不要とされる寄せ集め部隊、正規軍の背後で人知れず行軍する〜茫漠と彷徨えるなにか〜

サカキ カリイ

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最終章

82

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「まだ懲りないようだな。大丈夫なら、もう少しつき合ってくれ」
サタヴァは大蛇を掴み再び空へ連続して放り投げた。大蛇はお手玉よろしく軽々と宙を舞いだした。

ルクはついつい目で追ってしまうようで、忙しく頭を動かしてそれを見ている。

「さ、さんぷんとやらは、ま、まだ過ぎんかの~」蛇はルクをチラ見しつつ、切れ切れに言う。

ルクはぷいと向こうを向いた。「知らんわ。お前への助言はせん。…あっ、そういえば、おうちの人が、てれびは嘘ばかりだから信じるなとか言ってたな!」

「では、さんぷんで巨大化が終わるとやらは関係ないんだな。」サタヴァはニヤリと笑った。

「な、なんと~」大蛇は投げ上げられながら苦しげに文句を言う。「き…気をもたせよって…この…嘘つきめ!」

「我が悪いわけではない。嘘つきなのは、てれびとやらだからな」ルクは答えた。

「エフィド~こ、このままではわしは、手も足も出ない!」大蛇は宙を舞いながら言う。落ちて近づいてくると声が大きくなる。

「手も足も、もとから無いにゃ。」サタヴァは冷静に指摘する。

「エフィド~、お父さんは大切にしよう!言うこと聞くんじゃないのか~」大蛇は泣き落としにきた。

「その設定まだ使うのか?もうとっくにバレてるぞ」ルクが口を挟む。

「も、もう藁をも掴むつもり!つ、掴む手は、な、ないけども」
大蛇はヘロヘロになりながらも、そんなことを口走っている。

「その状態で自分自身に突っ込みを入れるとは恐れ入る。…俺は子育てをしたことがないからわからないが、どうやら子供は、ある程度成長すると、親の言うことなぞ聞かなくなるらしいぞ?にゃん。」

「そ、そんな…」蛇はぐったりしだした。「この親不孝者~」

「…サタヴァ、さっきからにゃんにゃん言ってるのは何だ?」ルクが聞いた。

「…普通、この姿の生き物は、にゃんにゃん言うんじゃないかと思って。」サタヴァは真面目な調子で返した。

「…無理に言わなくていいぞ!」それ変だから、とはさすがに口にしようとしないルクであった。

そもそも、砂地で巨大猫が、二本足立ちして、蛇をお手玉にして遊んでいるのである。どう考えても奇妙な光景である。
そして、中身はどちらかというと武骨なサタヴァ。なのに、口調がにゃん。さすがに情報量が多すぎる…

「あっ」

「今度はなんだ!」

「師に教わったあれ、やってみる」大蛇が落ちてきたとき、打ちかかる形をとり、手の掌をつきだす…
いや、現在は、肉球のある面をだが…
だが実際に打ちはしない。寸前で止める。

「ヒャアアアア」
大蛇は衝撃を受け、ペチッと地についた。

そして砂地には、じかに触れたわけではないが、巨大な肉球の跡がついた。
狙った対象物を通りすごして衝撃はその背後へ伝わるという、サタヴァの師、直伝の技。
砂地に衝撃がその跡を残したのだ。

「おーい、大丈夫か?」サタヴァは大蛇を持ち上げた。

大蛇は目をあけた。

「お、大丈夫そうだな」

「…油断したな」
大蛇の目が妖しく光る。「…この時をまっておった!わしの術中に陥るといい!」

巨大猫は消え失せた。
うるさいルクとかいう猫もいない。
砂地が太陽に照らされているが、その上をよく見ると小さな蛇が多数うごめいていた。
生まれたてではないようだが、まだ若そうだ。
だがその蛇の頭からはピョンと三角の耳があらわれ、頭からだんだん猫へと変じてゆくのだった。

「あわわわ…」大蛇は慌てた。
とうとう、まわり中、猫だらけになってしまった。
「な、なんで!なんでこんなことに!」
大蛇は悲鳴をあげた後、ハッとすると、巨大猫が自分を覗き込んでいるのが目に入った。ルクもいる。

大量の蛇やら猫やらはどこにもいない。
どうやら、最初から存在しなかったようだ。

「…今のはお前がわしに術をかけたのか」

「そうなるかな」

大蛇は呆然とした。
「わしの術をかけ返されてしまうとは。
こんな短期間で相手の術を倣い覚え、身につけてやり返すとは…
それでは、こ、このわしが勝つ見込みは、全くなくなったということかの…」
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