25年ぶりの同窓会〜歳をとっても大人になれなかった僕らについて〜

サカキ カリイ

文字の大きさ
7 / 7

7

しおりを挟む
それからというもの、俺はしばしば天寺のことを思い出してしまうのだった。

印象が強烈だったから、だけではないだろう。

天寺が同窓会に来た理由。

思うに、カードゲームの相手が欲しいから来たというのは、表面的な話に思える。

もっと根本的な問題。

自分に接してくれる、会話をしてくれる仲間を求めて来たんじゃないだろうか。

同窓会でカードゲーム相手を探すことは、奇異な目で見られてしまうかもしれない。

彼だって一度はそう考えただろう。

だが、そんな考えにかまってられないくらい、仲間が欲しいという焦燥感があったのかもしれない。

彼のことは他人事じゃない。
理屈ではなく直感でそう思うのだ。

…実は、香川に婚活を勧められなくとも、俺にはしばらく前から交際している少し年下の女性がいる。

これまで、自分の年齢や収入のことで結婚を切り出せずにいた。

相手が俺でないほうが、彼女は幸せかもしれない。もっといい相手がいるだろう、そう思う気持ちがあったためだ。

向こうは、それとなく、私は祐也さんならついていくからねなどと、何度も言ってくれていたのだが。

近いうちに、お互いの将来についての話を彼女としよう。俺はそう決意した。

話し合い次第なのだが、できたら一緒に歩む将来となって欲しい。

…そう、結局俺は、相手の女性のために身を引こう、などという考えは、頭でもて遊ぶだけで、行動にうつさなかった。

自分は幼い子のように酷くわがままだ。エゴでしか行動していない。
相手を思い遣る大人などには、全くなれなかったのだ。天寺に似たようなものなのだ。

俺もある種の焦燥感に駆り立てられており、その欲望に従っているだけなのだ。

ただただ、誰かずっと自分のそばにいてほしい、その相手を確保しておきたい、という…

あの時、同窓会の会場で、照明の強い場所を天寺が通りかかった時、その足元…

一瞬だが影が黒く出ていた。俺はなんだかその影を薄気味悪く感じてしまった。

足元の闇が大きく膨らんで天寺ならぬ自分を飲み込んでしまう。そんな想像を思い浮かべてしまうのだ。

そしてそのイメージは、なかなか頭から離れてくれなかったのだ。

足元の闇は、棺桶だろうか。
それとも、孤独の果ての狂気だろうか。

…天寺、今はまだ、誰かしら口をきいているが、もし本当に誰も相手をしなくなったら…

母親や親戚もいなくなったら…

…孤独は人を狂わせる。

俺は闇へと向かう道は、封じて残り人生を過ごしたい。

例え道が見えても見えないふりをするのだ。

終わりが来るその瞬間まで。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜

小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。 でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。 就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。 そこには玲央がいる。 それなのに、私は玲央に選ばれない…… そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。 瀬川真冬 25歳 一ノ瀬玲央 25歳 ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。 表紙は簡単表紙メーカーにて作成。 アルファポリス公開日 2024/10/21 作品の無断転載はご遠慮ください。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...