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piece5 悠里の戦い
脅迫
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カンナが、落としていた悠里の写真を踏みつけ、ぐしゃりと廊下に擦り付けた。
腕を掴むカンナの指に力がこもり、悠里は身を竦ませる。
カンナが、にやりと口の端を歪ませた。
「私の知り合いがね、アンタと写真撮りたいんだって。放課後、付き合いなよ」
「……お断りします」
勇気を振り絞って、悠里は答えた。
そして、カンナの腕を振りほどき、距離を取った。
「……ふぅん?」
怒り出すかと思ったが、カンナは何故か、ゆったりと冷笑を浮かべる。
「ああ、そうなんだ。悠里ちゃんは来ないんだ。ざんねーん、じゃあ仕方ないね」
悠里は、訝しげに眉を顰める。
カンナが楽しそうに、もう1枚の写真を撮り出してみせた。
赤メガネ。ダークカラーのロングヘア。一眼レフ。
「あ……」
悠里は目を見開き、唇を噛み締めた。
「……石川彩奈ちゃん。だっけ」
ヒラヒラと写真を振り、ニィッとカンナは笑みを広げる。
それはカメラを構え、誰かを撮っている彩奈の姿だった。
被写体と何かを話していたのだろう、赤メガネの下の目が、キラキラと輝いている。
自信に満ちた彼女の明るい笑顔に惹き込まれる、美しい1枚だった。
彩奈とともに初めて勇誠学園に行き、拓真に会ったときに言われた言葉が、鮮明に蘇る。
『知ってるよ。橘悠里ちゃん。と、石川彩奈ちゃん。でしょ? キミたち、割と有名だもん』
そう。学祭では彩奈の写真も撮られ、勇誠学園で出回っていたのだ。
これまで実際には、彩奈の写真を見る機会はなかった。
それがまさか、こんな形で見ることになるなんて――
カンナは、彩奈の写真と悠里を見比べながら囁く。
「この子も、けっこう人気あるんだねえ? 悠里ちゃんより好きって言ってるヤツも、割といたよ?」
ズキリ、ズキリ、と悠里の胸が軋む。
「アンタが来ないなら、いいよ。こっち呼ぶから」
「やめて!」
悠里は目を揺らめかせて叫んだ。
「彩奈を、巻き込まないでください……」
カンナが、勝ち誇ったように冷笑を浮かべた。
悠里は、涙を堪えて尋ねる。
「……放課後。どこに行けばいいですか」
「最初からそう言えよ、クソビッチ」
カンナは、駅前のカラオケボックスを指定し、満足げに去っていった。
腕を掴むカンナの指に力がこもり、悠里は身を竦ませる。
カンナが、にやりと口の端を歪ませた。
「私の知り合いがね、アンタと写真撮りたいんだって。放課後、付き合いなよ」
「……お断りします」
勇気を振り絞って、悠里は答えた。
そして、カンナの腕を振りほどき、距離を取った。
「……ふぅん?」
怒り出すかと思ったが、カンナは何故か、ゆったりと冷笑を浮かべる。
「ああ、そうなんだ。悠里ちゃんは来ないんだ。ざんねーん、じゃあ仕方ないね」
悠里は、訝しげに眉を顰める。
カンナが楽しそうに、もう1枚の写真を撮り出してみせた。
赤メガネ。ダークカラーのロングヘア。一眼レフ。
「あ……」
悠里は目を見開き、唇を噛み締めた。
「……石川彩奈ちゃん。だっけ」
ヒラヒラと写真を振り、ニィッとカンナは笑みを広げる。
それはカメラを構え、誰かを撮っている彩奈の姿だった。
被写体と何かを話していたのだろう、赤メガネの下の目が、キラキラと輝いている。
自信に満ちた彼女の明るい笑顔に惹き込まれる、美しい1枚だった。
彩奈とともに初めて勇誠学園に行き、拓真に会ったときに言われた言葉が、鮮明に蘇る。
『知ってるよ。橘悠里ちゃん。と、石川彩奈ちゃん。でしょ? キミたち、割と有名だもん』
そう。学祭では彩奈の写真も撮られ、勇誠学園で出回っていたのだ。
これまで実際には、彩奈の写真を見る機会はなかった。
それがまさか、こんな形で見ることになるなんて――
カンナは、彩奈の写真と悠里を見比べながら囁く。
「この子も、けっこう人気あるんだねえ? 悠里ちゃんより好きって言ってるヤツも、割といたよ?」
ズキリ、ズキリ、と悠里の胸が軋む。
「アンタが来ないなら、いいよ。こっち呼ぶから」
「やめて!」
悠里は目を揺らめかせて叫んだ。
「彩奈を、巻き込まないでください……」
カンナが、勝ち誇ったように冷笑を浮かべた。
悠里は、涙を堪えて尋ねる。
「……放課後。どこに行けばいいですか」
「最初からそう言えよ、クソビッチ」
カンナは、駅前のカラオケボックスを指定し、満足げに去っていった。
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