うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第25話 冒険者ギルド ダイダ支部

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 ジョージの家の庭から飛び立つと、急いで西門の外に向かう。

 背後に日の出の光を受けながら飛んで行くと、数キロで魔物の気配が確認できた。

 確かに多くの魔物の気配がある。高台に集まっているようだ。朝になったら街に攻め込むつもりだろうか?

《広域の【鑑定】を行います》

 結果、100匹以上とは聞いていたけど、軽く200匹は居そうだ。レベルは40~80程度。数匹だけどレベル100弱の大物も居る。これ、普通なら国が滅んでるレベルじゃないかな。

 ☆

 偵察が終わり、冒険者ギルドに着くと、まだ早朝だと言うのに多くの冒険者で溢れかえっていた。

「あっ、来たわねリョーマ。意外と早かったのね」

 建物に入ると、リーナさんが俺を見つけてやって来る。

「私たちも今着いたところなの。ギルド職員に話をしようと思ったけど、忙しそうで中々声がかけられないのよ」

「わかりました。僕が行きます」

 そう言うと、受付カウンターに向かう。

「すみません! ちょっと良いですか?」

「ごめんなさい、今忙しくて・・・、え?
 こんなところに子供が来ちゃダメじゃない。直ぐに帰りなさい!」

 そうだよね。この街の冒険者ギルドは初めてだから、職員のお姉さんも俺を知らないよね。

「すみません、僕はこう言う者です。
 ギルド長に取り次いで頂けますか?」

「いや、だから今は忙し・・・、えっ!?
 え、え、Sランクのギルド証!!」

 仕方ないのでギルド証を取り出して職員さんに見せると、大声で叫ばれた。

 一気にギルド内が静かになり、みんなこっちに注目している。

「あっ、叫んでごめんなさい。いえ、すみません。
 ・・・これどう見ても本物のギルド証よね。
 ああ、貴方が昨日通達のあった新しいSランク冒険者ですね。史上最年少とは聞いていましたが、まさかこんな小さな子だったなんて。
 あ、すみません。見た目で判断してはダメですよね。すぐギルド長に伝えて来ます!」

 そう言うと、職員のお姉さんは小走りで奥へと消えて行った。

(おい、あいつSランクらしいぞ)
(ああ、あの見た目で実はドワーフ系の血でも入っていて、見た目の何倍も生きているかも知れないな)
(いや、俺は聞いた事があるぞ。エナンの街出身の史上最年初Aランク冒険者の噂を。
 Sランクへの昇格を断り続けてたとか)

 職員のお姉さんが居なくなると、周りがガヤガヤし始めた。大半が俺の噂になっている。

「リョーマ! リョーマじゃないか!」

 ちょっと居心地が微妙だと思っていたら、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「久しぶりだな。1年ぶりか?」

 そう言って近づいて来たのは、モヒカン冒険者のウースさんだった。エナンの街で初めて冒険者ギルドに行った時に絡んできた冒険者で、王都に行く際の護衛依頼を一緒に受けた、あのウースさんだ。確かBランクの冒険者だ。

「お久しぶりです。この街に来てたんですね。スラッシュさんも一緒ですか?」

「ああ・・・最近はスラッシュと一緒にこの街で活動をしてたんだけどな。
 昨日、いつもの魔物の間引き依頼に行ったら、魔物が狂暴化していたんだ。そこでヘマをしちまってな・・・」

 まさか、変異した魔物にやられてしまったんだろうか。

「生きてはいるが、大ケガだ。今回の緊急依頼には参加できそうにないな」

 良かった。死んでなかったら何とでもなる。Bランクならこの街で最高レベルの冒険者だ。1人でも多い方が良いからね。Bランクなら支援魔法さえかけたら最低ランクの魔物とは戦えるはずだ。

「リョーマ、考えている事は何となく分かるけど、昨日死にかけた人を戦場に出すのはどうかと思うわ。
 トラウマとかになってるかも知れないしね」

 確かに、リーナさんの言う通りかもね。でも、知り合いが苦しんでるならとりあえず治療だけでもしないと。

「ウースさん。これをスラッシュさんに。僕が作ったポーションですが、市販品より良く効きます」

 俺は【収納】からこの1年で作り貯めたを1本ウースさんに手渡す。

「あ、ああ、ありがとう! ちょっと見ない色をしてるが、お前が作った物なら効果は期待できるんだろう?
 すぐ飲ませてくるぜ!」

 ウースさんはポーションエリクサーを受け取ると、すぐに外に向けて走り去って行った。

「あの人も、まさか受け取ったのがエリクサーなんて思ってもいないでしょうね。知らぬが仏ってやつかしら?
 あれだけでも売ると一財産よ。知ってたらおいそれと使えないわ」

 俺にしてみたら【万物創造】でいくらでも作れる物なので、大した価値を見出せないが、市場に流したら1本でもかなりの価格で取引されるはずだ。

 ダンジョン深くの宝箱から極々稀にしか出ないらしく、現在調合できる錬金術師も居ないそうだ。そもそもレシピが失伝しているらしい。

「すみません、リョーマ様。大変お待たせしました。ギルド長がお待ちですので、こちらにどうぞ」

 そんなやり取りをしている間に、さっきのギルド職員のお姉さんが帰ってきた。

「連れの2人も一緒に良いですか?」

「はい、構いませんので、どうぞこちらへ」



 ギルド長の部屋に入ると、中には獅子獣人の偉丈夫が立っていた。身長は2メートルくらいあるんじゃないだろうか?

 初老の域に入ってはいるが、多分元Aランク冒険者とかそんな感じだろう。強そうな気配がしている。

「君がリョーマ君か。良かった。今この街にいる冒険者だけでは無理だろうと諦めかけていたんだよ。
 あっと、すまない。自己紹介がまだだったな。ダイダの街のギルド長をしている、レオンだ。よろしくな」

 獅子獣人だからレオンとは、また安直な・・・。はっ! どこからかお前が言うなってツッコミが聞こえる。

「よろしくお願いします。先日Sランク冒険者になりました、リョーマです。
 それとこっちは・・・」

「Aランク冒険者のリーナ殿だな。何度か見かけた事がある。
 そして、そっちの子も見た事があるな。確かワトソン商会の・・・」

「はい、ワトソン商会のジョージです。よろしくお願いします」

 ジョージもずっとこの街で育ったし、それなりの有力者の息子と言う事で、顔を覚えられていたみたいだ。

「すみません、早速で申し訳ありませんが、状況を教えて頂けますか? こちらも知っている情報をお伝えします」

「そうだな。時間が惜しい。どこまで知ってるか分からないが、数日前から魔物が狂暴化していて手が付けられない状態にある。
 そして、現在この街はその魔物たちの集団に狙われている」

「はい、そこまでは把握しています。先ほど偵察に行ってきたので、敵の詳細も後でお話しますね。
 それでこの街の戦力は、今集まっている冒険者の他にどの程度居るのでしょうか?」

 そう、何も街を守るのは冒険者だけではない。本来なら街が魔物に襲われた場合、まずは街の領主が保有する戦力がメイン。そこを補うのが冒険者だ。

「そこなんだがな、昨日の夕方に王都から緊急の招集があったとかで、隊長格の兵士が軒並み不在になっているそうだ。
 残っているのは隊員と小隊長レベルの者たちだけだな。
 後は神殿騎士だが、こちらは攻めより守りの要だ。一緒に打って出るより、街に魔物が入り込んできた時の守りの戦力だ」

 俺たちと入れ違いで王都に向けて出て行ったのか・・・。それも気になるな。

 しかし、そうなると小隊長でもせいぜいBランク冒険者くらいの実力だろうから、そこまで期待はできない。やっぱり、俺たちで何とかするしかないみたいだ。

「分かりました、では敵の戦力ですが・・・」

 そうして、俺は先ほど偵察した結果をギルド長とリーナさん達に伝えるのだった。
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