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piece8 ずっと話したかった
私がいなければ
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「屋上……」
空は晴れていて、心地よい風が吹いていた。
「私、屋上に初めて来ました……」
「あはは、そう?」
悠里の小さな声に、エリカは明るい笑顔で応えた。
「私は結構ここで、たそがれてるんだ」
まあ、それも今日で最後だけどね、と景色を眺めながらエリカは笑った。
「特に冬は誰も来ないし、風が気持ちいいからさ。1人になりたいときとか、頭を整理したいときにね」
「そうなんですね……」
確かに、冷たい風が気持ちいい。
先ほどまでの、どうしようもない息苦しさが、幾分和らぐ気がした。
悠里は、心地よい空気を吸い込み、身体に溜まっていた重い息を、はあっと吐き出した。
2人して手すりを背に、もたれ掛かる。
少しの間、2人は何も話さずに、日常から切り取られたような屋上の静けさに身を置いていた。
「……悠里ちゃん」
エリカが、そっと悠里の手をとる。
「違ったら、ごめん」
悠里は先ほどと同じように、おずおずと彼女を見上げた。
悠里の頼りなく瞬く大きな目を覗き込み、エリカは単刀直入に問いかける。
「カンナが、何かした?」
その名を聞いた瞬間、悠里の瞳が恐怖に竦んだ。
その痛々しい表情に、エリカは疑念の答えを見た。
「悠里ちゃん……」
「あ……ちが、何も、何もないです」
エリカの顔を見て、慌てて悠里が微笑む。
「ごめんなさい、さっきは、びっくりしただけで、」
けれどその目は怯えたままで、悠里が無理に明るい声を出して誤魔化そうとしているのは明白だった。
「悠里ちゃん」
エリカは悠里の声を遮り、ぎゅっと小さな両手を握りしめた。
「あ……」
悠里は必死に、かぶりを振る。
エリカはじっと悠里の目を見つめた。
「悠里ちゃん。隠さないで」
真剣な眼差しで問う。
「……教えて。カンナは、悠里ちゃんに何をしたの?」
悠里の顔から血の気が引き、大きな瞳には涙が盛り上がる。
震える唇が何度も、開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。
エリカは悲しみに眉をひそめ、それでも悠里に向かい、優しく頷いた。
「……いいよ、悠里ちゃん。ゆっくりで」
冷たくなった小さな手をさすり、エリカは微笑む。
その優しい笑顔に、悠里の強張った心が、少しだけ解れた。
悠里は、じっと自分の言葉を待つエリカの温かい瞳を見つめた。
「……私、が」
ひた隠しにしていた痛みが、ほろりと悠里から零れ落ちる。
「私が、いなければ……2人は、すぐに戻れるって」
「……え?」
言葉の意味を測りかねて、エリカが怪訝な顔をする。
悠里は、小さな声で続けた。
「……柴崎さんの前から、消えて……って」
「……カンナが、そう言ったの?」
エリカの声に、悠里は微かに頷いた。
涙を零さないように、ぎゅっと唇を噛み締める。
「ごめん……ごめん、悠里ちゃん」
エリカは眉をひそめ、溜め息をついた。
「まさかアイツが、そんなことしてたなんて……」
狼狽え、声を震わせるエリカを見て、悠里はホッとする。
やはりエリカは、何も知らなかったのだ。
自分の推測どおり、この一連の出来事は、カンナの独断だったのだ。
少しだけ、悠里の心が落ち着きを取り戻す。
空は晴れていて、心地よい風が吹いていた。
「私、屋上に初めて来ました……」
「あはは、そう?」
悠里の小さな声に、エリカは明るい笑顔で応えた。
「私は結構ここで、たそがれてるんだ」
まあ、それも今日で最後だけどね、と景色を眺めながらエリカは笑った。
「特に冬は誰も来ないし、風が気持ちいいからさ。1人になりたいときとか、頭を整理したいときにね」
「そうなんですね……」
確かに、冷たい風が気持ちいい。
先ほどまでの、どうしようもない息苦しさが、幾分和らぐ気がした。
悠里は、心地よい空気を吸い込み、身体に溜まっていた重い息を、はあっと吐き出した。
2人して手すりを背に、もたれ掛かる。
少しの間、2人は何も話さずに、日常から切り取られたような屋上の静けさに身を置いていた。
「……悠里ちゃん」
エリカが、そっと悠里の手をとる。
「違ったら、ごめん」
悠里は先ほどと同じように、おずおずと彼女を見上げた。
悠里の頼りなく瞬く大きな目を覗き込み、エリカは単刀直入に問いかける。
「カンナが、何かした?」
その名を聞いた瞬間、悠里の瞳が恐怖に竦んだ。
その痛々しい表情に、エリカは疑念の答えを見た。
「悠里ちゃん……」
「あ……ちが、何も、何もないです」
エリカの顔を見て、慌てて悠里が微笑む。
「ごめんなさい、さっきは、びっくりしただけで、」
けれどその目は怯えたままで、悠里が無理に明るい声を出して誤魔化そうとしているのは明白だった。
「悠里ちゃん」
エリカは悠里の声を遮り、ぎゅっと小さな両手を握りしめた。
「あ……」
悠里は必死に、かぶりを振る。
エリカはじっと悠里の目を見つめた。
「悠里ちゃん。隠さないで」
真剣な眼差しで問う。
「……教えて。カンナは、悠里ちゃんに何をしたの?」
悠里の顔から血の気が引き、大きな瞳には涙が盛り上がる。
震える唇が何度も、開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。
エリカは悲しみに眉をひそめ、それでも悠里に向かい、優しく頷いた。
「……いいよ、悠里ちゃん。ゆっくりで」
冷たくなった小さな手をさすり、エリカは微笑む。
その優しい笑顔に、悠里の強張った心が、少しだけ解れた。
悠里は、じっと自分の言葉を待つエリカの温かい瞳を見つめた。
「……私、が」
ひた隠しにしていた痛みが、ほろりと悠里から零れ落ちる。
「私が、いなければ……2人は、すぐに戻れるって」
「……え?」
言葉の意味を測りかねて、エリカが怪訝な顔をする。
悠里は、小さな声で続けた。
「……柴崎さんの前から、消えて……って」
「……カンナが、そう言ったの?」
エリカの声に、悠里は微かに頷いた。
涙を零さないように、ぎゅっと唇を噛み締める。
「ごめん……ごめん、悠里ちゃん」
エリカは眉をひそめ、溜め息をついた。
「まさかアイツが、そんなことしてたなんて……」
狼狽え、声を震わせるエリカを見て、悠里はホッとする。
やはりエリカは、何も知らなかったのだ。
自分の推測どおり、この一連の出来事は、カンナの独断だったのだ。
少しだけ、悠里の心が落ち着きを取り戻す。
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