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第三十三話 推参!裏ヒロイン!?
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どこにいるのかおむつジジイ。意外や意外、ローゼたちがいる裏界隈にまだ居残っていた。
ローゼたちの気配がある方を見やるおむつジジイが、憎たらしそうな表情で言った。
「あの借金取り、なんてしつこいんじゃぁ。こんなんじゃ、ツケでおちおち砂糖水飲めん。踏み倒す機会もあがったりじゃぁ」
払う気全然ねーでやんの。
しばらくしておむつジジイが行き着いた先は、一棟の建物。おむつジジイは、ものすごい怒りの形相でその建物を睨んでいた。この町には珍しく、レンガ造りの3階建て。骨組みは木組みで純粋なレンガ造ではない。古くもないが新しくもなくデザインもいまいちで、場末の建物感ぷんぷんしている。
「たのもーっ」
バタンと扉を蹴破って入り口に仁王立ちしたおむつジジイを、面構えの悪いあんちゃんたちが一斉に見やる。眉毛のないやつやら、頬に切り傷があるやつらやらでいっぱいだ。この町の裏を仕切るやつらに間違いない。
「おお、おむつジジイ。溜まった借金払いに来たのか?」
一人の若い男が近寄っていって、そう言った。ジジイの肩に手を置こうとした刹那、「ぎゃー!」と男が叫んだ。顔面におむつが巻かれて倒れ込む。次の瞬間、裏組織のアジトにジジイ乱入。怒りの感情が滲んだ声で言った。
「お前さんらみたいな悪いやるらは、わし許せんもんねー」
……逆切れだけどね。
「秘儀オムツ縛りの術!」
おむつジジイが放ったおむつ、雨あられ。
「目が潰れた!」「何も見えない!」「くっせー!」
顔面にオムツを巻かれたごろつきどもが騒いでいる。
「そこにいたか、おむつジジイ‼‼‼」
ローゼが駆けつけるとおむつジジイ、自分でしばいた男に巻かれて人質のふりして助け求める。でも周りを見ると、オムツに苦しめられる手下ども。ジジイ信じらんねー。嘆く表情めっちゃ作っているけど、目はおもいっきし無表情。瞳の奥がおどろおどろしいタールのようにドロドロしている何かが見えるよ。
「ローゼちゃーん、その胸で慰めてー」
涙の尾を引きながらスローモーションで駆けてくるおむつジジイを、ハーフハンドで渾身の突撃大敢行。入れ歯で真剣白刃取り! これだけできてスリ歴百年? スリ以外の人生なかったの? オムツしてたから無理だった? いつからしてんだ? そのおむつ。生まれた時から? 育児放棄か! お母さん。自分から穿いていた? て卒業しろよ。そうやって人は成長していくんだよ。ストップ人生、Non,NoNon.走り出そうぜ明日へ向かって。お前の人生終わっているけど。
一進一退を繰り返すローゼの横で、おむつに巻かれたチンピラが苦しみもがいている。受けた仕打ちが仕打ちだけに、同情はするけどし切れない。しようとするけどし切れない。
はずしゃー良いじゃん。でもあれ使用済みだよね。みんなゲロゲロ、おむつの内側は惨状間違いないやつだ。つーかまだあったの? 使用済み。
「今作ったんじゃ」とおむつジジイ。
「えぇ⁉ できたてホヤホヤ‼⁉」
ローゼ振り返って身震いがとまらない。。無心に追いかけてきたけれど、出合い頭にやられなくて本当に良かった。
突然、アジトの中にエミリアの声が響く。
「行くとこ来るとこ愉快のみ、わたしの人生あっはっは。超空手少女! 最強ヒロイン伝説 ラブリー・エミリア登場!」
ドカ~ン、とバックにピンク色の爆発が起こる。さっきからいたろーが。わたしと一緒に来たんだから。ヒロインて言ってるよ。カッコつけてるけど、めっちゃカッコ悪いポーズ。手と足で8の字描いている。
一緒に来たと言っても、一度どこかに行っていたエミリアの声を聞いて、ローゼは安堵した。
「ようやくエミリアも来たのね――て何でおむつダルマになってんのよ。それで戦えるの?」
「大丈夫です。手足出てますから」
さっきのオムツ攻撃の新品オムツを隠し持っていたらしい。……いったいどこに?
「真面目に戦ってよ! もう!」ローゼがピシャリとエミリアに言った。
「わたしの半分は愉快でできているんですよ」
「もう半分は?」
「痛快です」
「おんなじだよ」
面白い格好だけれど結構強い。次から次へとギッタギタ。だけれどおむつダルマはバランス悪い。体勢崩して、正拳突きが金庫に当たる。頑丈な金庫がぺっしゃんこ。
「ああーっ! 何さらすんじゃワレー!」
激昂したのは極道さんではありません。何が逆鱗に触れたのか、見ると顔を真っ赤に染めてジジイが怒っている。
「なにやっとるんじゃ! 中に金目のものが入っていたらどうするんじゃ! これじゃあ取り出せんじゃんねー?」
「ごめんなさい」エミリアしょんぼり。
何で謝る?
おむつジジイの双眸が憤怒に燃える。
「お前らもう許せん、人の老後の楽しみを奪おうとするばかりか、財産まで奪うとは」
「いや、その金庫この組織のものだよね? それともまさか、おむつのことじゃないわよね?」とローゼ、呆れ顔。
「どっちもじゃ」
「どっちもジジイの財産じゃねーよ」
「秘伝のオムツを使う羽目になろうとは……」
おむつの中から取り出したのは、悍ましいデロンデロンの瘴気を発する――やっぱりおむつ。
「わしが育てた十年物のおむつじゃぁぁぁ」
十年物? 履き替えずに十年ってことか?
「重ねに重ねて凝縮されたわしの分身――」
それを聞いて怯え慄くローゼ絶望。
「ひぇぇぇぇ、あんなの投げつけられたら、一生お嫁には行けない」
「ていうか人生フェードアウトですよ!」エミリアが更に絶望に突き落とすようなことを言う。
「い~っひっひっひっ」と笑うジジイは威力を見せてやろう、と潰れた金庫にべちょり。ジュジュジュジュ~と、つけたそばから溶けだした。分厚い鉄の金庫なのに何故ですかー?
「なんじゃあ、これは?」
じじいは中身を取り出して嘆息交じりにそう言うと、金庫から取り出した紙の束を放り投げた。はらり、と足元に落ちた一枚をエミリアが拾って読んでみる。
「借用書?」
この組織から金を借りている者たちに書かせた借用書のようだ。
「この威力見て謝っても、もう許さんからな!」おむつジジイが喰いしばった歯を見せつけて「人をその気にさせておいてこの始末とは!」
「どの気になってんのよ。わたしたち関係ないでしょ」とローゼが叫ぶ。
おむつジジイを包む瘴気が、見る見るうちに溜まって膨張していく。
「あわわわわ、エミリア、たっち! わたしやってらんないわ、あんなの」ローゼ後退。
「わたしも無理ですよ」
「ありったけの霊力乗せた正拳突きで何とかなるでしょ?」
「なりませんよ‼‼」
押し付け合っている間に、じじいの準備完了。
「わしの渾身の一投受けてみろォォォ」
「ぎゃぁぁぁぁぁっっっ‼」
泣き叫ぶ二人。
「早くエミリア! 二人でやればもしかしたらぁぁぁっ」
ローゼの叫びに咄嗟に構えたエミリア、腰を落として全霊気放出、渾身の一撃。それが撃ち放たれた瞬間、ローゼは深く踏み込んで低く大きく前へ跳躍し、精悍荒々しく鋭い突撃を即時敢行。エミリアの霊力にレイピアの切先を突き立てて、一撃必殺の刺突攻撃。全力全速全身で一直線に突っ込んだ。
といったところで、次回へ続く。
ローゼたちの気配がある方を見やるおむつジジイが、憎たらしそうな表情で言った。
「あの借金取り、なんてしつこいんじゃぁ。こんなんじゃ、ツケでおちおち砂糖水飲めん。踏み倒す機会もあがったりじゃぁ」
払う気全然ねーでやんの。
しばらくしておむつジジイが行き着いた先は、一棟の建物。おむつジジイは、ものすごい怒りの形相でその建物を睨んでいた。この町には珍しく、レンガ造りの3階建て。骨組みは木組みで純粋なレンガ造ではない。古くもないが新しくもなくデザインもいまいちで、場末の建物感ぷんぷんしている。
「たのもーっ」
バタンと扉を蹴破って入り口に仁王立ちしたおむつジジイを、面構えの悪いあんちゃんたちが一斉に見やる。眉毛のないやつやら、頬に切り傷があるやつらやらでいっぱいだ。この町の裏を仕切るやつらに間違いない。
「おお、おむつジジイ。溜まった借金払いに来たのか?」
一人の若い男が近寄っていって、そう言った。ジジイの肩に手を置こうとした刹那、「ぎゃー!」と男が叫んだ。顔面におむつが巻かれて倒れ込む。次の瞬間、裏組織のアジトにジジイ乱入。怒りの感情が滲んだ声で言った。
「お前さんらみたいな悪いやるらは、わし許せんもんねー」
……逆切れだけどね。
「秘儀オムツ縛りの術!」
おむつジジイが放ったおむつ、雨あられ。
「目が潰れた!」「何も見えない!」「くっせー!」
顔面にオムツを巻かれたごろつきどもが騒いでいる。
「そこにいたか、おむつジジイ‼‼‼」
ローゼが駆けつけるとおむつジジイ、自分でしばいた男に巻かれて人質のふりして助け求める。でも周りを見ると、オムツに苦しめられる手下ども。ジジイ信じらんねー。嘆く表情めっちゃ作っているけど、目はおもいっきし無表情。瞳の奥がおどろおどろしいタールのようにドロドロしている何かが見えるよ。
「ローゼちゃーん、その胸で慰めてー」
涙の尾を引きながらスローモーションで駆けてくるおむつジジイを、ハーフハンドで渾身の突撃大敢行。入れ歯で真剣白刃取り! これだけできてスリ歴百年? スリ以外の人生なかったの? オムツしてたから無理だった? いつからしてんだ? そのおむつ。生まれた時から? 育児放棄か! お母さん。自分から穿いていた? て卒業しろよ。そうやって人は成長していくんだよ。ストップ人生、Non,NoNon.走り出そうぜ明日へ向かって。お前の人生終わっているけど。
一進一退を繰り返すローゼの横で、おむつに巻かれたチンピラが苦しみもがいている。受けた仕打ちが仕打ちだけに、同情はするけどし切れない。しようとするけどし切れない。
はずしゃー良いじゃん。でもあれ使用済みだよね。みんなゲロゲロ、おむつの内側は惨状間違いないやつだ。つーかまだあったの? 使用済み。
「今作ったんじゃ」とおむつジジイ。
「えぇ⁉ できたてホヤホヤ‼⁉」
ローゼ振り返って身震いがとまらない。。無心に追いかけてきたけれど、出合い頭にやられなくて本当に良かった。
突然、アジトの中にエミリアの声が響く。
「行くとこ来るとこ愉快のみ、わたしの人生あっはっは。超空手少女! 最強ヒロイン伝説 ラブリー・エミリア登場!」
ドカ~ン、とバックにピンク色の爆発が起こる。さっきからいたろーが。わたしと一緒に来たんだから。ヒロインて言ってるよ。カッコつけてるけど、めっちゃカッコ悪いポーズ。手と足で8の字描いている。
一緒に来たと言っても、一度どこかに行っていたエミリアの声を聞いて、ローゼは安堵した。
「ようやくエミリアも来たのね――て何でおむつダルマになってんのよ。それで戦えるの?」
「大丈夫です。手足出てますから」
さっきのオムツ攻撃の新品オムツを隠し持っていたらしい。……いったいどこに?
「真面目に戦ってよ! もう!」ローゼがピシャリとエミリアに言った。
「わたしの半分は愉快でできているんですよ」
「もう半分は?」
「痛快です」
「おんなじだよ」
面白い格好だけれど結構強い。次から次へとギッタギタ。だけれどおむつダルマはバランス悪い。体勢崩して、正拳突きが金庫に当たる。頑丈な金庫がぺっしゃんこ。
「ああーっ! 何さらすんじゃワレー!」
激昂したのは極道さんではありません。何が逆鱗に触れたのか、見ると顔を真っ赤に染めてジジイが怒っている。
「なにやっとるんじゃ! 中に金目のものが入っていたらどうするんじゃ! これじゃあ取り出せんじゃんねー?」
「ごめんなさい」エミリアしょんぼり。
何で謝る?
おむつジジイの双眸が憤怒に燃える。
「お前らもう許せん、人の老後の楽しみを奪おうとするばかりか、財産まで奪うとは」
「いや、その金庫この組織のものだよね? それともまさか、おむつのことじゃないわよね?」とローゼ、呆れ顔。
「どっちもじゃ」
「どっちもジジイの財産じゃねーよ」
「秘伝のオムツを使う羽目になろうとは……」
おむつの中から取り出したのは、悍ましいデロンデロンの瘴気を発する――やっぱりおむつ。
「わしが育てた十年物のおむつじゃぁぁぁ」
十年物? 履き替えずに十年ってことか?
「重ねに重ねて凝縮されたわしの分身――」
それを聞いて怯え慄くローゼ絶望。
「ひぇぇぇぇ、あんなの投げつけられたら、一生お嫁には行けない」
「ていうか人生フェードアウトですよ!」エミリアが更に絶望に突き落とすようなことを言う。
「い~っひっひっひっ」と笑うジジイは威力を見せてやろう、と潰れた金庫にべちょり。ジュジュジュジュ~と、つけたそばから溶けだした。分厚い鉄の金庫なのに何故ですかー?
「なんじゃあ、これは?」
じじいは中身を取り出して嘆息交じりにそう言うと、金庫から取り出した紙の束を放り投げた。はらり、と足元に落ちた一枚をエミリアが拾って読んでみる。
「借用書?」
この組織から金を借りている者たちに書かせた借用書のようだ。
「この威力見て謝っても、もう許さんからな!」おむつジジイが喰いしばった歯を見せつけて「人をその気にさせておいてこの始末とは!」
「どの気になってんのよ。わたしたち関係ないでしょ」とローゼが叫ぶ。
おむつジジイを包む瘴気が、見る見るうちに溜まって膨張していく。
「あわわわわ、エミリア、たっち! わたしやってらんないわ、あんなの」ローゼ後退。
「わたしも無理ですよ」
「ありったけの霊力乗せた正拳突きで何とかなるでしょ?」
「なりませんよ‼‼」
押し付け合っている間に、じじいの準備完了。
「わしの渾身の一投受けてみろォォォ」
「ぎゃぁぁぁぁぁっっっ‼」
泣き叫ぶ二人。
「早くエミリア! 二人でやればもしかしたらぁぁぁっ」
ローゼの叫びに咄嗟に構えたエミリア、腰を落として全霊気放出、渾身の一撃。それが撃ち放たれた瞬間、ローゼは深く踏み込んで低く大きく前へ跳躍し、精悍荒々しく鋭い突撃を即時敢行。エミリアの霊力にレイピアの切先を突き立てて、一撃必殺の刺突攻撃。全力全速全身で一直線に突っ込んだ。
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