65 / 94
piece8 ずっと話したかった
お話しよう
しおりを挟む
教室のある校舎まで全力で走り、悠里は息を切らす。
痛む胸を押さえ、靴箱に手を付き、はあ、はあ、と不器用に呼吸を繰り返した。
一瞬、カンナと目が合った。
ギラリと、怒りの炎が燃え盛るのが見えた。
その瞬間、昨日の恐怖、そして、未来への強い不安が悠里の心に襲いかかってきた。
悠里は平静を失い、脱兎の如く走り出してしまった。
じわりと目に涙が浮かぶ。
気がつけば、手が、足が震えていた。
悠里は唇を噛みしめる。
思い知らされた。
自分が思うよりもずっと、自分の心は、カンナの恐怖に、参ってしまっている――
明日は卒業式。
それさえ終われば、この恐怖から解放される。
そう心に言い聞かせていた。
けれど、本当はわかっている。
終わる保証など、どこにもないと。
これだけ激しく、悠里に敵意をぶつけてくる相手だ。
卒業しても関係なしに、悠里を追い回す可能性も、充分にあるのだと。
わかっていた。
けれどそれでも、卒業式さえ終われば、という希望的観測に縋らずにはいられなかった。
そうしなければ、悠里は一歩も家から出られなくなりそうだった。
学校から、全てから、逃げ出してしまいそうだった。
胸を押さえ、悠里は、よろよろと靴箱にもたれかかった。
息苦しい。昨日から、ずっと。
穴の空いた風船のように、悠里の肺は、上手に酸素を取り込むことができないでいた。
小さく鼻をすすり、悠里は浅い呼吸を繰り返した。
「……悠里ちゃん」
背後から、遠慮がちに声を掛けられた。
ビクッと悠里は身体を竦ませる。
悠里を気遣う声と気配。
彼女に対して、悠里は悪い感情を抱いていない。
けれど彼女は、カンナの存在を連れてくる――
怖くて、どうしようもなくて、悠里は返事をするどころか、振り返ることすらできずにいた。
エリカが、近づいてくる。
「悠里ちゃん」
そっと、悠里を抱きしめるように、後ろから両肩に手を置いた。
「……お話しよう」
「エリカさん……」
おずおずと、悠里は彼女を見上げる。
エリカは、花のような柔らかい微笑を悠里に向けた。
「……大丈夫。見つからないとこに、行こ?」
そうして、優しく悠里の手を引いて、階段を登り始めた。
痛む胸を押さえ、靴箱に手を付き、はあ、はあ、と不器用に呼吸を繰り返した。
一瞬、カンナと目が合った。
ギラリと、怒りの炎が燃え盛るのが見えた。
その瞬間、昨日の恐怖、そして、未来への強い不安が悠里の心に襲いかかってきた。
悠里は平静を失い、脱兎の如く走り出してしまった。
じわりと目に涙が浮かぶ。
気がつけば、手が、足が震えていた。
悠里は唇を噛みしめる。
思い知らされた。
自分が思うよりもずっと、自分の心は、カンナの恐怖に、参ってしまっている――
明日は卒業式。
それさえ終われば、この恐怖から解放される。
そう心に言い聞かせていた。
けれど、本当はわかっている。
終わる保証など、どこにもないと。
これだけ激しく、悠里に敵意をぶつけてくる相手だ。
卒業しても関係なしに、悠里を追い回す可能性も、充分にあるのだと。
わかっていた。
けれどそれでも、卒業式さえ終われば、という希望的観測に縋らずにはいられなかった。
そうしなければ、悠里は一歩も家から出られなくなりそうだった。
学校から、全てから、逃げ出してしまいそうだった。
胸を押さえ、悠里は、よろよろと靴箱にもたれかかった。
息苦しい。昨日から、ずっと。
穴の空いた風船のように、悠里の肺は、上手に酸素を取り込むことができないでいた。
小さく鼻をすすり、悠里は浅い呼吸を繰り返した。
「……悠里ちゃん」
背後から、遠慮がちに声を掛けられた。
ビクッと悠里は身体を竦ませる。
悠里を気遣う声と気配。
彼女に対して、悠里は悪い感情を抱いていない。
けれど彼女は、カンナの存在を連れてくる――
怖くて、どうしようもなくて、悠里は返事をするどころか、振り返ることすらできずにいた。
エリカが、近づいてくる。
「悠里ちゃん」
そっと、悠里を抱きしめるように、後ろから両肩に手を置いた。
「……お話しよう」
「エリカさん……」
おずおずと、悠里は彼女を見上げる。
エリカは、花のような柔らかい微笑を悠里に向けた。
「……大丈夫。見つからないとこに、行こ?」
そうして、優しく悠里の手を引いて、階段を登り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望
ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。
学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。
小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。
戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。
悠里とアキラが再会し、仲良く話している
とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。
「俺には関係ない」
緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。
絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。
拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく――
悠里から離れていく、剛士の本心は?
アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う?
いまは、傍にいられない。
でも本当は、気持ちは、変わらない。
いつか――迎えに来てくれる?
約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。
それでも、好きでいたい。
いつか、を信じて。
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
結末のないモブキャラは仕方がないので自身の恋物語に終止符を打つことにしました
保桜さやか
恋愛
いつかの未来に綴られた物語の中に自分の姿がないことに気がついたとき、わたしは物語の中でも背景として機能するいち『モブキャラ』であることを悟った。
⚘⚘⚘
ポリンピアの街に住むアイリーンは幼馴染の少年・テオルドに恋する女の子。
だけどあるとき、禁断の森に迷い込んだアイリーンは熱を出し、三日三晩寝込むことになる。その夢の中で、別世界にいるという愛理(あいり)という存在が書物を通じて自分たちの世界を見ていたことを知る。その物語には、数年後に勇者となり、名を馳せたテオルドとそんな彼とともに旅をする現代からの転生者で巫女と呼ばれる少女の旅の様子が描かれていた。そして、その世界に自分がいないことを知ったアイリーンは、彼への長年の想いを断ち切るため、愛理の知識をも利用してありとあらゆる手段で独り立ちすることを決意する。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
恋と首輪
山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。
絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。
地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。
冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。
「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」
イケメン財閥御曹司
東雲 蓮
×
「私はあなたが嫌いです。」
訳あり平凡女子
月宮 みゆ
愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。
訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。
国宝級イケメンとのキスは、最上級に甘いドルチェみたいに私をとろけさせます♡ 〈Dulcisシリーズ〉
はなたろう
恋愛
人気アイドルとの秘密の恋愛♡コウキは俳優やモデルとしても活躍するアイドル。クールで優しいけど、ベッドでは少し意地悪でやきもちやき。彼女の美咲を溺愛し、他の男に取られないかと不安になることも。出会いから交際を経て、甘いキスで溶ける日々の物語。
★みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください
◆出会い編あらすじ
毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く美咲。
そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らい。この日は初めて会話をしたけど、ちょっと変わった人だなーと思っていた。
まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。
毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。
◆登場人物
佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動
天見 光季(27) 人気アイドルグループ、dulcis(ドゥルキス)のメンバー。俳優業で活躍中、自然の写真を撮るのが趣味
お読みいただきありがとうございます!
★番外編はこちらに集約してます。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/693947517
★最年少、甘えん坊ケイタとバツイチ×アラサーの恋愛はじめました。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/408954279
あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される
古紫汐桜
恋愛
婚約者の裏切りを目撃し、命を落とした“私”が目を覚ましたのは、
見知らぬ貴族令嬢の身体の中だった。
そこは、誰かの悪意によって評判を地に落とした世界。
かつて“あざとさ”で生きていた彼女の代わりに、
私はその人生を引き受けることになる。
もう、首を揺らして媚びる生き方はしない。
そう決めた瞬間から、運命は静かに歪み始めた。
冷酷と噂される若公爵ユリエル。
彼もまた、自らの運命に抗い続けてきた男だった。
そんな彼が、私にだけ見せた執着と溺愛。
選び直した生き方の先で待っていたのは、
溺れるほどの愛だった。
あざとさを捨てた令嬢と、運命に翻弄される若公爵。
これは、“やり直し”では終わらない、致命的な恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる