Kaddish

緒方宗谷

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日本の歴史

12ー1

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 仕事が終わってみんなが帰って更に2人の食事が終わると、日本の昔話や武将の話を聞かせてやった。
 馴染みのない日本の武将には興味を持つ様子は無かったが、桃太郎や舌切り雀の話は面白がって聞いてくれた。
 私がしてあげる話の中で、ハルトは辛い仕打ちを受けていた主人公がそれを耐え忍んだ後に幸せになる話を好んだ。
 ハルトの民族の数は少なくない。にもかかわらず、数千年前に国を失った彼らは、今日に至るまで世界中にバラバラになって生活してきた。どの時代においても迫害の対象になってきた彼らに、今のハルトと同様、気の休まる時は無かったかもしれない。
 ナチス政権下のドイツ同様、政治や経済が不安定になって国民の間に良くない感情が鬱積すると、多くの場合、その感情を吐露するための矛先は彼らに向かった。
 欧州において、お金は汚らわしいもの、と考えられる歴史があり、それを扱う仕事は忌み嫌われていた。そのため、差別されていた彼らは、おのずとそういう仕事に就く事が多くなる。金融に携わった彼らの中には、結果として差別する側よりも裕福な生活を送る者もいた。それへの妬みを常日頃から抱えていた者は、暴動が起こるような時勢になると、ここぞとばかりに彼らを襲ったのだ。
 私の生きる今の時代においても、彼らには大富豪のイメージがある。知人の何人かは銀行家であったし、アメリカを横断した際にホテルで話しかけてきた1人は、雲の上に住んでいるかの様な生活をしている人に見えた。
 日本においても、お金の貸し借りはあまり良いイメージは無いが、欧州においても同じで、時代においては利子を取る事を禁じていた時もあるほどだ。
 そういう制度が改革されることによって、一気に金融が発達していくのだが、それ以前から為替や複利に気が付いていた人達も多くいて、財を成していた。
 ハルトの様にどの時代も常に不安を抱えていたからこそ、それを解消するために財を成す者、蔑まれる仕事ではあるが、それにしか就くことが出来ずに裕福になる者、中には、お金は神の財産で、それを預かっているだけなのだから、無駄に使わずにきちっと貯めて運用し、増やしていこう、と考える者が豊かになっていった。
 私は、ふと日本人に似ているのではないか、と思った。高温多湿で災害の多い日本は、度々疫病や大地震や津波に襲われている。常に備えなければならないから、一生懸命に働き蓄えを作る。
 お金は神のものという発想は無いが、三河商人の様に三方よしと言う金融哲学がある。生産者、販売者、消費者の誰もが損をすることなく、みんなが幸せになる、という発想だ。この考えによると、自分だけが儲かるわけではないのだから、お金は自分のものという気持ちは薄くなる。
 それに、石油が出ない我が国は、今後の世界において、知識を高めたり、より良い商品を生産して外貨を獲得しなければ、やっていけないだろう。無理しなければ植民地になってしまう、という危機感もあった。




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