73 / 94
piece8 ずっと話したかった
幸せになってください
しおりを挟む
悠里はただ吸い込まれるように、彼女の憂いを帯びた美しい笑みを見つめた。
「剛士もね、私を傷つけようとしなかった。私はあんな……最低の裏切りをしたのに」
エリカのキリッとした強い瞳が伏せられ、長い睫毛に隠れた。
「剛士は、私のことも、高木さん……私の彼ね、のことも。ひと言も責めなかったんだよ」
ぎゅっと膝を抱いたエリカの腕が、微かに震える。
「……それどころか、1人で矢面に立って、私たちを庇った。何より、私たちがめちゃくちゃにしてしまったバスケ部を、立て直してくれた」
悠里はエリカの声を、黙して聞く。
青いイルミネーションの下、剛士が悲しみに沈みながらも、懸命に話してくれた言葉。
ひとつひとつが、彼女の胸を去来した。
『俺が少しでも弱音吐いたら、バスケ部は壊れる。そんなわけには、いかなかったから』
『俺1人の感情で、バスケ部を壊すわけにはいかなかったから。先輩から託された部を、仲間も後輩もいる部を、俺が守らなきゃいけなかったから』
いつも、自信に満ち溢れ、輝いている切れ長の瞳が、痛みに震えていた。
あのときの剛士を思うと、今でも胸が苦しい……
「勝手なことを言うけど、私ね」
エリカは、悲しい声で言った。
「剛士に、責めて欲しかったんだ。怒って欲しかった。罵って欲しかった。だって私、酷いことしたのに。剛士を傷つけたのに……」
エリカの言葉は、悠里に話しかけるというよりも、独白に近かった。
「剛士に責められて、みんなに責められて、嫌われて。そうして、少しでも償いたかった……でも未だに、何も償えてないんだ。私も、高木さんも」
エリカの抱える傷が、悠里にも見えてきた。
そうか。彼女の心残りは、償いをすることなんだ。
ずっとずっと悔いて、彼女なりに痛みを抱え続けていたんだと、悠里は思った。
悠里は、そっと、エリカの背を撫でた。
「……ゴウさんは、エリカさんに幸せになって欲しいって。だから、エリカさんと、高木さんと話すんだって、言ってましたよ」
彩奈と拓真を入れた4人で遊んだ後、剛士と話をした。
そのときに聞いた剛士の気持ちと言葉が、悠里の胸に蘇る。
『向こうの頭の中にさ。俺への負い目みたいなもんが、今でも残ってしまってるのなら』
『ちゃんと、終わらせてあげたい』
エリカが、口をへの字に結んだ。
「……そっか。剛士は悠里ちゃんに、そんなふうに言ってくれたんだ」
「はい」
悠里は、にっこりと微笑んでみせる。
「だから、幸せになってください。エリカさん」
「剛士もね、私を傷つけようとしなかった。私はあんな……最低の裏切りをしたのに」
エリカのキリッとした強い瞳が伏せられ、長い睫毛に隠れた。
「剛士は、私のことも、高木さん……私の彼ね、のことも。ひと言も責めなかったんだよ」
ぎゅっと膝を抱いたエリカの腕が、微かに震える。
「……それどころか、1人で矢面に立って、私たちを庇った。何より、私たちがめちゃくちゃにしてしまったバスケ部を、立て直してくれた」
悠里はエリカの声を、黙して聞く。
青いイルミネーションの下、剛士が悲しみに沈みながらも、懸命に話してくれた言葉。
ひとつひとつが、彼女の胸を去来した。
『俺が少しでも弱音吐いたら、バスケ部は壊れる。そんなわけには、いかなかったから』
『俺1人の感情で、バスケ部を壊すわけにはいかなかったから。先輩から託された部を、仲間も後輩もいる部を、俺が守らなきゃいけなかったから』
いつも、自信に満ち溢れ、輝いている切れ長の瞳が、痛みに震えていた。
あのときの剛士を思うと、今でも胸が苦しい……
「勝手なことを言うけど、私ね」
エリカは、悲しい声で言った。
「剛士に、責めて欲しかったんだ。怒って欲しかった。罵って欲しかった。だって私、酷いことしたのに。剛士を傷つけたのに……」
エリカの言葉は、悠里に話しかけるというよりも、独白に近かった。
「剛士に責められて、みんなに責められて、嫌われて。そうして、少しでも償いたかった……でも未だに、何も償えてないんだ。私も、高木さんも」
エリカの抱える傷が、悠里にも見えてきた。
そうか。彼女の心残りは、償いをすることなんだ。
ずっとずっと悔いて、彼女なりに痛みを抱え続けていたんだと、悠里は思った。
悠里は、そっと、エリカの背を撫でた。
「……ゴウさんは、エリカさんに幸せになって欲しいって。だから、エリカさんと、高木さんと話すんだって、言ってましたよ」
彩奈と拓真を入れた4人で遊んだ後、剛士と話をした。
そのときに聞いた剛士の気持ちと言葉が、悠里の胸に蘇る。
『向こうの頭の中にさ。俺への負い目みたいなもんが、今でも残ってしまってるのなら』
『ちゃんと、終わらせてあげたい』
エリカが、口をへの字に結んだ。
「……そっか。剛士は悠里ちゃんに、そんなふうに言ってくれたんだ」
「はい」
悠里は、にっこりと微笑んでみせる。
「だから、幸せになってください。エリカさん」
0
あなたにおすすめの小説
#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望
ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。
学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。
小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。
戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。
悠里とアキラが再会し、仲良く話している
とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。
「俺には関係ない」
緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。
絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。
拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく――
悠里から離れていく、剛士の本心は?
アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う?
いまは、傍にいられない。
でも本当は、気持ちは、変わらない。
いつか――迎えに来てくれる?
約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。
それでも、好きでいたい。
いつか、を信じて。
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
結末のないモブキャラは仕方がないので自身の恋物語に終止符を打つことにしました
保桜さやか
恋愛
いつかの未来に綴られた物語の中に自分の姿がないことに気がついたとき、わたしは物語の中でも背景として機能するいち『モブキャラ』であることを悟った。
⚘⚘⚘
ポリンピアの街に住むアイリーンは幼馴染の少年・テオルドに恋する女の子。
だけどあるとき、禁断の森に迷い込んだアイリーンは熱を出し、三日三晩寝込むことになる。その夢の中で、別世界にいるという愛理(あいり)という存在が書物を通じて自分たちの世界を見ていたことを知る。その物語には、数年後に勇者となり、名を馳せたテオルドとそんな彼とともに旅をする現代からの転生者で巫女と呼ばれる少女の旅の様子が描かれていた。そして、その世界に自分がいないことを知ったアイリーンは、彼への長年の想いを断ち切るため、愛理の知識をも利用してありとあらゆる手段で独り立ちすることを決意する。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
恋と首輪
山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。
絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。
地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。
冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。
「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」
イケメン財閥御曹司
東雲 蓮
×
「私はあなたが嫌いです。」
訳あり平凡女子
月宮 みゆ
愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。
訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる