猫のモモタ

緒方宗谷

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たかをくくったメインクーン

目立つのも、目立たれるのも耐えられない

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 モモタは、久しぶりにメインクーンのアルフと会いました。
 それを見た野良猫たちが、こそこそと話し始めます。
 それが聞こえてきて、モモタは嫌な気持ちで俯きました。
 その姿を見たアルフが言いました。
 「君は、相変わらず僕の悪口を言わないね。
  仲間外れになるから、僕と付き合わない方がいいよ」
 「ううん。僕、彼らとは付き合いたくないんだ。
  だって彼らはいつも誰かの悪口を言っているんだもの。
  僕は思っていなくても、僕の心にモヤモヤが広がって、いつかそう言うことを考えてしまいそうで怖いんだ」
 アルフは黙って聞いていたので、モモタが続けます。
 「彼らは、どうして君を悪く言うのかな?
  だって君は箱入り猫だから、ほとんどお外にいないじゃない。
  全然一緒にあそばないんだから、言葉でいじめなくてもいいんじゃないかな?
  いじめるって言っても、彼らの気持ちの中だけなんだし。
  それよりも、君に憧れをいだいて、いつかああなりたいって想像する方が楽しいじゃない。
  僕たちは君みたいな立派な体格にはなれないけど、同じ大きさの猫の中では、一回りも二回りも大きくなれるよ」
 「そうだね。君の言う通りだよ。
  そして、彼らみんなにとっても、それは望んでいることなんだろうけどね。
  望んではいるけれど、自分だけがそうなるのなら、それは嫌なんだろうね」
 アルフがなぞなぞめいたことを言ったので、モモタは首をかしげて訊きました。
 「どうして?みんなより強くなれば、ごはんの取りっこでも勝てるし、ネズミもたくさん捕まえられるよ。
  温かいボンネットの上だって、予約席にできるよ」
 「だからさ。そんなことをしたら、みんなが羨ましく思って嫉妬の心を抱いてしまうよ。
  そうなったらその猫は、今の僕と同じになってしまう。
  それに、頑張って一回り大きくなろうとすれば、そうなろうとしない猫たちに悪口を言われて、そうしないようにさせられてしまうからね」
 「そうなろうとしない猫なら、放っておくんじゃないの?」
 「置かないさ。そうなろうとしないだけで、そうはなりたいんだ。
  そうなる勇気が挫かれてしまっている。
  悪口を言われるかもっていう自分の考えにね」
 「じゃあ、みんなで頑張ればいいのに。
  そうしたら、自分だけじゃないよね」
 「初めに音頭をとる猫は自分だけだろ?
  それに、みんなで一斉に頑張り始めても優劣はつくよ。
  最終的にみんなより一回り大きいのは、1匹だけさ」
 「みんなでがんばりんこ出ないのかな。
  そうできたら素敵なのに」
 「彼らみたいに出来ない者は多いだろうね。
  どうしてかと言うと、みんなと違うからさ。
  だって1匹ぽっちになっちゃうから」
 同じであることが、大事な要素なのでしょうか。
 他の猫なんて関係ないのにね。自分がどうあるかが大事なのにね。と思うモモタでした。





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