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北山公園を散歩
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秋になった。
美彌の家から二人で近所の植物園まで散歩した。
坂道を上り、バス道を横切って公園に入ると、変わった造りの温室がある。
色とりどりの花々がところ狭く置かれている。食虫植物の大きな袋が目につく。
小さなサボテンの鉢が飾られた棚には、ユーモラスな表情の人形が腰掛けていた。
美彌は珍しい種類の花の写真を熱心に撮っている。
「カフェのディスプレイの参考にするの」そう言って、ほほえんだ。
和風の建物があり、門までの小道の紅葉は格別に鮮やかだった。
二人は何度も立ち止まって、この赤がいいとか、こちらの黄色も素敵とか言い合った。
秋を満喫させる色彩の風情に酔いしれる。
和風庭園の苔の上に散った紅葉の葉の美しさは、今しか堪能できない美であった。
園内の遊歩道に沿って歩いていくと、中国風の建物があり、それを取り巻く池に散った紅葉の葉は絨毯を広げたようだ。
いろいろな角度から美彌は写真を撮っている。
「秋を切り取っておくのよ」そう言って、カメラを構える。
少し小高い丘の道を上っていくと、奥には静まりかえった池があった。
水面に周囲の木の紅葉が反映して、逆さ絵になっている。
静寂ということばがぴったりの場所で、東屋のベンチで休んで、持ってきたお茶を飲んだ。
「心が落ち着くね」
「毎日の喧騒を忘れそう。街から近いのに、こんなに静かなところがあるなんて贅沢ね」
「小さなしあわせ、でも、これ以上の幸せはないだろうね」
「本当にそう思う?」
「ああ、美彌といるだけで生きてるって感じ」
「泣かせたら大阪湾だしね」
「まだ言うか?阪上家の怨念が僕に取りついている…」
「バカ言わないの。ゆくゆくは二人で家を継ぐんだから」
「そうなるのかな。でもまだまだ先でしょ」
「あたしが追い出さない限りはね」
「おお怖っ」
「いつまでも大事にしてね」
来た道を戻って、公園の広場に出ると、子供が三四人、走り回って楽しそうに遊んでいる。
美彌はその姿を見ると、「子供かわいいな」と独り言を言った。
二組の親が芝生に腰を下ろして子供たちを見まもっている。
常二は美彌の気持ちを想像した。
「僕たちも子供ができたら、ここに連れてこようね」
「何人ほしい?」
「そうだな、美彌が産めるだけほしい」
「何人産ます気なの?一人でもたいへんよ」
「じゃあ、三人。女の子と男の子、組み合わせは美彌に任せる」
「いいわ、三人産んであげる」そう言って常二の腕をつかんだ。
「ママも喜ぶだろうね」
「ママは、若いおばあちゃんですねって言われるわ」
「それが楽しみなのよ、きっと」と言った。
空一面に、うろこ雲が広がっている。
「あの雲のように穏やかに流れていきたいな」
「ずっと一緒にね」
美彌の手を取り、固く握る。
「うふっ」といつもの声を出した。
美彌の家から二人で近所の植物園まで散歩した。
坂道を上り、バス道を横切って公園に入ると、変わった造りの温室がある。
色とりどりの花々がところ狭く置かれている。食虫植物の大きな袋が目につく。
小さなサボテンの鉢が飾られた棚には、ユーモラスな表情の人形が腰掛けていた。
美彌は珍しい種類の花の写真を熱心に撮っている。
「カフェのディスプレイの参考にするの」そう言って、ほほえんだ。
和風の建物があり、門までの小道の紅葉は格別に鮮やかだった。
二人は何度も立ち止まって、この赤がいいとか、こちらの黄色も素敵とか言い合った。
秋を満喫させる色彩の風情に酔いしれる。
和風庭園の苔の上に散った紅葉の葉の美しさは、今しか堪能できない美であった。
園内の遊歩道に沿って歩いていくと、中国風の建物があり、それを取り巻く池に散った紅葉の葉は絨毯を広げたようだ。
いろいろな角度から美彌は写真を撮っている。
「秋を切り取っておくのよ」そう言って、カメラを構える。
少し小高い丘の道を上っていくと、奥には静まりかえった池があった。
水面に周囲の木の紅葉が反映して、逆さ絵になっている。
静寂ということばがぴったりの場所で、東屋のベンチで休んで、持ってきたお茶を飲んだ。
「心が落ち着くね」
「毎日の喧騒を忘れそう。街から近いのに、こんなに静かなところがあるなんて贅沢ね」
「小さなしあわせ、でも、これ以上の幸せはないだろうね」
「本当にそう思う?」
「ああ、美彌といるだけで生きてるって感じ」
「泣かせたら大阪湾だしね」
「まだ言うか?阪上家の怨念が僕に取りついている…」
「バカ言わないの。ゆくゆくは二人で家を継ぐんだから」
「そうなるのかな。でもまだまだ先でしょ」
「あたしが追い出さない限りはね」
「おお怖っ」
「いつまでも大事にしてね」
来た道を戻って、公園の広場に出ると、子供が三四人、走り回って楽しそうに遊んでいる。
美彌はその姿を見ると、「子供かわいいな」と独り言を言った。
二組の親が芝生に腰を下ろして子供たちを見まもっている。
常二は美彌の気持ちを想像した。
「僕たちも子供ができたら、ここに連れてこようね」
「何人ほしい?」
「そうだな、美彌が産めるだけほしい」
「何人産ます気なの?一人でもたいへんよ」
「じゃあ、三人。女の子と男の子、組み合わせは美彌に任せる」
「いいわ、三人産んであげる」そう言って常二の腕をつかんだ。
「ママも喜ぶだろうね」
「ママは、若いおばあちゃんですねって言われるわ」
「それが楽しみなのよ、きっと」と言った。
空一面に、うろこ雲が広がっている。
「あの雲のように穏やかに流れていきたいな」
「ずっと一緒にね」
美彌の手を取り、固く握る。
「うふっ」といつもの声を出した。
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