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第一章
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「小僧とは俺のことか」
「他に誰がいる」白い獣は牙を剥きながら言った。
「我は二百年この方生きておる。貴様なんぞただの小僧だわ」
「ヤトルを、こいつに対する術を解け!」
「解いてどうするというのだ。」
獣は目を光らせている。
体の回りが何やら禍々しい妖気で包まれているが、それらが膨らんで、サタヴァに圧をかける。
「ここは我の縄張りだ。
縄張りに入り込んだのは貴様らだ。
罠にかかったのも貴様らだ。
我の縄張りに入った獲物をどうするかは我の勝手だ。」
「解かないというなら戦うしかないぞ!」剣の刃を構える。
「まあまて、小僧、なぜそいつの術を解かせようというのか?
我から引き離して独り占めしようというのか?ここは縄張りの中だから我は許さぬぞ。
ただ、」
獣は舌舐めずりをしながら言った。
「我も話はわからなくはない。戦ったらお互い傷つく。分け前をやろう。
全部はやれぬが、そいつの足か腕の1~2本くらいならやってもよいぞ。
それに、こちらに来て残りの人間を捕らえるのに手をかしてくれたら、さらに取り分が増えることになる。
共に喰らおうではないか。」
サタヴァは疾く獣の首を刎ねた。
ふいにあたりが明るくなったように思え、ヤトルは目をパチパチさせた。
サタヴァが自分の肩を揺すりながら、「しっかりしろ」と言っていたようだが、その声は遠くでしているようだった。
しかし、だんだん耳元で聴こえるようになってきて、肩にのせられている手の感触もわかるようになってきた。そうするとまわりの光景がパッと頭に入ってきた。
なんだか丈高い草ボウボウのところに立っている。しばらくして草の合間に井戸があるのが見えた。
「ヤトル、しっかりしろ!」
「聞こえてますよ。」ヤトルは口を開いた。「あれ、井戸を探しに来てたんですけど、知らないところにいつの間にかきてました。
そこにも井戸ありますけど、こんなに草はなかった感じです。僕、今ウトウトしてたんですかね?」
ヤトルはしかし建物の方を見て驚いた。建物は屋根が崩れた部分が多く、壁も穴だらけで外が見える。そしてボロボロの床の隙間から草が生えていた。
「うわっ何だここ!僕らがいた建物から違うとこまで歩いて来ちゃったんですかね。」
しかしサタヴァが話したことによると、ここは最初に辿り着いた建物であった。そしてそこの草だらけな井戸は、とても同じと思えなかったのだが、最初見つけた井戸と同じものだった。
サタヴァには最初からこの状態で見えていたらしい。
こんな屋根や壁がないようなところでは、夜寒いかもしれないとサタヴァが言うわけだ、とヤトルはやっと得心がいった。
「幻術をクガヤと僕はかけられていたんですか」ヤトルはブルッと身を震わせた。
「そいつは倒されたと。じゃ、もう安全なんですかねえ?」
「それが…自分もはっきりわからないが、まだ何かこのあたりにいる。
小さくてあまり害意は無さそうな気配はするが、術は使うタイプのように思う。
あと、まだ遠いが何か大きなものの気配を感じる。どちらかというとこちらの方が警戒しないといけない。こちらに向かって来なければいいが。」サタヴァは言った。
「クガヤはどこだ」
「他に誰がいる」白い獣は牙を剥きながら言った。
「我は二百年この方生きておる。貴様なんぞただの小僧だわ」
「ヤトルを、こいつに対する術を解け!」
「解いてどうするというのだ。」
獣は目を光らせている。
体の回りが何やら禍々しい妖気で包まれているが、それらが膨らんで、サタヴァに圧をかける。
「ここは我の縄張りだ。
縄張りに入り込んだのは貴様らだ。
罠にかかったのも貴様らだ。
我の縄張りに入った獲物をどうするかは我の勝手だ。」
「解かないというなら戦うしかないぞ!」剣の刃を構える。
「まあまて、小僧、なぜそいつの術を解かせようというのか?
我から引き離して独り占めしようというのか?ここは縄張りの中だから我は許さぬぞ。
ただ、」
獣は舌舐めずりをしながら言った。
「我も話はわからなくはない。戦ったらお互い傷つく。分け前をやろう。
全部はやれぬが、そいつの足か腕の1~2本くらいならやってもよいぞ。
それに、こちらに来て残りの人間を捕らえるのに手をかしてくれたら、さらに取り分が増えることになる。
共に喰らおうではないか。」
サタヴァは疾く獣の首を刎ねた。
ふいにあたりが明るくなったように思え、ヤトルは目をパチパチさせた。
サタヴァが自分の肩を揺すりながら、「しっかりしろ」と言っていたようだが、その声は遠くでしているようだった。
しかし、だんだん耳元で聴こえるようになってきて、肩にのせられている手の感触もわかるようになってきた。そうするとまわりの光景がパッと頭に入ってきた。
なんだか丈高い草ボウボウのところに立っている。しばらくして草の合間に井戸があるのが見えた。
「ヤトル、しっかりしろ!」
「聞こえてますよ。」ヤトルは口を開いた。「あれ、井戸を探しに来てたんですけど、知らないところにいつの間にかきてました。
そこにも井戸ありますけど、こんなに草はなかった感じです。僕、今ウトウトしてたんですかね?」
ヤトルはしかし建物の方を見て驚いた。建物は屋根が崩れた部分が多く、壁も穴だらけで外が見える。そしてボロボロの床の隙間から草が生えていた。
「うわっ何だここ!僕らがいた建物から違うとこまで歩いて来ちゃったんですかね。」
しかしサタヴァが話したことによると、ここは最初に辿り着いた建物であった。そしてそこの草だらけな井戸は、とても同じと思えなかったのだが、最初見つけた井戸と同じものだった。
サタヴァには最初からこの状態で見えていたらしい。
こんな屋根や壁がないようなところでは、夜寒いかもしれないとサタヴァが言うわけだ、とヤトルはやっと得心がいった。
「幻術をクガヤと僕はかけられていたんですか」ヤトルはブルッと身を震わせた。
「そいつは倒されたと。じゃ、もう安全なんですかねえ?」
「それが…自分もはっきりわからないが、まだ何かこのあたりにいる。
小さくてあまり害意は無さそうな気配はするが、術は使うタイプのように思う。
あと、まだ遠いが何か大きなものの気配を感じる。どちらかというとこちらの方が警戒しないといけない。こちらに向かって来なければいいが。」サタヴァは言った。
「クガヤはどこだ」
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