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第九十二話 真の伝説の剣とその他諸々
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「て、佐間之介は?」とローゼが探す。
エミリアが入っていった森の奥から戻ってきた佐間之介、佇んだまま放心状態。やや間があって、おもむろにゴザに置いてあった最後の剣を手に取って、絶望と憤怒に咽び泣きつつ、震えながら言った。
「唯一の友達だったのにー‼」
滂沱の涙の佐間之介。
「妖刀がおともだちって、なんかかわいそーね」と頬をかくローゼの横で、エミリアが「なんにでも卒業が大事ですよ」と彼を優しく見守る様子。仕方がないので、佐間之介が立ち直るのをローゼも待った。
第九幕 持つ者を覇者へと導く伝説の剣
「聖剣エクスカリバー!」佐間之介が叫ぶ。
「エクスカリバー⁉」(ローゼ&エミリア)
言わずと知れた超有名な伝説の剣。これを持つ者は、一国を統べるというスーパーソード。どこかの国の王位継承に必要な剣だとか、一本で一国の軍隊に勝る戦力になるとか、不老不死になれる、とまで言われている。
佐間之介が横に掲げてみせるその剣は、W字のごついキヨンのナイトソード。鞘には古代文字がびっしりと書かれている。
あれ? でも岩に刺さって抜けないのでは?
「いつもそうとは限らないのだ」と佐間之介がローゼに答えてくれた。
「そうなの?」
「うむ。山の頂上に刺さっていることもあれば、城の地下深くに刺さっていることもある。今回は柄に収まったまま抜けないパターンなのだ!」
ばばーん、と音が鳴るけれど、聞いてた二人全く信ぜず。
本物なら、剣身はオリハルコンのはずだ。ローゼが持ってる鉄のレイピアでは歯が立たない。たぶんエミリアのこぶしも同じだろう。
佐間之介は勝ちを確信したかのように微笑み、腰を落とす。柄に右手を添えて構えた。
ズワッと光る強風が巻き起こって、エミリアが「すごい霊気」と叫んだ。霊気を感じ取れないローゼでも分かるほどの凄まじい閃光を発する球状のスピリチュアル・パワー・フィールド(霊力領域)。法術でいうところの演唱中に発生する防御結界みたいなもの。
霊力無能(無いわけではない)なローゼは、佐間之介の覇気に気おされてオロオロし出した。すっごい情緒不安定。
エミリアを凌駕する高速ホバーで継ぎ足した佐間之介、稲妻の様な足跡線を残してローゼの懐に踏み込んでエクスカリバーを握る右手に力を込めた。なんとリカッソ(鍔元)が姿を現す。ついにエクスカリバーを抜いた佐間之介が「どーう!」と叫んだ。振り抜く動作と連続して横一文字に胴体を狙う。
「えっ? ちょっと――」と慌てふためくローゼが型崩れでバックステップして第四に構え、取って返してフォアパスステップ & スロープパス。なんとか気を取り直し、ポイントを下げてから振り上げる。バインドした剣のロングエッジ(ローゼ側の刃)にひねりながらレイピアを滑らせて受け流し、左オクスから喉を掻っ切る算段だ。
お互いの刃が触れる瞬間、迎え撃ったローゼが「えっ?」と叫んだ。エクスカリバーはレイピアをすり抜けてローゼの腹を一刀両断。ローゼは受け身も取れずに地面を転げる。
綺麗に振り抜いた佐間之介は、その姿勢のまま「ついにやった……」と感慨にふけて目を閉じほほ笑む。
「ローゼさん‼」と駆け寄るエミリア。
「ううう、まさか本物のエクスカリバーだったなんて……」
「傷は浅いですよ! 胴を繋げ合わせて止血すればッ――止血すればッ――……あれ?」
「うひゃひゃ」と笑い出すローゼ「エミリアちゃん、くすぐったよ、て胴体繋がってる?」
見ると、ちょっとの斬り傷すらないお腹。どこをどう見まわしても切れていない。
「ん?」と言うエミリアの視線の先を見ると、なんか落ちている。拾ったエミリアから受け取ったローゼは、それをマジマジと見て言った。
「剣――錆びた剣――の欠片?」
「そう言うオチ……ですか?」
多分錆びて抜けない剣を掴まされたのだろう。見た目が高価そうだから、錆びていなければそこそこの剣であったと思われるが、今となってはその価値微塵もない。
「ふっ」と笑う佐間之介。「今はまだ抜くべき時ではなかったということだ」
そう言いながら頬に流れる一筋の汗。
「拾うんだそれ」と呟くローゼを無視して、砕けて落ちた錆の塊を拾って鞘に納める。
「お前ごときのような剣客あいてに使うべきではない、という良い経験となった。いつかその時が来るまでこれは大事にしまっておこう」
「負け惜しみね」とローゼ。
「負け惜しみですね」とエミリア。
「うっ、ううう~」武器コレクションを広げた木の陰まで行って泣き崩れる佐間之介。
「分かっているんでしょうね」とエミリア。
「認めたくなかったのね」とローゼ。
「ええ~い! うるさい、うるさーい!」
佐間之介はそう言って、今度はゴザごと小道に引きずって来て攻撃準備。
昔のお巡りさんの銭
何かを投げつけられたローゼがシュタッ、と取って見ると珍しいお金。真ん中に四角い穴が開いていて漢字が書いてある。
「銭投げ捨てる方が犯罪では?」とローゼがエミリアに言う。
「銭欲しさに軽犯罪超多発?」
「奥さん怒ってたでしょうね」
「かいしょーなしー!って?」とエミリアが笑った。
ローゼも笑う。
先がハートの矢
「ハートじゃなくてハトじゃんよ」とローゼがつっこむ。
どっか飛んでっちゃったよ。ハトが矢持ってるだけじゃんか!
「手紙ついてましたね」とおでこに手をあててハトを見送るエミリアが気がづいた。
矢文か伝書鳩かどっちかにしろよ。
「いいの? 手紙飛んでちゃったよ」とローゼが教えてあげると、
「うむ、光の剣の購入依頼書だ」
絶対詐欺だよ。だって実存確認された歴史ないじゃん。
「それがついに見つかったのだ」と佐間之介。自信満々。
ミョルニル
ガスッとローゼの頭に当っておでこが天を向く。
「トンカチ普通に痛いわ!」と投げ返す。
佐間之介の顔面直撃。本気だったから流血事件。ドボドボ鼻血流れる鼻を抑えて佐間之介が言う。
「投げると必ず命中し、そして投げた者のもとに必ず戻ってくる! 伝説通り‼」
今百パー人為的。
如意棒
「これは伝説の獣人が愛用していた如意棒。――伸びよ如意棒ー‼」
短かっ! 伸びても短かっ!
「なにこれ、ただの突っ張り棒?」(ローゼ)
癇癪擾乱乱痴気騒ぎ。
エトセトラ、エトセトラ、のべつ幕無し――もうウンザリ。
エミリアが入っていった森の奥から戻ってきた佐間之介、佇んだまま放心状態。やや間があって、おもむろにゴザに置いてあった最後の剣を手に取って、絶望と憤怒に咽び泣きつつ、震えながら言った。
「唯一の友達だったのにー‼」
滂沱の涙の佐間之介。
「妖刀がおともだちって、なんかかわいそーね」と頬をかくローゼの横で、エミリアが「なんにでも卒業が大事ですよ」と彼を優しく見守る様子。仕方がないので、佐間之介が立ち直るのをローゼも待った。
第九幕 持つ者を覇者へと導く伝説の剣
「聖剣エクスカリバー!」佐間之介が叫ぶ。
「エクスカリバー⁉」(ローゼ&エミリア)
言わずと知れた超有名な伝説の剣。これを持つ者は、一国を統べるというスーパーソード。どこかの国の王位継承に必要な剣だとか、一本で一国の軍隊に勝る戦力になるとか、不老不死になれる、とまで言われている。
佐間之介が横に掲げてみせるその剣は、W字のごついキヨンのナイトソード。鞘には古代文字がびっしりと書かれている。
あれ? でも岩に刺さって抜けないのでは?
「いつもそうとは限らないのだ」と佐間之介がローゼに答えてくれた。
「そうなの?」
「うむ。山の頂上に刺さっていることもあれば、城の地下深くに刺さっていることもある。今回は柄に収まったまま抜けないパターンなのだ!」
ばばーん、と音が鳴るけれど、聞いてた二人全く信ぜず。
本物なら、剣身はオリハルコンのはずだ。ローゼが持ってる鉄のレイピアでは歯が立たない。たぶんエミリアのこぶしも同じだろう。
佐間之介は勝ちを確信したかのように微笑み、腰を落とす。柄に右手を添えて構えた。
ズワッと光る強風が巻き起こって、エミリアが「すごい霊気」と叫んだ。霊気を感じ取れないローゼでも分かるほどの凄まじい閃光を発する球状のスピリチュアル・パワー・フィールド(霊力領域)。法術でいうところの演唱中に発生する防御結界みたいなもの。
霊力無能(無いわけではない)なローゼは、佐間之介の覇気に気おされてオロオロし出した。すっごい情緒不安定。
エミリアを凌駕する高速ホバーで継ぎ足した佐間之介、稲妻の様な足跡線を残してローゼの懐に踏み込んでエクスカリバーを握る右手に力を込めた。なんとリカッソ(鍔元)が姿を現す。ついにエクスカリバーを抜いた佐間之介が「どーう!」と叫んだ。振り抜く動作と連続して横一文字に胴体を狙う。
「えっ? ちょっと――」と慌てふためくローゼが型崩れでバックステップして第四に構え、取って返してフォアパスステップ & スロープパス。なんとか気を取り直し、ポイントを下げてから振り上げる。バインドした剣のロングエッジ(ローゼ側の刃)にひねりながらレイピアを滑らせて受け流し、左オクスから喉を掻っ切る算段だ。
お互いの刃が触れる瞬間、迎え撃ったローゼが「えっ?」と叫んだ。エクスカリバーはレイピアをすり抜けてローゼの腹を一刀両断。ローゼは受け身も取れずに地面を転げる。
綺麗に振り抜いた佐間之介は、その姿勢のまま「ついにやった……」と感慨にふけて目を閉じほほ笑む。
「ローゼさん‼」と駆け寄るエミリア。
「ううう、まさか本物のエクスカリバーだったなんて……」
「傷は浅いですよ! 胴を繋げ合わせて止血すればッ――止血すればッ――……あれ?」
「うひゃひゃ」と笑い出すローゼ「エミリアちゃん、くすぐったよ、て胴体繋がってる?」
見ると、ちょっとの斬り傷すらないお腹。どこをどう見まわしても切れていない。
「ん?」と言うエミリアの視線の先を見ると、なんか落ちている。拾ったエミリアから受け取ったローゼは、それをマジマジと見て言った。
「剣――錆びた剣――の欠片?」
「そう言うオチ……ですか?」
多分錆びて抜けない剣を掴まされたのだろう。見た目が高価そうだから、錆びていなければそこそこの剣であったと思われるが、今となってはその価値微塵もない。
「ふっ」と笑う佐間之介。「今はまだ抜くべき時ではなかったということだ」
そう言いながら頬に流れる一筋の汗。
「拾うんだそれ」と呟くローゼを無視して、砕けて落ちた錆の塊を拾って鞘に納める。
「お前ごときのような剣客あいてに使うべきではない、という良い経験となった。いつかその時が来るまでこれは大事にしまっておこう」
「負け惜しみね」とローゼ。
「負け惜しみですね」とエミリア。
「うっ、ううう~」武器コレクションを広げた木の陰まで行って泣き崩れる佐間之介。
「分かっているんでしょうね」とエミリア。
「認めたくなかったのね」とローゼ。
「ええ~い! うるさい、うるさーい!」
佐間之介はそう言って、今度はゴザごと小道に引きずって来て攻撃準備。
昔のお巡りさんの銭
何かを投げつけられたローゼがシュタッ、と取って見ると珍しいお金。真ん中に四角い穴が開いていて漢字が書いてある。
「銭投げ捨てる方が犯罪では?」とローゼがエミリアに言う。
「銭欲しさに軽犯罪超多発?」
「奥さん怒ってたでしょうね」
「かいしょーなしー!って?」とエミリアが笑った。
ローゼも笑う。
先がハートの矢
「ハートじゃなくてハトじゃんよ」とローゼがつっこむ。
どっか飛んでっちゃったよ。ハトが矢持ってるだけじゃんか!
「手紙ついてましたね」とおでこに手をあててハトを見送るエミリアが気がづいた。
矢文か伝書鳩かどっちかにしろよ。
「いいの? 手紙飛んでちゃったよ」とローゼが教えてあげると、
「うむ、光の剣の購入依頼書だ」
絶対詐欺だよ。だって実存確認された歴史ないじゃん。
「それがついに見つかったのだ」と佐間之介。自信満々。
ミョルニル
ガスッとローゼの頭に当っておでこが天を向く。
「トンカチ普通に痛いわ!」と投げ返す。
佐間之介の顔面直撃。本気だったから流血事件。ドボドボ鼻血流れる鼻を抑えて佐間之介が言う。
「投げると必ず命中し、そして投げた者のもとに必ず戻ってくる! 伝説通り‼」
今百パー人為的。
如意棒
「これは伝説の獣人が愛用していた如意棒。――伸びよ如意棒ー‼」
短かっ! 伸びても短かっ!
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