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piece3 明確な悪意
定まらない思考
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『私は、昔じゃないと思うんだよね』
突然、悠里の耳にカンナの言葉が甦った。
ハッとして、悠里は肩を震わせる。
その途端、悠里が必死に胸に描いていた、剛士の笑顔も声も、何もかもが消え失せた。
代わりに、12月、あのカラオケボックスで見た剛士の悲しい瞳、苦しい表情が悠里を支配する。
エリカと出会った瞬間、痛みに揺れて、俯いた剛士。
悠里の方を見ることもなく、1人、帰っていった剛士が。
『剛士くんも、ホントは別れたくなかったんだよ』
『エリカを許してあげられなかったこと、ずっと後悔してるんだよ』
『2人が別れたのは、間違い』
カンナに投げつけられた言葉の数々が、悠里の胸に突き刺さる。
その度に、ズキリズキリと鋭い痛みが走った。
『ゴウさんがどんなに傷ついて、今でも苦しんでいるか……』
カンナに訴えた自分の言葉が、脳裏をよぎる。
そう、剛士は今も苦しんでいる。
剛士の傷は、ずっとずっと癒えぬまま、彼の胸に在り続けている。
――それは、昔のことなんかじゃないからだ。
「あ、れ……?」
思考が、定まらなくなってきた。
鞄に入っているフォトブック。
そこに詰まっている思い出を、自分が勝手に、『過去』のものだと位置付けていいのだろうか。
それは、剛士の傷を無視したことにはならないだろうか。
仮に『過去』だとしても、自分はそれを超えられるだけの『今』を、剛士にもたらしているのだろうか――
「……君、大丈夫?」
「え?」
吊り革を持って立つ悠里。
その前に座っていた、中年のサラリーマンらしき男性が、心配そうに声を掛けてきた。
「顔色が悪いけど……」
席を譲ろうと腰を浮かせかけた男性に、悠里は慌てて頭を下げる。
「だ、大丈夫です。すみません、もう次で降りますから」
本当に、いま自分は、どんな顔をしているのだろう。
――しっかり、しなきゃ。
悠里は唇を噛み、必死に笑顔を作って男性にお礼を言った。
突然、悠里の耳にカンナの言葉が甦った。
ハッとして、悠里は肩を震わせる。
その途端、悠里が必死に胸に描いていた、剛士の笑顔も声も、何もかもが消え失せた。
代わりに、12月、あのカラオケボックスで見た剛士の悲しい瞳、苦しい表情が悠里を支配する。
エリカと出会った瞬間、痛みに揺れて、俯いた剛士。
悠里の方を見ることもなく、1人、帰っていった剛士が。
『剛士くんも、ホントは別れたくなかったんだよ』
『エリカを許してあげられなかったこと、ずっと後悔してるんだよ』
『2人が別れたのは、間違い』
カンナに投げつけられた言葉の数々が、悠里の胸に突き刺さる。
その度に、ズキリズキリと鋭い痛みが走った。
『ゴウさんがどんなに傷ついて、今でも苦しんでいるか……』
カンナに訴えた自分の言葉が、脳裏をよぎる。
そう、剛士は今も苦しんでいる。
剛士の傷は、ずっとずっと癒えぬまま、彼の胸に在り続けている。
――それは、昔のことなんかじゃないからだ。
「あ、れ……?」
思考が、定まらなくなってきた。
鞄に入っているフォトブック。
そこに詰まっている思い出を、自分が勝手に、『過去』のものだと位置付けていいのだろうか。
それは、剛士の傷を無視したことにはならないだろうか。
仮に『過去』だとしても、自分はそれを超えられるだけの『今』を、剛士にもたらしているのだろうか――
「……君、大丈夫?」
「え?」
吊り革を持って立つ悠里。
その前に座っていた、中年のサラリーマンらしき男性が、心配そうに声を掛けてきた。
「顔色が悪いけど……」
席を譲ろうと腰を浮かせかけた男性に、悠里は慌てて頭を下げる。
「だ、大丈夫です。すみません、もう次で降りますから」
本当に、いま自分は、どんな顔をしているのだろう。
――しっかり、しなきゃ。
悠里は唇を噛み、必死に笑顔を作って男性にお礼を言った。
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