愛するということ

緒方宗谷

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2.有紀子と加奈子 

4.異性

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 単純に言えば生徒の半分は男子だ。加奈子の言う通り男子とこんなふうに話せたら、もう少し違った学園生活があるのかもしれない。そう言えば、何で話さないんだろう。全く話さないわけではなかったが、大抵は女子としか話さない。
 そんな有紀子と対照的に、加奈子はよく男子と話をしていた。同姓と話している時よりも、そっちの方がしっくりくるくらいに見える。
 もしかしたら、そのせいかもしれない。加奈子が男子と馬が合う。男子が有紀子に話しかけに来ても、そばにいる加奈子が男子と会話をしてしまう。だから、有紀子は聞いているだけ。
 そう思うと、少し可笑しく思える。自分のことを心配してくれる加奈子が、知らず知らずのうちに虫(男子には悪いが)がつくのを阻止しているのだ。
 それでもたまに告白されることがある。
 友達に話を聞くと、大抵、自然と仲良くなって、いつの間にか付き合っているとか、さらっと付き合おうと合意したとか、そんな恋人同士が多い。
 対して有紀子は、小学生や中学生の様に、呼び出されて告白されるとか、ラブレターをもらうとかの方が多い。たぶん加奈子の防虫効果のおかげだろう。
 学校裏に呼び出された有紀子の記憶に、今目の前にいる男子の名前は無い。3年の先輩のようだ。先輩は少しオドオドしながら気持ちを伝えてきた。
 顔は悪くない。知らない人だから、「はいそうですか」とはいかないが、もう少し強引だったら少し付き合ってしまうかもしれない、と有紀子は思った。
 ただ恋をしろって言われても、やっぱりそんな気持ちにはなれない。でも結構好みだったと、後で加奈子に教えてあげよう。
 有紀子は繰り返し思った。
(恋を……、……でも)
 相手の目を見て、有紀子は「ごめんなさい」と言った。
(やっぱり、だめ)
 同時にそう思って、その場を後にした。
 その晩、ベッドにうつ伏せになって、無理にでも誰かと付き合った方が健全なのではないか、と有紀子は思った。
 高校になったら、自然と誰かを好きになる、と考えていた。中学の時より色々と大人になった気でいたから、生活もトキメキある憧れの青春ど真ん中だと思っていた。だが、それほど変化は無かった。
 当然だ。15歳が16歳になっただけなのだから。今は16歳が17歳になっただけ。身体的には成長しているが、精神はあまり変わらなかった。
 何でこんな気持ちになるの? 有紀子は何度も自問する。友達だっているのに、心がすごく寂しい。
 ずっと考えないようにしていた。ずっと昔のビジョンに縛られて、ずっと今まで逃げてきたように思う。だからもう逃げない‼ いつものことだが、有紀子は1日考え続けた後、そう誓って眠りについた。
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