#秒恋7 それぞれの翌日――壊れた日常を取り戻すために

ReN

文字の大きさ
23 / 40
piece6 親友たちへの告白

彩奈からの電話

しおりを挟む
『……あ、シバさん。お疲れさまです。ごめんなさい、急に電話して』

彩奈から電話が来るなど、日常では殆どない。
基本的に彩奈は、拓真の方に連絡をするから――


『すいません。部活中じゃありませんでした?』
「うん。大丈夫だよ」

電話の向こうから聴こえる彩奈の声が、緊張と不安に強張っているのがわかった。
剛士は、悪い予感が正しいことを確信する。


『……シバさん。昨日とか今日、悠里と連絡取りましたか?』
剛士が質問の意図を考える前に、彩奈が不安を訴えてきた。
『悠里のスマホ、電源が入ってないっぽいんです』
「……え?」


メッセージが来ない、電話に出ないどころではない。
電源自体が、入っていない。

予想を超えた言葉に、剛士は掠れた声を上げた。
彩奈が、やや早口で説明してくる。

『私、修了式の次の日の夜かな、悠里にメッセージしたんですよ。でも、その日には連絡なくて。そん時は、もう寝てたかなと思って気にしなかったんですけど』

剛士が相槌を打つ間すら与えず、彩奈は話し続ける。
『でも、今日になっても返事来なくて。悠里がメッセージ返してくれないなんて初めてだから、心配になっちゃって。私、電話したんです。そしたら、何回かけても圏外で……』

彩奈が、縋るように問うてくる。
『シバさんが連絡取れてたら、心配ないかなと思ったんですけど……やっぱり、取ってないですか……?』


剛士は、ぎり、と歯を食い縛った。
メッセージの返信が無いことを憂うばかりで、手をこまねいていた自分に怒りを覚える。

悠里が、スマートフォンの電源を切っている。
全ての連絡を、拒絶している。
自分が思っているよりもずっと、彼女の心理状況は良くないのだと思った。

もう、一刻の猶予もない。
剛士は、スマートフォンを口元から離し、深呼吸をした。


「……彩奈」
できるだけ、彩奈の心を刺激しないように。
剛士は、ゆっくりと語りかける。

「俺、彩奈に話さないといけないことがある。いまから拓真とも、話をするつもりだった」

電話の向こうで、彩奈が息を飲むのがわかった。
剛士は、静かに問いかける。
「これから、会えないか?」


彩奈が、微かに震える声で答えた。
『……やっぱり、悠里に何かあったんですね』

勘のいい彩奈のことだ。
彼女なりに予期するところがあったからこそ、剛士に連絡してきたのだろう。


「……本当に、ごめん」
剛士は、率直に言った。
「彩奈。力を貸して欲しい。拓真にも連絡を取るから、一緒に、あのバスケゴールがある公園に、来て欲しい」

彩奈が、グッと息を詰め、スマートフォンを握りしめているのが伝わってくる。
『……わかりました』

小さな声ではあるが、しっかりと彩奈は答えてくれた。
これ以上を、いまの彩奈に話すのは酷だろう。
剛士は、いったん電話を切ることを選んだ。
「ありがとう。気をつけて来てな」


剛士は、彼女との電話を終えた後、すぐに拓真に電話をする。
呼び出し音が、鳴るか鳴らないかという素早さで、拓真の声が現れる。
『待ってたぞ、ゴウ』

「うん。ごめんな……これから、あのバスケゴールの公園で、会いたい」
『オッケ。すぐ行くわ』
「実はいま、彩奈からも連絡貰って。一緒に、話を聞いて貰うことにした」
『わかった。じゃあオレから彩奈ちゃんに連絡して、待ち合わせするよ』
「ありがとう。助かる」

いつもながら拓真は、一を聞いて十をわかってくれる。
彼の存在は本当に、心強い。


拓真には、更に踏み込んで事情を説明する。
「いまここには、俺の元カノと、その彼氏もいる」
拓真が状況を把握し、素早く考えを巡らせたのがわかった。

『――ってことは、やっぱり、安藤カンナ絡みか』
「……うん」

拓真が、悲しげに問う。
『……悠里ちゃんは、大丈夫か?』

その問いには、剛士は答えられなかった。


拓真が、優しい声音で、うん、と応じた。
『急いで行く。待ってろよ、ゴウ』

剛士を心配してくれる優しい気配に、胸が詰まりそうになる。
「……うん」
辛うじて、剛士は返事をした。

親友の声を聴いて、改めて剛士は、自分がどんなに拓真の存在に助けられているかを知る。
電話を切った後も、剛士は少しの間、スマートフォンに残る親友の余韻を手放せなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

救助隊との色恋はご自由に。

すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。 ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。 助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・ 香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」 ほたる(消防関係の人だ・・・!) 『消防署員』には苦い思い出がある。 できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。 しまいには・・・ 「ほたるから手を引け・・!」 「あきらめない!」 「俺とヨリを戻してくれ・・!」 「・・・・好きだ。」 「俺のものになれよ。」 みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。 『俺がいるから大丈夫』 そう言ってくれるのは誰? 私はもう・・・重荷になりたくない・・・! ※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。 すずなり。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...