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謎の美女が現れる
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始業式から続く多忙な一週間をなんとか乗り切り、帰宅してほっと一息つくと、大学時代の友人の瀧元から電話があった。明日の夜、恋人が友達を連れてくるから、お前を紹介したいがいいかというものだった。承諾の返事をしたあと、考えてみると、以前に付き合っていた女性とは、教師になって都会から離れたところに赴任したため疎遠になり、別れてしまった。それから四年間は、付き合う人はいなかった。自分は女性に対して、苦手意識があるのかもしれないと思っている。瀧元のように次々と交際相手が出現し、少し付き合っては別れるということは、自分にはできないと思う。瀧元と会うたびに、彼女はできたのか、いい人はいないのかと言っていたが、今回は女性を紹介する気になったようだ。しかし、瀧元が紹介する女性は、彼と同じように異性に気の多い人ではないかという心配があった。
土曜日は久しぶりに梅田まで出て、瀧元と落ち合った。広教と瀧元は、大学のとき軽音楽サークルで知り合い、バンド活動を続けていた仲である。大学院に進学した広教と、就職した瀧元は、卒業後も時々近況報告がてら、会っていた。
待ち合わせ場所のカフェに行くと瀧元が先に来ていた。
「どうや、新しい学校は』
「三年の担任になった。生徒はおとなしい。まだ猫かぶってるけどな」
「そうか三年だったら、大人っぽい女子もいるだろうな」
「そんな目で見てないからわからん」
「お前は相変わらずの堅物やな。で、今日はあいつが友達を紹介するって言うから、気に入ったら付き合ってやってくれ』
「向こうがこっちを気に入らんやろ」
「その悲観的なところがあかんのや。気に入ろうが気に入るまいが、今夜は楽しく遊べたらラッキーぐらいの気持ちでいろよ」
「お前こそ相変わらずやな」
ミナミのクラブで瀧元の彼女、千尋とその友人に落ち合った。
想像していたよりおとなしめの印象の女は、理帆と言って京都の大学に通っているという。
はじめは遠慮気味の広教も、瀧元と千尋の話に乗せられているうちに、くつろいで理帆と話ができるようになった。
高校の教師をしているというと、理帆は、自分も教師になろうかと迷っていた時期があったが、今は大学院に進むつもりだと言った。どんな研究をしているか広教がたずねると、少し間をおいて、理帆は、広く言えば、社会学、特に現代思想に関する人名をあげたが、広教は知らない名前だった。
身体の芯まで響く音楽に身を揺すられながら、四人で踊った。話すときは耳元に口を近づけて、大声で言葉を発しないと伝わらない。何度も理帆の耳元に口を近づけて話すうちに、広教は、この女とならうまくいきそうな気がしてきた。一方で、自分勝手な思い込みでもあろうと思った。理帆が口を近づけて、大学院では何を研究していたのかとたずねる。院のことは、千尋から聞いたといった。「ニマイガイ?」広教の答えを聞き取れなかったのか、何のことかわからなかったのか、理帆は広教の耳元でたずねた。そのとき周りの誰かにぶつかったようで、理帆はよろけて広教の頬に唇を押し当てた格好になった。宏一は倒れかかってきた理帆の身体を両手で支えて立たせてやった。理帆は広教の左の頬にまっ赤なリップがついているのを見て広教に笑いかけた。気づいた広教は、指先で拭き取ろうとする理帆の細い腰に手を回してぐっと抱き寄せた。理帆は嫌がることもなく、広教の顔を見上げて、頬を指さした。「このままでいいよ」と答えて、右頬を差し出すと、理帆は笑いながら「アホ」と言って、右頬を叩くふりをした。
土曜日は久しぶりに梅田まで出て、瀧元と落ち合った。広教と瀧元は、大学のとき軽音楽サークルで知り合い、バンド活動を続けていた仲である。大学院に進学した広教と、就職した瀧元は、卒業後も時々近況報告がてら、会っていた。
待ち合わせ場所のカフェに行くと瀧元が先に来ていた。
「どうや、新しい学校は』
「三年の担任になった。生徒はおとなしい。まだ猫かぶってるけどな」
「そうか三年だったら、大人っぽい女子もいるだろうな」
「そんな目で見てないからわからん」
「お前は相変わらずの堅物やな。で、今日はあいつが友達を紹介するって言うから、気に入ったら付き合ってやってくれ』
「向こうがこっちを気に入らんやろ」
「その悲観的なところがあかんのや。気に入ろうが気に入るまいが、今夜は楽しく遊べたらラッキーぐらいの気持ちでいろよ」
「お前こそ相変わらずやな」
ミナミのクラブで瀧元の彼女、千尋とその友人に落ち合った。
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はじめは遠慮気味の広教も、瀧元と千尋の話に乗せられているうちに、くつろいで理帆と話ができるようになった。
高校の教師をしているというと、理帆は、自分も教師になろうかと迷っていた時期があったが、今は大学院に進むつもりだと言った。どんな研究をしているか広教がたずねると、少し間をおいて、理帆は、広く言えば、社会学、特に現代思想に関する人名をあげたが、広教は知らない名前だった。
身体の芯まで響く音楽に身を揺すられながら、四人で踊った。話すときは耳元に口を近づけて、大声で言葉を発しないと伝わらない。何度も理帆の耳元に口を近づけて話すうちに、広教は、この女とならうまくいきそうな気がしてきた。一方で、自分勝手な思い込みでもあろうと思った。理帆が口を近づけて、大学院では何を研究していたのかとたずねる。院のことは、千尋から聞いたといった。「ニマイガイ?」広教の答えを聞き取れなかったのか、何のことかわからなかったのか、理帆は広教の耳元でたずねた。そのとき周りの誰かにぶつかったようで、理帆はよろけて広教の頬に唇を押し当てた格好になった。宏一は倒れかかってきた理帆の身体を両手で支えて立たせてやった。理帆は広教の左の頬にまっ赤なリップがついているのを見て広教に笑いかけた。気づいた広教は、指先で拭き取ろうとする理帆の細い腰に手を回してぐっと抱き寄せた。理帆は嫌がることもなく、広教の顔を見上げて、頬を指さした。「このままでいいよ」と答えて、右頬を差し出すと、理帆は笑いながら「アホ」と言って、右頬を叩くふりをした。
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