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第十八話 エミリアの実力
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青い空の下、キラキラと輝く水面の横で、ローゼたちの攻防が続いていた。
エミリアに殴り倒されるセシュターズを見て、エルザが身をよじる。
「すっごい興奮っっっ」
殴られる瞬間がたまらない。我慢しきれずブンブン振るうムチは、その威力をどんどん増していく。もはや威力は最初の十倍だ。
終いにエルザも手を出してきた。
「情けないわね! あなたたち、いつまで伸びているのよ。早く責められに攻めなさいよ。」とやられた信者にムチを打つ。「お許しください、エルザ様」と言いたげに、「ふごふごふごご、ふごごふご」と嘆く信者は嬉しそうだ。
正拳突きやら後ろ蹴りやらで敵を倒していくエミリアは、ローゼの不甲斐なさが信じられない様子で言った。
「ローゼさん、何してるんですか? わたし一人に任せていないで、戦ってくださいよぉ~」
「ごめん、戦いたいのは山山なんだけど、何をどうしたら……」
「そんなの、持っているレイピアで……レイピアで……、あっ‼」
エミリアも気がついたようだ。目隠しをされて両手両足を縛られたやつらなんかを刺し殺したら、虐殺以外の何ものでもない。いくら攻撃してくると言っても、一方的に殺すなんて行為を殺戮と呼ばずして何と呼ぶのだ。
エミリアの頭上に閃きのランプが点灯した。
「そうだ、ローゼさん、革ベルト! 革ベルトを切って自由にすれば、むこうだって攻撃してこられますよ。それなら対等だから、斬っても戦いの精神に悖ることはないんじゃないですか?」
「そうか、エミリアあったま良ーい!」
ブリーフのみのほぼ全裸で、目隠しも手足のベルトも肌に密着していたが、ローゼには切り落とす自信があった。目にも止まらない早業で、全ての拘束具を切り落とす。
急に日差しが目に差し込んで眩しそうに眼を庇った男は、「やったぁ、解放されたー」と叫んだ。ローゼが無理やり拘束されていたのだと思った瞬間、解放された男は、舌をレロレロさせながらローゼに飛びかかってきた。
「ありがとう、ローゼリッタさん。お礼にその剣で僕をいたぶり刺してください」
「死ねド変態‼ そもそもどっちがお礼を受けてんじゃ‼」
バコッ‼ と思いっきり殴られた男は、大量の鼻血を吹きだしながら、「もっと! もっと~‼」叫んで一回転して地に落ちた。その顔は至福の時間を過ごした後であるかのような笑みを湛えていた。
ローゼが叫ぶ。
「エミリアのばかぁ! 手かせ足かせ斬ったら、よけいタチ悪くなっちゃったわよ!」
さっき“痛い、と言ったふうに「ふごい」と嘆く”って書いたけど、“すごい”と言ったの間違いだ。
「えぇ~! わたしのせいですか? そんなぁ」とエミリア。
「もう、あんたが全部倒してよ、こぶしで何とかできるでしょ?」
そう言ったローゼがエミリアを見ると、だいぶ息が上がっている。ローゼは彼女の戦いを初めて明るい場所で見るが、相当の実力がある。それでもまだ十四歳という若さで多人数を相手にするのは、やはりきついのだろう。
「大丈夫? エミリア……」ローゼが声をかける。「こんな変態ばかりが相手じゃ、心的疲労も相当でしょ?」
「はぁ、はぁ、はぁはぁ……、――いえ、大丈夫です。なんて言うか、この人たちすごく鍛えられています」
「へ? そうなの?」
「はい、なんかこう殴りがいがあるって言うか――」
そう言ったエミリアは、試すように正拳突きを放つ。霊力を乗せて突くものだから、当った瞬間、霊気が弾けて発光する。その度にセシュターズの背中から人の形をした魂がはじき出された。
殴れば殴るほど、蹴り倒せば蹴り倒すほど、エミリアの息は上がっていく。
「はぁはぁはぁはぁ……、カ・イ・カ・ン‼」
「お前も変態か―‼」ローゼ大絶叫。
うなされる中毒者の如く恍惚の笑みを浮かべるエミリアは、次から次へとセシュターズの魂を吹き飛ばしていく。まだ生きているのかもはや死んでしまったのかは分からないが、殴打の連撃を喰らって倒れた男たちは、ニヤニヤしたまま動かない。
ローゼは、山のように膨らんだブリーフを見て、こいつらはまだ生きている、と気がついたが、見てみぬふりをする。仰向けの男の上で構えたエミリアは、トドメとばかりにみぞおち目掛けて正拳を突き落とす。しばらくするとブリーフの山は萎えていった。それを見てローゼは、(あ、死んだな)と思った。
エミリアは、屈託のない笑顔をローゼに見せる。汗が日光に輝いていて、超青春。
「ローゼさん、わたし今日師匠になれそうな気がします!」
何の師匠よ? まさか撲殺マスターですか? と言いかけたローゼだったが、言葉を飲んだ。変に話しに乗って調子づかせて人生の道を踏み外させたら、親御さんに申し訳が立たない。
「良いですか、ローゼさん、こう突くんですよ」エミリアはそう言って、ローゼにレクチャーする。
「でも、ほらわたし剣士だから、こぶしみたいにはいかないわ」
「大丈夫ですよ、ここら辺なら剣で突いても死にませんから」
マジかよ、コイツ。なんでそんなこと知ってんだよ。
「オントワーンさんから色々と聞いたんです。ほら、オントワーンさん皮剥ぎさん作るための拷問部屋持ってるじゃないですか。あそこで色々なお話を聞いたんですよ」
いつ聞いたんだよ。どこの話見返してもそんな記述なかっただろ⁉
「そうだ」とエミリアが思いついたように言った。
「中にいっぱい針のついた人型の棺桶があったんですよ。一人持ち帰って入れてみましょうよ」
コエーよ、絶対死ぬからやめようよ。これキャラ文芸だぜ。ジャンル強制変更させられちゃうから、絶対禁止。
「ええーっ」とエミリア残念そう。あんたそういうキャラなのね。
「そういうえげつないことは、牙の三人でやんなさいよ」
「だめですよ、強者は」
「弱者の方がダメなのでは⁉」
「良いんです。軟弱者には死あるのみです」
末恐ろしーよ。
エミリアは、ローゼが斬った拘束具を拾って、一人のシェスターの手かせ足かせを繋げて縛って動きを封じ、お持ち帰りすることにしましたとさ。
エミリアに殴り倒されるセシュターズを見て、エルザが身をよじる。
「すっごい興奮っっっ」
殴られる瞬間がたまらない。我慢しきれずブンブン振るうムチは、その威力をどんどん増していく。もはや威力は最初の十倍だ。
終いにエルザも手を出してきた。
「情けないわね! あなたたち、いつまで伸びているのよ。早く責められに攻めなさいよ。」とやられた信者にムチを打つ。「お許しください、エルザ様」と言いたげに、「ふごふごふごご、ふごごふご」と嘆く信者は嬉しそうだ。
正拳突きやら後ろ蹴りやらで敵を倒していくエミリアは、ローゼの不甲斐なさが信じられない様子で言った。
「ローゼさん、何してるんですか? わたし一人に任せていないで、戦ってくださいよぉ~」
「ごめん、戦いたいのは山山なんだけど、何をどうしたら……」
「そんなの、持っているレイピアで……レイピアで……、あっ‼」
エミリアも気がついたようだ。目隠しをされて両手両足を縛られたやつらなんかを刺し殺したら、虐殺以外の何ものでもない。いくら攻撃してくると言っても、一方的に殺すなんて行為を殺戮と呼ばずして何と呼ぶのだ。
エミリアの頭上に閃きのランプが点灯した。
「そうだ、ローゼさん、革ベルト! 革ベルトを切って自由にすれば、むこうだって攻撃してこられますよ。それなら対等だから、斬っても戦いの精神に悖ることはないんじゃないですか?」
「そうか、エミリアあったま良ーい!」
ブリーフのみのほぼ全裸で、目隠しも手足のベルトも肌に密着していたが、ローゼには切り落とす自信があった。目にも止まらない早業で、全ての拘束具を切り落とす。
急に日差しが目に差し込んで眩しそうに眼を庇った男は、「やったぁ、解放されたー」と叫んだ。ローゼが無理やり拘束されていたのだと思った瞬間、解放された男は、舌をレロレロさせながらローゼに飛びかかってきた。
「ありがとう、ローゼリッタさん。お礼にその剣で僕をいたぶり刺してください」
「死ねド変態‼ そもそもどっちがお礼を受けてんじゃ‼」
バコッ‼ と思いっきり殴られた男は、大量の鼻血を吹きだしながら、「もっと! もっと~‼」叫んで一回転して地に落ちた。その顔は至福の時間を過ごした後であるかのような笑みを湛えていた。
ローゼが叫ぶ。
「エミリアのばかぁ! 手かせ足かせ斬ったら、よけいタチ悪くなっちゃったわよ!」
さっき“痛い、と言ったふうに「ふごい」と嘆く”って書いたけど、“すごい”と言ったの間違いだ。
「えぇ~! わたしのせいですか? そんなぁ」とエミリア。
「もう、あんたが全部倒してよ、こぶしで何とかできるでしょ?」
そう言ったローゼがエミリアを見ると、だいぶ息が上がっている。ローゼは彼女の戦いを初めて明るい場所で見るが、相当の実力がある。それでもまだ十四歳という若さで多人数を相手にするのは、やはりきついのだろう。
「大丈夫? エミリア……」ローゼが声をかける。「こんな変態ばかりが相手じゃ、心的疲労も相当でしょ?」
「はぁ、はぁ、はぁはぁ……、――いえ、大丈夫です。なんて言うか、この人たちすごく鍛えられています」
「へ? そうなの?」
「はい、なんかこう殴りがいがあるって言うか――」
そう言ったエミリアは、試すように正拳突きを放つ。霊力を乗せて突くものだから、当った瞬間、霊気が弾けて発光する。その度にセシュターズの背中から人の形をした魂がはじき出された。
殴れば殴るほど、蹴り倒せば蹴り倒すほど、エミリアの息は上がっていく。
「はぁはぁはぁはぁ……、カ・イ・カ・ン‼」
「お前も変態か―‼」ローゼ大絶叫。
うなされる中毒者の如く恍惚の笑みを浮かべるエミリアは、次から次へとセシュターズの魂を吹き飛ばしていく。まだ生きているのかもはや死んでしまったのかは分からないが、殴打の連撃を喰らって倒れた男たちは、ニヤニヤしたまま動かない。
ローゼは、山のように膨らんだブリーフを見て、こいつらはまだ生きている、と気がついたが、見てみぬふりをする。仰向けの男の上で構えたエミリアは、トドメとばかりにみぞおち目掛けて正拳を突き落とす。しばらくするとブリーフの山は萎えていった。それを見てローゼは、(あ、死んだな)と思った。
エミリアは、屈託のない笑顔をローゼに見せる。汗が日光に輝いていて、超青春。
「ローゼさん、わたし今日師匠になれそうな気がします!」
何の師匠よ? まさか撲殺マスターですか? と言いかけたローゼだったが、言葉を飲んだ。変に話しに乗って調子づかせて人生の道を踏み外させたら、親御さんに申し訳が立たない。
「良いですか、ローゼさん、こう突くんですよ」エミリアはそう言って、ローゼにレクチャーする。
「でも、ほらわたし剣士だから、こぶしみたいにはいかないわ」
「大丈夫ですよ、ここら辺なら剣で突いても死にませんから」
マジかよ、コイツ。なんでそんなこと知ってんだよ。
「オントワーンさんから色々と聞いたんです。ほら、オントワーンさん皮剥ぎさん作るための拷問部屋持ってるじゃないですか。あそこで色々なお話を聞いたんですよ」
いつ聞いたんだよ。どこの話見返してもそんな記述なかっただろ⁉
「そうだ」とエミリアが思いついたように言った。
「中にいっぱい針のついた人型の棺桶があったんですよ。一人持ち帰って入れてみましょうよ」
コエーよ、絶対死ぬからやめようよ。これキャラ文芸だぜ。ジャンル強制変更させられちゃうから、絶対禁止。
「ええーっ」とエミリア残念そう。あんたそういうキャラなのね。
「そういうえげつないことは、牙の三人でやんなさいよ」
「だめですよ、強者は」
「弱者の方がダメなのでは⁉」
「良いんです。軟弱者には死あるのみです」
末恐ろしーよ。
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