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piece6 親友たちへの告白
悠里の名誉のために
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「制、服……」
彩奈の目に、涙が盛り上がる。
彼女が何を恐れたのかを、エリカは敏感に察した。
エリカは、意を決して口を開く。
「――ごめん。悠里ちゃんの名誉のために、これだけは言わせて」
彩奈を見つめ、しっかりとエリカは言った。
「悠里ちゃんは、あいつらに汚されたりなんかしてない。私が、その前に部屋に着いたから。そこは絶対、絶対に、大丈夫だよ」
涙声で、彩奈が問う。
「……本当?」
エリカは、力強く頷いてみせる。
「本当。男どもも、何もしてないって。殴ったり服破ったりも、全部カンナがやったんだって、言った」
彩奈の懸念を、できる限り払拭してあげたい。
エリカは、正直に当時の状況を説明する。
「私が着いたとき、悠里ちゃんは、うつ伏せに倒れてた。足元に剛士の同級生がいたけど、後輩2人は離れたところにいた」
そのときの状況は、剛士にも詳しくは言っていなかった。
彼が彩奈と同様に、息を詰めて聞いているのがわかる。
「私、すぐに悠里ちゃんを抱き起こして、見たから、わかる」
エリカは、彩奈と剛士の顔を交互に見ながら、敢えて詳細に話した。
「制服とブラ紐が破れてたけど、胸は見えてなかった。スカートやパンツは、ちゃんと履いてた。だから、心配したようなことだけは、起こってない。――絶対に」
彩奈は暫くの間、じっとエリカを見つめ、その言葉を噛み締めた。
が、やがて納得したように微かに頷いた。
エリカは、小さな声で付け加える。
「……ごめんね。それでも、悠里ちゃんがショックで怖かったのは、何も変わらない。……けど、これだけは、伝えたかったんだ」
彩奈は、気持ちを落ち着かせようと、大きく息をついた。
そうして、理解した、という意思を込めて、エリカに頷いてみせた。
それから彼女は、剛士の方に、恐る恐る目を向ける。
「あの……誰かが写真とか、動画撮ったり、してませんよね」
彼女自身が写真部だから、ということもあるだろう。
危機意識の高さはさすがだと、剛士は思った。
「うん……実は、俺の同級生が、撮ってた。けど全部削除したし、どこにもアップしたり保存したりはしてないって」
「それは……確実ですか?」
「……うん。本人が、スマホのデータと、紐付けてるクラウドとかも開いて、俺に見せてきた。念のため俺も実際に操作して、確認した」
赤メガネの奥にある知的な瞳を、剛士はじっと見つめる。
「何より、あいつの目的は、俺への嫌がらせだから。映像を撮ったのは、俺に見せるためだけだと思う」
彩奈の目が、憤りに揺らめいた。
「……その人は、シバさんへの恨みを晴らすために、悠里を傷つけたってことですか?」
「……うん。本当に、ごめん」
もう一つの理由は、ユタカがカンナを好きだったから加担していた、ということだ。
しかし、それを彩奈に言っても意味はないと、剛士は判断した。
言えば、ユタカの気持ちを盾にとって、責任逃れをするようで、嫌だった。
彩奈の前で、少しでも言い訳めいたことを、口に出したくなかった。
剛士は、データの懸念をできる限り拭うために、ユタカの言葉を付け加える。
「悠里に危害を加えたことは、あいつも、やり過ぎた、反省してるって、言ってた。その言葉は、本心だと思う」
彩奈は、何とか怒りを鎮めようとしているのか、長く深い溜め息を幾度もついた。
代わりに、それまで静かに聞いていた拓真が、剛士に尋ねる。
「その、ゴウの同級生って奴と後輩2人は、どうなったの?」
「……結論だけ言うと、バスケ部を辞めた」
「そうなんだ。……それは、今回のことを反省して?」
一瞬の沈黙を置き、剛士は答えた。
「そうだと思う」
「……もしかして、バスケ部としても、一悶着あった?」
拓真としては、剛士のことも悠里と同じだけ、気になるのだろう。
親友の暖かさに、ふっと剛士の心は緩んでしまう。
けれどいまは、悠里のことを話し合うのが先決だ。
剛士は拓真に、そっと囁いた。
「ん。それはまた、今度話す」
「……ん、了解」
剛士の意志を察してくれたのだろう、拓真が静かに頷いた。
剛士は彩奈に向き直ると、努めて落ち着いた声で話した。
「悠里のことは、こっちの学校にもバレてない。あいつらが今後、悠里に接触することもないから、そこは安心して欲しい」
「……本当に?」
硬い表情を崩さず、疑いの色も隠さない彩奈に、剛士はしっかりと頷いてみせる。
「うん。安藤カンナは、もういないから」
「いない?」
「うん。修了式の次の日に、遠方の実家に帰ることになってたらしい。もうこっちに戻って来ることはないって、本人から聞いた。俺たちの前に2度と姿を見せるなって、俺からも言った」
彩奈の目に、驚きと、ようやく僅かな安堵が生まれる。
「進学先が地元……ってことですか?」
「うん。家庭の都合で、進学先を地元に変えるらしい」
剛士は、ユタカから聞いた事情を、かいつまんで説明した。
隣りで聞いていた拓真が、溜め息をついて呟く。
「最後の最後に、最悪な置き土産をして、あいつは居なくなったってわけだ……」
「自分の思い通りにならないなら、いっそ何もかも、ぶち壊してやる……ってことだよね」
拓真の言葉に彩奈も同調し、グッと両手を握り締めた。
「なんで……なんであいつは、あそこまで悠里に執着したんだろう。頭、おかしくないですか?」
彩奈の声が、怒りと悔しさに震える。
「悠里が、何したっていうのよ……」
「そうだよね、マジで……意味わかんねぇわ」
彼女のやるせなさに寄り添うように、拓真が同意した。
彩奈の目に、涙が盛り上がる。
彼女が何を恐れたのかを、エリカは敏感に察した。
エリカは、意を決して口を開く。
「――ごめん。悠里ちゃんの名誉のために、これだけは言わせて」
彩奈を見つめ、しっかりとエリカは言った。
「悠里ちゃんは、あいつらに汚されたりなんかしてない。私が、その前に部屋に着いたから。そこは絶対、絶対に、大丈夫だよ」
涙声で、彩奈が問う。
「……本当?」
エリカは、力強く頷いてみせる。
「本当。男どもも、何もしてないって。殴ったり服破ったりも、全部カンナがやったんだって、言った」
彩奈の懸念を、できる限り払拭してあげたい。
エリカは、正直に当時の状況を説明する。
「私が着いたとき、悠里ちゃんは、うつ伏せに倒れてた。足元に剛士の同級生がいたけど、後輩2人は離れたところにいた」
そのときの状況は、剛士にも詳しくは言っていなかった。
彼が彩奈と同様に、息を詰めて聞いているのがわかる。
「私、すぐに悠里ちゃんを抱き起こして、見たから、わかる」
エリカは、彩奈と剛士の顔を交互に見ながら、敢えて詳細に話した。
「制服とブラ紐が破れてたけど、胸は見えてなかった。スカートやパンツは、ちゃんと履いてた。だから、心配したようなことだけは、起こってない。――絶対に」
彩奈は暫くの間、じっとエリカを見つめ、その言葉を噛み締めた。
が、やがて納得したように微かに頷いた。
エリカは、小さな声で付け加える。
「……ごめんね。それでも、悠里ちゃんがショックで怖かったのは、何も変わらない。……けど、これだけは、伝えたかったんだ」
彩奈は、気持ちを落ち着かせようと、大きく息をついた。
そうして、理解した、という意思を込めて、エリカに頷いてみせた。
それから彼女は、剛士の方に、恐る恐る目を向ける。
「あの……誰かが写真とか、動画撮ったり、してませんよね」
彼女自身が写真部だから、ということもあるだろう。
危機意識の高さはさすがだと、剛士は思った。
「うん……実は、俺の同級生が、撮ってた。けど全部削除したし、どこにもアップしたり保存したりはしてないって」
「それは……確実ですか?」
「……うん。本人が、スマホのデータと、紐付けてるクラウドとかも開いて、俺に見せてきた。念のため俺も実際に操作して、確認した」
赤メガネの奥にある知的な瞳を、剛士はじっと見つめる。
「何より、あいつの目的は、俺への嫌がらせだから。映像を撮ったのは、俺に見せるためだけだと思う」
彩奈の目が、憤りに揺らめいた。
「……その人は、シバさんへの恨みを晴らすために、悠里を傷つけたってことですか?」
「……うん。本当に、ごめん」
もう一つの理由は、ユタカがカンナを好きだったから加担していた、ということだ。
しかし、それを彩奈に言っても意味はないと、剛士は判断した。
言えば、ユタカの気持ちを盾にとって、責任逃れをするようで、嫌だった。
彩奈の前で、少しでも言い訳めいたことを、口に出したくなかった。
剛士は、データの懸念をできる限り拭うために、ユタカの言葉を付け加える。
「悠里に危害を加えたことは、あいつも、やり過ぎた、反省してるって、言ってた。その言葉は、本心だと思う」
彩奈は、何とか怒りを鎮めようとしているのか、長く深い溜め息を幾度もついた。
代わりに、それまで静かに聞いていた拓真が、剛士に尋ねる。
「その、ゴウの同級生って奴と後輩2人は、どうなったの?」
「……結論だけ言うと、バスケ部を辞めた」
「そうなんだ。……それは、今回のことを反省して?」
一瞬の沈黙を置き、剛士は答えた。
「そうだと思う」
「……もしかして、バスケ部としても、一悶着あった?」
拓真としては、剛士のことも悠里と同じだけ、気になるのだろう。
親友の暖かさに、ふっと剛士の心は緩んでしまう。
けれどいまは、悠里のことを話し合うのが先決だ。
剛士は拓真に、そっと囁いた。
「ん。それはまた、今度話す」
「……ん、了解」
剛士の意志を察してくれたのだろう、拓真が静かに頷いた。
剛士は彩奈に向き直ると、努めて落ち着いた声で話した。
「悠里のことは、こっちの学校にもバレてない。あいつらが今後、悠里に接触することもないから、そこは安心して欲しい」
「……本当に?」
硬い表情を崩さず、疑いの色も隠さない彩奈に、剛士はしっかりと頷いてみせる。
「うん。安藤カンナは、もういないから」
「いない?」
「うん。修了式の次の日に、遠方の実家に帰ることになってたらしい。もうこっちに戻って来ることはないって、本人から聞いた。俺たちの前に2度と姿を見せるなって、俺からも言った」
彩奈の目に、驚きと、ようやく僅かな安堵が生まれる。
「進学先が地元……ってことですか?」
「うん。家庭の都合で、進学先を地元に変えるらしい」
剛士は、ユタカから聞いた事情を、かいつまんで説明した。
隣りで聞いていた拓真が、溜め息をついて呟く。
「最後の最後に、最悪な置き土産をして、あいつは居なくなったってわけだ……」
「自分の思い通りにならないなら、いっそ何もかも、ぶち壊してやる……ってことだよね」
拓真の言葉に彩奈も同調し、グッと両手を握り締めた。
「なんで……なんであいつは、あそこまで悠里に執着したんだろう。頭、おかしくないですか?」
彩奈の声が、怒りと悔しさに震える。
「悠里が、何したっていうのよ……」
「そうだよね、マジで……意味わかんねぇわ」
彼女のやるせなさに寄り添うように、拓真が同意した。
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