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piece5 剛士――過去との和解
副キャプテン 健斗の言葉
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学校を出た剛士は、高木とエリカとの集合場所へと向かう。
例の、バスケットゴールのある小さな公園だ。
歩きながら剛士は、先程の健斗とのやり取りを思い返していた――
***
「ごめんな、健斗。迷惑かけて」
「馬鹿、気にすんなって」
健斗は、部員の皆を体育館に向かわせると、下校する剛士を見送ってくれた。
剛士は靴を履き、健斗に頭を下げる。
「俺のせいで、こんなことになって。部員3人も辞めさせてしまって……本当に、ごめん」
改めて、謝罪の言葉を口にした。
その瞬間、健斗の空気が変わった。
「……あの3人に、お前1人分の価値なんかねぇよ」
「……え?」
呻くように呟かれた健斗の言葉に、剛士は、耳を疑う。
健斗は、ハッと我に返り、取り繕うための微笑を浮かべた。
「……いや。それはもう、気にすんなよ。終わったことなんだしさ。あいつらも、剛士は悪くないって、監督に言ってくれてたらしいしさ。お前が気にすることじゃないって」
矢継ぎ早に言葉を重ねる彼を、剛士は、じっと見つめる。
「健斗……」
「あ……じゃあ俺、もう体育館行くわ」
剛士から顔を背け、健斗は不自然に明るい声で、話を切り上げてしまう。
「あ、ああ……」
部活に戻ると言われてしまえば、剛士から引き留めることはできない。
剛士は、問いかけたかった言葉を飲み込み、頷いた。
「迷惑かけるけど、よろしくな」
「うん、じゃあまた明日!」
健斗は口早に答えて手を振ると、踵を返した。
剛士は、慌ただしく自分から離れていく彼の背中を、ただ見つめることしかできなかった――
***
『あの3人に、お前1人分の価値なんかねぇよ』
健斗の刺々しい声音が、耳から離れない。
剛士は、小さな溜め息を零した。
彼の意図がどうであれ、部の人間に優劣をつけるような言葉だ。
それがたとえ、退部する部員を指したものだとしても。
副部長という立場の健斗が、してはならない発言だった。
レギュラーであろうが、そうでなかろうが、先輩であろうが、後輩であろうが、部員は皆、平等である。
監督の信念のもと、バスケ部は、メンバーを等しく大切に活動することを心掛けている。
キャプテンと副キャプテンである剛士と健斗も、常に意識し、気を配っていることだ。
健斗がいつも、同級生にも後輩にも公平な態度で接していることを、剛士はよく知っている。
彼は本来、あんな言い方をする人間ではない筈だ……
自己嫌悪に苛まれ、剛士は小さな溜め息をつく。
彼にあんなことを言わせてしまったのは、自分の責任だと思った。
3年生になる直前の春休み。
この大事な時期に、自分がキャプテンの責務を離れる。
負担の多くは、副キャプテンであり、キャプテン代行に任命された健斗に行く。
何より彼は、剛士を部に残留させるために、昨日から駆けずり回ってくれていたのだ。
相当な心労を与えてしまっているだろう。
健斗のあの発言は、彼の苦しみから来てしまったものだと、剛士は思った。
健斗とも、ゆっくり時間を取って、話さないと。
本当なら今日、彼と話をしたかった。
そうするべきだった。
しかし自分は、これから高木とエリカに会い、少しでも悠里の現状を理解しなければならない。
傷ついた彼女を救う突破口を、何としても見つけ出さなければならない。
拓真とも話をして、力を貸して貰わなければ。
どうしても、今日は譲れなかった。
剛士から顔を逸らし、逃げるように体育館へと向かった健斗の背中を思う。
――ごめん、健斗。
今日を終えたら、必ず時間を作るから。
バスケ部のことも、しっかりがんばるから。
どうか、もう少しだけ、甘えさせて欲しい……
剛士は重苦しい身体に鞭を打ち、足早に歩を進めた。
例の、バスケットゴールのある小さな公園だ。
歩きながら剛士は、先程の健斗とのやり取りを思い返していた――
***
「ごめんな、健斗。迷惑かけて」
「馬鹿、気にすんなって」
健斗は、部員の皆を体育館に向かわせると、下校する剛士を見送ってくれた。
剛士は靴を履き、健斗に頭を下げる。
「俺のせいで、こんなことになって。部員3人も辞めさせてしまって……本当に、ごめん」
改めて、謝罪の言葉を口にした。
その瞬間、健斗の空気が変わった。
「……あの3人に、お前1人分の価値なんかねぇよ」
「……え?」
呻くように呟かれた健斗の言葉に、剛士は、耳を疑う。
健斗は、ハッと我に返り、取り繕うための微笑を浮かべた。
「……いや。それはもう、気にすんなよ。終わったことなんだしさ。あいつらも、剛士は悪くないって、監督に言ってくれてたらしいしさ。お前が気にすることじゃないって」
矢継ぎ早に言葉を重ねる彼を、剛士は、じっと見つめる。
「健斗……」
「あ……じゃあ俺、もう体育館行くわ」
剛士から顔を背け、健斗は不自然に明るい声で、話を切り上げてしまう。
「あ、ああ……」
部活に戻ると言われてしまえば、剛士から引き留めることはできない。
剛士は、問いかけたかった言葉を飲み込み、頷いた。
「迷惑かけるけど、よろしくな」
「うん、じゃあまた明日!」
健斗は口早に答えて手を振ると、踵を返した。
剛士は、慌ただしく自分から離れていく彼の背中を、ただ見つめることしかできなかった――
***
『あの3人に、お前1人分の価値なんかねぇよ』
健斗の刺々しい声音が、耳から離れない。
剛士は、小さな溜め息を零した。
彼の意図がどうであれ、部の人間に優劣をつけるような言葉だ。
それがたとえ、退部する部員を指したものだとしても。
副部長という立場の健斗が、してはならない発言だった。
レギュラーであろうが、そうでなかろうが、先輩であろうが、後輩であろうが、部員は皆、平等である。
監督の信念のもと、バスケ部は、メンバーを等しく大切に活動することを心掛けている。
キャプテンと副キャプテンである剛士と健斗も、常に意識し、気を配っていることだ。
健斗がいつも、同級生にも後輩にも公平な態度で接していることを、剛士はよく知っている。
彼は本来、あんな言い方をする人間ではない筈だ……
自己嫌悪に苛まれ、剛士は小さな溜め息をつく。
彼にあんなことを言わせてしまったのは、自分の責任だと思った。
3年生になる直前の春休み。
この大事な時期に、自分がキャプテンの責務を離れる。
負担の多くは、副キャプテンであり、キャプテン代行に任命された健斗に行く。
何より彼は、剛士を部に残留させるために、昨日から駆けずり回ってくれていたのだ。
相当な心労を与えてしまっているだろう。
健斗のあの発言は、彼の苦しみから来てしまったものだと、剛士は思った。
健斗とも、ゆっくり時間を取って、話さないと。
本当なら今日、彼と話をしたかった。
そうするべきだった。
しかし自分は、これから高木とエリカに会い、少しでも悠里の現状を理解しなければならない。
傷ついた彼女を救う突破口を、何としても見つけ出さなければならない。
拓真とも話をして、力を貸して貰わなければ。
どうしても、今日は譲れなかった。
剛士から顔を逸らし、逃げるように体育館へと向かった健斗の背中を思う。
――ごめん、健斗。
今日を終えたら、必ず時間を作るから。
バスケ部のことも、しっかりがんばるから。
どうか、もう少しだけ、甘えさせて欲しい……
剛士は重苦しい身体に鞭を打ち、足早に歩を進めた。
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