DEVIL FANGS

緒方宗谷

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第四十話 クラゲ野郎の野望

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 「どっか他のビーチでやってよ。わたしたちの海水浴モードどうしてくれんのよ」
 ローゼは説得を試みようとするが、クラゲ野郎は聞く耳を持ってくれない。
 「やだね、ここじゃなきゃ嫌なんだ。――そうだ、僕の夢の手伝いをしてくれたら、このビーチを明け渡しても良いよ」
 「本当?」(ローゼ&エミリア)
 「クリオには幾つかビーチがあるんだけれど、このビーチが高校から一番近いんだ」と言って、クラゲ野郎は町を触手(指)さした。ローゼが見ると、一本道を上った先に都市学校らしき建物が見える。
 クラゲ野郎が続ける。
 「プール開きがあると、楽しそうな声がここまで聞こえてくるんだ。僕火星育ちだから、地球の学園生活に憧れているんだ。青春してみたいんだよ」
 (火星人だと)まだ言ってる。聞くと、この砂浜に陣取っている理由が分かった。いつか学校までの道を水びだしにして、プールに侵入する気なのだ。
 「楽しいだろうな。みんなでキャッキャと騒いだりして泳ぐの」クラゲ野郎は、とても楽しそうだ。
 いやいやいや、とローゼが妄想をストップさせる。
 「今のみんな溶けてたじゃんか! 大惨事だよ! プールの中スクール水着でいっぱいだよ」
 「んあ? 大丈夫だよ、それ最後だから」
 大丈夫じゃねーよ。最後であっても良くねーよ。
 「待て待てーって追いかけっこするの。『クラゲ君、泳ぐの速いねー』って捕まえた女子に褒められたいんだ」
 褒めてねーよ。大絶叫だよ。命乞いに必死だよ。みるみる間に溶けちゃってるよ。
 「うっさい! うっさーい!」
 ざっぶ~ん
 やめろよ津波起こすの。服着てんだからさ。それにレイピアが錆びちゃうでしょ!
 「しょうがないなぁ、じゃあ千歩、いや万歩譲って僕の彼女になってよ、ローゼリッタ」
 それを聞いたエミリア、超乗り気。
 「良いじゃないですか、ローゼさん。デートして満足してもらえれば楽なもんです」
 「あんなことやこんなことをするんだ」とクラゲ野郎の妄想爆発。腕を組んで砂浜を歩いたり、海の家でEDMを踊ったり、ハートのストローを挿したトロピカルジュースを一緒に飲んだり、肩を寄せ合って夕日を見たり。
 「タンマタンマタンマ!」ローゼ両手を頭上にかかげて、何度も交差。「事が進むにつれてわたし溶けてってるから! それにこのビーチ東向きでしょ! 夕日見えない!」
 ほとほと呆れた感じのエミリアが、ため息を吐く。
 「ローゼさん、固いこと言いっこ無しですよ。一万歩も譲ってもらってんですから」
 「わたしゃどんな扱いだよ」
 「ローゼさん一人で金貨百枚も手に入るんですから、安いもんです」
 安過ぎだよ。わたしの価値いくらだと思ってんだよ。やっぱり退治するしかない、と踏んだローゼは、レイピアを抜いて構える。
 「お、やる気か? ローゼリッタ」クラゲ野郎が身構える。
 「能力ゼロのあんたになんか負けたりしないわ」
 ぺっぺっぺっぺっ
 宣戦布告したローゼめがけて、クラゲ野郎が唾を噴きかけた。
 「わっ汚い!」レイピアで唾をつつき落としながら、ローゼが叫ぶ。接近を阻もうと伸ばす触手を千切りにして、プニョプニョぷるりんな体を二枚三枚と下ろして、ついにバラバラ。「いっちょあがりー」ローゼはクラゲ野郎に背を向けて、クールにポーズ。
 「なかなか早いな」と感心するクラゲ野郎。「げっ、何で?」と,びっくりローゼ。「すごい回復力でくっついてしまいましたよ」とエミリアが解説。
 「こんにゃろ」
 ローゼは何度も何度も斬りつけて、お刺身みたいにさばいてやるが、クラゲ野郎はその度に復活する。終いには切ってるそばから復活していく。
 「ローゼさん、いい加減やめたら……」エミリア既に諦めモード。
 クラゲ野郎はどこ吹く風で「カ~セ~イ~ジ~ン~、シ~ナ~ナ~イ~」
 ローゼはレイピアで肩をポクポク叩きながら、「うーん、なんかいけるかと思ったのよね」と言って「ほら、ここ」切先でクラゲ野郎の頭(?)を指し示す。「なんか小っちゃいのが見えてるでしょ? これを破壊すれば、と思って――」
 するとクラゲ野郎、女の子が胸を隠すみたいなボーズで照れて、頬(?)を朱に染める。。
 「いや~ん、内臓見ないで~、エッチ」
 なんだ内臓かよ、核じゃないんか。なに両手(?)で顔面(?)覆ってんだよ。身も触手も透けてるから意味ねーよ。全方位から丸見えだよ。
 「ばか~ん――あ、バ~カ~ン~」とクラゲ野郎。喉をトントンしながら言い直す。
 「さっきも喉って書いてあったけれど、触手の束の根元だからね」とローゼ。
 呆気にとられる二人目掛けて、クラゲ野郎いきなりドバァァァァ粘液噴射。全身ヌメヌメ。一歩間違ったらR指定。
 「やー、なんですかぁ? このヌルヌルー」とエミリア。「やだぁ気持ち悪い」
 ローゼも怒って「ちょっと何すんのよ!」と怒鳴りつける。
 「ふっふっふっ、これからがお楽しみだ」と笑うクラゲ野郎。
 「お楽しみって……」ローゼがはたと気がついた。「これって、スライムとかがよくやるやつでは?」
 「ほう、知っているのか?」
 ローゼは、分からない、と言うエミリアに説明してやる。
 「服だけとかして、『やだ、エッチー』とか女の子に言わせるやつよ」
 それを聞いてエミリアが赤面。
 「裸にさせられちゃうんですか?」
 「そうよ、R指定間違いないわね」
 そう恐ろしげに説明するローゼにエミリア「がびーん」。
 でもクラゲ野郎が笑いながら言った。
 「甘いな、スライムなんて下等な生物と一緒にすんなよ。僕のは消化液だから、繊維質の洋服は溶けないぞ」
 「そうなの?」とホッとする二人。
 「タンパク質しか溶けないんだ」
 「なーんだ、そうか――てもっとヤバいじゃん」ローゼ反応に大忙し。
 「服だけ残るよ」とクラゲ野郎がさらりと言う。「Rは無いから」、だって。
 いや、バイオレンス過ぎてRがつくよ。二人は急いで海にザブン。消化液を洗い流す。ポーションを塗っていたおかげで、ドロシーちゃんみたいにならずに済んだ。
 「ローゼさん、すごいこと思いついちゃいました」とエミリア。「ドロシーちゃんがドロリーちゃん」
 笑えないよ。草葉の陰で恨まれてるぞ。
 「ドロと泥もかかってるんです」
 追い打ち掛けるなよ。
 「自ら海に入るとは有り難い」と海水の上を浮遊してやって来たクラゲ野郎が、ざっぶーん、ざっぶーん、と波を起こす。
 「やめんかっ、ばかー」と叫ぶローゼは、マントでバチンとクラゲ野郎を叩き落とす。水を吸って重くなったマントの威力に耐えられなくて、クラゲ野郎ミンチになって沖に流されていった。
 


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