堕落した淫魔は夢を見る

雪之丞 親実

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学生とヨゾラ

02

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  ヨゾラは今日の出来事をグルグルと考えながら、気が付けば自宅に戻って来ていた。
  玄関を開けると、グラディエットが出迎えた。
  廊下を歩くと、良い匂いがする。

「あ、お帰り」

  リビングに行くと、夕飯を準備をしているルシカがそう声を掛けて来た。

「手を洗って着替えておいで」

  下界の生活にも慣れて来た。
  ただ、たまには羽を出さないと魔力の負担になるので、家にいる時や寝ている時は羽や角や尻尾を出すようにしている。 
  ルシカは尻尾をゆらゆらと揺しながら、鍋を掻き回していた。
  ヨゾラはリビングにバッグを置くと、キッチンへ行き手を洗い出した。

「ルシ兄は姫神さんと最近どう?」

  ふと、そんな事を聞いてみた。

「どう、って……。相変わらず優しいよ」

  ルシカはそう答えると、照れ笑いを浮かべた。

「そっか。姫神さんと交尾はした?」
 
  その質問に、ルシカの手が止まった。
  チラッとその横顔を見ると、白い肌が真っ赤になっている。
  あー、ヤったな、とヨゾラは悟った。

「姫神さん、カラダは大丈夫かな?前例があるし、ルシ兄の為なら精を持って行かれても我慢しそう」

  それはルシカも思っていた。
  この前は勢いとか流れとか、嬉しさもあってルシカからも強請ってしまった。
  交尾が終わった後は、楼依は普通だった気がする。
  あの日以降は、まだ繋がって居ない。
  大学とホストでスマホでのやり取りが主だった。

「ルシ兄は大丈夫なの?空腹とか、そう言うの」

  空腹は以前からあったかどうかも分からない。
  でも、楼依とは身も心も満たされた感じでそこまでは考えていなかった。
  ただ、楼依とならまたしたい、と思うのは黙っておこう。

「俺は何ともねぇよ。……楼依に言われるまで、本当に空腹があったか分かんねぇし」

  そっか、とヨゾラは呟いた。

「ヨゾラはどうなの?学校ってとこ」

  今度はルシカが聞いて来た。

「あー、何人か話が出来るニンゲンが出来たよ。部活ってのに誘われた」
「部活?」
「放課後、みんなで集まって何かするらしい。運動とかそう言うの。他の学校と戦うんだって」

  部活がどうか内容は良く分かって居ない。
  戦う、と言う言葉にルシカは目を丸くしヨゾラを見た。

「戦うって言っても、運動で得点競ったりするくらいだよ。怪我はあるだろうけど。まだ入るとか考えてないし」
「……そうか。怪我とか心配だけどさ、やりたい事はやった方が良いよ」

  ルシカは再び鍋を掻き回し始めた。

「あ、この前、姫神さんの先輩さんのお兄さんに逢ったんだ」

  タオルで手を拭きながら、ヨゾラは思い出した様に言った。

「すごい先輩さんにそっくりだった。性格とか話し方とか、背は低いけど。ルシ兄、そこで働いて欲しいって」
「何するところ?」
「女の子の格好して接客だって。売りとは違うし、聞いてみて、って言ってた。先輩さんのお兄さんだから、大丈夫とは思うけど」

  女の子の格好が気が乗らない。
  以前は下着だったが、それでも女の子の格好には変わりないわけだ。
  
「……ちょっと考えてみるよ。楼依のとこも手伝う予定だし」
「何やるの?」
「楼依の実家はげーのー事務所なんだって。そこの雑用?ヨゾラも学校に行けたから、変な仕事しないでも良いだろって」

  身体を売るよりはマシだ。
  楼依の関係なら、全然安心も出来るが、百瀬は諦めないだろう。
   着替えて来る、と告げるとヨゾラは自室に入った。
  このままだったら、ルシカは大丈夫そうだ。
  魔王が黙っているとは思えないが。
  バッグを机に置くとヨゾラは上着をハンガーに掛けた。
  ネクタイを取り、シャツを脱ぐ。
  適当なタンクトップを着ると、一息着いて羽を広げた。
  通常の格好は楽だ。
  部屋を出ると、ダイニングテーブルには食事が並んでいる。
  ルシカはラップを掛けた皿を冷蔵庫に入れた。 

「カグ兄は帰ってないんだ」

  椅子に座りながら、ヨゾラは言った。

「寝るだけには帰ってるみたいだよ。俺とは顔を合わせたくないんだろうな……」

  ルシカは寂しそうに笑った。
  あれから顔を合わせていない。
  メッセージを送っても既読が付くだけだった。

「ルシ兄はどうしたいの?」

  いただきます、と両手を合わせると、夕飯のカレーにスプーンを滑らせながらヨゾラは聞いた。

「アレは嫌だったけど、兄さんも何か理由があったのかも知れないし。……例えば、誰かに脅されたとかさ。……でも、今は待つしかないよ」

  ルシカもいただきます、と呟きカレーに辛味パウダーをかけ始めた。
  
「何だか、上手く行かないな……」

  ヨゾラは俯いてポツリと言うと、カレーを口に入れた。

「あ、そうだ。真幸君とはどうなんだ?仲良くやれてる?」

  辛味パウダーで真っ赤になったカレーを軽く混ぜ合わせると、ルシカがそう聞いた。
  ヨゾラの手が止まる。
  最近そっけないのも、今日冷たくあしらわれたのも言っていない。

「……あー、……バイトと学校が忙しいみたいでさ、あんまり連絡してねぇんだ。アイツ、お姉さんが居るって、迷惑かけられないからって言ってて……」
「そっか。俺、料理の腕も上げたし、今度は遊びに来てくれたら良いのに」

  見るからに激辛だろうカレーを頬張ると、ルシカは幸せそうな笑みを浮かべた。

「……伝えて置くよ」

  ヨゾラは一言そう言った。 

「俺さ、……兄さんが落ち着くまでは楼依と逢わない方が良いよな」 

  一口一口ゆっくりカレーを口に入れながら、ルシカが言った。

「別にカグ兄は関係ないだろ?」
「そう言う訳にも行かねぇだろ。今まで何もして来なかった俺が、……自分だけさ」
「そう言うのも引っ括めてカグ兄だってこっちに来たんだろ?魔王様との間に何かあっても、弾さんとの間に何かあっても、それが俺達の事でそうしたのなら、それは俺達が望んでない事だ。カグ兄は俺達を守りたいかも知れないけど。仮にそうだとしても、姫神さんを襲うのは違うだろ?ルシ兄や姫神さんに何かあったとしたって、姫神さんがどうにかするくらい分かってる筈だ」

  一気にヨゾラはそう言うと、サラダに手を伸ばした。

「……それでも、……兄さんだって本当は誰かに助けて欲しいのかも知れないよ」
「そんなの分かってる。素直にならないカグ兄の問題」
「無理かもしれねぇけどさ、兄さんには楽しく生きて欲しいんだ。もちろん、ヨゾラもね……」

  ルシカがそう願うのは、痛い程分かる。
  自分が弱くて、ずっと守られて生きて来て、下界で楼依に逢って、楼依もまたルシカを守ろうとしている。
  それに甘えている事も。

「……カグ兄、また変な風に考えるよ」
「でも、……俺にはそう言う事しか出来ねぇよ。逢わないだけで連絡は取るけどさ……」
「もし、空腹になったり、どーしようもなくなったら?」
「一人でどうにかするよ……」

  ただでさえ、精を取れていないんだ。
  魔王が何をして来るか分からない。
  カレーとサラダを掻き込むと、ヨゾラは立ち上がった。
  ご馳走様とだけ言うと、お皿をシンクに持って行き部屋に戻った。
  部屋に戻ったヨゾラは、ベッドに寝転んだ。
  次から次へと問題が出て来る。
  やっとルシカは落ち着いたと思ったのに。
  カグヤは相変わらずな上、常磐や真幸や頭がパンクしそうだ。
  常磐の事は真幸がどうにかするとは言っていたが、何だか腹が立つ。
  出来れば、自分でどうにかしたい。
  でも、どうにかするには身体を常磐に差し出す事になるし、ハジメテは老人と言う契約もある。
  常磐をどうにかする為に、さっさと老人を相手にするとしても、淫紋も出ていない今は願い下げだ。
  かと言って、先に常磐の相手をしたら老人が何をするか分からない。
  自分に害があるなら良いが、ルシカに何かあったら楼依に申し訳ない。
  カグヤに話せば、きっと自分が行くだろうが、縋りたくないし、そんな事をしたらカグヤをどうにか出来なくなる。
  時間は稼ぎたい。
  ヨゾラはベッドから起き上がった。
  そして、上着を羽織ると部屋を出た。

「ヨゾラ、お風呂入りなよ」

  部屋から出て来たヨゾラに、ルシカが話しかけた。

「ちょっとコンビニ行って来る。帰ったら入るよ」

  ヨゾラはそう言うと、急ぎ足で玄関を出た。
  マンションを出て、少し行った先の公園の多目的トイレに入る。
  鍵を閉めて一息着くと、便座に座った。

「どうせ居るんだろ?」

  静かな空間にヨゾラの声が響いた。

『ヨゾラ様から察知して頂けるとは……。至極恐悦にございます』

  わざとらしい言葉を並べながら、歪んだ空間から老人が現れた。

「魔界なんて暇なんだな」
『私はヨゾラ様のハジメテを頂けるお約束をしておりますゆえ、何かあったら……』

  ふん、とヨゾラは鼻先で言った。

「覗きしてんなら、カグ兄に何かあったか知ってるんだろ?」
『覗きとは失礼な。私は貴方達ご兄弟を心より心配しておりますゆえ……』
「どうだか……」

  老人はゆっくり杖を着きながら、ヨゾラの前に立った。

『何をして下さいますかな?』
「今日は俺から口でしてやる。勉強も1回だけって身に付かねぇだろ」
『ふむ。……よろしいでしょう。貴重なヨゾラ様からのお誘い故』

  老人はニンマリと笑った。
  ヨゾラは鼻先で笑い返すと、便座から立ち上がった。
  代わりに老人がそこに腰を下ろす。
  足を広げると、その間にヨゾラが屈んだ。
  不本意ではあるが、情報を掴むにはこれが手っ取り早い。
  たかが口に入れてしゃぶるだけだ、慣れてしまえば何て事はない。
  ヨゾラは老人の着物の裾をたくし上げると、骨と皮のカサついた足に、一瞬だけ表情を曇らせた。
  しかし、怯む訳にもいかず老人の下着の様な布に手をかけた。
  まだ触っても居ないのに、老人のそれは布を纏っていても形がはっきりと見える。
  ジジイのクセにと思いながら、ゆっくりと老人のペニスを取り出した。
  一息着くと、老人のペニスの先端を口に含んだ。

『しゃぶりながらお聞きくださいませ』

  老人は優しくヨゾラの頭を撫でた。

『カグヤ様は今やこの雄の象徴が勃たない状況でございます』
 
  先端ばかりを舐めるヨゾラに、もっと咥えろと言わんばかりに少し腰を突き上げた。
  ヨゾラは老人のペニスの根元を握り、口にの中に竿を飲み込んで行く。

『まぁ、穴さえあれば事足りますゆえ、問題ではございませんが。カグヤ様はご自分が汚れた身だと、やっとご理解したご様子。それゆえ、勃起不全になられたかと』

  老人のペニスに舌を這わせながら、ヨゾラは顔を顰めた。
  
『カグヤ様はご自分から喜んで誰彼構わず尻を振るお方。カグヤ様が情を持ったニンゲンが、汚れたカグヤ様に情を持つ事がございましょうか?』

  もどかしく舌を這わせるヨゾラの頭を掴むと、上下に動かした。

『舌で舐めるだけではなく、口全体で愛撫しなされ』

  ヨゾラは老人の手を掴むと、動かすのを止めさせた。
  自分のペースで頭をゆっくり動かす。

『ルシカ様にはカグヤ様以外に奴隷が盾となり、お守りするでしょう。ご自分はルシカ様とヨゾラ様をお守りする為に、カラダを汚したと言うのに、ルシカ様は……』

  悲しげに言っている振りの老人に、思わず歯を立てようかと思った。

『しかしながら、カグヤ様が情に絆されぬ様、お世話になっているニンゲンがそれを気付かせて下さった事には感謝しております。汚れた奴に恋慕を寄せる奴は居ない、とはっきりおっしゃいました。勃起不全になられたのは少々痛手でございましょうが』

  カグヤが楼依に対してヤケになった理由が分かった。
  しかし、後一つ情報が欲しい。
  ヨゾラは老人の根元を上下に動かし始めた。
  ペニスの先端の割れ目に、舌先を入れるとビクッとペニスが震えた。

『それ、……気持ち良いですぞっ』

  そう老人が言うと、ヨゾラはギュッと力強く老人の根元を握った。
  そして、一旦口を離す。

『あぁ、もう少しで達せたと言うのに』
「……それだけじゃねぇだろ」

  ヨゾラは強く握った根元を上下に強く擦りながら、にっと笑みを浮かべた。

「気持ち良さそうだが、これじゃイケねぇよな?」

  強く根元を握られ、老人は達する事が出来ない。
  老人の手がヨゾラに伸びるも、ヨゾラはその手も空いてる手で掴んだ。

『魔王様が戯れに、カグヤ様のお相手に化けて交尾をしたところ、勃起不全は治ったとっ。しかし、他の雄とは……』

  そうか、とヨゾラは少し安堵した。
  そして、掴んだペニスの力を弱めるた。

「好きなだけイって良いぞ」

  そう言ったと同時に、老人のペニスがビクビクと脈を打ち、白濁とした精液が飛び散った。
  予想外にも、ヨゾラの頬にもそれが飛び散る。

『口で奉仕して下さるお約束でしたのに』

  喋り過ぎたと、老人は舌打ちした。
  ヨゾラは洗面台へ行くと、手と顔を洗った。
  ついでにうがいも。

「別にお前達に取ってもどーって事も無い話だろ?」
『確かに、貴方様が足掻いたとて、我等には痛くも痒くもありませぬ』

  言い方がムカつく。

『精々この調子でご自分の貞操をお守り下され。練習相手なら何時でも御付き合い致します故』

  そう言うと、老人は姿を消した。
  ヨゾラは舌打ちをすると、再び手を洗い多目的トイレを出て行った。
  

   

  
  
  

  
  

  

   
   
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