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第二十話 ついに対決! ローゼVSエルザ
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「さあ、観念しなさい! エルザ・ブラウン‼ て何やっちゃっちゃちゃ~‼‼ あんたァ~~‼‼⁉」とローゼ地面に滑り込む。
見るとエルザは、四つん這いにさせた信者に座って、直角九十度にお辞儀した信者の背中に置かれたお紅茶を飲んでいる。物本のチャノキのやつ。
「めっちゃくつろいでる~!」
ローゼが別のやつらを見ると、みんな何かしらに徹している様子。沸騰したやかんを腹に乗せてブリッヂした奴までいる。人間家具初めて見たよ。ある意味すーげよ、お前ら。尊敬はしないけど……。
「ふん、わたしに勝てるとでも?」とエルゼがニヤリ。
鞘を剣帯に繋ぎ戻してレイピアを構えたローゼを嘲り笑ったエルザは、頭をもたげる大蛇の如くイバラのムチを操って天に振り上げる。そして、縦横無尽でありながらも美しく舞う蝶の羽が残した軌跡のようにうねらせて、四方八方からローゼを襲う。
「つっ、強い!」ローゼが思わず言葉を吐く。
アクロバティックによけながら、ローゼはエルザとの距離をじりじりと縮めていく。切先でムチを捌きながら、一進一退を繰り返す。一撃必殺の間合いに詰め寄ろうとするも、エルザの防御網は固く、すぐに攻撃圏外に追い出されてしまう。
「あれ?」とローゼ。
繰り広げられる攻防の中で、ローゼが再び突っ込もうとしてエルザを見やると、彼女は自分を見ていない。何を見ているのかと思いきや、なんとエミリアに責め方指導をしているではありませんか。
「鼻っ柱をめり込ませるように殴るのよ」とエルザがエミリアに指南の言葉。
「こうですか?」
バコッ!
「違うわよ、こうよ」
ビシッとムチをしならせて表現する。
「こうですか?」
バコッ
「そう、そう、それ」
「すっごい、滝のように流れる鼻血の凄さ、見ているだけで、こう、突き上げてくるものがありますね」
「でっしょう?」
2人して超きゃぴきゃぴ。めっちゃ楽しそうに騒いでいる。もはや置いてけぼりのローゼリッタだ。
「もう……それ、プレイではないのでは? 本気? 本気で撲殺ですか? おーい、ちょっとぉ? 聞いてくださーい……」
ガン無視だ。もはやローゼはいないのと同じだった。信者たちはエミリアの前に並んで跪き、殴りやすいように頬を差し出す。
信者たちは殴られるたびに、「気持ちいい~」と叫びながら大げさに弾き飛ぶ。実際、エミリアの正拳突きの威力がすごすぎて飛ばされているのだが、どうもそう見えない。シチュエーションが変態だからだろうか。
「恐るべし、変態たちの相乗効果……」
そう呟いた後しばらくの間呆然自失だったローゼは、はたと我に返ってエルザに叫んだ。
「て、こっち見てよ、あんた! 相手してんの、わたしなんだから‼」
「ローゼリッタって言ったかしら? あなたは良い女王様体型なのにもったいないわ。ここで死ぬなんてね」
言い終わるや否や、エルザは思いがけないスピードで走り出す。リズムよくホップ、スッテプと踏み込むと、逆回転のトリプルアクセルを飛ぶかのように低く滑空しながら霊力を噴射して高速ホバー、勢いを乗せたムチを横一文字に走らせる。
それを深く仰け反って交わしたローゼ目掛けて、今度は縦一文字にムチをしならせて振り下ろした。半身になってイバラの先をすれすれで避けたローゼは、その勢いのまま棒高跳びをするかのようにムチを背面飛びで飛び越える。その下を横に振るわれたムチが波打ちながら通過した。
左足が地についた瞬間、間髪入れずにローゼが突っ込む。
エルザは、「あなた邪魔なのよ」と信者をヒールで踏みつけて悦に浸る余裕を見せる。ムチに阻まれてローゼが近づけない間に、倒れる信者を踏んで回っていた。
「あの……戦っているんですが……」と口をイーとやるローゼ。正直ローゼは蚊帳の外。みるみる間にムチの勢いが増していく。そう、エルザは信者を虐待することで本領を発揮するのだ。
「それならわたしもまけていません! とうッ!」と飛び上がるエミリア。連打連打連打‼
「ああ! このこぶしに伝わる肉の感触! ゾクゾクしちゃう」エミリア超絶乱舞快感悦入り。
「そう、その調子よ、エミリア」エルザがエール。
「わたしゃ片手間か!」ローゼショックで涙ちょちょぎれ。こんな屈辱初めてだ。挫折を武器にローゼ頑張る。が……――
「ぶべっ!」
こともあろうかアンドリューがローゼの足元に滑り込んできて、脇腹につまずいたローゼは頭から地面に転んだ。
「ばかぁ! 何してんのよ! あっぶないでしょう?」
ローゼは、そう叫んでげんこつを振るい上げたが、ハッとして殴るのをやめた。アンドリューは、ご主人様にかまってほしそうなチワワのような瞳でローゼを見上げている。ワザとだ。こいつは絶対ワザとだ! と身震いしたローゼは、たじろぎながらも横歩きで距離をとり、仕切りなおしてエルザを睨む。
だが、アンドリューはローゼを開放してはくれなかった。
「ローゼリッタさん、なんで僕を無視するんですか?」
「何でって、わたしにそんな趣味ないからよ! 気持ち悪い!」
「ああっ! もっと! もっと言ってください! ローゼリッタさんの言葉責め最高‼」
お前彼女とケンカしたのこれが原因じゃないか?
「良く分かりましたね、最近彼女の責め苦が物足りなくて」
なんだよそっちかよ。思わずローゼ言葉責め。
顔を赤らめながら満面の笑みを浮かべて悶絶するブリーフ姿のアンドリュー。いつの間に脱いだのか。しかも脱いだ服で手足を縛っている。後ろ手に。
その姿を見たエルザが、信じられない、といった様子で震える声を出す。
「そんな、まさか! わたしを裏切る気? こんな青二才のペーペー女王様のどこが良いの?」
「ちがうわ! あほう‼」
ローゼは否定したが、エルザの悲痛な叫びを聞いたエミリアは真に受けて、ローゼに詰め寄る。
「ひどい! 全然興味ないふりして、やっぱりドSだったんですね! この変態女」
「どっちがじゃ!」
「わっ、わたしは変態じゃないですもん。純粋に空手の練習をしていただけですから」
ちょっと恥ずかしそうだ。変態していた、という自覚はあるのだろう。
「お願いだから、こいつらにわたしのジャマをさせないでよ」
そう言い放ったローゼは、アンドリューの方に向かってエミリアの背中を突き飛ばした。
「エミリアちゃーん! どうか僕に責め苦をあたえてくださーい!」
ゴズッ、と鈍い音が響く。勢いよく蛙飛びしてきたアンドリューの鼻っ柱に、思いっきり膝が入った。アンドリューは快楽を得る間もなく卒倒した。
意識を失ったアンドリューを見て、大慌てでエミリアが駆け寄る。
「ああ、アンドリューさん、起きてください! アンドリューさん! まだこれからじゃないですか! まだ責めたりないのに……じゃない、お稽古! 空手のお稽古したりないのに」
竜巻のようにムチを渦巻かせていたエルザは、慌てふためくエミリアの姿を横目で見ながら“嘘つけ”と思っていたローゼめがけて、最短距離で波打つムチをしならせた。顔面直撃を間一髪で避けたローゼの頭をかち割ろうと、ムチがとぐろを巻いてから縦に大きく波打って落ちてくる。
せーのでダッシュしたローゼは、ポメルをアゴの前に据えて切先をエルザに向け構えた。半身でムチを避け、残像を残して足を速める。射程圏内に入った。舌打ちをしたエルザは、咄嗟に手首をスナップさせてムチを呼び戻す。
背後から襲いくるムチを察知して、ローゼは姿勢を低くして掻い潜った。ローゼの頭の上をムチが戻っていく。一瞬エルザの方が早い。笑みを浮かべたエルザは、返す刀でムチを濁流の如くのたまわせて防御を固め、同時にローゼを襲う。
エルザは自らに向けられたレイピアを打ち落とす気だ。それに気がついたローゼも笑う。
「レイピアだけがわたしの武器だと思わないでよね」
腰のダガーを抜いたローゼは、迫りくるムチをいなしてフックヒルトに引っ掛けて絡め、刃に巻き付けた。だが、エルザにとって、それは計算済みだ。
「甘いわよ」
ムチを大きく振り上げてダガーを奪い取ると、天高く渦巻くムチをそのまま打ち下ろす。
左肩を打たれて「きゃあ!」と叫ぶローゼの声に、ゾクゾクとした快感を覚えたエルザであったが、自分を見据えるローゼの大きな瞳に、戦いの決着はまだついていないことを悟った。
しかし、ムチの衝撃で膝をついたローゼに、何ができるというのか。エルザは、その場に踏み止まったままムチを振り抜く。衝撃に耐えきれずに肩とポールドロンのつなぎ目がはじけ飛ぶ。
それでもなお右足で踏ん張って前に跳ねて飛び出したローゼは、アンダースローでレイピアを投げ飛ばす。頭を反らして回避を試みるエルザであったが、間に合わない。切先が顔面に直撃した。
勝ちを確信したローゼであったが、すぐに血の気が引いた。アイマスクには金属の板か何かが仕込まれていて、切先が貫通しなかったのだ。
落ちたアイマスクの内側を見て、ローゼは叫んだ。
「小っちゃい! めっちゃつぶら! つぶらな瞳! ゴマ粒並みだわ」
武器も投げちゃったし、もう勝てない、とあきらめたローゼが、エミリアを置いて真っ先に逃げようとしたその時だった。カアッと顔を赤らめたエルゼが、顔を抑えて狼狽え始める。怪我はしていないはずだが、一体どうしたのだろう。「ああ、ああ」と困惑の声をあげるエルザは、アイマスクを探しているようだ。
「まさか、『めがね! めがね!』なんて言わないでしょうね」とローゼが訊く。
アイマスクを拾ったローゼは、エミリアにもつぶら過ぎる瞳を見せてやろう、とエルゼの手首を掴んで引っ張った。
「おーい、エミリア、あなたも見てみなさいよ。とっても可愛いの。こんな変なマスクなんてしなければいいのに」
「本当ですか? 見せてくださーい」と言ってエミリアが駆け寄ってくる。
「いやぁぁぁぁ! やめて! 見ないで~~~~‼」エルザがめっちゃ暴れ出す。
「へ?」とローゼ。
悲鳴を上げて泣き叫んだエルザは、ローゼの手を振りほどいて一目散に叢林の奥深くへと逃げていった。
後を追うセシュターズを見送りながら、「随分と恥ずかしがり屋さんみたいですね」と言うエミリアが、ジタバタする一人の信者を離さずにいることを見てみぬふりするローゼは、とりあえず教会の中を家探しすることにした。もちろん空き巣としてではなく、奪われた通商手形を探すためにだ。
二人は、アンドリューと名も知らない信者一人と共に陽が暮れるまで探し続けたが、結局見つからなかった。
見るとエルザは、四つん這いにさせた信者に座って、直角九十度にお辞儀した信者の背中に置かれたお紅茶を飲んでいる。物本のチャノキのやつ。
「めっちゃくつろいでる~!」
ローゼが別のやつらを見ると、みんな何かしらに徹している様子。沸騰したやかんを腹に乗せてブリッヂした奴までいる。人間家具初めて見たよ。ある意味すーげよ、お前ら。尊敬はしないけど……。
「ふん、わたしに勝てるとでも?」とエルゼがニヤリ。
鞘を剣帯に繋ぎ戻してレイピアを構えたローゼを嘲り笑ったエルザは、頭をもたげる大蛇の如くイバラのムチを操って天に振り上げる。そして、縦横無尽でありながらも美しく舞う蝶の羽が残した軌跡のようにうねらせて、四方八方からローゼを襲う。
「つっ、強い!」ローゼが思わず言葉を吐く。
アクロバティックによけながら、ローゼはエルザとの距離をじりじりと縮めていく。切先でムチを捌きながら、一進一退を繰り返す。一撃必殺の間合いに詰め寄ろうとするも、エルザの防御網は固く、すぐに攻撃圏外に追い出されてしまう。
「あれ?」とローゼ。
繰り広げられる攻防の中で、ローゼが再び突っ込もうとしてエルザを見やると、彼女は自分を見ていない。何を見ているのかと思いきや、なんとエミリアに責め方指導をしているではありませんか。
「鼻っ柱をめり込ませるように殴るのよ」とエルザがエミリアに指南の言葉。
「こうですか?」
バコッ!
「違うわよ、こうよ」
ビシッとムチをしならせて表現する。
「こうですか?」
バコッ
「そう、そう、それ」
「すっごい、滝のように流れる鼻血の凄さ、見ているだけで、こう、突き上げてくるものがありますね」
「でっしょう?」
2人して超きゃぴきゃぴ。めっちゃ楽しそうに騒いでいる。もはや置いてけぼりのローゼリッタだ。
「もう……それ、プレイではないのでは? 本気? 本気で撲殺ですか? おーい、ちょっとぉ? 聞いてくださーい……」
ガン無視だ。もはやローゼはいないのと同じだった。信者たちはエミリアの前に並んで跪き、殴りやすいように頬を差し出す。
信者たちは殴られるたびに、「気持ちいい~」と叫びながら大げさに弾き飛ぶ。実際、エミリアの正拳突きの威力がすごすぎて飛ばされているのだが、どうもそう見えない。シチュエーションが変態だからだろうか。
「恐るべし、変態たちの相乗効果……」
そう呟いた後しばらくの間呆然自失だったローゼは、はたと我に返ってエルザに叫んだ。
「て、こっち見てよ、あんた! 相手してんの、わたしなんだから‼」
「ローゼリッタって言ったかしら? あなたは良い女王様体型なのにもったいないわ。ここで死ぬなんてね」
言い終わるや否や、エルザは思いがけないスピードで走り出す。リズムよくホップ、スッテプと踏み込むと、逆回転のトリプルアクセルを飛ぶかのように低く滑空しながら霊力を噴射して高速ホバー、勢いを乗せたムチを横一文字に走らせる。
それを深く仰け反って交わしたローゼ目掛けて、今度は縦一文字にムチをしならせて振り下ろした。半身になってイバラの先をすれすれで避けたローゼは、その勢いのまま棒高跳びをするかのようにムチを背面飛びで飛び越える。その下を横に振るわれたムチが波打ちながら通過した。
左足が地についた瞬間、間髪入れずにローゼが突っ込む。
エルザは、「あなた邪魔なのよ」と信者をヒールで踏みつけて悦に浸る余裕を見せる。ムチに阻まれてローゼが近づけない間に、倒れる信者を踏んで回っていた。
「あの……戦っているんですが……」と口をイーとやるローゼ。正直ローゼは蚊帳の外。みるみる間にムチの勢いが増していく。そう、エルザは信者を虐待することで本領を発揮するのだ。
「それならわたしもまけていません! とうッ!」と飛び上がるエミリア。連打連打連打‼
「ああ! このこぶしに伝わる肉の感触! ゾクゾクしちゃう」エミリア超絶乱舞快感悦入り。
「そう、その調子よ、エミリア」エルザがエール。
「わたしゃ片手間か!」ローゼショックで涙ちょちょぎれ。こんな屈辱初めてだ。挫折を武器にローゼ頑張る。が……――
「ぶべっ!」
こともあろうかアンドリューがローゼの足元に滑り込んできて、脇腹につまずいたローゼは頭から地面に転んだ。
「ばかぁ! 何してんのよ! あっぶないでしょう?」
ローゼは、そう叫んでげんこつを振るい上げたが、ハッとして殴るのをやめた。アンドリューは、ご主人様にかまってほしそうなチワワのような瞳でローゼを見上げている。ワザとだ。こいつは絶対ワザとだ! と身震いしたローゼは、たじろぎながらも横歩きで距離をとり、仕切りなおしてエルザを睨む。
だが、アンドリューはローゼを開放してはくれなかった。
「ローゼリッタさん、なんで僕を無視するんですか?」
「何でって、わたしにそんな趣味ないからよ! 気持ち悪い!」
「ああっ! もっと! もっと言ってください! ローゼリッタさんの言葉責め最高‼」
お前彼女とケンカしたのこれが原因じゃないか?
「良く分かりましたね、最近彼女の責め苦が物足りなくて」
なんだよそっちかよ。思わずローゼ言葉責め。
顔を赤らめながら満面の笑みを浮かべて悶絶するブリーフ姿のアンドリュー。いつの間に脱いだのか。しかも脱いだ服で手足を縛っている。後ろ手に。
その姿を見たエルザが、信じられない、といった様子で震える声を出す。
「そんな、まさか! わたしを裏切る気? こんな青二才のペーペー女王様のどこが良いの?」
「ちがうわ! あほう‼」
ローゼは否定したが、エルザの悲痛な叫びを聞いたエミリアは真に受けて、ローゼに詰め寄る。
「ひどい! 全然興味ないふりして、やっぱりドSだったんですね! この変態女」
「どっちがじゃ!」
「わっ、わたしは変態じゃないですもん。純粋に空手の練習をしていただけですから」
ちょっと恥ずかしそうだ。変態していた、という自覚はあるのだろう。
「お願いだから、こいつらにわたしのジャマをさせないでよ」
そう言い放ったローゼは、アンドリューの方に向かってエミリアの背中を突き飛ばした。
「エミリアちゃーん! どうか僕に責め苦をあたえてくださーい!」
ゴズッ、と鈍い音が響く。勢いよく蛙飛びしてきたアンドリューの鼻っ柱に、思いっきり膝が入った。アンドリューは快楽を得る間もなく卒倒した。
意識を失ったアンドリューを見て、大慌てでエミリアが駆け寄る。
「ああ、アンドリューさん、起きてください! アンドリューさん! まだこれからじゃないですか! まだ責めたりないのに……じゃない、お稽古! 空手のお稽古したりないのに」
竜巻のようにムチを渦巻かせていたエルザは、慌てふためくエミリアの姿を横目で見ながら“嘘つけ”と思っていたローゼめがけて、最短距離で波打つムチをしならせた。顔面直撃を間一髪で避けたローゼの頭をかち割ろうと、ムチがとぐろを巻いてから縦に大きく波打って落ちてくる。
せーのでダッシュしたローゼは、ポメルをアゴの前に据えて切先をエルザに向け構えた。半身でムチを避け、残像を残して足を速める。射程圏内に入った。舌打ちをしたエルザは、咄嗟に手首をスナップさせてムチを呼び戻す。
背後から襲いくるムチを察知して、ローゼは姿勢を低くして掻い潜った。ローゼの頭の上をムチが戻っていく。一瞬エルザの方が早い。笑みを浮かべたエルザは、返す刀でムチを濁流の如くのたまわせて防御を固め、同時にローゼを襲う。
エルザは自らに向けられたレイピアを打ち落とす気だ。それに気がついたローゼも笑う。
「レイピアだけがわたしの武器だと思わないでよね」
腰のダガーを抜いたローゼは、迫りくるムチをいなしてフックヒルトに引っ掛けて絡め、刃に巻き付けた。だが、エルザにとって、それは計算済みだ。
「甘いわよ」
ムチを大きく振り上げてダガーを奪い取ると、天高く渦巻くムチをそのまま打ち下ろす。
左肩を打たれて「きゃあ!」と叫ぶローゼの声に、ゾクゾクとした快感を覚えたエルザであったが、自分を見据えるローゼの大きな瞳に、戦いの決着はまだついていないことを悟った。
しかし、ムチの衝撃で膝をついたローゼに、何ができるというのか。エルザは、その場に踏み止まったままムチを振り抜く。衝撃に耐えきれずに肩とポールドロンのつなぎ目がはじけ飛ぶ。
それでもなお右足で踏ん張って前に跳ねて飛び出したローゼは、アンダースローでレイピアを投げ飛ばす。頭を反らして回避を試みるエルザであったが、間に合わない。切先が顔面に直撃した。
勝ちを確信したローゼであったが、すぐに血の気が引いた。アイマスクには金属の板か何かが仕込まれていて、切先が貫通しなかったのだ。
落ちたアイマスクの内側を見て、ローゼは叫んだ。
「小っちゃい! めっちゃつぶら! つぶらな瞳! ゴマ粒並みだわ」
武器も投げちゃったし、もう勝てない、とあきらめたローゼが、エミリアを置いて真っ先に逃げようとしたその時だった。カアッと顔を赤らめたエルゼが、顔を抑えて狼狽え始める。怪我はしていないはずだが、一体どうしたのだろう。「ああ、ああ」と困惑の声をあげるエルザは、アイマスクを探しているようだ。
「まさか、『めがね! めがね!』なんて言わないでしょうね」とローゼが訊く。
アイマスクを拾ったローゼは、エミリアにもつぶら過ぎる瞳を見せてやろう、とエルゼの手首を掴んで引っ張った。
「おーい、エミリア、あなたも見てみなさいよ。とっても可愛いの。こんな変なマスクなんてしなければいいのに」
「本当ですか? 見せてくださーい」と言ってエミリアが駆け寄ってくる。
「いやぁぁぁぁ! やめて! 見ないで~~~~‼」エルザがめっちゃ暴れ出す。
「へ?」とローゼ。
悲鳴を上げて泣き叫んだエルザは、ローゼの手を振りほどいて一目散に叢林の奥深くへと逃げていった。
後を追うセシュターズを見送りながら、「随分と恥ずかしがり屋さんみたいですね」と言うエミリアが、ジタバタする一人の信者を離さずにいることを見てみぬふりするローゼは、とりあえず教会の中を家探しすることにした。もちろん空き巣としてではなく、奪われた通商手形を探すためにだ。
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