Kaddish

緒方宗谷

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日本の歴史

12ー2

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 幾つか話している日本の歴史の中で、ハルトは、あるエピソードで気に入ったものがあった。信長、秀吉、家康についての話で、3人がホトトギスの歌を詠った時の事だ。
 「どうして大人達は、僕達を殺す事が出来るのですか? 僕達は何も悪い事はしていないのに。
  僕は8年しか生きていないんです。何がいけなくて、僕は殺されるんですか? 僕は生きたいんです。
  お父さん、どうか僕を見捨てないでください。お父さんに見捨てられたら、もう僕は生きていけません。どうしたら良いか分からないんです」
 最初に信長の話をした時、ハルトは、こう言って泣き出した。ホトトギスという小鳥はいと小さき存在で、信長によってカゴの中に閉じ込められ生殺与奪権を握られている。民族絶滅計画の渦中にいる自分と重ねて、過敏に反応した。
 「信長の時代は、長く続かなかったんだよ。
  彼は、自らを魔王と名乗ってしまうほど恐ろしい事を繰り返していたから、段々とついていける家臣もいなくなってしまったんだ。
  幼い時は、農民にも慕われるような子供だったらしいけど、裏切りにあったせいか、それとも政治の世界が伏魔殿だったのか、耐えられなくなってしまったんだろうね」
 鳴かないホトトギスを殺してしまっただけで話が終わったのなら、ハルトは傷ついたままだっただろう。しかしこれには続きがあって、天下を引き継いだ秀吉はホトトギスを殺さずになんとか鳴かせようとし、幕府を開いた家康は、ホトトギスが鳴くまで気を長くして待ち続けた。
 「耐え忍ぶことが出来る心は、最大の財産だよ。
  晩年の秀吉は遊興にふけって沢山お酒を飲んでいたけど、家康はそうしなかった。
  健康食を日夜研究し医学にも精通していたから、何百年も昔の人なのに今の我々よりも長生きだったんだ。
  彼の人生がもう数年短かったら、260年の太平の世は築けなかっただろうね」 
 ハルトの心の支えの1つは私であっただろうが、物語の中で苦労して幸せになる主人公達の存在が大きかった。
 特に、自らに非が無くつらい境遇に追いやられていたシンデレラのような存在は、この子に希望を与えた。  
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