うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第2章 学園入学編

第1話 依頼

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 俺の名はリョーマ。この世界に転生してもうすぐ6年になる。

 愛犬ポチを追いかけて、この世界に転生した。まだ俺が幼い事もあり、未だポチを探して旅立つ事は出来ないが、ポチとは女神様に貰ったスキル【テイマー】で主従関係にあり、繋がりを感じる事は出来ている。

 今年の初めに女神様から、ポチは封印された古代ダンジョンにいて、その場所は教える事が出来ないと言われた。ただ、解決策として俺以外の転生者、転移者を探すと良いらしい。

 また、その転生者、転移者がこの国の王都に集まりつつあるらしいのと事で、この1年で何とか王都に長期滞在出来る手筈を整えた。

 この世界では、ある程度裕福な家庭の子は6歳になった次の1月から学校に通う。本来は住んでいる街や、近隣の街の学校に通う事になるが、離れた街の学校に通う事も可能である。

 そこで、王都にある富裕層向けで全寮制の学校───デグモ学園に通う事にした。

 国の名を冠している事もあり、富裕層向けの学校で教育の質も高い。質の高い教育を受けたいと、この1年で両親を何とか説得して、王都への切符を手に入れたのだ。

 もちろん、その分お金はかかるが、冒険者として稼いでいる俺は親に頼らずとも困ることはない。冒険者ランクは半年ほど前にAとなった。

 目立ちたくはないので、当面はAランクで良いですとギルドの受付嬢マリーナさんに言ったら、Aランクでも十分目立ってるから今更ですよと笑われた。解せぬ。

 それと、転生者と思われるリーナ師匠だが、神託の件から1週間ほどの滞在で王都へ帰ってしまい、それ以降は会えていない。ただ、学校でも成績優秀と自画自賛していただけの事はあり、教え方はともかく知識は素晴らしかったので、魔法についての見識を大きく広げることができた。

 ただ、残念ながら転生者であるかどうかの話題については、どのように切り出そうか迷っていて、切り出すタイミングがないまま別れてしまったのが心残りではある。また、リーナ師匠の持っていた【魔法創造】のレジェンドスキルについては、未だに習得できていない。

 まだ分からないけど、レジェンドスキルは何らかの習得条件等があるんじゃないだろうか? もしかしたら、リーナ師匠は努力で習得したと言っていたけど転生特典? とかで手に入れた可能性もあると思っている。転生の件も含めて、王都に行ってから探して聞くつもりだ。

 さて、長々と説明してしまったが、俺は今冒険者ギルドに向かっている。

 王都へ行くにあたり、普通に乗合馬車に揺られて行くのも悪くないが、折角なので護衛依頼があれば受けてみようと思ったからだ。

「あら、リョーマさん。今日はどうしたの? やっとSランク昇級試験を受ける気になったのかしら?」

 朝のラッシュ時間帯を避けて昼前に来たので、既に閑散としている受付カウンターに並ぶと、いつも通り犬耳のマリーナさんがSランク昇級を勧めてくる。

「いえ、僕は当面Sランクになるつもりはないですよ。そもそも幼児がSランク冒険者とかおかしいでしょう?」

「まあ、そうね。でもリョーマさんなら、何でもありな気がしちゃうのよね。しっかりしてるし、落ち着きもあって、見た目以外は同い年と言われても違和感ない感じよ」

 まあ、先日6歳になったし前世と合わせると軽く20歳は超えてるわけだけどね。

「うちの支部からSランクが出ると100年以上ぶりの快挙らしいから、その気になったらいつでも言ってね」

「ええ、その時はよろしくお願いします」

「それで、今日はどうしたのかしら? また薬草の納品とか? それとも魔物の素材かしら?」

 俺の薬草は傷を付けず【収納】のスキルで採取する為、とても品質が高く各所から引っ張りだこなのだそうだ。

「ええ、それもありますが、前々から言っていた通り、もうすぐ王都の学校に通う事になりますので、王都への護衛依頼等がありましたら紹介して頂きたく・・・」

「えええっ! もうそんな時期なの!? 寂しくなるわね・・・」

 少し食い気味に反応された。俺が居なくなる事で悲しんで貰えるなんて、嬉しいようなくすぐったいような。

「主に財布が・・・」

「えっ?」

「いえっ、リョーマさんの担当をしているとマージンガッポリと言うか、あ、えっと・・・」

 俺の感動を返して下さい!

「ふふっ、冗談よ。半分。いなくなって寂しくなるのは本当」

 半分冗談って事は、半分本気なのかな。

「でも、高品質な薬草とか無くなると、1年前に戻るだけなんだけどちょっと不安ね。品質の高いポーションが安く提供出来ていた部分もあるからね」

「とりあえず、そう思って今日はかなり多めに採取してきました。後で倉庫に出しますね? 報酬は僕の口座に付けておいて下さい。
 今後はしばらく無理ですが、帰省した時とかは採取したいと思います」

「ええ、よろしく。お願いね。
 えっと、それで今日の本題は王都への護衛依頼だったわよね。ちょっと探してくるから待っててね」

 マリーナさんはそう言うと、受付の奥に入って行く。そして5分ほどで戻ってきた。

「お待たせ、リョーマさんは何度か護衛依頼を受けたよね?」

「はい、Aランク昇級の時と、その後に1回の合計2回だけですけどね」

「そのランクで2回って言うと少ないけど、リョーマさんの本質は戦闘力だからね。どんな魔物が襲ってきても心配要らない気がするわ。見た目で侮られるのが難点だけど」

 そう言えば前の護衛の時も、依頼主は子供に護衛なんて出来るわけないとごねられたり大変だった。俺も逆の立場なら心配でしょうがないよ。

「それで、護衛依頼なんだけど、今王都への護衛依頼は1件しかなかったわ。今朝何件か受注されちゃったみたいで・・・。その残りの1件は条件がランクB以上で護衛経験者になっていたので、一応事務的な確認をさせてもらったの」

「じゃあ、その依頼受けます」

「あら、詳細とか確認しなくて良いの?」

「どうせ王都へ行くついでに勉強がてら依頼を受ける訳なので、どんな依頼でも問題ありません。むしろ大変なほど嬉しいですね」

「ふふっ、言うわね。この依頼は残っていただけあって少し厄介よ? 内容を聞きたい?」

 厄介な護衛依頼ってなんだろう・・・。

「参考までにお聞かせ頂けますか?」

「簡単に言えば、囮捜査ね。最近王都への街道で起こっている盗賊被害を捜査する、商人に扮した人を護衛する依頼。基本的には隠れて付いてくる兵士の人が戦うらしいけど、当然冒険者にも相応の対応が求められるし、危険度が高いから誰も受けずに残っていたの」

 初めての街から街への移動は、盗賊に襲われるのがテンプレとは言え、自らそこに突っ込むのも何か違う感があるなぁ。まあ、受けるけど。
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