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第十七話 魅惑の教祖様
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教会の外に出たローゼ、強烈な動揺っぷり。
「わわわわわっ! なんじゃ! その格好⁉」愕然としながらも開口一番そう言い放った。
青い空、緑の大地、鳥がさえずり、蝶が舞う湖の畔には似つかわしくない格好をした女が、ここの環境には不適切な格好をした男たちを従えて、自分の前に立ちふさがっている。
「変態だー」と叫ぶローゼ。
青みがかった黒い髪色をした女の格好をどう形容すればいいのだろうか。顔には鷲が翼を広げたような黒くて大きなアイマスク。ケバケバしい細かいフリルがついたストラップのない黒いブラジャーをつけ、それとお揃いのパンティを穿いている。ガーターで吊るされた網タイツに包まれた白皙の足には、高いヒールの真っ赤な靴を履いていた。
従えた二、三十人の男たちは信者だろうか。皆同じ格好をしている。しかし、その格好には、宗教らしさは微塵もない。白いブリーフ姿の男たちはみんな、幅の広い黒革ひもで目を覆われていた。穴の開いた中空のボールギャグを銜えさせられていて、ダラダラと涎を垂らしている。ギャグの後頭部側から垂れ下がった革バンドによって後ろ手に縛られている上、両足も足首を拘束されていた。
ワナワナと震えるローゼを見やって、嗜虐的な舌なめずりをした女は、獲物を狙うキツネが喋るようにローゼに言った。
「あらあら、入信希望かしら」
「誰が入信するか! このドあほう‼ こんなところでいったい何しとるんじゃ⁉」
「違うの? 残念だわ。手前の赤毛の方は見込みありそうだけれど」
「変なこと言わないでちょうだい! わたしはノーマルよ!」
この女は明らかに変態だ、とローゼは思った。その変態に同類扱いされたのだ。はたちの女子として、何たる屈辱。こんな所には長居できない。
「行きましょうアンドリュー、こんなところに長居していたら、頭がおかしくなっちゃうわ」
「え? ローゼリッタさんは残るんじゃ……」
バコッガスっドスッ
「ああ、快感!!」
「お前も変態か‼」
予想外の展開だ。鼻血を垂らしながらすがりつくアンドリューを蹴り剥がして、ローゼたちが林の方へと歩み始めると、女は右手に輪っか状に束ねて持っていたイバラのムチをローゼの前に打ち鳴らして、ニヤリと笑う。
「アンドリューを脱会させようなんていい度胸ね」
振り返ったローゼが、睥睨しながらも笑みを浮かべた。
「まさか、わたしと闘う気? おばさんパーマのくせして、そっちこそいい度胸ね」
マスクをつけていても見てわかるくらい憤っている様子だ。良く言えば、イケイケおねーさんのようなパーマ。悪く言えば、一昔前の場末の中年ママのようなパーマだったから、おばさんパーマと呼ぶのがふさわしい、と思いついたローゼは、したり顔だ。
女が答える。
「ちょっと若いからって、調子くれてんじゃないわよ。美貌の暗殺者エルザ様の恐ろしさ、教えてあげるしかないみたいね」
女教祖の名乗った名前を聞いて、ローゼたちはビックリした。エルザって言った。エルザと言えば、2人が探していたブラウン家の一人娘エルザかもしれない。イバラのムチを持っているところも、途中の村で聞いたあだ名“ムチ遣いのエルザ”に符合する。
ローゼはほくそ笑む。抜いたレイピアのツタ柄のナックルガードに指を引っ掛けて、くるくる回しながら言った。
「へえ、もしかして、悪魔牙団の方かしら? もしそうなら、わたし、あなたに用があって探していたのよ。ちょちょいとわたしにやられた後、顔かしてくれるかしら?」
囲まれているけれど、負ける気しない。
その言葉に、エルザが鼻で笑う。
「ふん、その減らず口、いたぶりがいがあるわ。もし入信するなら女王様に育ててあげようと思ったけれど、良いわ、女奴隷に育ててあげるわ」
エルザはそう言いながら宙で音が出るほど激しくムチを撓らせて「行きなさい‼」と叫ぶと同時に、勢いよく振り下ろして地面を叩いた。
「ふごふご~‼」
何を言っているのか分からない雄叫び(?)をあげて、拘束された男たちが、ぴょんぴょんと飛び跳ねて向かってくる。二人は咄嗟に構えたが、なんかこう…やり場のない闘争心がナヨナヨと地面に落ちる。
ローゼは愕然としながら、エルザに訊いた。
「あの……戦うんですけど、……これから。――この人たちこのままですか?」
「当り前じゃない、わたしたちを一体何だと思っているの?」
そう言ったエルザは、旭日のような赤と白の背景が似合いそうなポーズ(風呂上りのおじさんが両手を腰にすえたような)で、どーん‼ という効果音を立てながら言い放つ。
「こいつらは変態なのよ! ドMなこいつらに、これ以外のどんな格好をさせればいいって言うのよ⁉」
ローゼたちは絶句だ。戦うのを躊躇して顔を見合わせる。真昼間っから何やってんだ?
「もちろん、解脱の修業に決まっているでしょう?」答えるエルザ。
何の解脱だよ。
バカにしていられるのも今の内だ、と言った風にエルザが笑う。
「ほーほっほっほっほっ、わたしの可愛いセシュターズの恐ろしさが分からないようね」
「分かりたくないわ! ボケッ‼」
ローゼはそうセリフを吐いたが、セシュターズの動きは思った以上に早い。慢心は出来ない、と悟ったローゼはレイピアを構えて、襲ってくるセシュターズに応戦する。
刺された男が、痛い! と言った風に「ふごい」と嘆く。男たちは次々に突かれて、その場に倒れ込んだ。「はあはあ」言いながら、起き上がった男たちは頬を赤らめて、のそりのそり、と迫ってくる。
一瞬たじろぐローゼは、胸からダイブしてくる男たちを避けながら、「あんたらそんなに死にたいの?」と叫んで、レイピアではたき落す。だがどうだ。圧倒的な優位に立っていたはずのローゼは防戦一方だ。
骨と皮しかないようなやつと小太りなやつしかいないのに、なかなか手こずる。ローゼは、毎日プレイで責められ続けてきたから防御力が高いのだろう、と思ったが、剣士として参考にしようとは思わなかった。
「わわわわわっ! なんじゃ! その格好⁉」愕然としながらも開口一番そう言い放った。
青い空、緑の大地、鳥がさえずり、蝶が舞う湖の畔には似つかわしくない格好をした女が、ここの環境には不適切な格好をした男たちを従えて、自分の前に立ちふさがっている。
「変態だー」と叫ぶローゼ。
青みがかった黒い髪色をした女の格好をどう形容すればいいのだろうか。顔には鷲が翼を広げたような黒くて大きなアイマスク。ケバケバしい細かいフリルがついたストラップのない黒いブラジャーをつけ、それとお揃いのパンティを穿いている。ガーターで吊るされた網タイツに包まれた白皙の足には、高いヒールの真っ赤な靴を履いていた。
従えた二、三十人の男たちは信者だろうか。皆同じ格好をしている。しかし、その格好には、宗教らしさは微塵もない。白いブリーフ姿の男たちはみんな、幅の広い黒革ひもで目を覆われていた。穴の開いた中空のボールギャグを銜えさせられていて、ダラダラと涎を垂らしている。ギャグの後頭部側から垂れ下がった革バンドによって後ろ手に縛られている上、両足も足首を拘束されていた。
ワナワナと震えるローゼを見やって、嗜虐的な舌なめずりをした女は、獲物を狙うキツネが喋るようにローゼに言った。
「あらあら、入信希望かしら」
「誰が入信するか! このドあほう‼ こんなところでいったい何しとるんじゃ⁉」
「違うの? 残念だわ。手前の赤毛の方は見込みありそうだけれど」
「変なこと言わないでちょうだい! わたしはノーマルよ!」
この女は明らかに変態だ、とローゼは思った。その変態に同類扱いされたのだ。はたちの女子として、何たる屈辱。こんな所には長居できない。
「行きましょうアンドリュー、こんなところに長居していたら、頭がおかしくなっちゃうわ」
「え? ローゼリッタさんは残るんじゃ……」
バコッガスっドスッ
「ああ、快感!!」
「お前も変態か‼」
予想外の展開だ。鼻血を垂らしながらすがりつくアンドリューを蹴り剥がして、ローゼたちが林の方へと歩み始めると、女は右手に輪っか状に束ねて持っていたイバラのムチをローゼの前に打ち鳴らして、ニヤリと笑う。
「アンドリューを脱会させようなんていい度胸ね」
振り返ったローゼが、睥睨しながらも笑みを浮かべた。
「まさか、わたしと闘う気? おばさんパーマのくせして、そっちこそいい度胸ね」
マスクをつけていても見てわかるくらい憤っている様子だ。良く言えば、イケイケおねーさんのようなパーマ。悪く言えば、一昔前の場末の中年ママのようなパーマだったから、おばさんパーマと呼ぶのがふさわしい、と思いついたローゼは、したり顔だ。
女が答える。
「ちょっと若いからって、調子くれてんじゃないわよ。美貌の暗殺者エルザ様の恐ろしさ、教えてあげるしかないみたいね」
女教祖の名乗った名前を聞いて、ローゼたちはビックリした。エルザって言った。エルザと言えば、2人が探していたブラウン家の一人娘エルザかもしれない。イバラのムチを持っているところも、途中の村で聞いたあだ名“ムチ遣いのエルザ”に符合する。
ローゼはほくそ笑む。抜いたレイピアのツタ柄のナックルガードに指を引っ掛けて、くるくる回しながら言った。
「へえ、もしかして、悪魔牙団の方かしら? もしそうなら、わたし、あなたに用があって探していたのよ。ちょちょいとわたしにやられた後、顔かしてくれるかしら?」
囲まれているけれど、負ける気しない。
その言葉に、エルザが鼻で笑う。
「ふん、その減らず口、いたぶりがいがあるわ。もし入信するなら女王様に育ててあげようと思ったけれど、良いわ、女奴隷に育ててあげるわ」
エルザはそう言いながら宙で音が出るほど激しくムチを撓らせて「行きなさい‼」と叫ぶと同時に、勢いよく振り下ろして地面を叩いた。
「ふごふご~‼」
何を言っているのか分からない雄叫び(?)をあげて、拘束された男たちが、ぴょんぴょんと飛び跳ねて向かってくる。二人は咄嗟に構えたが、なんかこう…やり場のない闘争心がナヨナヨと地面に落ちる。
ローゼは愕然としながら、エルザに訊いた。
「あの……戦うんですけど、……これから。――この人たちこのままですか?」
「当り前じゃない、わたしたちを一体何だと思っているの?」
そう言ったエルザは、旭日のような赤と白の背景が似合いそうなポーズ(風呂上りのおじさんが両手を腰にすえたような)で、どーん‼ という効果音を立てながら言い放つ。
「こいつらは変態なのよ! ドMなこいつらに、これ以外のどんな格好をさせればいいって言うのよ⁉」
ローゼたちは絶句だ。戦うのを躊躇して顔を見合わせる。真昼間っから何やってんだ?
「もちろん、解脱の修業に決まっているでしょう?」答えるエルザ。
何の解脱だよ。
バカにしていられるのも今の内だ、と言った風にエルザが笑う。
「ほーほっほっほっほっ、わたしの可愛いセシュターズの恐ろしさが分からないようね」
「分かりたくないわ! ボケッ‼」
ローゼはそうセリフを吐いたが、セシュターズの動きは思った以上に早い。慢心は出来ない、と悟ったローゼはレイピアを構えて、襲ってくるセシュターズに応戦する。
刺された男が、痛い! と言った風に「ふごい」と嘆く。男たちは次々に突かれて、その場に倒れ込んだ。「はあはあ」言いながら、起き上がった男たちは頬を赤らめて、のそりのそり、と迫ってくる。
一瞬たじろぐローゼは、胸からダイブしてくる男たちを避けながら、「あんたらそんなに死にたいの?」と叫んで、レイピアではたき落す。だがどうだ。圧倒的な優位に立っていたはずのローゼは防戦一方だ。
骨と皮しかないようなやつと小太りなやつしかいないのに、なかなか手こずる。ローゼは、毎日プレイで責められ続けてきたから防御力が高いのだろう、と思ったが、剣士として参考にしようとは思わなかった。
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