孤独な私は転生して娘たちが出来たので、溺愛して絶対に守ります。

かわいい娘たち 初めまして!

愛しき人よ……。

夜。
セルフィーネは自分の執務室でデスクに座り、書類の上に突っ伏して眠っている。
夫が出征しているので、家に関すること全てを管理、監督し、疲れきっている。
執務室の入り口のドアの隙間から、シンシアとフェティが中を覗く。
シンシアが小さい声でフェティに何か言った。フェティはどこかへ向かった。しばらくして毛布と紙とペンをもってシンシアのもとへ戻った。シンシアはペンを受け取って紙にメッセージを書く。二人は音を立てないように入り、フェティはセルフィーネの背中に毛布をかけ、シンシアはデスクに紙を置いて部屋を出た。

どんよりとした灰色の空。
昼前だというのに街に人はおらず、世界中が喪中のようであった。
セルフィーネは、屋敷の玄関の前に立っている。彼女は目の前に広がる庭園が急に色の鮮やかさを失った、と感じた。
今日、オルゲンが帰還してくるらしい、と連絡が会ったからだ。どうして未だ戦時中なのに帰ってくるのかしら? セルフィーネはその疑問を忘れるために目を閉じて深呼吸を何度もする。
こつ、こつ。小石が固いものにぶつかったみたいな乾いた音。
「やあ……」
　セルフィーネが目を開けると頬がこけて顔中に紫色の斑点模様がある男──オルゲンがいた。戦地から帰ってきたのだ。
「あなた、お疲れ様。もう、ゆっくり休んでいいのよ。頑張り屋さんだったんでしょう?」
セルフィーネはオルゲンの手をとって玄関の中へ入るよう促す。屋敷の廊下を二人でゆっくり歩く。セルフィーネは唇を噛んだり、生唾を何度も飲み込んで泣くのを我慢した。
二人で階段を上がり寝室へ招き、オルゲンを寝かせた。
オルゲンが口をパクパク動かせたので、耳を近づけてセルフィーネは大声で使用人を呼んだ。

オルゲンは姉妹4人をそれぞれ代わる代わる部屋へ入れて話をした。
最後に4姉妹全員とセルフィーネを呼んだ。
数分後、オルゲンは死んだ。
セルフィーネに後事を託して。