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piece5 悠里の戦い
滲む涙
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悠里は、ぎゅっと両手を握りしめる。
退路を、断たれた。
自分が逃げれば、カンナは本当に彩奈に接触するだろう。
カンナに罵られ、見知らぬ男子生徒に囲まれ、触られる。
彩奈を、あんな目に遭わせるわけにはいかない。
――ゴウさん……
助けて欲しい。全てを打ち明けて、彼に縋りたい。
相談すればきっと、剛士は飛んできてくれる。
部活の時間を、投げ打ってでも。
――駄目だ。
彼に部活の時間を捨てさせることになったら。
自分は、剛士の傍にいる資格がない……
エリカと別れたとき、自分を顧みず、バスケ部のために尽くした剛士。
青いイルミネーションの下で聞いた、剛士の苦しみと、願いを思い起こす。
『俺1人の感情で、バスケ部を壊すわけにはいかなかったから。先輩から託された部を、仲間も後輩もいる部を、俺が守らなきゃいけなかったから』
『俺、みんなとバスケがしたかったから。仲間と、楽しくバスケに打ち込める場所を守りたかった』
彼が、必死に守り抜いてきた、バスケ部の時間。
それを損ねてしまうのは、剛士を裏切ることと同じだと思った。
剛士を、守りたい。何としてでも。
悠里は固く目を閉じ、涙を心に押し込める。
――大丈夫。
がんばれるって、ゴウさんに言ったじゃない。
もう少し。もう少しだけ、我慢すればいい。
卒業式まで、たったの2日だ。
耐えてみせる。
それだけのことができなくて、剛士の傍にいられるはずがない。
「……大丈夫」
悠里は声に出して、自分に言い聞かせる。
昼休み終了の鐘が鳴った。
悠里は必死に息を吸い込み、気持ちを立て直す。
これから教室に戻り、彩奈と顔を合わせる。
気取られてはいけない。絶対に。
大切な親友を、カンナには触れさせない。
彩奈は、自分が守るんだ。
彩奈の笑顔を思い浮かべ、悠里は気持ちを奮い立たせた。
その日は放課後まで、悠里は彩奈の傍にいた。
他の友人たちとお喋りをしているときも、ぴったりと親友に寄り添い、ニコニコ微笑んでいた。
彩奈が、可笑しそうに問いかける。
「何か、いいことでもあった? 悠里」
「ふふ。何でもないよ?」
「あ、わかった! シバさんから、ラブラブメッセージ届いたとか?」
「ふふっ」
悠里は、楽しげに微笑んだ。
「ああ~、そっかそっかあ!」
赤メガネの奥の瞳が嬉しそうに輝き、クシャクシャと悠里の頭を撫でた。
「なぁに? 誰だれ?」
「シバさん? だれー?」
クラスメイトたちも、つられて湧き立った。
彩奈が悪戯っぽく笑う。
「そりゃあもう、悠里のダーリンだよねえ?」
「ええ!? 彼氏!?」
一気に色めいたクラスメイトたちを見て、悠里は微笑んでみせた。
「ふふ、違うよ。私の、好きな人」
きゃあっと盛り上がる彩奈とクラスメイトと一緒に、悠里はニコニコ笑う。
「ねーねー、写真ないの?写真!」
「ふふ、秘密」
「えぇ~? 彩奈なら撮ってんでしょ? シバさんの写真?」
「あはは、まあねー? でも、悠里の許可無しでは見せらんないわ」
写真という言葉は、悠里の胸を抉る。
先ほどカンナから見せられた、学祭の自分の写真。そして、彩奈の写真。
今でも自分の鞄に入れっぱなしになっている、フォトブック。
悠里を傷つけるためだけに用意された、過去の剛士。
エリカと一緒に微笑む、剛士の姿――
そのイメージを振り払おうと、悠里は意識して、笑みを大きくする。
ここ数日で、自分は友人を誤魔化すのが上手になってしまった。
わざと誤解を招くことを言って、本心を隠す。
親友の彩奈すら、欺いている……
笑う悠里の瞳に、涙が滲んだ。
悠里はあえてそれを隠さず、笑い過ぎて涙が出たように振る舞う。
「ねえねえ悠里! 今度紹介してよー。その、シバさん?だっけ?」
「ふふっ、いつかね?」
悠里は首を傾げ、クラスメイトに明るく微笑んでみせた。
退路を、断たれた。
自分が逃げれば、カンナは本当に彩奈に接触するだろう。
カンナに罵られ、見知らぬ男子生徒に囲まれ、触られる。
彩奈を、あんな目に遭わせるわけにはいかない。
――ゴウさん……
助けて欲しい。全てを打ち明けて、彼に縋りたい。
相談すればきっと、剛士は飛んできてくれる。
部活の時間を、投げ打ってでも。
――駄目だ。
彼に部活の時間を捨てさせることになったら。
自分は、剛士の傍にいる資格がない……
エリカと別れたとき、自分を顧みず、バスケ部のために尽くした剛士。
青いイルミネーションの下で聞いた、剛士の苦しみと、願いを思い起こす。
『俺1人の感情で、バスケ部を壊すわけにはいかなかったから。先輩から託された部を、仲間も後輩もいる部を、俺が守らなきゃいけなかったから』
『俺、みんなとバスケがしたかったから。仲間と、楽しくバスケに打ち込める場所を守りたかった』
彼が、必死に守り抜いてきた、バスケ部の時間。
それを損ねてしまうのは、剛士を裏切ることと同じだと思った。
剛士を、守りたい。何としてでも。
悠里は固く目を閉じ、涙を心に押し込める。
――大丈夫。
がんばれるって、ゴウさんに言ったじゃない。
もう少し。もう少しだけ、我慢すればいい。
卒業式まで、たったの2日だ。
耐えてみせる。
それだけのことができなくて、剛士の傍にいられるはずがない。
「……大丈夫」
悠里は声に出して、自分に言い聞かせる。
昼休み終了の鐘が鳴った。
悠里は必死に息を吸い込み、気持ちを立て直す。
これから教室に戻り、彩奈と顔を合わせる。
気取られてはいけない。絶対に。
大切な親友を、カンナには触れさせない。
彩奈は、自分が守るんだ。
彩奈の笑顔を思い浮かべ、悠里は気持ちを奮い立たせた。
その日は放課後まで、悠里は彩奈の傍にいた。
他の友人たちとお喋りをしているときも、ぴったりと親友に寄り添い、ニコニコ微笑んでいた。
彩奈が、可笑しそうに問いかける。
「何か、いいことでもあった? 悠里」
「ふふ。何でもないよ?」
「あ、わかった! シバさんから、ラブラブメッセージ届いたとか?」
「ふふっ」
悠里は、楽しげに微笑んだ。
「ああ~、そっかそっかあ!」
赤メガネの奥の瞳が嬉しそうに輝き、クシャクシャと悠里の頭を撫でた。
「なぁに? 誰だれ?」
「シバさん? だれー?」
クラスメイトたちも、つられて湧き立った。
彩奈が悪戯っぽく笑う。
「そりゃあもう、悠里のダーリンだよねえ?」
「ええ!? 彼氏!?」
一気に色めいたクラスメイトたちを見て、悠里は微笑んでみせた。
「ふふ、違うよ。私の、好きな人」
きゃあっと盛り上がる彩奈とクラスメイトと一緒に、悠里はニコニコ笑う。
「ねーねー、写真ないの?写真!」
「ふふ、秘密」
「えぇ~? 彩奈なら撮ってんでしょ? シバさんの写真?」
「あはは、まあねー? でも、悠里の許可無しでは見せらんないわ」
写真という言葉は、悠里の胸を抉る。
先ほどカンナから見せられた、学祭の自分の写真。そして、彩奈の写真。
今でも自分の鞄に入れっぱなしになっている、フォトブック。
悠里を傷つけるためだけに用意された、過去の剛士。
エリカと一緒に微笑む、剛士の姿――
そのイメージを振り払おうと、悠里は意識して、笑みを大きくする。
ここ数日で、自分は友人を誤魔化すのが上手になってしまった。
わざと誤解を招くことを言って、本心を隠す。
親友の彩奈すら、欺いている……
笑う悠里の瞳に、涙が滲んだ。
悠里はあえてそれを隠さず、笑い過ぎて涙が出たように振る舞う。
「ねえねえ悠里! 今度紹介してよー。その、シバさん?だっけ?」
「ふふっ、いつかね?」
悠里は首を傾げ、クラスメイトに明るく微笑んでみせた。
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