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田舎で静養させる息子
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今となっては、ああしてやれば良かった、こうしてやれば良かった、と流れる涙の中に揺れる息子の笑顔を見る事しか出来ない。
だが、これは神のおぼしめしなのだろうか。私はキリスト教徒ではなかったが、熱心なキリスト教徒である妻と彼女の両親は、どのように考えるのだろう。
私は、日本で妻に言われたことをふと思い出した。
「神様は、乗り越えられない試練を人に与えないのよ。
どんなにドイツ語を勉強しても出来ないなんて嘆かないで。
今は、まだ出来るようになる時ではないんだわ」
「私は、キリスト教ではないんだが、それでも神様は私を見ていてくれるのかな?」
「もちろんよ、神様は万能だもの。私達は違うから、色々な宗教を信仰しているけど、神様に宗教の違いなんてないわ。
清く正しい人を分け隔てなく救ってくださるのよ」
妻と出会った頃、私はよく彼女に励まされていた。今では、日本語なまりがあるものの、ある程度の会話は出来るようになった。日本にいる時から大分長い事ドイツ語を学んできたが、簡単なドイツ語で会話するまで20年位はかかっただろう。
彼女は常に自らの運命を肯定的に受け止める性格をしていた。第一次欧州大戦後の経済不況は続いていたが、義父の会社は世界恐慌直前までの荒波を乗り越え、ある程度の財産を蓄えていた。
親戚から日本で捕虜生活をした経験を聞いていた義父は、日本がどの様な国か興味を持ち、家族旅行を計画した。
そこで私達が出会った事をメラは運命だと信じ続けて、その思いを成就すべく2度目の日本行きを決意し、単身世界の裏側にある日本に来たのだ。
自らの進む道を信じる力は絶大で、瞬く間に日本語を覚えた彼女は片ことながら英語も出来たものだから、父の会社では通訳として重宝された。
我が社において評判の看板娘になった妻は、どこに行っても人気者だ。前向きな性格は、周りをも巻き込んで明るくさせるのだ、と隣で見ていてつくづく思い知らされた。
彼女の言っている事が本当なのであれば、一人息子を失うというこの様な悲劇の中にも、何か意味が込められているはずなのだ。確かにそうだと確信できる。いや、確信はしていない。確信できない理由が無いと言う方が正しい。
もし、本当に神様がいて、我が子を天にお召しになられたのであれば、私には何か天命が下っているはずだ。そしてまた、妻もその様に感じているように思える。妻は何も言わなかったが、私達は2人して庭に立って同じことを考えている、となぜか確信できた。
だが、これは神のおぼしめしなのだろうか。私はキリスト教徒ではなかったが、熱心なキリスト教徒である妻と彼女の両親は、どのように考えるのだろう。
私は、日本で妻に言われたことをふと思い出した。
「神様は、乗り越えられない試練を人に与えないのよ。
どんなにドイツ語を勉強しても出来ないなんて嘆かないで。
今は、まだ出来るようになる時ではないんだわ」
「私は、キリスト教ではないんだが、それでも神様は私を見ていてくれるのかな?」
「もちろんよ、神様は万能だもの。私達は違うから、色々な宗教を信仰しているけど、神様に宗教の違いなんてないわ。
清く正しい人を分け隔てなく救ってくださるのよ」
妻と出会った頃、私はよく彼女に励まされていた。今では、日本語なまりがあるものの、ある程度の会話は出来るようになった。日本にいる時から大分長い事ドイツ語を学んできたが、簡単なドイツ語で会話するまで20年位はかかっただろう。
彼女は常に自らの運命を肯定的に受け止める性格をしていた。第一次欧州大戦後の経済不況は続いていたが、義父の会社は世界恐慌直前までの荒波を乗り越え、ある程度の財産を蓄えていた。
親戚から日本で捕虜生活をした経験を聞いていた義父は、日本がどの様な国か興味を持ち、家族旅行を計画した。
そこで私達が出会った事をメラは運命だと信じ続けて、その思いを成就すべく2度目の日本行きを決意し、単身世界の裏側にある日本に来たのだ。
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彼女の言っている事が本当なのであれば、一人息子を失うというこの様な悲劇の中にも、何か意味が込められているはずなのだ。確かにそうだと確信できる。いや、確信はしていない。確信できない理由が無いと言う方が正しい。
もし、本当に神様がいて、我が子を天にお召しになられたのであれば、私には何か天命が下っているはずだ。そしてまた、妻もその様に感じているように思える。妻は何も言わなかったが、私達は2人して庭に立って同じことを考えている、となぜか確信できた。
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