うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第2章 学園入学編

第15話 万物創造の使い方

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 ・・・ここはどこだろう?

 真っ黒な空間から戻された俺は、ダンジョンの中とは思うが、見覚えの無い場所に居た。

 説明していなかったが、王都の中にあるダンジョンは洞窟と言えばいいのか、主に岩で出来たダンジョンだ。どこも同じような景色に見える。ただ親切設計で、ダンジョン内は仄かに明るい。どうやって光ってるんだろ?

 因みに、学園のダンジョンブートキャンプは1階層のみとの事だったが、万が一に備えて3階層までの地図を確認して、俺の【マップ】に登録してある。

 このダンジョン、お手軽、お試しダンジョンと言われているだけあって、かなり正確な地図が作成されているのだ。それを事前に確認しておいた。

 少し移動してみたが、ここは3階層までのどの地形とも一致していない。つまり、4階層以下の深い階層と言う事だ。まあ、同じダンジョンだったら、と言う前置きはあるが。

 こんな事なら10階層まで全部登録しておけば良かったな。面倒だからと3階層までしか登録しなかった過去の自分が恨めしい。

 うん、やられた。これは確かに地味だけど嫌らしい嫌がらせだ。

 このダンジョン、初心者向けとは銘打っているが、狭いわけではない。10階層まで往復しようと思ったら、慣れた冒険者チームでも1週間程度かかるらしい。

 幸いにも、水や食料は【収納】に結構な量を貯め込んでいるので、問題はない。ただ、ここが何階層か分からないと言うのは精神的に堪えるな。

 そうだ! ここは弱い魔物しか出ないとは言え、特定の階層にしか出ない魔物も居たはず。そこから階層を絞り込もう。

 と思ったけど、4階層より下の魔物情報を持ってないから無理だった! ただ、10階層だけは多少大型の魔物も出没するとの事だったので、10階層かどうかだけは分かるかも知れない。

 まあ、仕方ないので【マップ】のスキルでマッピングしつつ、適当に進むことにした。


 探知系スキルを全開にしながら進んでいく。いくら雑魚とは言え、戦闘で無駄な体力と時間を使いたくないので出来るだけ魔物はスルーだ。

 因みに、探知系スキルでも階層が変わると反応しない。何らかの方法で階層と階層が隔離されているのだ。

 途中、小型ゴブリンやホーンラビット(ツノの生えたウサギ)を見かけたが、コイツらはどの階層にも生息しているので参考にならないな。

 そして、1時間程歩いたところで発見した! 階層主の部屋を。

 って、これ下り方向じゃん! この部屋を越えたら次の階層に行っちゃう。

 まあ、でもとりあえず入ってみる。この部屋は魔物が居ないので休憩にはもってこいだ。

 扉が急に閉まるような事も無さそうなので、まずは一安心だ。

 入ってみると、出口側の扉も開いていて、その先に道が続いている。更にその先は階段になっている。10階層は先が無いそうなので、少なくともここが9階層かそれより上である事は判明した。

 仕方ない、少し休憩したら来た道を戻ろう・・・。

 休憩する為に【収納】に入っていた木材を使って【万物創造】スキルでイスとテーブルを作って見ようと思う。最初から【収納】に家具も入れておけば良かったな。

 スキルを発動すると、準備した木材が見る見る形を変えて行き、イメージした通りのイスとテーブルが出来上がった。前世の世界のイスをイメージしたので、座ったら壊れるなんて事はないはず。多分。

 しかし、この凄いスキルで、作るものがイスって、レジェンドスキルの持ち腐れではなかろうか。

 早く帰って、このスキルの検証も始めたい。全く、素晴らしい嫌がらせだよ。自称神様め。

 それより小腹が空いたな・・・。そうだ! 折角だし、ちょっと休憩しながらスキルの検証でもしようかな。

 この【万物創造】のスキルは伊達にレジェンドでは無い。さっき木材からイスとテーブルを作ったように、食材から料理を作る事も出来るようだ。

 他にも、作業工程や構造、仕組み等を知っている物なら材料さえ用意したら何でも作れそうな気がする。意外とチートかも・・・。え? 今更?

 そして、俺が今回作ろうと思うのはクッキーだ。

 小麦粉はある。砂糖もある。卵もある。あれ? 後何が必要だっけ?

《記憶を検索しました。標準的なクッキーはバターを使用します》

 えっ!? ここに来て【アナウンス】の新たな能力? まさかの記憶検索。なんだこの万能スキル・・・。

 しかし残念ながらバターは無いなあ。牛乳はあるけどな。

 ん? 無いなら作ればいいのか!

 俺は牛乳を取り出すと早速【万物創造】を発動する。あら不思議、一瞬でバターが出来た。これでクッキーが作れる!

《塩も少々必要です》

 あ、はい。

 材料を揃えて【万物創造】を発動。

《分量は自動調整します》

 ありがとうございます。ここに来て【アナウンス】さんの進化がヤバい。

 先に【収納】から出しておいたお皿の上に、見る見る美味しそうなクッキーが出来上がっていく。これぞ、【万物創造】の無駄遣い!

 皿の上に山盛りクッキーが出来た。ちょっと作り過ぎたかな・・・、とか思いながら1枚口に運ぶ。

 ───サクッ

 うまっ! 出来立てサクサクで、めちゃうまっ! こっちに転生してから食べたクッキーの中で一番美味しい。前世の記憶を頼りに作ったからかな?

 作り過ぎたクッキーを半分程【収納】して、残った牛乳を、ホットミルクにしたらオヤツタイムだ。

 ダンジョンの中で、イスとテーブルを準備して優雅にクッキーを食べたのは、人類史上俺が初めてなんじゃ無いだろうか? なんて考えながらクッキーを食べる。

 でも、どうせなら、誰か一緒だったら良かったな。流石に1人でティータイムは少し寂しい。

 とか思っていたら、階段の方に急に気配が発生した。階層を跨いだのだろう。

 一瞬、下の階層に行っていた冒険者かな? とも思ったが、気配の質が明らかに違う。

 どう違うかと言えば、まず人の気配じゃ無い。どちらかと言えば魔物に近い。しかもかなり強力な気配だ。

 だけど、ダンジョンの魔物が階層を超えるとは聞いたことが無い。どう言う事だろう。

 【マップ】を使って遠距離【鑑定】をしようと思ったが、それより違和感がある。【マップ】の表示が青いのだ。青はを表している。

 そちらに気を取られている間に階段を越え、既に見える所までやって来た。かなりの勢いで突っ込んで来る。

「とても良い匂いなのー! それ欲しいのー!」

 何と、かわいい妖精さんがクッキーに釣られてやってきた。
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