DEVIL FANGS

緒方宗谷

文字の大きさ
92 / 113

第九十二話 真の伝説の剣とその他諸々

しおりを挟む
 「て、佐間之介は?」とローゼが探す。 
 エミリアが入っていった森の奥から戻ってきた佐間之介、佇んだまま放心状態。やや間があって、おもむろにゴザに置いてあった最後の剣を手に取って、絶望と憤怒に咽び泣きつつ、震えながら言った。
 「唯一の友達だったのにー‼」
 滂沱の涙の佐間之介。
 「妖刀がおともだちって、なんかかわいそーね」と頬をかくローゼの横で、エミリアが「なんにでも卒業が大事ですよ」と彼を優しく見守る様子。仕方がないので、佐間之介が立ち直るのをローゼも待った。
 

 第九幕 持つ者を覇者へと導く伝説の剣

 「聖剣エクスカリバー!」佐間之介が叫ぶ。
 「エクスカリバー⁉」(ローゼ&エミリア)
 言わずと知れた超有名な伝説の剣。これを持つ者は、一国を統べるというスーパーソード。どこかの国の王位継承に必要な剣だとか、一本で一国の軍隊に勝る戦力になるとか、不老不死になれる、とまで言われている。
 佐間之介が横に掲げてみせるその剣は、W字のごついキヨンのナイトソード。鞘には古代文字がびっしりと書かれている。
 あれ? でも岩に刺さって抜けないのでは? 
 「いつもそうとは限らないのだ」と佐間之介がローゼに答えてくれた。
 「そうなの?」
 「うむ。山の頂上に刺さっていることもあれば、城の地下深くに刺さっていることもある。今回は柄に収まったまま抜けないパターンなのだ!」
 ばばーん、と音が鳴るけれど、聞いてた二人全く信ぜず。
 本物なら、剣身はオリハルコンのはずだ。ローゼが持ってる鉄のレイピアでは歯が立たない。たぶんエミリアのこぶしも同じだろう。
 佐間之介は勝ちを確信したかのように微笑み、腰を落とす。柄に右手を添えて構えた。
 ズワッと光る強風が巻き起こって、エミリアが「すごい霊気」と叫んだ。霊気を感じ取れないローゼでも分かるほどの凄まじい閃光を発する球状のスピリチュアル・パワー・フィールド(霊力領域)。法術でいうところの演唱中に発生する防御結界みたいなもの。
 霊力無能(無いわけではない)なローゼは、佐間之介の覇気に気おされてオロオロし出した。すっごい情緒不安定。
 エミリアを凌駕する高速ホバーで継ぎ足した佐間之介、稲妻の様な足跡線を残してローゼの懐に踏み込んでエクスカリバーを握る右手に力を込めた。なんとリカッソ(鍔元)が姿を現す。ついにエクスカリバーを抜いた佐間之介が「どーう!」と叫んだ。振り抜く動作と連続して横一文字に胴体を狙う。
 「えっ? ちょっと――」と慌てふためくローゼが型崩れでバックステップして第四に構え、取って返してフォアパスステップ & スロープパス。なんとか気を取り直し、ポイントを下げてから振り上げる。バインドした剣のロングエッジ(ローゼ側の刃)にひねりながらレイピアを滑らせて受け流し、左オクスから喉を掻っ切る算段だ。
 お互いの刃が触れる瞬間、迎え撃ったローゼが「えっ?」と叫んだ。エクスカリバーはレイピアをすり抜けてローゼの腹を一刀両断。ローゼは受け身も取れずに地面を転げる。
 綺麗に振り抜いた佐間之介は、その姿勢のまま「ついにやった……」と感慨にふけて目を閉じほほ笑む。
 「ローゼさん‼」と駆け寄るエミリア。
 「ううう、まさか本物のエクスカリバーだったなんて……」
 「傷は浅いですよ! 胴を繋げ合わせて止血すればッ――止血すればッ――……あれ?」
 「うひゃひゃ」と笑い出すローゼ「エミリアちゃん、くすぐったよ、て胴体繋がってる?」
 見ると、ちょっとの斬り傷すらないお腹。どこをどう見まわしても切れていない。
 「ん?」と言うエミリアの視線の先を見ると、なんか落ちている。拾ったエミリアから受け取ったローゼは、それをマジマジと見て言った。
 「剣――錆びた剣――の欠片?」
 「そう言うオチ……ですか?」
 多分錆びて抜けない剣を掴まされたのだろう。見た目が高価そうだから、錆びていなければそこそこの剣であったと思われるが、今となってはその価値微塵もない。
 「ふっ」と笑う佐間之介。「今はまだ抜くべき時ではなかったということだ」
 そう言いながら頬に流れる一筋の汗。
 「拾うんだそれ」と呟くローゼを無視して、砕けて落ちた錆の塊を拾って鞘に納める。
 「お前ごときのような剣客あいてに使うべきではない、という良い経験となった。いつかその時が来るまでこれは大事にしまっておこう」
 「負け惜しみね」とローゼ。
 「負け惜しみですね」とエミリア。
 「うっ、ううう~」武器コレクションを広げた木の陰まで行って泣き崩れる佐間之介。
 「分かっているんでしょうね」とエミリア。
 「認めたくなかったのね」とローゼ。
 「ええ~い! うるさい、うるさーい!」
 佐間之介はそう言って、今度はゴザごと小道に引きずって来て攻撃準備。
 

 昔のお巡りさんの銭

 何かを投げつけられたローゼがシュタッ、と取って見ると珍しいお金。真ん中に四角い穴が開いていて漢字が書いてある。
 「銭投げ捨てる方が犯罪では?」とローゼがエミリアに言う。
 「銭欲しさに軽犯罪超多発?」
 「奥さん怒ってたでしょうね」
 「かいしょーなしー!って?」とエミリアが笑った。
 ローゼも笑う。

 先がハートの矢

 「ハートじゃなくてハトじゃんよ」とローゼがつっこむ。
 どっか飛んでっちゃったよ。ハトが矢持ってるだけじゃんか! 
 「手紙ついてましたね」とおでこに手をあててハトを見送るエミリアが気がづいた。
 矢文か伝書鳩かどっちかにしろよ。
 「いいの? 手紙飛んでちゃったよ」とローゼが教えてあげると、
 「うむ、光の剣の購入依頼書だ」
 絶対詐欺だよ。だって実存確認された歴史ないじゃん。
 「それがついに見つかったのだ」と佐間之介。自信満々。

 ミョルニル

 ガスッとローゼの頭に当っておでこが天を向く。
 「トンカチ普通に痛いわ!」と投げ返す。
 佐間之介の顔面直撃。本気だったから流血事件。ドボドボ鼻血流れる鼻を抑えて佐間之介が言う。
 「投げると必ず命中し、そして投げた者のもとに必ず戻ってくる! 伝説通り‼」
 今百パー人為的。

 如意棒

 「これは伝説の獣人が愛用していた如意棒。――伸びよ如意棒ー‼」
 短かっ! 伸びても短かっ!
 「なにこれ、ただの突っ張り棒?」(ローゼ)
 
 癇癪擾乱乱痴気騒ぎ。
 エトセトラ、エトセトラ、のべつ幕無し――もうウンザリ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...