不運なプリンスの闘い~未来の天皇は家族の危機に立ち向かう~

オーガスト

文字の大きさ
8 / 21
本編

第8話 複雑な胸中

しおりを挟む
 英弘7(2025)年10月

 誠子せいこ内親王ないしんのうの代理として行う地方公務の為の手話の練習やスピーチ原稿の確認、関連する資料の読み込みを行っている理仁おさひと親王しんのう

 彼は健仁がイスラエルへと帰国したのと同時に宮邸に帰省しており、宮邸の自室で過ごしていた。

 そんな彼は気晴らしにネットニュースを確認しようとスマートフォンを起動した。

 『【速報】首都圏各地で覆面姿の外国人集団による襲撃が発生 死者200人』
 

 ニュースサイト(コメント欄の機能がないサイト)にトップで記事が掲載されており、思わずタップする。

 内容としてはタイトルの通り、覆面姿の武装した外国人約1,000人が突如として200人の日本人を襲撃し、死者が出る事態となっていた。

 自宅で襲撃された者

 配信中に襲撃された者

 市街地で襲撃された者

 職場からの帰宅中に襲撃された者

 多種多様な場所で襲撃が展開されており、警察は被害者については『精神的ショックによる自殺』と断定。外国人集団については『総力を挙げて追跡中』と発表していた。

 一方で皇室報道で葛城宮家を批判する論調の記事を挙げるライターがネット記事を投稿していた。

 タイトルは『襲撃被害者の共通点 裏に葛城宮家が関与か』

 記事に目を通すと被害者全員が葛城宮家に対する批判をSNSや動画投稿サイトで展開するインフルエンサーや配信者である事から襲撃の裏に葛城宮家が関与しているという憶測記事だった。

 (父子関係や容姿に関するデマを流しておいて何が批判だよ...)

 正直ライターのいうの実態を身をもって体感しており、それによって家族が思い悩む姿を見て来た身としては「誹謗中傷ではなく批判だ」という使い古された主張にウンザリしていた。

 しかし、この記事についてはどういう訳かすぐにネット上から削除され、出版社は件のライターの出禁を発表した。

 数日後には変死体として発見される事となる。

 一連の復讐劇から数日後。姉の代行を明後日に控えており、別の公務で明日宮邸を出発する父に対し、この件で何か知っているかもしれないと思った理仁は葛城宮の書斎に向かうことにした。

 ◇◇◇

 葛城宮邸・書斎

 葛城宮かつらぎのみや維仁ゆきひと親王しんのうは無表情であるニュースの記事を読んでいた。

 『【速報】首都圏各地で覆面姿の外国人集団による襲撃が発生 死者200人』

 健仁によって引き起こされた一連の復讐劇が大々的に報じられていた。

 一方で警察は死因について『精神的ショックによる自殺』と断定。

 外国人集団については『総力を上げて追跡中』とのみ発表した。

 一方で死者全員が葛城宮家へのバッシングを推進するアカウントの持ち主やインフルエンサー、週刊誌のライターであった事から川瀬健仁氏や葛城宮家の関与を疑う記事を書いたライターもいた。

 しかし、掲載元は件のライター出禁にすると決定し記事も削除。バックアップも含めて完全に消去された。

 更にライターは変死体で発見され、自殺と断定された。

 この時点で大勢の日本人は誰が裏で糸を引いたか心の中で察しつつ『触らぬ神に祟りなし』と言わんばかりに日常生活へと戻って行った。

 「健仁のおかげで私達は救われた…たが、これで良かったのだろうか…」

 書斎で頭を抱えながら葛城宮はそう呟いた。

 その後、SNSで葛城宮と検索する。いわゆるエゴサーチだ。

 『公務で葛城宮ご夫妻に遭遇!紗栄子さま綺麗~!』

 『やばい!葛城宮家の誠子さまと理仁さまだ!美男美女すぎる!』

 『葛城宮さま、無表情だとちょっと無愛想に見えるけど笑うとメッチャ優しそう!』

 醜悪な誹謗中傷を行うアカウントは完全に削除されていた。

 残された書き込みの大半は普段皇室にさほど関心を持ってないが地元に来たので見物に行ったと思しき人々によるものであった。

 最近は声の大きいアンチに引っ張られて人間不信気味だったが、大勢の人々が自分達を嫌っているわけではないと再確認できたことで彼は一時でも国民に対し不信感を抱いた事を恥じていた。

 (分かってくださる方は大勢いる。声の大きい連中にばかり目を向けず、こういった人たちに向き合うべきだな)

 明日も公務でとある地方を訪問する。葛城宮は改めて皇族としての役割と向き合っていた時だった。

 コンコンと部屋がノックされ入室を許可すると次男の理仁が入ってきた。

 「理仁か...どうしたんだい?こんな時間に」

 「確か誠子姉さまを送ってしばらくしてからあの人が日本に戻ってお父さまと会ってたよね...そしてそれから数日が経った頃にあの事件が起きた。ちょっと気になってさ...あの人にお父さまがお願いしたのかなって...」

 「ああ、その事か...何も聞いてないな。ただ誠子が無事に静養を開始できたことを報告に来てくれただけだ」

 「本当に何もなかったの?あの人がやったことについての話とか」

 「全くなかったな。まさに青天せいてん霹靂へきれきだったよ...」

 「そっか...」

 「ああ。役に立てず申し訳ない」

 「ううん。こっちこそ地方訪問で朝早く起きなきゃいけないのにごめんね」

 「構わないさ。君も明後日誠子の代理で初めてスピーチを伴う公務を行う。異例と言えば異例だが緊急事態だから仕方ない。頑張りなさい。きっとうまくできるさ」

 最後に葛城宮は初めてスピーチに臨む息子にそう声を掛けた。

 「ありがとう。じゃ、おやすみ」

 「ああ、おやすみ」

 こうして理仁は父の書斎を後にした。少し複雑な思いを胸に抱きながら。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

幽世路のお繚

悠遊
キャラ文芸
【この世】と【あの世】  もし何処かに、二つの世界を行き来する《通り路》があったとしたら……  そしてもし、現世の人間が何かしらでそこへ足を踏み入れてしまったら── 「ここは生者が居るべき場所ではありませんよ?」  二つの世界の狭間に迷い込んだら御用心。  “幽世路の番鬼”がアナタの元へ参ります。  

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...