。


「私がエリータ・テレーザ・ディ・ローナです。よくいらっしゃいました・・・ゆっくりと食事を楽しんでいかれるとよいでしょう」

ミリアに母親のようなまなざしを送るエリータ・テレーザ・ディ・ローナは
年配で旦那さんはいないのかもしれないわね。
通された食事の会場は さっき 柵から見えていた乗馬の練習をしていた庭先ですでに数人の貴族が食事を始めていたの。
「オレは 食事会は 好かん。終わったら呼びに来てくれ」
執事「でしたら あちらの方で 私に剣術の指南をした頂けませんか??」
「じいさんがか? いいや お前、隠しているが本当は強いだろ?」
執事「さて どうでしょうか ほっほほ」

バールは 並木をはさんだ向こう側に二人で消えてしまったわ。
ミリア、私たちはご馳走を食べに行きましょう。

「うん」

テーブルに着くと 見慣れた顔と銀髪の姿があったわ
「リーファも来ていたのね」
「トモちゃん」
私たちはゲストということだったけど 聖女のリーファも先に呼ばれていたみたいでよかったわ
ときどき 面白い人を見つけては 食事会のゲストに招いて見聞を広めるパーティーらしいのよ。
気さくな感じの貴族が多くて 会話も楽しかったんだけど。。。

「初めまして私は・・」
チラ!

「なんと! 旅を・・」
チラ!

「素敵な時間が過ごせました」
チラ!

ミリアが招かれたはずなのに 付き添いの私の方をチラチラ見てくる人が多いのよね。
ミリアと話をしているのに よそ見をするなんてあまり褒められたことじゃないわ。

「ミリア お姉ちゃんに なりたい」
「大丈夫よ、ミリアだってあと5年くらい経てば私と同じくらいの背丈になれるわよ」


貴族たちの挨拶がひとしきり終わって みんなになじめると会場が思ったより広く感じたの。
支線を端から端まで伸ばすと 乗馬を見ながらのパーティーって感じなのね。
バールは 向こうで楽しそうに剣を交えているわ。
でも あの木のところに立っている二人の貴族は・・ どうしちゃったのかしら?

パーティーになじめなさそうな 二人がいたのでゲストの私の方から声をかけてみたの
だけど 「こんにちわ」って声をかけても すぐに下を向いちゃうのよね。どうしたのかしら?

「実は 私たちはあの時ミリアさんと競走した子の親なのです・・うちの子供たちは 短気になりやすくて、どこへ行ってもダメなんです。。」

みんなになじめずに 突っ立っていた貴族は貴族A・Bの親だったのね。
私はてっきり 貴族A・Bの親に招かれて色々と嫌味を言われてさらし者にされてしまうかと
思っていたけど。
さらし者にされていたのは 貴族A・Bの親だっただなんて意外だった。
理由はわからないけど 過去にも似たようなことがあったのかしら?
子供の責任を 取らされていたのね。

「よければ、ですけど・・ お子さんにマインドフルネスを教えてみてはいかがですか?」
私は 心の仕組みと簡単なマインドフルネスの方法を説明したわ。
私の場合はパズルを使っているけど 本当は どんなものでも出来るのよ。
例えばローソクの炎なんかでも出来るの。

「うちの子が すぐに短気になってしまうのはもう一人の自分が心の中で大騒ぎをしているからだと言うのですか?とても信じられません。ですが ローソクの炎を毎日眺めるだけで短気が治るなら試してみましょう」

そうそう それでいいの。
別に マインドフルネスを理解する必要はないわ。毎日続けていれば わかってくるはずだから。
「ねえ ミリア この人たちをあっちのテーブルに連れて行ってもいいかしら?」
「うん みんなで ご馳走 食べよう」
「いい子ね よしよし」
「ミリア 嬉しい」

パチパチパチパチ

私たちが戻ろうとテーブルに近づいていくと 拍手が沸き起こったわ。
仲直りしたことを歓迎してくれているみたいね。
私たちは度量の深い人たちだって思われているんじゃないかしら?
そしてフィナーレはエリータ・テレーザ・ディ・ローナが口を開いて ミリアに乗馬コースを走ってもらうって話になってミリアが乗馬を披露したの。

「シャァーーー!!」

中々迫力のある走りっぷりだと 貴族の人たちもほめていたわね。
リーファは驚いていたけど 私はオーディンにもう慣れちゃったわ。

そしてバールたちも帰ってきたの。
「おっしゃ! 一本取ったぜ!!!」

ずっと 戦っていたのかしら?男ってわからないわ。呆れちゃう
でも ミリアは関心があったみたいね。

「バール 勝ったの?」
「おうよ! そしてオレの剣技にも磨きがかかった 前よりも強くなったぜ がははは」

「ミリア バールがほしい。私のものになって!」

バサ!

ミリアはバールに抱き着いたの。
剣豪バールは ホホを赤らめて、すきだらけになってしまったわ

「悪い・・悪い鬼はだ、なぁ・・・ いいや ミリア、よく聞くんだ。オレたちは仲間の絆でいつでもつながっている。だから 安心するんだ」

ミリアを話すとしゃがみ込んでバールは 語り始めたの。
そうよ 私たちは繋がっているのよ。それで 十分じゃないの?
でも ミリアは「うん」と言いながらも表情は雲っていたわね。

・・・・

「今日は お呼びくださってありがとうございました。」
「ごちそう さま」

エリータ・テレーザ・ディ・ローナは 微笑むとしゃがみ込んで両手をミリアの肩に乗せたの。
「いいのですよ。仲直りも出来たようですし。 それよりもミリアちゃん。。あなたさへよければ うちの子にならない?私は本気よ」

いきなりの養子のお誘い
冗談半分かと思ったけど エリータはミリアを見すえて手を離すつもりはないみたい。
本気?
なんで?
お金も権限もありそうだし、幸せになれそうだけど私としては そう簡単にミリアを渡すわけには行かないわ。
ミリアは どんな顔をしているのかしら?
覗き込んだけど 無表情ね。 そりゃそうよ。
ミリアには まだ わからないわよ。残念だったわね。エリータ。ふふふ

「そうだねぇ わからないわよね。じゃぁ こうしましょう。ミリアちゃんの様子だけど ずっと見ていたのよ」

エリータはそう言うと 執事を呼び出したの。
そして 命令口調でこう言ったわ

「私に愛の言葉をささやきなさい。そして キスをするのです!!」
執事「はい かしこまりました。わたくし・・は命に・・では口づけを・・。」

えええ! なにやってるの?
そんな事を 子供に見せちゃダメでしょ??

「どうだいミリアちゃん?欲しい物は こうすれば手に入れられるんだよ。さあ こっちへおいで」

ミリア・・ミリアちゃん・・ 大丈夫よね?
行ったりしないわよね??

・・。

ミリア「・・・。」

私たちの後ろから 聞きなれた声がしたの。

リフト「エリータ! いい加減にしてください!」

後ろを振り返るとリフトの姿があったわ。
でも リフトの後ろには数人の強そうな魔族の人たちが横一列に整列していたの。
まるで警備兵のようで リフトが隊長に見えるわ。
エリータも面食らった顔をしていうわね。二人は知り合いなのかしら?

「あなたが どうしてこんな時に現れるのよ!だけど ミリア様は家出をされたと聞いているわ。決めるのはミリア様じゃないかしら?」

「家を出ていようとミリア様が スパイダー様の娘であることには変わりありません。貴族風情が口をはさむことではありません」

「貴族風情ですって!高貴な我々に対して その言葉・・後悔しますよ」
「どうぞ ご自由に」

どうなっているの?
ミリア様ってなに?リフトも別人に見えるわ。

バール「リフト お前、どういうことなのか?説明しろ!」

リフト「バール今までありがとう。私はスパイダー様の部下、諜報部のものなのです。でも あなたとの旅は楽しかったですよ」

ニッコリって リフトは可愛く微笑んだけど、あなたたちは親友でしょ?
「ニッコリ」じゃ 許されないわよ。ずっと秘密にしていたのかしら?
ケンカよ!こうなったらケンカになると思ったけど でもバールは口をつぐんでしまって
リフトは淡々と話しを始めたわ。
何やってるのよ。

「ちょっと リフトとバール あんたたち!笑っちゃうわよ! あなたたちは親友でしょ?親友なのよね?どうして?」

後ろの警備兵みたいな人達が私の前に出てきて私を威圧しようとしてきたわ。
無言だけど これ以上前に出てくるなら 容赦しないぞ!って雰囲気がピリピリ伝わってくる。
そんなとき ミリアがリフトの前に出てきたの。

「ミリア リフト ほしい。 私の物になって。お願い」

「はい 戻ってきていただけるのでしたら リフトはミリア様の物です」

「・・・ミリア様の物です」というとリフトはニッコリと満面の笑みを浮かべたわ。
ミリアもニッコリって顔をして リフトに抱き着いたの。
リフトは ミリアを持ち上げて 子供の遊びの様にグルリと一周、回すとそのまま抱きかかえて連れ帰ってしまったの。

こうして ミリアはリフトと行ってしまったの。
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