610 / 839
二年生の二学期
第百九十六話 誕生月は適当に
しおりを挟む
十一月に入って最初の土曜日。奈緒は、久しぶりにおしゃれをして家を出た。地域交流会のあとに行われた食事会の時と似た格好で、トップスは、赤いギンガムチェックのワイシャツに薄桃色のボアコートでマフラー無し。ボトムスは、パーティードレスとしても使えそうな紺色でストレートなフルレングスのパンツスタイル。
わざわざ家まで迎えに来てくれた南と共に、この子が中延駅までやって来ると、改札の外にあるお花屋さんのそばには、すでに務と春樹が待っていた。
二人の存在を確認した奈緒は歩速を上げて改札を出ると、花屋の店先の左端にいた務をちらりと見たあと、右端にいた春樹に視線を移して左右交互に手を振りながら、二人の間の床に並べられた色とりどりの花が咲くポットの手前向かって歩んでいく。
「お ま た せ。ちゃんと 来てくれてうれしい」
務と春樹は、お互いの距離や行動を計りながらといった様子で、おずおずと本日のヒロインに近づく。先に声をかけたのは、務だった。
「誕生日おめでとう。こんなにも遅くなってごめんね、本来ならこっちが計画して祝ってあげないといけなかったのに」
「ううん、計画立てるの楽しかった。ちょっと 予行練習や 吟味も したりして」
「なにそれ。わたし知らない」南がつっこむ。
「うん。南ちゃんも大事なゲストだから、内緒にした。フラッシュモブだよ」
「違うと思うけど、まあいいや。確かにこっち側の駅には来ないもんね。実際初めてかも」
左の脛を踵で掻くと、すぐさま姿勢を正す。
「あれ? よく見るとこのお花屋さん、建物じゃないんだね。高架の柱の間に大きな青い車入れて店舗にしてるんだ」
奈緒は頷きながら生返事をすると、両手を黒いマウンテンパーカーのポケットに突っ込んだ春樹のことをぼんやりと見た。そして何を思ったのが、南の肩をボアの袖でぺたりと叩く。
「なんで、ここ二人まで仲悪いの? こらって怒るよ?」
「別にそんなことないって」南がちらりと春樹を見た。
とっさに視線をはずした彼が、務が着る紺のチェスターコートの前建の間に映える真っ白なワイシャツのフロントボタンを見やる。
「そんなことより奈緒、なんで中延駅待ち合わせなの? てっきり、北千束のカフェで食事会かと思った。若しくは奈緒んちでイタリアンフルコース」
誰に言うわけでもなく、南が口を開く。
「キッチン貸してくれたら、いくらでも腕ふるうのに」
フードがしまってある都合上で膨れた襟を首筋で擦りながら、春樹が奈緒を見る。
「いつも思うんだけど、奈緒って手紙書くのうまいよな。絵はがきは変なのしか送ってこないくせに」
「失礼な。渾 身 の 絵手紙送ってるのに」
鼻全体に力を込めて皺くちゃにした奈緒の顔面中央が、吸血蝙蝠と化して、みんなが笑った。
わざわざ家まで迎えに来てくれた南と共に、この子が中延駅までやって来ると、改札の外にあるお花屋さんのそばには、すでに務と春樹が待っていた。
二人の存在を確認した奈緒は歩速を上げて改札を出ると、花屋の店先の左端にいた務をちらりと見たあと、右端にいた春樹に視線を移して左右交互に手を振りながら、二人の間の床に並べられた色とりどりの花が咲くポットの手前向かって歩んでいく。
「お ま た せ。ちゃんと 来てくれてうれしい」
務と春樹は、お互いの距離や行動を計りながらといった様子で、おずおずと本日のヒロインに近づく。先に声をかけたのは、務だった。
「誕生日おめでとう。こんなにも遅くなってごめんね、本来ならこっちが計画して祝ってあげないといけなかったのに」
「ううん、計画立てるの楽しかった。ちょっと 予行練習や 吟味も したりして」
「なにそれ。わたし知らない」南がつっこむ。
「うん。南ちゃんも大事なゲストだから、内緒にした。フラッシュモブだよ」
「違うと思うけど、まあいいや。確かにこっち側の駅には来ないもんね。実際初めてかも」
左の脛を踵で掻くと、すぐさま姿勢を正す。
「あれ? よく見るとこのお花屋さん、建物じゃないんだね。高架の柱の間に大きな青い車入れて店舗にしてるんだ」
奈緒は頷きながら生返事をすると、両手を黒いマウンテンパーカーのポケットに突っ込んだ春樹のことをぼんやりと見た。そして何を思ったのが、南の肩をボアの袖でぺたりと叩く。
「なんで、ここ二人まで仲悪いの? こらって怒るよ?」
「別にそんなことないって」南がちらりと春樹を見た。
とっさに視線をはずした彼が、務が着る紺のチェスターコートの前建の間に映える真っ白なワイシャツのフロントボタンを見やる。
「そんなことより奈緒、なんで中延駅待ち合わせなの? てっきり、北千束のカフェで食事会かと思った。若しくは奈緒んちでイタリアンフルコース」
誰に言うわけでもなく、南が口を開く。
「キッチン貸してくれたら、いくらでも腕ふるうのに」
フードがしまってある都合上で膨れた襟を首筋で擦りながら、春樹が奈緒を見る。
「いつも思うんだけど、奈緒って手紙書くのうまいよな。絵はがきは変なのしか送ってこないくせに」
「失礼な。渾 身 の 絵手紙送ってるのに」
鼻全体に力を込めて皺くちゃにした奈緒の顔面中央が、吸血蝙蝠と化して、みんなが笑った。
0
あなたにおすすめの小説
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる