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piece3 持てる者と、持てない者
黙って引き下がるヘタレ
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「あーあー。もう、カンナさん。やり過ぎだってー」
床で身体を丸めたまま、小さな声で呻いている悠里に、ユタカがゆっくりと歩み寄る。
「だーいじょうぶー? 悠里ちゃん?」
ユタカが膝をつき、悠里の強張った身体を抱き起こす。
「うっ……うぅ……」
背を伸ばすと、みぞおちに激痛が走る。
悠里は、ユタカの腕を拒むこともできず、力なく、その膝にもたれてしまう。
ユタカの手が何度も何度も、彼女の背を撫でる。
拒絶したくても、悠里は満足に腕を上げることすら、できなかった。
「あっはは。かわいー」
自分の膝の上に頭を乗せた状態で、動けずにいる悠里の姿に、ユタカは楽しげに笑う。
そして、歌うような明るい声音で、後輩たちに言った。
「オレに膝枕されちゃってる、可愛い悠里ちゃん。これ剛士が見たら、どんな顔するだろうなー?」
「いい加減、コロされますよ岸部さん!」
「柴崎さん、キレたらマジ怖いっしょ!見たことないけど」
後輩たちが、面白半分、呆れ半分で突っ込んでいる。
「え~? オレ、ぶん殴られちゃうかなあ? そしたらアイツ、キャプテンをクビになるから、それでもいいけど!」
「岸部さん、捨て身過ぎでしょ!」
「どんだけキライなんすか、柴崎さんのこと!」
「ってか、アイツがキレるワケねーじゃん。彼女を先輩に寝取られても、黙って引き下がるヘタレなんだぞ?」
後輩たちの言葉に、ユタカが馬鹿にしたような笑い声を上げる。
「エリカさん寝取られ事件のこと。オレ、剛士のクラスメイトにリークしたんだけどさあ」
「えっ、柴崎さんの生き恥を、わざわざクラスにバラしたんすか?」
「さすが、やることエグいっすよねぇ。いっそ清々しいですわ」
「ははっ、春休み終わった直後は、かなりイジられてたぜー? でもアイツ、クラスの奴らに何言われても、キレるどころか言い返しすらしなかったらしいし。マジでヘタレっしょ」
可笑しくてたまらない、という声音で、ユタカは話し続けた。
剛士の優しさと傷を貶める言いように、悠里の心に怒りが沸き上がる。
悔しい。
こんな人に、剛士を馬鹿にされたくない。
悠里は、みぞおちの痛みに苦しみながらも、グッと両手を握り締める。
そんな彼女の様子を気にも留めず、ユタカは続けた。
「エリカさん、めっちゃ美人だったのに。もったいねーよな、剛士のヤツ」
「あー、エリカさん」
後輩2人が、顔を見合わせた。
「オレらは写真でしか見たことないけど、確かにめっちゃ綺麗でしたわ」
「だろ? すげー色っぽかったし! ショージキ、オレ何回かオカズにしたし!」
「サイアク!!」
「ヒトの彼女使って、ナニやってんすか!!」
後輩たちが、手を叩いて笑い出す。
「まあ、剛士って、オンナの趣味良いよな?」
後輩たちの笑い声に包まれ、ユタカは満足そうに言った。
「エリカさんの次は、悠里ちゃんでしょー? 綺麗系と可愛い系を網羅とか、贅沢すぎ」
後輩2人も、大きく頷く。
「確かに! 綺麗系と可愛い系! 言われてみりゃ、彼女さんの系統、全然違いますね?」
「柴崎さんって、どっちのがタイプなんだろー?」
カンナが、不機嫌に口を挟む。
「はあ? そんなのエリカに決まってんじゃん。こんなちっさい、ガキみたいな女、剛士くんに相応しくない」
「あっははー。カンナさん的には、そうだろうねー」
ユタカはカンナの嫉妬心を、あっけらかんと聞き流した。
「まあでも、オレもエリカさんのが好みかなー? セクシーだけど、笑うと可愛くて、ギャップ萌えだったわ」
「岸部さんには聞いてねぇ~!」
ユタカの軽口には突っ込み慣れているらしく、後輩は流れるように応える。
もう1人の後輩も、笑いながら言った。
「マジっすか。オレは、清純っぽい悠里ちゃんのが好きだなー。オレ色に染めたくなる感じ!」
「それはわかる!」
トントン、とリズム良く悠里の背中を叩きながら、ユタカは頷いた。
「ちょい幼くて、何も知らない感じが、オレ好みに育ててやろうって思えてイイかも。リアル光源氏!」
「キタ源氏物語ー」
「マジ紫式部ー」
身を固くする悠里をよそに、男子3人は、大声で笑い合った。
カンナは、ふん、と小さく鼻を鳴らし、悠里を抱えたまま笑みを浮かべているユタカを見下ろした。
ユタカは、悠里の震える背中と長い髪を撫でながら、探るようにカンナを見つめる。
「ってか、カンナさん。さっきの話、マジなの?こっちの大学やめて、明日地元帰るって。二度と、こっちには来られないって?」
「……そうよ」
「えー? 寂しいじゃん。なんでオレに教えてくれなかったのー?」
「アンタに伝える義理なんかない。エリカにさえ、まだ言ってないのに」
「冷てぇなあ」
悠里の髪に指を盛んに絡ませ、好きなように弄びながらユタカは笑った。
「オレ、こんなヤバいことにまで手を貸して、カンナさんに尽くしてるのにー」
カンナは鼻で笑い、応える。
「ハイハイ、今夜空けときなよ。最後だし、いっぱい、してあげるよ」
「いぇ~!」
ユタカが大袈裟に歓声を上げた。
「楽しみにしてるよ、カンナさん。今夜は寝かさないよ~?」
「ははっ、キモ」
2人の会話を遠くに聞きながら、悠里は必死に腕に力を込め、身を起こそうとする。
自分の髪。
剛士が、綺麗だと褒めてくれる髪。
こんな人に、触られたくない。
ユタカの手から、逃れようともがく。
「んー? 悠里ちゃん、動いて大丈夫なのー? 遠慮なく、オレにもたれてていいのよ?」
ユタカが、悠里の身体を胸に抱き寄せ、あやすように髪を撫でつけた。
「い、や……っ」
みぞおちの鈍痛を堪え、悠里は腕を突っ張り、ユタカから距離をとろうとする。
痛くて痛くて、声が殆ど出ない。
代わりに悠里の両目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
「あーあー、こんなに泣いちゃって。かわいそーに」
ユタカが、唇の片側だけを吊り上げた、意地の悪い笑みを見せる。
ユタカは片腕で悠里を抱き竦めたまま、濡れた頬に触れようとした。
しかし悠里は力を振り絞り、パシンッとその手を払い除ける。
悠里は唇を噛み締め、キッと、ユタカを睨みつけた。
「おっ?」
ユタカは悠里を抱く腕は緩めず、笑い出した。
「キミって、大人しそうに見えて、案外気が強いよね? いいと思うよ? オレ、強い子大好き!」
悠里は答えず、彼の胸を叩くように両腕をバタつかせた。
ユタカは楽しげに笑いを深めると、悠里の左手を捕らえた。
そうして恋人繋ぎのように、無理やり指を絡めてみせる。
「わ、悠里ちゃん、手ぇ小さいね?」
「やっ!」
慌てて悠里は手を引っ込めようとしたが、ユタカがそれを許さない。
笑いながら指に力を込め、悠里の手を握り締めた。
「あっ……!」
痛い。
悠里は思わず、小さな悲鳴を漏らす。
ギリギリと、締め上げるように手を捕まえられ、悠里は眉を顰めた。
「……男って、チカラ、強いでしょ?」
ユタカがニヤリと笑い、探るように悠里の顔を覗き込んだ。
「これでも、半分もチカラ入れてないよ? どう、悠里ちゃん?……怖い?」
心が握り潰されていくような、恐怖だった。
剛士と手を繋いだとき。抱きしめられたとき。
痛かったことなんて、一度もない。
いつも優しくて、暖かくて。
剛士に触れられると、安心した。
嬉しくて、心地よくて、幸せだった。
もっと触れて欲しいと、思った。
こんな状況で初めて、剛士がどんなに気を遣って、そっと、自分に触れてくれていたのかを知る。
後輩2人も、そしてカンナも、うすら笑いを浮かべながら、ユタカを見つめていた。
いまこの場にいる人はみんな、自分の味方ではない。
親友も、先生も、ここにいない。
自分は、ひとりだ。
心が、崩れていく。
もう、駄目かも、知れない……
「ゴウ、さん……」
涙に混じり、心の叫びが零れ落ちた。
「助けて……」
「……ははっ。いいなー剛士。こんな状況で名前呼ばれるほど、好かれて。そんなに剛士のこと、好き?」
ユタカが、せせら笑った。
「キミがいま、こんな目に遭ってるのは、その剛士のせいなんだけどねー」
指を絡めたままだった悠里の左手を無理やり引き寄せ、ユタカが再び彼女を腕の中に閉じ込める。
悠里は身体を縮め、少しでもユタカに触れてしまう部分を少なくしようと足掻く。
しかし、そうすればするほど、ユタカは彼女を嘲笑うかのように、その華奢な身体を押さえつけた。
「うぅ……っ」
敵わない。無力な自分を思い知る。
苦しげに揺れた悠里の瞳に、涙が滲んだ。
ユタカが口にした言葉が、悠里の脳裏に悲しく蘇った。
『剛士に嫌がらせしたい』
「……どうして、こんな……」
悲しくて、悔しくて、悠里はユタカに問いかける。
剛士はいつも、バスケ部のために、がんばっているのに。
「貴方も、バスケ部なのに」
剛士の努力を、この人は、間近で見ているはずなのに。
「貴方は、ゴウさんの、仲間なのに……」
剛士は部員を、仲間を、大切に思っているのに……
悠里は、ユタカの見えない本心に向かい、じっと目を凝らした。
床で身体を丸めたまま、小さな声で呻いている悠里に、ユタカがゆっくりと歩み寄る。
「だーいじょうぶー? 悠里ちゃん?」
ユタカが膝をつき、悠里の強張った身体を抱き起こす。
「うっ……うぅ……」
背を伸ばすと、みぞおちに激痛が走る。
悠里は、ユタカの腕を拒むこともできず、力なく、その膝にもたれてしまう。
ユタカの手が何度も何度も、彼女の背を撫でる。
拒絶したくても、悠里は満足に腕を上げることすら、できなかった。
「あっはは。かわいー」
自分の膝の上に頭を乗せた状態で、動けずにいる悠里の姿に、ユタカは楽しげに笑う。
そして、歌うような明るい声音で、後輩たちに言った。
「オレに膝枕されちゃってる、可愛い悠里ちゃん。これ剛士が見たら、どんな顔するだろうなー?」
「いい加減、コロされますよ岸部さん!」
「柴崎さん、キレたらマジ怖いっしょ!見たことないけど」
後輩たちが、面白半分、呆れ半分で突っ込んでいる。
「え~? オレ、ぶん殴られちゃうかなあ? そしたらアイツ、キャプテンをクビになるから、それでもいいけど!」
「岸部さん、捨て身過ぎでしょ!」
「どんだけキライなんすか、柴崎さんのこと!」
「ってか、アイツがキレるワケねーじゃん。彼女を先輩に寝取られても、黙って引き下がるヘタレなんだぞ?」
後輩たちの言葉に、ユタカが馬鹿にしたような笑い声を上げる。
「エリカさん寝取られ事件のこと。オレ、剛士のクラスメイトにリークしたんだけどさあ」
「えっ、柴崎さんの生き恥を、わざわざクラスにバラしたんすか?」
「さすが、やることエグいっすよねぇ。いっそ清々しいですわ」
「ははっ、春休み終わった直後は、かなりイジられてたぜー? でもアイツ、クラスの奴らに何言われても、キレるどころか言い返しすらしなかったらしいし。マジでヘタレっしょ」
可笑しくてたまらない、という声音で、ユタカは話し続けた。
剛士の優しさと傷を貶める言いように、悠里の心に怒りが沸き上がる。
悔しい。
こんな人に、剛士を馬鹿にされたくない。
悠里は、みぞおちの痛みに苦しみながらも、グッと両手を握り締める。
そんな彼女の様子を気にも留めず、ユタカは続けた。
「エリカさん、めっちゃ美人だったのに。もったいねーよな、剛士のヤツ」
「あー、エリカさん」
後輩2人が、顔を見合わせた。
「オレらは写真でしか見たことないけど、確かにめっちゃ綺麗でしたわ」
「だろ? すげー色っぽかったし! ショージキ、オレ何回かオカズにしたし!」
「サイアク!!」
「ヒトの彼女使って、ナニやってんすか!!」
後輩たちが、手を叩いて笑い出す。
「まあ、剛士って、オンナの趣味良いよな?」
後輩たちの笑い声に包まれ、ユタカは満足そうに言った。
「エリカさんの次は、悠里ちゃんでしょー? 綺麗系と可愛い系を網羅とか、贅沢すぎ」
後輩2人も、大きく頷く。
「確かに! 綺麗系と可愛い系! 言われてみりゃ、彼女さんの系統、全然違いますね?」
「柴崎さんって、どっちのがタイプなんだろー?」
カンナが、不機嫌に口を挟む。
「はあ? そんなのエリカに決まってんじゃん。こんなちっさい、ガキみたいな女、剛士くんに相応しくない」
「あっははー。カンナさん的には、そうだろうねー」
ユタカはカンナの嫉妬心を、あっけらかんと聞き流した。
「まあでも、オレもエリカさんのが好みかなー? セクシーだけど、笑うと可愛くて、ギャップ萌えだったわ」
「岸部さんには聞いてねぇ~!」
ユタカの軽口には突っ込み慣れているらしく、後輩は流れるように応える。
もう1人の後輩も、笑いながら言った。
「マジっすか。オレは、清純っぽい悠里ちゃんのが好きだなー。オレ色に染めたくなる感じ!」
「それはわかる!」
トントン、とリズム良く悠里の背中を叩きながら、ユタカは頷いた。
「ちょい幼くて、何も知らない感じが、オレ好みに育ててやろうって思えてイイかも。リアル光源氏!」
「キタ源氏物語ー」
「マジ紫式部ー」
身を固くする悠里をよそに、男子3人は、大声で笑い合った。
カンナは、ふん、と小さく鼻を鳴らし、悠里を抱えたまま笑みを浮かべているユタカを見下ろした。
ユタカは、悠里の震える背中と長い髪を撫でながら、探るようにカンナを見つめる。
「ってか、カンナさん。さっきの話、マジなの?こっちの大学やめて、明日地元帰るって。二度と、こっちには来られないって?」
「……そうよ」
「えー? 寂しいじゃん。なんでオレに教えてくれなかったのー?」
「アンタに伝える義理なんかない。エリカにさえ、まだ言ってないのに」
「冷てぇなあ」
悠里の髪に指を盛んに絡ませ、好きなように弄びながらユタカは笑った。
「オレ、こんなヤバいことにまで手を貸して、カンナさんに尽くしてるのにー」
カンナは鼻で笑い、応える。
「ハイハイ、今夜空けときなよ。最後だし、いっぱい、してあげるよ」
「いぇ~!」
ユタカが大袈裟に歓声を上げた。
「楽しみにしてるよ、カンナさん。今夜は寝かさないよ~?」
「ははっ、キモ」
2人の会話を遠くに聞きながら、悠里は必死に腕に力を込め、身を起こそうとする。
自分の髪。
剛士が、綺麗だと褒めてくれる髪。
こんな人に、触られたくない。
ユタカの手から、逃れようともがく。
「んー? 悠里ちゃん、動いて大丈夫なのー? 遠慮なく、オレにもたれてていいのよ?」
ユタカが、悠里の身体を胸に抱き寄せ、あやすように髪を撫でつけた。
「い、や……っ」
みぞおちの鈍痛を堪え、悠里は腕を突っ張り、ユタカから距離をとろうとする。
痛くて痛くて、声が殆ど出ない。
代わりに悠里の両目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
「あーあー、こんなに泣いちゃって。かわいそーに」
ユタカが、唇の片側だけを吊り上げた、意地の悪い笑みを見せる。
ユタカは片腕で悠里を抱き竦めたまま、濡れた頬に触れようとした。
しかし悠里は力を振り絞り、パシンッとその手を払い除ける。
悠里は唇を噛み締め、キッと、ユタカを睨みつけた。
「おっ?」
ユタカは悠里を抱く腕は緩めず、笑い出した。
「キミって、大人しそうに見えて、案外気が強いよね? いいと思うよ? オレ、強い子大好き!」
悠里は答えず、彼の胸を叩くように両腕をバタつかせた。
ユタカは楽しげに笑いを深めると、悠里の左手を捕らえた。
そうして恋人繋ぎのように、無理やり指を絡めてみせる。
「わ、悠里ちゃん、手ぇ小さいね?」
「やっ!」
慌てて悠里は手を引っ込めようとしたが、ユタカがそれを許さない。
笑いながら指に力を込め、悠里の手を握り締めた。
「あっ……!」
痛い。
悠里は思わず、小さな悲鳴を漏らす。
ギリギリと、締め上げるように手を捕まえられ、悠里は眉を顰めた。
「……男って、チカラ、強いでしょ?」
ユタカがニヤリと笑い、探るように悠里の顔を覗き込んだ。
「これでも、半分もチカラ入れてないよ? どう、悠里ちゃん?……怖い?」
心が握り潰されていくような、恐怖だった。
剛士と手を繋いだとき。抱きしめられたとき。
痛かったことなんて、一度もない。
いつも優しくて、暖かくて。
剛士に触れられると、安心した。
嬉しくて、心地よくて、幸せだった。
もっと触れて欲しいと、思った。
こんな状況で初めて、剛士がどんなに気を遣って、そっと、自分に触れてくれていたのかを知る。
後輩2人も、そしてカンナも、うすら笑いを浮かべながら、ユタカを見つめていた。
いまこの場にいる人はみんな、自分の味方ではない。
親友も、先生も、ここにいない。
自分は、ひとりだ。
心が、崩れていく。
もう、駄目かも、知れない……
「ゴウ、さん……」
涙に混じり、心の叫びが零れ落ちた。
「助けて……」
「……ははっ。いいなー剛士。こんな状況で名前呼ばれるほど、好かれて。そんなに剛士のこと、好き?」
ユタカが、せせら笑った。
「キミがいま、こんな目に遭ってるのは、その剛士のせいなんだけどねー」
指を絡めたままだった悠里の左手を無理やり引き寄せ、ユタカが再び彼女を腕の中に閉じ込める。
悠里は身体を縮め、少しでもユタカに触れてしまう部分を少なくしようと足掻く。
しかし、そうすればするほど、ユタカは彼女を嘲笑うかのように、その華奢な身体を押さえつけた。
「うぅ……っ」
敵わない。無力な自分を思い知る。
苦しげに揺れた悠里の瞳に、涙が滲んだ。
ユタカが口にした言葉が、悠里の脳裏に悲しく蘇った。
『剛士に嫌がらせしたい』
「……どうして、こんな……」
悲しくて、悔しくて、悠里はユタカに問いかける。
剛士はいつも、バスケ部のために、がんばっているのに。
「貴方も、バスケ部なのに」
剛士の努力を、この人は、間近で見ているはずなのに。
「貴方は、ゴウさんの、仲間なのに……」
剛士は部員を、仲間を、大切に思っているのに……
悠里は、ユタカの見えない本心に向かい、じっと目を凝らした。
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