FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍕

 駅の改札口側に下りて図書館の正面入り口を通り過ぎると、奈緒がみんなの前に立ちはだかって、勢いよく声を発する。
「なにか忘れて いませんか? こういうの。あれ。こうこうこうって」
 揃えた指先で円を描いて、何度も何度も手刀を切る。そして、少し憤然とした様子でぷんぷん続けた。
「食べていくのではないのですかっ」
 分からない様子で見つめてくるみんなにうまく説明できず、この子は目口を中央に寄せて首を傾げ考え込む。
「ピザでしょ?」南が答える。
「そう、それ。まさか食べて帰らない気じゃないでしょうね」
「そんな怒らなくても大丈夫だよ、食べて帰るから。そもそもそのために十時過ぎまでおばあちゃんちにいたんだから。ほら、もう十一時になるからそろそろオープンする頃だよ。時間まで朝市見てから行こう」
「うわぁい、やったぁー」
 奈緒は膝を曲げて縮こまると、全身で喜びを表現するように飛び跳ねる仕草をする。まったく地から足が離れないジャンプを数回繰り返すと踵を返し、先頭を切って芝生のほうへと走っていった。
 しばらく見学してから、五人がピザ屋さんへと向かう。
「牛。牛とかいるやつ」
 建物を見上げる奈緒に南が訊く。
「牛舎とか豚舎のこと言ってるの? まあ、どことなく畜舎的なものを改装したような建物にも見えなくはないけど、も少しいい表現しようよ。モダンな倉庫というかスタジオめいた感じとかさ」
 建物へと向かう途上でアプローチに差し掛かると、杏奈が庭木越しに黒い壁のファサードを見やる。 
「入り口が公道に対して横を向いているのが面白いわね。敷地の半分が広場になってもの、圧迫感がなくて心にゆとりがある感じだし。何本もの細い木々が植えられているから、ここだけ切り取って見ると、疎林の中にたたずむワインの醸造所かチーズ工房に見えてすてき」
 木製のドアを開けて店内に入るととても広々としていて、空気は少しオレンジめいて見える。
 入り口を入ってすぐ左側にある席に着くと、すぐに南がテーブルを手のひらで撫でた。
「このテーブル不思議。白に黒いマーブル模様のなんて初めて見た」
 春樹が店員の持ってきたメニューを受け取って、パラパラとめくる。
「洗濯ばさみに挟まれているのがいいな。大らかなっていうか大雑把なっていうか。ピザ屋だから当然だけど、肩肘張らない感じが楽でいいよな」
 トマトとバジルとモツァレラを乗せたシンプルな森のマルゲリータ一つと、それぞれがジュースを注文して、みんなはざっくばらんに語り合う。それは途切れることなく続いて、新幹線の時間が迫るまで大いに盛り上がり、バジルの爽やかで優しい酸味を帯びた透き通った苦みが、黒磯の思い出を締めくくる。それでも話題は尽きる様子を見せず、新幹線の中でも続いたのだった。








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