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piece3 明確な悪意
仮病
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いま、剛士の声が聴けたら、どんなにいいだろう。
でも、駄目だ。
ついこの間、部活中の剛士に電話をしてしまったばかり。
バスケ部に心血を注いでいる彼の、邪魔をしたくない。
クラスメートや、電車内の見知らぬ人にまで心配をさせてしまう自分。
こんな状態で、剛士と話すわけにはいかない……
悠里は、スマートフォンに入れたスケジュールを確認する。
今日は、木曜日。
今週の土曜日に、いつもの4人で集まる予定があった。
悠里は、そっとスマートフォンを握りしめ、深呼吸をする。
大丈夫。すぐに、剛士に会える。
今夜と、明日1日。我慢すれば良いだけだ。
むしろ、それまでに自分は、しっかりと気持ちを立て直さなくては。
彩奈にも拓真にも、そして剛士にも。
誰にも心配をかけたくない――
「……寝よう」
家族には申し訳ないが、今日だけ、お腹が痛いふりをして、休ませて貰おう。
悠里は、まだ仕事中であろう母親にメッセージを送る。
『ごめん、お腹が少し痛いので寝ます。悠人の晩ごはん、何か買ってきてあげて』
時刻は18時過ぎ。
弟の悠人が帰宅するのは、今日は20時ぐらいのはずだ。
きっと母は、今日も残業の予定を組んでいただろうな、と胸が痛む。
忙しい母と父を少しでも助けたくて、いつも担当している晩ごはん作り。
それを自分の都合でサボることに、後ろめたさを感じる。
がんばれない自分を嫌悪する。
「……最低だ、私」
悠人にもメッセージを送り、悠里は手早くシャワーだけを浴びに行った。
母からは、すぐに返信が来ていた。
『了解です。大丈夫? 今から帰るから、待っててね』
鼻の奥がツンと痛み、悠里は唇を噛んだ。
優しいメッセージへの感謝と、嘘をついた罪悪感が、ないまぜになる。
それは今日感じた、様々な感情と一緒にポロポロと零れ落ちて、悠里の頬を濡らしていった。
タオルに顔をうずめ、悠里はベッドの中で丸くなる。
今ならまだ、誰もいない。
小さくしゃくり上げながら、悠里は1人、感情を流し続けた。
でも、駄目だ。
ついこの間、部活中の剛士に電話をしてしまったばかり。
バスケ部に心血を注いでいる彼の、邪魔をしたくない。
クラスメートや、電車内の見知らぬ人にまで心配をさせてしまう自分。
こんな状態で、剛士と話すわけにはいかない……
悠里は、スマートフォンに入れたスケジュールを確認する。
今日は、木曜日。
今週の土曜日に、いつもの4人で集まる予定があった。
悠里は、そっとスマートフォンを握りしめ、深呼吸をする。
大丈夫。すぐに、剛士に会える。
今夜と、明日1日。我慢すれば良いだけだ。
むしろ、それまでに自分は、しっかりと気持ちを立て直さなくては。
彩奈にも拓真にも、そして剛士にも。
誰にも心配をかけたくない――
「……寝よう」
家族には申し訳ないが、今日だけ、お腹が痛いふりをして、休ませて貰おう。
悠里は、まだ仕事中であろう母親にメッセージを送る。
『ごめん、お腹が少し痛いので寝ます。悠人の晩ごはん、何か買ってきてあげて』
時刻は18時過ぎ。
弟の悠人が帰宅するのは、今日は20時ぐらいのはずだ。
きっと母は、今日も残業の予定を組んでいただろうな、と胸が痛む。
忙しい母と父を少しでも助けたくて、いつも担当している晩ごはん作り。
それを自分の都合でサボることに、後ろめたさを感じる。
がんばれない自分を嫌悪する。
「……最低だ、私」
悠人にもメッセージを送り、悠里は手早くシャワーだけを浴びに行った。
母からは、すぐに返信が来ていた。
『了解です。大丈夫? 今から帰るから、待っててね』
鼻の奥がツンと痛み、悠里は唇を噛んだ。
優しいメッセージへの感謝と、嘘をついた罪悪感が、ないまぜになる。
それは今日感じた、様々な感情と一緒にポロポロと零れ落ちて、悠里の頬を濡らしていった。
タオルに顔をうずめ、悠里はベッドの中で丸くなる。
今ならまだ、誰もいない。
小さくしゃくり上げながら、悠里は1人、感情を流し続けた。
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