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学生とヨゾラ
06
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日も落ちた夜の公園。
ルシカはグラディエットの散歩に出ていた。
一応下界では大型の犬、と言う事にしていて、日中はマンションで一人ぼっちでお留守番している。
魔界では、ルシフェルが亡くなったあと、城に戻らずずっとカグヤ達兄弟を守って居たが、ほとんどルシカが家に居たため寂しくはなかった。
今はルシカも家を空ける事が多い為、ちょっぴり寂しいのだが、散歩に出れる時間は嬉しそうだ。
公園の出口に差し掛かった時、いきなりグラディエットが、左側の茂みへと走り出した。
「ちょ、グラディエット?!」
ルシカは引っ張られる様に、グラディエットと走った。
しばらく走らされると、その先のベンチに止まる。
「もー、どうしたんだよ……」
いきなり走らされて、息を整えながらベンチを向くと、人が項垂れた様に座っている。
横には小さなキャリーバッグがあり、その人は見慣れた服を着ていた。
黒く少し長めの髪の毛が垂れて、良く表情が見えないが、グラディエットはその人物に近付くと顔を覗き込んだ。
「ぅをっ!?」
そんな声を上げ、その人物は顔を上げた。
「……真幸君?」
ルシカはその人物に声を掛けた。
顔を舐めて来るグラディエットの顔を剥がしながら、真幸は顔を上げた。
「あー……」
薄く街灯の明かりだけで、良く表情が伺えないが、バツが悪そうだ。
「……こんな時間にどうかしたのか?」
ルシカはグラディエットを引き剥がすと、座らせながら聞いた。
「別になんでもあらへん」
真幸は素っ気なく答えた。
「でも、なんでそんな荷物……。それに……」
ルシカはしゃがみ込んで、視線を真幸に合わせた。
「……怪我してるよ」
そう言った。
真幸は咄嗟に頬に手を当てる。
「気にするな、って方が無理だろ」
「ほんまに何でもあらへん。ほっといてくれへんか?」
「そんな事、出来るわけない。手当するから、うちに行こう」
「ほっといたら治るわ、こんなもん」
「こんな時間にこんな場所にこんな荷物持ってるんだ。行く場所もないんじゃないの?」
ルシカはチラッと真幸の荷物を見た。
小さなキャリーバッグと通学用の鞄。
慌てて荷造りしたのだろう。
グラディエットはのっそりと立ち上がると、真幸の服の裾を噛んで引っ張った。
「良いから行こう?」
ルシカはそう言って立ち上がった。
真幸からしたら、ヨゾラに逢いたくない。
自分から自分に関わるな、と距離を作ってしまったし、会いづらい。
まさか、こんな事になるなんて思っても見なかった。
「じゃないと、グラディエットが服を破っちゃう」
ルシカはそう言いながら、真幸の通学用の鞄に手を伸ばした。
真幸は溜息を吐く。
「……荷物は自分で持てるねん」
そう呟いた。
ルシカは、にっこり笑みを浮かべると立ち上がった。
ヨゾラは居るのだろうか、その不安は過ぎる。
突き放して起きながら、着いて来るとか有り得ない。
「あー……」
前を歩くルシカに真幸は声を発した。
「ヨゾラは今居ないよ。出掛けてるんだ」
「……こない夜遅く」
「他人の事言えねぇだろ」
ルシカは笑った。
「喧嘩でもしてん?」
「違う。人と一緒だから、あんまり心配していないかな」
「そいや、クラスにダチ出来たって聞いたわ……」
「学校の友達じゃないよ。んー、どう言えば良いんだろ?」
ルシカはうーんと唸る。
「……オトナのお友達?」
「なんや、そのアヤシイ関係は……。それで心配ならへんのか?」
「俺が信頼してる人達だから大丈夫だよ」
「見てへん場所なら分からへんやん」
「まぁ、……ね。仮に何かあったら、……それは俺の責任」
少し寂しげにルシカは言った。
マンションのエントランスに入る。
とりあえず、手当して貰ったら適当に言ってヨゾラが帰る前に出て行こうと思った。
真幸のスマホが鳴る。
エレベーターを待っている間、着信を確認すると溜息を吐いて鞄に直した。
「……良いの?」
ルシカが聞いた。
「大した用事やない」
「……そっか」
真幸の即答に、ルシカは呟いた。
エレベーターが開く。
二人と一匹はエレベーターに乗った。
無言でエレベーターは登って行く。
グラディエットは、きちんとお座りをしながら欠伸を一つした。
ちーんと言う音と共に、エレベーターは止まり扉が開いた。
部屋は真ん前だ。
ルシカは玄関を開けると、どうぞと真幸を促した。
真幸は戸惑いながら入り、直ぐに出れる様に玄関に荷物を置いた。
何度か来た事あるリビングに通された。
ソファーには座らず、床に座った。
その横に、グラディエットが座る。
真幸を見張って居るのだろうか。
ルシカはテレビボードから、救急セットを取り出しテーブルに置くと、真幸の横にグラディエットと挟むように座る。
「喧嘩は良くないよ」
ルシカはそう言うと、救急セットから清浄綿を取り出すと、そっと真幸の頬を拭いた。
「喧嘩やあらへん。一方的に殴られただけや」
素っ気なく真幸は答えた。
「行くとこないなら、うちに居れば良いよ。ヨゾラだって居るし」
ルシカは真幸の頬に湿布を貼った。
「……あー」
真幸は言葉に詰まった。
荷物がある以上は家ではバレている。
行く場所は、ない。
明日になれば何とかなるんだろうが。
「友達待っとったんや。ちょっといきなりやったからな」
そう答えた。
「その割には、困ってた様に見えたけど」
ルシカは救急セットを直しながら、そう言った。
「ヨゾラが何かした?」
ルシカが立ち上がると、グラディエットが真幸の膝に顔を乗せた。
逃がす気が内容だ。
ルシカはキッチンに行くと、冷蔵庫を開けお茶のボトルを取り出した。
ヨゾラは別に何をした訳では無い。
自分の都合だ。
「何もしてへん。せやけど、一緒には居られへん」
「ヨゾラは真幸君が初めての友達だから、どう付き合って行けば良いか分からないのかも知れない。……なるべく、関わらないように生きてきたからさ」
「……」
「外に出たら、バカにされて居たから、俺達……。兄さんは、それでも社交的だけど、俺は、……外が怖くて引きこもりで、ヨゾラが守ってくれてたんだ」
お茶の入ったグラスを真幸の前に置く。
「ヨゾラの社交性を奪ったのは、俺だからね。……だから、ヨゾラにはここではやりたいようにさせたいんだ」
グラディエットは心地良さそうに真幸の膝に頬擦りをした。
「まぁ、……真幸君には関係ない事だよね。でも、俺は心配だよ。ヨゾラも、真幸君も……。俺達には、分からない事ばかりだからさ」
「……」
「俺達にも全部話せない事がある様に、真幸君にもあるもんな……。あ、友達のとこに行くんだっけ?大丈夫?」
ルシカは時計を見上げた。
時間は夜8時前。
「……ほんまは、行く場所はあらへん」
真幸は肩を落として項垂れた。
ルシカは真幸を見た。
「俺、普段は姉ちゃんと二人暮らしやねん。せやけど、姉ちゃんの旦那が帰って来ると、俺に暴力振るうから」
「その怪我も、その人が?」
ルシカが聞くと、真幸は頷いた。
「いつもは帰って来る数日前に連絡来るんやけど、今回はいきなりやった。前までは、ダチや知り合いんとこに避難でけたんやけど、今回はいきなり過ぎて誰も捕まらへんかった」
「だったら、ここに居なよ?」
「……いや、それは……」
ヨゾラを突き放した手前、ここに居るのは気まづいし、ヨゾラが何を思うか。
「やっぱり、ヨゾラと何かあった?」
ほら、飲みなよ、とお茶を差し出す。
真幸は頭を搔く。
「……同じ学校やなかったら良かったんけど。学校での俺は見られたくないねん。アイツの事や、同じ学校って知ったら、探すやろし。まぁ、バレたけど」
「ヨゾラは真幸君を大好きだから。あ、初めての友達って意味で」
「せっかく学校に来たんや。俺以外でも付き合い増やさなあかんのは本音やね」
「だったら、ほとぼりが冷めるまでうちに居なよ。……ここなら、真幸君だって片意地はらずに済むだろ?」
「俺に構うな、言うたんやで?今更やろ」
真幸は苦笑いを浮かべた。
「それに、アイツが浅霧組と付き合いがあるんの、一部ではバレとる……。俺がアイツと関わりがあったら、……アイツは」
「ヨゾラは強いし、頭が良いよ。じゃなけりゃ、今頃俺は……、もっと引き篭ってた」
ルシカは小さく笑った。
「ヨゾラを大事に思ってくれて、ありがとう」
そうルシカが言うと、真幸はぷいっとそっぽを向いた。
「……そんなんやあらへん」
少し照れ臭そうだ。
「それじゃ、真幸君の布団用意しなきゃ」
「まだ世話になる言うてないやろっ!?」
「部屋は……、ヨゾラと一緒で良いよね?」
「話聞かんかいっ!」
ルシカは真幸を見てニコッと笑う。
真幸は溜息を吐いた。
「兄貴に勝手でえぇん?」
「兄さんは……、今は帰って来てないよ」
「兄弟喧嘩中なら尚更居られへんやんか」
「喧嘩じゃないよ。兄さんがいじけているだけ」
そうルシカは言うと立ち上がった。
玄関から荷物を持って来ると、勝手にヨゾラの部屋に置く。
「せやから、まだ世話になるとは……」
「何処にも行く場所がないんだろう?俺達は真幸君に助けられたんだ。恩くらい返させろよ」
そのままクローゼットへ行くと、今度は布団のセットを運び出した。
そして、またヨゾラの部屋へ持って行く。
「俺、ソファーでえぇねん……」
「そー言う訳にも行かねぇの」
同じ部屋なんか気を遣うし、気まづい。
グラディエットは真幸の膝に顔を乗せたまま、寝てしまっているようだ。
逃げ出す事が出来ない状況に、真幸はただ肩を落とすしか無かった。
ルシカはグラディエットの散歩に出ていた。
一応下界では大型の犬、と言う事にしていて、日中はマンションで一人ぼっちでお留守番している。
魔界では、ルシフェルが亡くなったあと、城に戻らずずっとカグヤ達兄弟を守って居たが、ほとんどルシカが家に居たため寂しくはなかった。
今はルシカも家を空ける事が多い為、ちょっぴり寂しいのだが、散歩に出れる時間は嬉しそうだ。
公園の出口に差し掛かった時、いきなりグラディエットが、左側の茂みへと走り出した。
「ちょ、グラディエット?!」
ルシカは引っ張られる様に、グラディエットと走った。
しばらく走らされると、その先のベンチに止まる。
「もー、どうしたんだよ……」
いきなり走らされて、息を整えながらベンチを向くと、人が項垂れた様に座っている。
横には小さなキャリーバッグがあり、その人は見慣れた服を着ていた。
黒く少し長めの髪の毛が垂れて、良く表情が見えないが、グラディエットはその人物に近付くと顔を覗き込んだ。
「ぅをっ!?」
そんな声を上げ、その人物は顔を上げた。
「……真幸君?」
ルシカはその人物に声を掛けた。
顔を舐めて来るグラディエットの顔を剥がしながら、真幸は顔を上げた。
「あー……」
薄く街灯の明かりだけで、良く表情が伺えないが、バツが悪そうだ。
「……こんな時間にどうかしたのか?」
ルシカはグラディエットを引き剥がすと、座らせながら聞いた。
「別になんでもあらへん」
真幸は素っ気なく答えた。
「でも、なんでそんな荷物……。それに……」
ルシカはしゃがみ込んで、視線を真幸に合わせた。
「……怪我してるよ」
そう言った。
真幸は咄嗟に頬に手を当てる。
「気にするな、って方が無理だろ」
「ほんまに何でもあらへん。ほっといてくれへんか?」
「そんな事、出来るわけない。手当するから、うちに行こう」
「ほっといたら治るわ、こんなもん」
「こんな時間にこんな場所にこんな荷物持ってるんだ。行く場所もないんじゃないの?」
ルシカはチラッと真幸の荷物を見た。
小さなキャリーバッグと通学用の鞄。
慌てて荷造りしたのだろう。
グラディエットはのっそりと立ち上がると、真幸の服の裾を噛んで引っ張った。
「良いから行こう?」
ルシカはそう言って立ち上がった。
真幸からしたら、ヨゾラに逢いたくない。
自分から自分に関わるな、と距離を作ってしまったし、会いづらい。
まさか、こんな事になるなんて思っても見なかった。
「じゃないと、グラディエットが服を破っちゃう」
ルシカはそう言いながら、真幸の通学用の鞄に手を伸ばした。
真幸は溜息を吐く。
「……荷物は自分で持てるねん」
そう呟いた。
ルシカは、にっこり笑みを浮かべると立ち上がった。
ヨゾラは居るのだろうか、その不安は過ぎる。
突き放して起きながら、着いて来るとか有り得ない。
「あー……」
前を歩くルシカに真幸は声を発した。
「ヨゾラは今居ないよ。出掛けてるんだ」
「……こない夜遅く」
「他人の事言えねぇだろ」
ルシカは笑った。
「喧嘩でもしてん?」
「違う。人と一緒だから、あんまり心配していないかな」
「そいや、クラスにダチ出来たって聞いたわ……」
「学校の友達じゃないよ。んー、どう言えば良いんだろ?」
ルシカはうーんと唸る。
「……オトナのお友達?」
「なんや、そのアヤシイ関係は……。それで心配ならへんのか?」
「俺が信頼してる人達だから大丈夫だよ」
「見てへん場所なら分からへんやん」
「まぁ、……ね。仮に何かあったら、……それは俺の責任」
少し寂しげにルシカは言った。
マンションのエントランスに入る。
とりあえず、手当して貰ったら適当に言ってヨゾラが帰る前に出て行こうと思った。
真幸のスマホが鳴る。
エレベーターを待っている間、着信を確認すると溜息を吐いて鞄に直した。
「……良いの?」
ルシカが聞いた。
「大した用事やない」
「……そっか」
真幸の即答に、ルシカは呟いた。
エレベーターが開く。
二人と一匹はエレベーターに乗った。
無言でエレベーターは登って行く。
グラディエットは、きちんとお座りをしながら欠伸を一つした。
ちーんと言う音と共に、エレベーターは止まり扉が開いた。
部屋は真ん前だ。
ルシカは玄関を開けると、どうぞと真幸を促した。
真幸は戸惑いながら入り、直ぐに出れる様に玄関に荷物を置いた。
何度か来た事あるリビングに通された。
ソファーには座らず、床に座った。
その横に、グラディエットが座る。
真幸を見張って居るのだろうか。
ルシカはテレビボードから、救急セットを取り出しテーブルに置くと、真幸の横にグラディエットと挟むように座る。
「喧嘩は良くないよ」
ルシカはそう言うと、救急セットから清浄綿を取り出すと、そっと真幸の頬を拭いた。
「喧嘩やあらへん。一方的に殴られただけや」
素っ気なく真幸は答えた。
「行くとこないなら、うちに居れば良いよ。ヨゾラだって居るし」
ルシカは真幸の頬に湿布を貼った。
「……あー」
真幸は言葉に詰まった。
荷物がある以上は家ではバレている。
行く場所は、ない。
明日になれば何とかなるんだろうが。
「友達待っとったんや。ちょっといきなりやったからな」
そう答えた。
「その割には、困ってた様に見えたけど」
ルシカは救急セットを直しながら、そう言った。
「ヨゾラが何かした?」
ルシカが立ち上がると、グラディエットが真幸の膝に顔を乗せた。
逃がす気が内容だ。
ルシカはキッチンに行くと、冷蔵庫を開けお茶のボトルを取り出した。
ヨゾラは別に何をした訳では無い。
自分の都合だ。
「何もしてへん。せやけど、一緒には居られへん」
「ヨゾラは真幸君が初めての友達だから、どう付き合って行けば良いか分からないのかも知れない。……なるべく、関わらないように生きてきたからさ」
「……」
「外に出たら、バカにされて居たから、俺達……。兄さんは、それでも社交的だけど、俺は、……外が怖くて引きこもりで、ヨゾラが守ってくれてたんだ」
お茶の入ったグラスを真幸の前に置く。
「ヨゾラの社交性を奪ったのは、俺だからね。……だから、ヨゾラにはここではやりたいようにさせたいんだ」
グラディエットは心地良さそうに真幸の膝に頬擦りをした。
「まぁ、……真幸君には関係ない事だよね。でも、俺は心配だよ。ヨゾラも、真幸君も……。俺達には、分からない事ばかりだからさ」
「……」
「俺達にも全部話せない事がある様に、真幸君にもあるもんな……。あ、友達のとこに行くんだっけ?大丈夫?」
ルシカは時計を見上げた。
時間は夜8時前。
「……ほんまは、行く場所はあらへん」
真幸は肩を落として項垂れた。
ルシカは真幸を見た。
「俺、普段は姉ちゃんと二人暮らしやねん。せやけど、姉ちゃんの旦那が帰って来ると、俺に暴力振るうから」
「その怪我も、その人が?」
ルシカが聞くと、真幸は頷いた。
「いつもは帰って来る数日前に連絡来るんやけど、今回はいきなりやった。前までは、ダチや知り合いんとこに避難でけたんやけど、今回はいきなり過ぎて誰も捕まらへんかった」
「だったら、ここに居なよ?」
「……いや、それは……」
ヨゾラを突き放した手前、ここに居るのは気まづいし、ヨゾラが何を思うか。
「やっぱり、ヨゾラと何かあった?」
ほら、飲みなよ、とお茶を差し出す。
真幸は頭を搔く。
「……同じ学校やなかったら良かったんけど。学校での俺は見られたくないねん。アイツの事や、同じ学校って知ったら、探すやろし。まぁ、バレたけど」
「ヨゾラは真幸君を大好きだから。あ、初めての友達って意味で」
「せっかく学校に来たんや。俺以外でも付き合い増やさなあかんのは本音やね」
「だったら、ほとぼりが冷めるまでうちに居なよ。……ここなら、真幸君だって片意地はらずに済むだろ?」
「俺に構うな、言うたんやで?今更やろ」
真幸は苦笑いを浮かべた。
「それに、アイツが浅霧組と付き合いがあるんの、一部ではバレとる……。俺がアイツと関わりがあったら、……アイツは」
「ヨゾラは強いし、頭が良いよ。じゃなけりゃ、今頃俺は……、もっと引き篭ってた」
ルシカは小さく笑った。
「ヨゾラを大事に思ってくれて、ありがとう」
そうルシカが言うと、真幸はぷいっとそっぽを向いた。
「……そんなんやあらへん」
少し照れ臭そうだ。
「それじゃ、真幸君の布団用意しなきゃ」
「まだ世話になる言うてないやろっ!?」
「部屋は……、ヨゾラと一緒で良いよね?」
「話聞かんかいっ!」
ルシカは真幸を見てニコッと笑う。
真幸は溜息を吐いた。
「兄貴に勝手でえぇん?」
「兄さんは……、今は帰って来てないよ」
「兄弟喧嘩中なら尚更居られへんやんか」
「喧嘩じゃないよ。兄さんがいじけているだけ」
そうルシカは言うと立ち上がった。
玄関から荷物を持って来ると、勝手にヨゾラの部屋に置く。
「せやから、まだ世話になるとは……」
「何処にも行く場所がないんだろう?俺達は真幸君に助けられたんだ。恩くらい返させろよ」
そのままクローゼットへ行くと、今度は布団のセットを運び出した。
そして、またヨゾラの部屋へ持って行く。
「俺、ソファーでえぇねん……」
「そー言う訳にも行かねぇの」
同じ部屋なんか気を遣うし、気まづい。
グラディエットは真幸の膝に顔を乗せたまま、寝てしまっているようだ。
逃げ出す事が出来ない状況に、真幸はただ肩を落とすしか無かった。
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