うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華

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第3章 王都騒乱編

第40話 昨夜はお楽しみでしたね

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 いや、しかしアクモンが降ってくるなんて想像もしていなかった。こちらに来た従魔は特殊枠のガルムを除くと3体目か。

 ポチ直轄の従魔は初めてだ。ん? 直轄の従魔? もしかして普段ポチがどうしてるとか色々と聞ける!? 教えてもらえる?

 大変だ。こんなことしてる場合じゃない! さっさと終わらせてポチの話を聞かないとっ!

「リョーマ様、先ほどからソワソワされているようですが、どうかされましたか?
 はっ! 私、何か粗相をしてしまいましたか?」

「あ、いや違うよ大丈夫。ちょっと急いでやらないといけない事があるから、どうしようかと考えてたんだ」

 急いで魔物を森へ移動させてしまいたいけど、魔力が足りないしな・・・。

「良かったです。私が何かをしてしまったのかと・・・。
 そう言えば、リョーマ様はここで何をされていたのですか?」

「ああ、それはね・・・」


「・・・という事で【魔物支配】は予想以上に魔力消費が大きくて、休憩をしてたんだ」

 とりあえずアクモンに今の状況を説明する。

「なるほど! それでしたら私がお役にたてるかも知れません」

 え? なんだろう?

「私のスキルで他者に魔力を譲渡する事が可能です。そして私はリョーマ様の【従魔超強化】の恩恵によって、魔力回復速度が10倍以上です。魔力譲渡し放題ですよ!」

「それはすごい! 是非お願いできるかな?」

「お任せ下さい」

 アクモンはそう言うと、俺の胸に手を当てて魔力を注ぐ。するとすぐに魔力が漲ってきた。

「うわっ! 凄い! あっという間に満タンになったよ」

「お役に立てるようで良かったです。これならまたすぐに魔力が回復しますので、連続でも可能ですよ」

 なるほど、ただでさえステータスが俺よりも高いアクモンが更に回復力も強化されているから凄い事になってるんだね。少し時間が経ってたから俺の魔力も半分以上は回復してたけど、それを考慮しても十分すぎる。

「よし! この調子でどんどん行こう! 空を飛ぶから、アクモン捕まってて」

《マスター、提案があります》

 ん? 【サポーター】さんどうしました?

《これだけの量の魔力供給があれば、移動しながら効果範囲に入った魔物を順次命令していくのが手っ取り早いのではないかと思われます》

 おお! 何それ、めっちゃ楽そう。確かに止まってスキル使ってを繰り返す必要もない訳か。

《はい。その通りです》

「それじゃあアクモン、俺は飛びながら【魔物支配】でどんどん魔物に命令していくから、アクモンも常時俺の魔力を回復してくれるかな? あ、回復が追い付かなくなりそうなら言ってね?」

「はい! 分かりました。早速リョーマ様のお役に立てて光栄です!」


 そして、そこからは早かった。ほぼ全速力で飛びながらでも【魔物支配】が使用でき、あっという間にダイダの町まで到達した。

 そのまま1回王都まで帰り、今度は南方向にも先日レミ達を助けたあたりまで進む。今日中には終わらないかと思っていた作業が夕方には完了した。

「ありがとうアクモン。大丈夫だった?」

「はい! 全く問題ありません。ちょっと魔力が減りすぎて苦しいこともありましたが、私にはご褒美です。
 むしろずっとリョーマ様と居られて幸せでした!」

 ん? 何か引っかかる部分もあったけど、幸せだったならそれで良いか。良いのか?

 とにかく、そんな感じで今日のノルマを達成した俺たちはゼムスさんの屋敷に帰った。よし、これでゆっくりポチの事をアクモンに聞けるぞ! よし行こう! そら行こう!

「ただいま戻りました。西と南の街道周辺の変異した魔物は、東の森へ向かうように命令してきました!」

 屋敷に戻ると、とりあえずいつもの会議室で打ち合わせをしていたゼムスさんと王様に報告して、俺にあてがわれた部屋に向かう。

「ほら、こっち! こっちにきて」

「ちょ、ちょっとリョーマ様、どうしたのですか? そんなに引っ張らなくても付いて行きますよ」

「りょ、リョーマが女の子? を連れて来たわ!」

「えっ! リョーマ・・・様? と言うか、リョーマは年上が好きなの?」

 あ、リーナさんとレミが何か言ってるけど、今はそれよりもポチの話が聞きたいんだ。ごめんね。

 そして、俺は朝までアクモンと語り明かしたのだった。ポチについて。


 ☆


「おはようリョーマ。昨夜はお楽しみでしたね?」

 朝、眠い目を擦りながら会議室に行くと、開口一番リーナさんにそんな事を言われた。あれ? 俺がポチの話を聞いて楽しんでたのを知ってるのかな?

「はい! 朝までずっと(ポチの話を聞けて)楽しかったです!」

「ええ、リョーマ様。朝まで本当に楽しかったです! ありがとうございました」

 アクモンは俺にポチの事を教えてくれてただけだから、そんなに楽しくもないと思うけど。まあ、本人が楽しかったならいいか。

「あ、朝までですって!? まさか本当にリョーマが大人の階段を・・・。と言うか貴方、精神年齢は高くても今世ではまだ7歳でしょ!」

 ん? あれ? 何か壮大なすれ違いをしてるような気が・・・。

「リョーマ。そうなの? そうなんだね!?」

 レミまで何か勘違いしてるし!

「ちょ、ちょっと待って下さい! みんなきっと勘違いしてます!」

「何を勘違いしてるのかしら? 朝まで楽しかったんでしょ?」

「えっと、僕はポチについての話を朝まで教えてもらってたんです。変な事は何もしてないですよ!」

 俺がそう言うと、リーナさんとレミは頭をコテンとしてクエスチョンマークが浮かんでいる。

 そこにミルクがフラフラと飛んできた。

「おはようなのー。あれ? アクモンなの! お久しぶりなの! どうしてここにいるの?」

「え? ミルクと知り合いなの?」

「紹介が遅くなってすみません。僕の従魔でアークデーモンのアクモンです。ポチ直轄の従魔なので、ポチの日常について話を聞いてたんです」

「「ええー!? アークデーモンでアクモンって!」」

 えっ! そこ!?
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