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下界の淫魔
06
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日も落ちて、街はネオンで輝く。
人通りも増えた飲み屋街。
「なぁなぁ、神代さぁ、AV出てくんね?」
ミーティングルームのソファーに弾はだらけるように座っている。
「顔は出さないよ。チンコ貸すだけでいーからさ」
千皇は無言です眉を一つ動かさないで、パソコンを見ている。
「女優も巨乳の童顔ちゃんなの。気に入ると思うけど」
それでも千皇はパソコンの画面だけを見ている。
「おはよーございます……」
やる気のない声で、ミーティングルームに入って来たのは楼依だった。
「あ、姫神でもいーよ」
「……何の話ですか?」
楼依は自分の荷物をロッカーに預けると、上着を脱いだ。
「AVに出てって神代にお願いしてるんだけど、無視されちゃった」
テヘッと弾が笑う。
楼依は千皇をチラッと見ると、溜息を吐いた。
「出るわけねぇでしょ」
「顔は出さないよ。チンコ貸してくれるだけでいーし」
「貸せるか」
楼依はスマホを付けると画面を開いて弾に見せた。
「こんだけあったら足りるだろ」
画面は銀行のアプリだった。
そこには多額の金額が記されている。
「ルシカちゃん、愛されてるねー。羨ましっ!」
「これであの店から出してもらえるんだろうな?」
「んー、でも大丈夫かなぁ?カグヤちゃんもルシカちゃんも訳ありっぽいじゃん?組に借金っても俺からのポケットマネーだし、なんならお小遣いでいーし、好きでやってんだし。身体売るのが手っ取り早いけどさ」
「今後は俺が支援する。それなりの稼ぎはあるの、知ってるでしょ」
「大手芸能事務所のご子息だもんねー。ルシカちゃんとヨゾラ君の件に関しては姫神に任せるよ。カグヤちゃんはまだまだ遊び足りないからね」
弾の笑顔に舌打ちしながら、楼依は千皇を見た。
千皇は相変わらずパソコンを見ていた。
「でさ、AV出てよ」
「無理です」
楼依はスマホを操作すると、ポケットに仕舞った。
弾のスマホの通知が鳴り、画面を確認すると再びポケットに仕舞う。
「チンコだけでいーのに」
「余計にダメでしょ」
「なあなぁ、神代~っ。一回出たんだから二回目も同じじゃんー。顔出さないしー」
「出たんすか」
楼依は呆れ気味に言った。
千皇が溜息を吐く。
「佐藤の尻拭いで一度」
「有料配信でさ、再生数エグいの。だからさ、もう一回くらいさ」
「断る」
「減るもんじゃないじゃん、けーちけーち」
弾はむくれてソファーにふんぞり返った。
本当にヤクザかよ、と思う。
「あ、姫神さ、ルシカちゃんとえっちした?」
いきなり話を振られ、楼依は呆れた顔で弾を見た。
「つまみ食いしたかったなー。可愛ーだろーなぁー」
「……アンタは何ですぐそっちに」
「だってさ、美人で可愛くて消極的って、何かいーじゃん?」
楼依は無言でただただ弾を睨み付けた。
「やだー、怖いー」
等と女子校生みたいな言い方で、弾はわざとらしく身体を縮めた。
千皇は鬱陶しいのか、あからさまの溜息を吐く。
楼依も無言で黒いジャケットを羽織った。
その時、弾のスマホが鳴った。
弾は白いジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、着信を確認して電話に出た。
「もしもぉ~し。……、……、……ふーん。仕方ないねぇ。ま、穴があれば満足する客も居るし、調節してやればいいよ。……、んー、そうだねぇ。あんまりしたくないけど、最悪な時には仕方ないか。……、んー、分かった。後はよろしくー」
話が終わったのか、弾は電話を切るとスマホを内ポケットに仕舞った。
「……虐めすぎちゃったかな」
弾はポツリと呟くと、頭を搔く。
「姫神さ、……腹をくくれって、どー言う事なのかな?」
ミーティングルームを出て行こうとする楼依に、弾は聞いて来た。
「何が?」
楼依もしれっと聞き返した。
「チンコ貸してくれるなら、今なら許すよ?」
「だから、何が?」
「ルシカちゃん、渡すだけじゃ満足じゃねぇの?」
弾から笑顔が消えた。
楼依は一瞬だけ千皇を見るが、千皇は相変わらずだ。
「別に、弟達の事は俺が何とか出来るし、身体張る必要はねぇんじゃねぇか、って話。セックスは好きかも知れねぇけど、思春期真っ只中の末っ子君がせっかく学校に行くんだ。兄貴が尻軽なんてバレたら可哀想でしょ」
楼依は淡々とそう答えた。
「……本当にそんだけか?」
「それ以外何がありますか?」
「……姫神の事は気に入ってるんだよね」
「それは有難いですけど、俺には興味ねぇんで。単にルシカの兄貴だから心配しただけっすよ」
楼依と弾の睨み合いは、数秒続いた。
「アンタこそ先輩を傷付けた犯人を探してるんでしょ。こんなとこで油売ってて良いんですか?」
「そんな奴居ねぇから安心しろ」
パソコンから一切目を逸らさず、千皇が即答した。
「痴話喧嘩なら他でしろよ。俺を巻き込むな」
そう言うと、千皇はパソコンを閉じて弾を睨んだ。
弾はニコッと笑う。
「ま、仕方ないね。そう言う事にしとくよ」
そう言って、弾は立ち上がった。
「また来るねー」
スレ違いざまの楼依の肩をポンと叩くと、弾はミーティングルームを出て行った。
「……後で塩撒いとけ。それと、姫神」
千皇は一息つくと、タバコを咥えた。
「何すか?」
「余計な事するな」
「言わねぇと動かねぇでしょ、どっちも。先輩だって、このままじゃ嫌だろうに」
「誰が嫌だって?」
「自分の気持ちに気付いてんならちったァ動いてやれよ。俺らの相手はそー言う感情が分かんねぇんだ」
楼依はムッとしながらそう言った。
「逢いに来ねぇんだ。仕方ねぇ」
「行きゃいいでしょーが。向こうだって待ってるかも知んねぇ」
「今行ったって拒否るだろ。……少なくとも、あのなんちゃってヤクザに縋っている間は」
タバコに火を点けると、溜息混じりに千皇は煙を吐き出した。
「ま、元から素直に来る奴じゃねぇのは分かって居たけど」
「あ、手ぇ出さなかったの、後悔してんだ」
「……どうだろな」
素直じゃねぇ、と楼依は呟いた。
「顔までくれてやって、何尻込みしてんだか……」
「顔くれてやったから、余裕があるかもしれねぇだろ」
「あー言えばこー言う」
楼依は呆れ顔で千皇を見つめた。
千皇はタバコの灰を灰皿に落とす。
「お前は次男をどうしたい?」
「……別に。大事にしてぇだけっすよ。無理しねぇで笑ってくれりゃ一番」
「淫魔だろ。お前じゃねぇ奴を相手にする」
「それがもし無理をしてねぇなら……、我慢するしかねぇっしょ。我慢出来るか保証ねぇけど。……それに、本当に淫魔か疑ってんです」
ふーん、と千皇は鼻先で言った。
「お前は一度淫魔に取り憑かれたからな」
「確証を得る手段がねぇんです」
「抱いて見りゃ良いだろ?」
「簡単に出来るかよ……」
楼依は頭を搔いた。
「それこそ次男は待ってんじゃねぇの?」
「下手打つ訳には行かねぇでしょ」
「お前達はサンプルだろ?」
「サンプルだからこそ下手打てねぇでしょ」
「あー言えばこー言う」
千皇の言い返しに、楼依はムッとする。
「好きで淫魔になったんじゃない。……そう言ってた」
ふと千皇が呟いた。
そして、灰皿にタバコを揉み消した。
「思う節はあったのかもな。セックス好きは矛盾すんけど」
「そこまで分かってんなら、弾さんにヤキモチ妬いていじけんな」
「妬いてねぇし、いじけてねぇ。敵も弾だけじゃねぇだろ」
あー、と楼依は呟く。
魔王共がいる。
楼依が奴隷になった事は知られている筈だ。
だが、変には仕掛けて来ない。
余裕があるのか、バカにしているのか。
監視はされているとヨゾラは言っていた。
「未知の生物だろ?」
「あー、威厳はあったな。デカかったし、黒かったし、勝手に話を進めるし」
「会ったのか」
「喧嘩売った。そう言えば、何か余裕だった。ムカつく」
売ったのかよ、と千皇は小さく笑った。
「先輩だって、居たら売るでしょ、喧嘩」
「話し合いで済ませる」
「嘘つけ」
楼依は疑いの眼差しを向けた。
「あれ以来会ってはねぇけど監視はされているらしいです。だから、余裕かも」
「へぇー、んじゃアイツの行為も見られてるって訳だ」
「覗き見なんて悪趣味な。絶対捕まえる」
「見せつけりゃ良いだろ。仲良しこよしって」
「気が気じゃねぇよ」
「今更だろ。お前らが上手く行きゃ、向こうも焦るんじゃね?」
千皇の提案に、楼依は少し考えてしまった。
千皇は下を向いて笑いを堪える。
楼依はハッとした。
「やべぇ、乗せられるとこだった」
そう言う楼依に、千皇は舌打ちした。
「それなら余計に先輩が逢いに行ってイチャイチャすりゃいいでしょ。あの人、魔王とやらのお気に入りだし、弾さんも牽制出来るだろうし」
楼依の提案に、千皇は面倒くさげな表情を浮かべる。
「そもそも、俺達はそう言う関係じゃねぇよ。誤解すんな」
「まだ、でしょ」
「……何だってくっつけたがるか」
「先輩、先輩は自分が思ってる程隠し切れてないんです。自分の表情とか態度」
「そうか。……わざとしてるのかもな」
「タチ悪い……。わざとやってんなら、迎えに行きゃいーのに」
「何度言われても、俺の気持ちは変わらない」
はぁ~、と楼依は頭を抱えた。
幾ら訴えても堂々巡りだ。
もう、放っておこうか、と思いたいくらいだ。
「あ、またサボってる。もう開店してんですよ?」
ノックもせず、ズカズカと佐藤君がミーティングルームに入って来た。
「今から行こうとしたんだが、先輩に呼び止められたんだ」
「そう言えばアイリさん来なくなりましたね」
「別にいー男でも出来たんじゃねぇの?黒くてデカい奴」
「まぁ、お陰でいろんな姫さん達に回れるから良いですが」
「何時まで代理をすりゃ良いんだろな」
そんな台詞を吐いて、楼依はミーティングルームを出て行った。
「ヒカルは復帰は無理か?」
千皇が聞いた。
「地元に帰るって。大分顔色も良くなったのですが」
「なら、まだまだ辞めれねぇな。恋人出来て辞めてぇんだろうけど」
「え?姫神さんカノジョ出来たんすか? 」
「……さぁな」
千皇は再びパソコンに視線を向けた。
人通りも増えた飲み屋街。
「なぁなぁ、神代さぁ、AV出てくんね?」
ミーティングルームのソファーに弾はだらけるように座っている。
「顔は出さないよ。チンコ貸すだけでいーからさ」
千皇は無言です眉を一つ動かさないで、パソコンを見ている。
「女優も巨乳の童顔ちゃんなの。気に入ると思うけど」
それでも千皇はパソコンの画面だけを見ている。
「おはよーございます……」
やる気のない声で、ミーティングルームに入って来たのは楼依だった。
「あ、姫神でもいーよ」
「……何の話ですか?」
楼依は自分の荷物をロッカーに預けると、上着を脱いだ。
「AVに出てって神代にお願いしてるんだけど、無視されちゃった」
テヘッと弾が笑う。
楼依は千皇をチラッと見ると、溜息を吐いた。
「出るわけねぇでしょ」
「顔は出さないよ。チンコ貸してくれるだけでいーし」
「貸せるか」
楼依はスマホを付けると画面を開いて弾に見せた。
「こんだけあったら足りるだろ」
画面は銀行のアプリだった。
そこには多額の金額が記されている。
「ルシカちゃん、愛されてるねー。羨ましっ!」
「これであの店から出してもらえるんだろうな?」
「んー、でも大丈夫かなぁ?カグヤちゃんもルシカちゃんも訳ありっぽいじゃん?組に借金っても俺からのポケットマネーだし、なんならお小遣いでいーし、好きでやってんだし。身体売るのが手っ取り早いけどさ」
「今後は俺が支援する。それなりの稼ぎはあるの、知ってるでしょ」
「大手芸能事務所のご子息だもんねー。ルシカちゃんとヨゾラ君の件に関しては姫神に任せるよ。カグヤちゃんはまだまだ遊び足りないからね」
弾の笑顔に舌打ちしながら、楼依は千皇を見た。
千皇は相変わらずパソコンを見ていた。
「でさ、AV出てよ」
「無理です」
楼依はスマホを操作すると、ポケットに仕舞った。
弾のスマホの通知が鳴り、画面を確認すると再びポケットに仕舞う。
「チンコだけでいーのに」
「余計にダメでしょ」
「なあなぁ、神代~っ。一回出たんだから二回目も同じじゃんー。顔出さないしー」
「出たんすか」
楼依は呆れ気味に言った。
千皇が溜息を吐く。
「佐藤の尻拭いで一度」
「有料配信でさ、再生数エグいの。だからさ、もう一回くらいさ」
「断る」
「減るもんじゃないじゃん、けーちけーち」
弾はむくれてソファーにふんぞり返った。
本当にヤクザかよ、と思う。
「あ、姫神さ、ルシカちゃんとえっちした?」
いきなり話を振られ、楼依は呆れた顔で弾を見た。
「つまみ食いしたかったなー。可愛ーだろーなぁー」
「……アンタは何ですぐそっちに」
「だってさ、美人で可愛くて消極的って、何かいーじゃん?」
楼依は無言でただただ弾を睨み付けた。
「やだー、怖いー」
等と女子校生みたいな言い方で、弾はわざとらしく身体を縮めた。
千皇は鬱陶しいのか、あからさまの溜息を吐く。
楼依も無言で黒いジャケットを羽織った。
その時、弾のスマホが鳴った。
弾は白いジャケットの内ポケットからスマホを取り出すと、着信を確認して電話に出た。
「もしもぉ~し。……、……、……ふーん。仕方ないねぇ。ま、穴があれば満足する客も居るし、調節してやればいいよ。……、んー、そうだねぇ。あんまりしたくないけど、最悪な時には仕方ないか。……、んー、分かった。後はよろしくー」
話が終わったのか、弾は電話を切るとスマホを内ポケットに仕舞った。
「……虐めすぎちゃったかな」
弾はポツリと呟くと、頭を搔く。
「姫神さ、……腹をくくれって、どー言う事なのかな?」
ミーティングルームを出て行こうとする楼依に、弾は聞いて来た。
「何が?」
楼依もしれっと聞き返した。
「チンコ貸してくれるなら、今なら許すよ?」
「だから、何が?」
「ルシカちゃん、渡すだけじゃ満足じゃねぇの?」
弾から笑顔が消えた。
楼依は一瞬だけ千皇を見るが、千皇は相変わらずだ。
「別に、弟達の事は俺が何とか出来るし、身体張る必要はねぇんじゃねぇか、って話。セックスは好きかも知れねぇけど、思春期真っ只中の末っ子君がせっかく学校に行くんだ。兄貴が尻軽なんてバレたら可哀想でしょ」
楼依は淡々とそう答えた。
「……本当にそんだけか?」
「それ以外何がありますか?」
「……姫神の事は気に入ってるんだよね」
「それは有難いですけど、俺には興味ねぇんで。単にルシカの兄貴だから心配しただけっすよ」
楼依と弾の睨み合いは、数秒続いた。
「アンタこそ先輩を傷付けた犯人を探してるんでしょ。こんなとこで油売ってて良いんですか?」
「そんな奴居ねぇから安心しろ」
パソコンから一切目を逸らさず、千皇が即答した。
「痴話喧嘩なら他でしろよ。俺を巻き込むな」
そう言うと、千皇はパソコンを閉じて弾を睨んだ。
弾はニコッと笑う。
「ま、仕方ないね。そう言う事にしとくよ」
そう言って、弾は立ち上がった。
「また来るねー」
スレ違いざまの楼依の肩をポンと叩くと、弾はミーティングルームを出て行った。
「……後で塩撒いとけ。それと、姫神」
千皇は一息つくと、タバコを咥えた。
「何すか?」
「余計な事するな」
「言わねぇと動かねぇでしょ、どっちも。先輩だって、このままじゃ嫌だろうに」
「誰が嫌だって?」
「自分の気持ちに気付いてんならちったァ動いてやれよ。俺らの相手はそー言う感情が分かんねぇんだ」
楼依はムッとしながらそう言った。
「逢いに来ねぇんだ。仕方ねぇ」
「行きゃいいでしょーが。向こうだって待ってるかも知んねぇ」
「今行ったって拒否るだろ。……少なくとも、あのなんちゃってヤクザに縋っている間は」
タバコに火を点けると、溜息混じりに千皇は煙を吐き出した。
「ま、元から素直に来る奴じゃねぇのは分かって居たけど」
「あ、手ぇ出さなかったの、後悔してんだ」
「……どうだろな」
素直じゃねぇ、と楼依は呟いた。
「顔までくれてやって、何尻込みしてんだか……」
「顔くれてやったから、余裕があるかもしれねぇだろ」
「あー言えばこー言う」
楼依は呆れ顔で千皇を見つめた。
千皇はタバコの灰を灰皿に落とす。
「お前は次男をどうしたい?」
「……別に。大事にしてぇだけっすよ。無理しねぇで笑ってくれりゃ一番」
「淫魔だろ。お前じゃねぇ奴を相手にする」
「それがもし無理をしてねぇなら……、我慢するしかねぇっしょ。我慢出来るか保証ねぇけど。……それに、本当に淫魔か疑ってんです」
ふーん、と千皇は鼻先で言った。
「お前は一度淫魔に取り憑かれたからな」
「確証を得る手段がねぇんです」
「抱いて見りゃ良いだろ?」
「簡単に出来るかよ……」
楼依は頭を搔いた。
「それこそ次男は待ってんじゃねぇの?」
「下手打つ訳には行かねぇでしょ」
「お前達はサンプルだろ?」
「サンプルだからこそ下手打てねぇでしょ」
「あー言えばこー言う」
千皇の言い返しに、楼依はムッとする。
「好きで淫魔になったんじゃない。……そう言ってた」
ふと千皇が呟いた。
そして、灰皿にタバコを揉み消した。
「思う節はあったのかもな。セックス好きは矛盾すんけど」
「そこまで分かってんなら、弾さんにヤキモチ妬いていじけんな」
「妬いてねぇし、いじけてねぇ。敵も弾だけじゃねぇだろ」
あー、と楼依は呟く。
魔王共がいる。
楼依が奴隷になった事は知られている筈だ。
だが、変には仕掛けて来ない。
余裕があるのか、バカにしているのか。
監視はされているとヨゾラは言っていた。
「未知の生物だろ?」
「あー、威厳はあったな。デカかったし、黒かったし、勝手に話を進めるし」
「会ったのか」
「喧嘩売った。そう言えば、何か余裕だった。ムカつく」
売ったのかよ、と千皇は小さく笑った。
「先輩だって、居たら売るでしょ、喧嘩」
「話し合いで済ませる」
「嘘つけ」
楼依は疑いの眼差しを向けた。
「あれ以来会ってはねぇけど監視はされているらしいです。だから、余裕かも」
「へぇー、んじゃアイツの行為も見られてるって訳だ」
「覗き見なんて悪趣味な。絶対捕まえる」
「見せつけりゃ良いだろ。仲良しこよしって」
「気が気じゃねぇよ」
「今更だろ。お前らが上手く行きゃ、向こうも焦るんじゃね?」
千皇の提案に、楼依は少し考えてしまった。
千皇は下を向いて笑いを堪える。
楼依はハッとした。
「やべぇ、乗せられるとこだった」
そう言う楼依に、千皇は舌打ちした。
「それなら余計に先輩が逢いに行ってイチャイチャすりゃいいでしょ。あの人、魔王とやらのお気に入りだし、弾さんも牽制出来るだろうし」
楼依の提案に、千皇は面倒くさげな表情を浮かべる。
「そもそも、俺達はそう言う関係じゃねぇよ。誤解すんな」
「まだ、でしょ」
「……何だってくっつけたがるか」
「先輩、先輩は自分が思ってる程隠し切れてないんです。自分の表情とか態度」
「そうか。……わざとしてるのかもな」
「タチ悪い……。わざとやってんなら、迎えに行きゃいーのに」
「何度言われても、俺の気持ちは変わらない」
はぁ~、と楼依は頭を抱えた。
幾ら訴えても堂々巡りだ。
もう、放っておこうか、と思いたいくらいだ。
「あ、またサボってる。もう開店してんですよ?」
ノックもせず、ズカズカと佐藤君がミーティングルームに入って来た。
「今から行こうとしたんだが、先輩に呼び止められたんだ」
「そう言えばアイリさん来なくなりましたね」
「別にいー男でも出来たんじゃねぇの?黒くてデカい奴」
「まぁ、お陰でいろんな姫さん達に回れるから良いですが」
「何時まで代理をすりゃ良いんだろな」
そんな台詞を吐いて、楼依はミーティングルームを出て行った。
「ヒカルは復帰は無理か?」
千皇が聞いた。
「地元に帰るって。大分顔色も良くなったのですが」
「なら、まだまだ辞めれねぇな。恋人出来て辞めてぇんだろうけど」
「え?姫神さんカノジョ出来たんすか? 」
「……さぁな」
千皇は再びパソコンに視線を向けた。
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