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武蔵小山 ~目を見張る分厚さにびっくり~
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目黒不動尊のそばを走るかむろ坂から外れて少し行ったところで黒いA型看板を見つけ、壁に張り出された写真を見た。すごい分厚いサンドウィッチに思わず目を見張る。
分厚いBLTサンドの絵を掲げた店はよく見るが、実際出てくるものは、コンビニのそれに毛が生えた程度でがっくりくることが多い。だが、ガラス越しに見えるショーケースに飾られたサンドウィッチの現物は、明らかに超弩級な分厚さ。店先には、A型看板の他、立て掛け看板と長いベンチ。二つの樽に植えられた観葉植物。ナチュラルな店構えに好感を覚えた。
用事の時間まではまだだいぶあったので、ここでお昼を食べていくことにして入る。前面全てがガラス張りで道路にも面していて、店内は大変明るい。
十三時を回っていたせいか、店の中に客はおらず、キッチンでお昼ごはんを食べる女の子二人の姿が、真っ先に目に飛び込んできた。
白い壁に飾られているのは、円状のフラワーリースと木板一枚のハンガー掛け二つのみ。天井には、鈴蘭のように可愛いガラスのランプシェードをかぶった電球が並んでいた。他に×を組み合わせたような箱形の黒く太い針金をかぶったものもある。
床はコンクリート敷きで、角にはサボテンが置かれていた。右をみると、窓の無い壁際に足の短いテーブルと二人掛けの茶色いソファ、左を見ると、二人掛けの四角いテーブルが四つある。
迷わず明るい左側の席に行って、窓に向かって座った。
その席には、取っ手のついた小さなアルミの缶に植えられた肉厚の植物が飾られていて、木製チェアは黒い革張りだ。よく見ると、五つあるテーブルのうち一つだけ、背もたれの無い黄土色のチェア。スペースの問題なのだろうが、窓に向かった一人がけの特等席ができていた。無理に席をつめずに広い導線を確保しているので、ゆったりと過ごすことができる。
単品でもそこそこの値段だったから、セットで頼んでも結構高い。それでもこれだけの具だくさんサンド出てくるのならばと思うと、値段相応どころかお得かもしれない。
2000年代のJホップが流れている。激しいビートのものは流れず、とても心が穏やかになる。
最初に出てきたのは、縁の広い白いマグに淹れられた泡立つコーヒー。ソーサーもシンプルなものと思いきや、中央が膨らんだちょっと円盤型UFOのような形で、マグを持ち上げる度に目を楽しませてくれる。
ブラックでもとてもまろやかでクリーミーな口当たりで、とろりと舌を撫でる。焙煎したコーヒー独特の苦味も柔らかで、いわゆる炭のような焦げた味ではない。酸味は仄かに感じるくらいなのでとても飲みやすく、軽いテイスト。後味には少しフルーティーな余韻が含まれていて、面白い飲み心地が味わえる。冷ましたほうが味が爽やかになるが、僕としては温かいうちのほうが好きだ。
シュガーのような香りがカップの中に滞留していて、あまり堅苦しいコーヒー感は無いが、こういう香りも良いと思う。
しばらくして出てきた四角い木のトレイの上には、人差し指の長さを越える分厚さのサンドが二つと、小ぶりのマグに注がれたコーンスープ、ココットにミニトマトとモッツァレラのサラダが盛り合わさっている。八枚切りの食パン二枚分とはいえ具だくさんなサンドが二つもあるから、そのボリュームに圧倒される。
最初に手にしたのは、ハーブチキンサンド。
全粉らしき茶色みがかったパンに挟まれたのは、上からレタス、トマト、ニンジン、ほぐしたチキンにチーズ。真ん中あたりに、みじん切りの玉ねぎらしきものが詰まっている。男の僕にも大きすぎて、一生懸命口を開けても収まらない。
ちょっと酸っぱい味付けが中心の玉ねぎになされているが、全体には施されておらず、シンプルで野菜それぞれの美味しさが味わえる。
もう一つは、BLTEAサンド。これには、レタス、トマト、ゆで卵、アスパラ、ニンジン、ベーコンが挟んであった。ベーコンの旨みとサラダの味が相まって少しカレーのような風味を思わせる。そして、甘酢を合えたニンジンの味が全体を調和させていた。
ベーコンには主張する様子がなく、逆に淑やかながらもアスパラガスの存在感がすごい。一番下にはマスタードが極薄に塗られていて、微かに風味を醸す。
コーンスープは、つぶつぶが残った濃厚な味で、これだけでもじゅうぶんな飲みごたえがあった。
サンドウィッチ、コーンスープ、サラダ、どれも無駄な味付けがなく自然な風味だが、物足りなさは微塵も感じさせない。
気がつくと、70年代後半か80年台前半の楽曲も流れていた。カットインとかロングミックスとかで特別繋げたわけでもないのに、絶妙なピッチの曲なのか、雰囲気が調和しているのか、あるはずの曲の切れ目を感じさせない。とてもいい選曲で、時代の隔たりを気がつかせないからだと思う。たぶん、日本人の心に自然と染み込むメロディなのだろう。
貧弱なサンドウィッチを提供する店が多い中で、久々に美味しいサンドウィッチを提供するお店に出会えて、よい日になった。
分厚いBLTサンドの絵を掲げた店はよく見るが、実際出てくるものは、コンビニのそれに毛が生えた程度でがっくりくることが多い。だが、ガラス越しに見えるショーケースに飾られたサンドウィッチの現物は、明らかに超弩級な分厚さ。店先には、A型看板の他、立て掛け看板と長いベンチ。二つの樽に植えられた観葉植物。ナチュラルな店構えに好感を覚えた。
用事の時間まではまだだいぶあったので、ここでお昼を食べていくことにして入る。前面全てがガラス張りで道路にも面していて、店内は大変明るい。
十三時を回っていたせいか、店の中に客はおらず、キッチンでお昼ごはんを食べる女の子二人の姿が、真っ先に目に飛び込んできた。
白い壁に飾られているのは、円状のフラワーリースと木板一枚のハンガー掛け二つのみ。天井には、鈴蘭のように可愛いガラスのランプシェードをかぶった電球が並んでいた。他に×を組み合わせたような箱形の黒く太い針金をかぶったものもある。
床はコンクリート敷きで、角にはサボテンが置かれていた。右をみると、窓の無い壁際に足の短いテーブルと二人掛けの茶色いソファ、左を見ると、二人掛けの四角いテーブルが四つある。
迷わず明るい左側の席に行って、窓に向かって座った。
その席には、取っ手のついた小さなアルミの缶に植えられた肉厚の植物が飾られていて、木製チェアは黒い革張りだ。よく見ると、五つあるテーブルのうち一つだけ、背もたれの無い黄土色のチェア。スペースの問題なのだろうが、窓に向かった一人がけの特等席ができていた。無理に席をつめずに広い導線を確保しているので、ゆったりと過ごすことができる。
単品でもそこそこの値段だったから、セットで頼んでも結構高い。それでもこれだけの具だくさんサンド出てくるのならばと思うと、値段相応どころかお得かもしれない。
2000年代のJホップが流れている。激しいビートのものは流れず、とても心が穏やかになる。
最初に出てきたのは、縁の広い白いマグに淹れられた泡立つコーヒー。ソーサーもシンプルなものと思いきや、中央が膨らんだちょっと円盤型UFOのような形で、マグを持ち上げる度に目を楽しませてくれる。
ブラックでもとてもまろやかでクリーミーな口当たりで、とろりと舌を撫でる。焙煎したコーヒー独特の苦味も柔らかで、いわゆる炭のような焦げた味ではない。酸味は仄かに感じるくらいなのでとても飲みやすく、軽いテイスト。後味には少しフルーティーな余韻が含まれていて、面白い飲み心地が味わえる。冷ましたほうが味が爽やかになるが、僕としては温かいうちのほうが好きだ。
シュガーのような香りがカップの中に滞留していて、あまり堅苦しいコーヒー感は無いが、こういう香りも良いと思う。
しばらくして出てきた四角い木のトレイの上には、人差し指の長さを越える分厚さのサンドが二つと、小ぶりのマグに注がれたコーンスープ、ココットにミニトマトとモッツァレラのサラダが盛り合わさっている。八枚切りの食パン二枚分とはいえ具だくさんなサンドが二つもあるから、そのボリュームに圧倒される。
最初に手にしたのは、ハーブチキンサンド。
全粉らしき茶色みがかったパンに挟まれたのは、上からレタス、トマト、ニンジン、ほぐしたチキンにチーズ。真ん中あたりに、みじん切りの玉ねぎらしきものが詰まっている。男の僕にも大きすぎて、一生懸命口を開けても収まらない。
ちょっと酸っぱい味付けが中心の玉ねぎになされているが、全体には施されておらず、シンプルで野菜それぞれの美味しさが味わえる。
もう一つは、BLTEAサンド。これには、レタス、トマト、ゆで卵、アスパラ、ニンジン、ベーコンが挟んであった。ベーコンの旨みとサラダの味が相まって少しカレーのような風味を思わせる。そして、甘酢を合えたニンジンの味が全体を調和させていた。
ベーコンには主張する様子がなく、逆に淑やかながらもアスパラガスの存在感がすごい。一番下にはマスタードが極薄に塗られていて、微かに風味を醸す。
コーンスープは、つぶつぶが残った濃厚な味で、これだけでもじゅうぶんな飲みごたえがあった。
サンドウィッチ、コーンスープ、サラダ、どれも無駄な味付けがなく自然な風味だが、物足りなさは微塵も感じさせない。
気がつくと、70年代後半か80年台前半の楽曲も流れていた。カットインとかロングミックスとかで特別繋げたわけでもないのに、絶妙なピッチの曲なのか、雰囲気が調和しているのか、あるはずの曲の切れ目を感じさせない。とてもいい選曲で、時代の隔たりを気がつかせないからだと思う。たぶん、日本人の心に自然と染み込むメロディなのだろう。
貧弱なサンドウィッチを提供する店が多い中で、久々に美味しいサンドウィッチを提供するお店に出会えて、よい日になった。
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