FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
577 / 803
二年生の二学期

第百八十五話 務への手紙

しおりを挟む


 十月に入ってから少ししたある日、久しぶりに南と一緒に下校した奈緒は、彼女を誘って北千束駅の近くにあるカフェの席に座っていた。ファンクっぽい要素を含んだロックが流れる店内で、南が頭を抱えながら黙りこくっている。
 ソファに寄りかかった奈緒の目の前に座る彼女は、モモタの絵が描かれた茶虎色に縁どられた便箋に書かれた文字と悪戦苦闘している。
「どうかなぁ、これ」奈緒がしびれを切らして訊いた。
「ちょっとまって、まず日本語じゃないなにかが書かれているのだけは分かる。あと、便箋に線が引いてあるんだから、ちゃんとそれに沿って書きなよ」
「無理難題を押し付けないでください。どこか間違ってるところがあったら教えてください」
「逆ギレですか? 文章としては、ほぼほぼ正解していないよ。ひらがなでもカタカナでも漢字でもアルファベットでもないなにかを大量に含んでいるし」
「わちゃぁ、だめだぁ、もう。わたしどうしたらいいんだろう」奈緒は、おでこでテーブルをこつんと叩く。
 そんなこの子のつむじに向かって、南が言った。
「とりあえず、どちらも高木と土屋にあてた手紙だよね。これを正しく直したいってわけ?」
「そう。今日はお茶おごるから、やってくださいっ、おねがいございます」
 恭しく言う奈緒を、南は鼻で笑った。
「まず最初のつとむくんが“つともくん”になってるよ。しかも次の行に高ぎ春き様って書いてある。どっちに出したいの?」
「え? 分かんないけど――務君かな?」
「じゃあ、土屋務様にしなきゃ」
「つとむくんへと土屋務様って入れたら変かな?」
「うん、変だよ、どっちか消さなきゃ。ていうか、高木に出すほうは高木春樹様になってるから、どっちかに統一したほうがいいんじゃない?」
「様にする。て、い、ね、い、だ、か、ら、」












しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...