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あなたとの時間 8年後の逢瀬
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ゆず子と真理子は、卒業して別々の道を歩むことになった。
ゆず子は、印刷所に就職し、漫画や二次創作や同人誌を描き続けながらイベントに出ていた。
真理子は、病院の栄養管理職に就職し、漫画やイベントからは遠ざかって行った。
そして、連絡をとることもなくなり、8年間の月日が経とうとしていた。
ゆず子…私はというと、真理子とは違うタイプだが、好きになった女性に告白し、彼女と一緒に同人誌即売会イベントに出るようになっていた。
そんな、卒業して8年目の夏コミという同人誌イベントで、私はある程度名の通るサークルになっていた。
だが、真理子とやっていた『ことりちゃん』からは足を洗っていた。
新しい『妖狐クラマ』というものにジャンル変更していた。
もう、二度と真理子とは会うことはない……………そう、ずっと、思って来た。
諦めたわけでも妥協したわけでもなく、純粋に今の彼女を好きになったから告白し、付き合うことになったのだった。
そんな夏の暑い夏コミの日、ふと、遠くから一般参加と思われる人が、私のサークルへ本を買いに来た。
私は、他のお客さんを相手に話していて、その間その人は私の本を物色していた。
私が、お客さんと話し終わり、そちらの人へ向き「どうぞお手にとってご覧ください。」
と言うと…………
「ねぇ、あんた、今このジャンルやってるの?オレはこのジャンルは知らないんだけど……あんたの絵で判ったから、来てみたんだけどさ、楽しい?」
「!!??真理子!!!」
「…ん。」
「わー!!!久しぶり!!!うん!このジャンル楽しいよ!!でもよく判ったね!!!」
「うん」
8年目の出逢いだった。
私は、声を聞くまで真理子だと気が付かなかったのに、真理子は私を覚えていて、絵柄まで覚えていたのだ。
思わず饒舌になるのを隠せなかった。
そして
「…紹介するよ。今、あそこを歩いてるのが私の彼女。」
と言って、サークルの外を歩いている彼女を指差した。
真理子は別段驚いた様子も見せずに
「…うん。」
分かった。というようにうなずいた。
そして、こうも続けた。
「……知らなかったかもしれないけど、あの頃…高校生の頃、リトライしたいほど、ずっと真理子のことが好きだったんだよ…」
「………うん。」
そっか。というように真理子はうなずいた。
真理子は暫く黙っていたが…
「……今は?」
今はオレのことは?と言うような顔で聞いてきた。
「今は、私、彼女いるから。」
キッパリと私は言うと、真理子はまた、分かったと言うように、うなずいた。
「じゃあ、またね」
「ああ、またな」
それ以来、真理子とは会っていない。
渡辺とも縁はとっくに、切れていた。
『傷ついて傷ついて、大人になるんだよ』
…ふと、誰かがそう言っていたのを思いだした。
「傷つくぐらいなら、大人にはならない!なりたくない!」
と思っていたあの頃。
今でも似たような思いを持っている。
大人になったか否かは判らないけれど、傷ついて傷ついて、真理子からは離れた。
もしかしたら………私も真理子を傷つけたのかもしれないという一縷の望みを持ちながら………。
お互いに傷つきあうくらいには好きだったとしたら、それは口には出さなくても、両想いだったと。
そう、思ってもいいですか?
あなたの、おかげで…………。
ゆず子は、印刷所に就職し、漫画や二次創作や同人誌を描き続けながらイベントに出ていた。
真理子は、病院の栄養管理職に就職し、漫画やイベントからは遠ざかって行った。
そして、連絡をとることもなくなり、8年間の月日が経とうとしていた。
ゆず子…私はというと、真理子とは違うタイプだが、好きになった女性に告白し、彼女と一緒に同人誌即売会イベントに出るようになっていた。
そんな、卒業して8年目の夏コミという同人誌イベントで、私はある程度名の通るサークルになっていた。
だが、真理子とやっていた『ことりちゃん』からは足を洗っていた。
新しい『妖狐クラマ』というものにジャンル変更していた。
もう、二度と真理子とは会うことはない……………そう、ずっと、思って来た。
諦めたわけでも妥協したわけでもなく、純粋に今の彼女を好きになったから告白し、付き合うことになったのだった。
そんな夏の暑い夏コミの日、ふと、遠くから一般参加と思われる人が、私のサークルへ本を買いに来た。
私は、他のお客さんを相手に話していて、その間その人は私の本を物色していた。
私が、お客さんと話し終わり、そちらの人へ向き「どうぞお手にとってご覧ください。」
と言うと…………
「ねぇ、あんた、今このジャンルやってるの?オレはこのジャンルは知らないんだけど……あんたの絵で判ったから、来てみたんだけどさ、楽しい?」
「!!??真理子!!!」
「…ん。」
「わー!!!久しぶり!!!うん!このジャンル楽しいよ!!でもよく判ったね!!!」
「うん」
8年目の出逢いだった。
私は、声を聞くまで真理子だと気が付かなかったのに、真理子は私を覚えていて、絵柄まで覚えていたのだ。
思わず饒舌になるのを隠せなかった。
そして
「…紹介するよ。今、あそこを歩いてるのが私の彼女。」
と言って、サークルの外を歩いている彼女を指差した。
真理子は別段驚いた様子も見せずに
「…うん。」
分かった。というようにうなずいた。
そして、こうも続けた。
「……知らなかったかもしれないけど、あの頃…高校生の頃、リトライしたいほど、ずっと真理子のことが好きだったんだよ…」
「………うん。」
そっか。というように真理子はうなずいた。
真理子は暫く黙っていたが…
「……今は?」
今はオレのことは?と言うような顔で聞いてきた。
「今は、私、彼女いるから。」
キッパリと私は言うと、真理子はまた、分かったと言うように、うなずいた。
「じゃあ、またね」
「ああ、またな」
それ以来、真理子とは会っていない。
渡辺とも縁はとっくに、切れていた。
『傷ついて傷ついて、大人になるんだよ』
…ふと、誰かがそう言っていたのを思いだした。
「傷つくぐらいなら、大人にはならない!なりたくない!」
と思っていたあの頃。
今でも似たような思いを持っている。
大人になったか否かは判らないけれど、傷ついて傷ついて、真理子からは離れた。
もしかしたら………私も真理子を傷つけたのかもしれないという一縷の望みを持ちながら………。
お互いに傷つきあうくらいには好きだったとしたら、それは口には出さなくても、両想いだったと。
そう、思ってもいいですか?
あなたの、おかげで…………。
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