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49.合流
2.工事現場
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「放して! 何すんのよ!」
加奈子が怒鳴った。やめてと叫ぶ有紀子のもとに行こうと長髪の手を振りほどこうとするが、全く力が及ばない。格闘技でもやっているのだろうか。とても筋肉質で学校の男子とは異質な存在に思えて恐ろしい。
無理やりに工事現場のシートの内側に引きずり込まれた2人は、セメント袋が積まれているところに押し倒された。
「ちょっと何すんのよ! こんなことしてタダで済むなんて思わないでよね!」
叫ぶ加奈子を見下ろす長髪が、ほくそ笑みながら勝ち誇ったように言う。
「下手に出てりゃ調子に乗りやがって。つけあがってんじゃねーぞ」
「俺はこっちの女な」
眉を漢字の八の字にしたキノコ頭はそう言って、涙ぐんだ有紀子を見下ろす。快く有紀子を譲った長髪が言った。
「じゃあ、俺こっちな」
絶体絶命のピンチに加奈子は顔を強張らせながらも、どうすれば逃げ出せるか考えていた。三方はオフィスビルに囲まれている。電気はついていない。誰もいないようだ。叫んでも助けは来ないだろう。
陸は辺りを見渡しながら、工事現場の前の道を歩いていた。顔はよく見えなかった。だが、陸は一瞬の間に加奈子と有紀子だと確信した。そして考えるより先に咄嗟に走り出して、ここまで来た。
「ヤダ‼ やめてよ‼」「や―‼ 助けて加奈‼」加奈子と有紀子が叫ぶ。
男達が2人に馬乗りになって、抵抗する両腕を抑え込もうとしていたちょうどその時、ズザザ、という砂利を踏みしめる音がした。
「ぐはっ‼」
キノコ頭が顔を歪めて砂利の上に転げた。
キノコ頭の右わき腹をトゥキックで蹴り上げた陸に、長髪が「何だテメー⁉」と凄んで怒鳴る。
それを一瞥もせずに無視した陸が、有紀子の傍らに膝をついた。
「大丈夫か、有紀子」
「陸君……」
抵抗した時に外れたリボンが落ち、ポニーテールがハラハラと解かれた。
恐怖と安堵が入り交じってどうしようもなかった有紀子は、泣いてしまいたかった。水晶玉の中で荒れ狂う嵐の中の海の様になった感情を包んで慰めてほしかった。だが、一瞬にして現実に引き戻されて、咄嗟に叫ぶ。
「危ない! 陸君」
「何すんだ‼ 殺すぞ‼」
鼻を震わせた声が響く。
有紀子の方を向いていた陸が振り返るや否や、キノコ頭が鉄パイプを振り下ろす。
「うらぁ‼」
鈍い音が鳴り響いた。
加奈子が怒鳴った。やめてと叫ぶ有紀子のもとに行こうと長髪の手を振りほどこうとするが、全く力が及ばない。格闘技でもやっているのだろうか。とても筋肉質で学校の男子とは異質な存在に思えて恐ろしい。
無理やりに工事現場のシートの内側に引きずり込まれた2人は、セメント袋が積まれているところに押し倒された。
「ちょっと何すんのよ! こんなことしてタダで済むなんて思わないでよね!」
叫ぶ加奈子を見下ろす長髪が、ほくそ笑みながら勝ち誇ったように言う。
「下手に出てりゃ調子に乗りやがって。つけあがってんじゃねーぞ」
「俺はこっちの女な」
眉を漢字の八の字にしたキノコ頭はそう言って、涙ぐんだ有紀子を見下ろす。快く有紀子を譲った長髪が言った。
「じゃあ、俺こっちな」
絶体絶命のピンチに加奈子は顔を強張らせながらも、どうすれば逃げ出せるか考えていた。三方はオフィスビルに囲まれている。電気はついていない。誰もいないようだ。叫んでも助けは来ないだろう。
陸は辺りを見渡しながら、工事現場の前の道を歩いていた。顔はよく見えなかった。だが、陸は一瞬の間に加奈子と有紀子だと確信した。そして考えるより先に咄嗟に走り出して、ここまで来た。
「ヤダ‼ やめてよ‼」「や―‼ 助けて加奈‼」加奈子と有紀子が叫ぶ。
男達が2人に馬乗りになって、抵抗する両腕を抑え込もうとしていたちょうどその時、ズザザ、という砂利を踏みしめる音がした。
「ぐはっ‼」
キノコ頭が顔を歪めて砂利の上に転げた。
キノコ頭の右わき腹をトゥキックで蹴り上げた陸に、長髪が「何だテメー⁉」と凄んで怒鳴る。
それを一瞥もせずに無視した陸が、有紀子の傍らに膝をついた。
「大丈夫か、有紀子」
「陸君……」
抵抗した時に外れたリボンが落ち、ポニーテールがハラハラと解かれた。
恐怖と安堵が入り交じってどうしようもなかった有紀子は、泣いてしまいたかった。水晶玉の中で荒れ狂う嵐の中の海の様になった感情を包んで慰めてほしかった。だが、一瞬にして現実に引き戻されて、咄嗟に叫ぶ。
「危ない! 陸君」
「何すんだ‼ 殺すぞ‼」
鼻を震わせた声が響く。
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「うらぁ‼」
鈍い音が鳴り響いた。
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