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暴君
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「楼依っ!」
ルシカの声が聞こえた。
目を開けると、ルシカが心配そうに楼依の手を握っている。
「あー……」
楼依はゆっくり上半身を起こした。
「ごめんな。もう少し早く着いていたら千皇さんの恋人候補を助けられたんだけど、ジンがトイレからなかなか出て来なくて」
長い黒髪を後ろに束ね、無気力っぽく話す男は、そう無感情に言った。
「食い過ぎたんだ、仕方ねぇだろ。エルだってモタモタしてたじゃん」
短髪でツーブロック、金髪のジンと呼ばれたガタイの良い男は欠伸しながらそう言い返した。
「まぁ、楼依だからあそこまでやられるって思ってなかったしね」
「まぁ、相手方の人数もやべかったしな。俺達が来なけりゃ、楼依も連れて行かれただろうし」
思えば身体中が痛い。
顔に違和感があるが、湿布か絆創膏が貼られているんだろう。
辺りを見回すと、飲み屋のボックス席に寝かされて居る様だった。
千皇の兄、百瀬の店だ。
楼依は今にも泣き出しそうなルシカを抱き寄せると、ポンポンと背中を撫でる。
カウンター席には、千皇とヨゾラと真幸が座って居た。
「……兄貴は?」
「連れて行かれた……」
楼依の質問に、千皇が答える。
「発情してんのにヤバくないっすか?」
「それについて、末っ子と話をしてた」
「……それを解く方法を知ってそうな奴が一人居るんで、そこは何とか俺がします」
ヨゾラがそう言うが、いささか暗い。
知ってそうな奴とは、老人の事だろう。
「リストを兄貴が盗んだとか言ってました」
「……バカだな、アイツら。それに、アイツは恋人候補でもねぇよ」
千皇はポツリと言った。
残念、とエルは呟いた。
「でもどーすんっすか?黒槌の事務所に乗り込むなら俺も着いて行きますよ」
ジンが拳を鳴らしながら言った。
「楼依がほぼ倒したって言っても、ジンは出遅れたもんねー」
「エルだって暴れ足りねぇだろ?」
「んー、俺は千皇さんの恋人候補がどんなんか見てみたいだけ。……それに、事務所には居ないと思うよ。アジトが何処にあるかまでは、俺も突き止められなかったけど」
「……それなら、心当たりあんねん。まぁ、簡単に口を割るか保証はないねんけど」
真幸は頭を掻きながらそう言った。
「なぁ、何で兄さんが神代さんのとこに居るって分かったんだ?」
楼依に抱きついたまま、ルシカが顔を上げた。
「お前と兄貴を狙ってるヤンキーだろ。……どう言った経緯があったか知らねぇけど」
「……だったら、俺はソイツと話をするよ」
「何しでかすか分からねぇからダメ」
「俺だって何か役に立ちたいし……」
「お前が危ない」
「一緒に居てくれるだろ?」
ルシカの大きな目で見上げられると弱い。
楼依はそっとルシカの目を隠した。
「……千皇さんも恋人出来たらあーなるのかな?」
二人を見ながらコソッとエルが呟く。
「いやー、想像つかねぇだろ。楼依も大概だが」
コソッとジンも呟いた。
「俺に恋人候補は居ねぇが、……弾のとこに行ってくる」
千皇はそう言うと、吸っていたタバコを揉み消した。
「何それ、面白そー」
「俺も行きますよっ!」
エルとジンは目を輝かせた。
千皇は溜息を吐く。
「末っ子、お前は関西と一緒にやれ」
「それぞれのが早いんじゃ……」
「止めれる奴が必要だ。……特に末っ子、次は何されるか分からねぇ。それから関西、お前もはら括れ。別れて行動するんだ。俺も楼依も直ぐには行けない 」
千皇の言葉に、真幸は怪訝に顔を顰めたが、大きく一息吐いた。
「……ここまで付きおうたんや。期待には添えられへんやろが出来る事はするつもりや」
チラッとヨゾラを見るが、ヨゾラは首を傾げている。
「……ほなら、俺らは行くで」
そう言うと、真幸はバーの出入口に歩き出し、ヨゾラも後を付いて行った。
「んじゃ、俺はあのヤンキーを呼び出すか……」
楼依はスマホを取り出した。
「楼依は大丈夫なんか?怪我してんじゃん。何なら俺がそっちに行くか?」
ジンは少し心配そうだ。
「これくらい大丈夫ですよ。1発くらいぶん殴れる」
スマホを操作しながら、楼依はそう答えた。
通知音が鳴ると、楼依はポケットにスマホを仕舞った。
「あ、俺の車は?」
思い出した様に、楼依は聞いた。
「ボロボロ」
そう千皇が答える。
マジかよ、と楼依は頭を抱えた。
「……仕方ねぇ。アイツらに買わせる」
そうボヤくと、一旦ルシカを自分から離した。
ソファーから立ち上がると、ルシカの手を取った。
「……まぁ、いろいろ遅せぇと思うが」
「また一から躾直す」
「……兄さん、神代さんの事はいろいろ嫌な方に考えちゃうみたいで……。……それが何なのかは、分かっては居るとは思う……」
千皇の前に来ると、ルシカは俯きながらそう言った。
分かってる、と千皇はルシカの頭を撫でると、楼依が不機嫌になった。
グイッとルシカを抱き寄せると、無言でバーを出て行った。
「楼依って、あんなに分かりやすい奴だったっけ?」
ちょっと面白げにジンは笑った。
「姫神がベタ惚れ。恋人じゃなくて奴隷だったか」
「何それ、彼氏君もベタ惚れに見えたけど」
エルの言葉に、千皇は小さく笑った。
ルシカの声が聞こえた。
目を開けると、ルシカが心配そうに楼依の手を握っている。
「あー……」
楼依はゆっくり上半身を起こした。
「ごめんな。もう少し早く着いていたら千皇さんの恋人候補を助けられたんだけど、ジンがトイレからなかなか出て来なくて」
長い黒髪を後ろに束ね、無気力っぽく話す男は、そう無感情に言った。
「食い過ぎたんだ、仕方ねぇだろ。エルだってモタモタしてたじゃん」
短髪でツーブロック、金髪のジンと呼ばれたガタイの良い男は欠伸しながらそう言い返した。
「まぁ、楼依だからあそこまでやられるって思ってなかったしね」
「まぁ、相手方の人数もやべかったしな。俺達が来なけりゃ、楼依も連れて行かれただろうし」
思えば身体中が痛い。
顔に違和感があるが、湿布か絆創膏が貼られているんだろう。
辺りを見回すと、飲み屋のボックス席に寝かされて居る様だった。
千皇の兄、百瀬の店だ。
楼依は今にも泣き出しそうなルシカを抱き寄せると、ポンポンと背中を撫でる。
カウンター席には、千皇とヨゾラと真幸が座って居た。
「……兄貴は?」
「連れて行かれた……」
楼依の質問に、千皇が答える。
「発情してんのにヤバくないっすか?」
「それについて、末っ子と話をしてた」
「……それを解く方法を知ってそうな奴が一人居るんで、そこは何とか俺がします」
ヨゾラがそう言うが、いささか暗い。
知ってそうな奴とは、老人の事だろう。
「リストを兄貴が盗んだとか言ってました」
「……バカだな、アイツら。それに、アイツは恋人候補でもねぇよ」
千皇はポツリと言った。
残念、とエルは呟いた。
「でもどーすんっすか?黒槌の事務所に乗り込むなら俺も着いて行きますよ」
ジンが拳を鳴らしながら言った。
「楼依がほぼ倒したって言っても、ジンは出遅れたもんねー」
「エルだって暴れ足りねぇだろ?」
「んー、俺は千皇さんの恋人候補がどんなんか見てみたいだけ。……それに、事務所には居ないと思うよ。アジトが何処にあるかまでは、俺も突き止められなかったけど」
「……それなら、心当たりあんねん。まぁ、簡単に口を割るか保証はないねんけど」
真幸は頭を掻きながらそう言った。
「なぁ、何で兄さんが神代さんのとこに居るって分かったんだ?」
楼依に抱きついたまま、ルシカが顔を上げた。
「お前と兄貴を狙ってるヤンキーだろ。……どう言った経緯があったか知らねぇけど」
「……だったら、俺はソイツと話をするよ」
「何しでかすか分からねぇからダメ」
「俺だって何か役に立ちたいし……」
「お前が危ない」
「一緒に居てくれるだろ?」
ルシカの大きな目で見上げられると弱い。
楼依はそっとルシカの目を隠した。
「……千皇さんも恋人出来たらあーなるのかな?」
二人を見ながらコソッとエルが呟く。
「いやー、想像つかねぇだろ。楼依も大概だが」
コソッとジンも呟いた。
「俺に恋人候補は居ねぇが、……弾のとこに行ってくる」
千皇はそう言うと、吸っていたタバコを揉み消した。
「何それ、面白そー」
「俺も行きますよっ!」
エルとジンは目を輝かせた。
千皇は溜息を吐く。
「末っ子、お前は関西と一緒にやれ」
「それぞれのが早いんじゃ……」
「止めれる奴が必要だ。……特に末っ子、次は何されるか分からねぇ。それから関西、お前もはら括れ。別れて行動するんだ。俺も楼依も直ぐには行けない 」
千皇の言葉に、真幸は怪訝に顔を顰めたが、大きく一息吐いた。
「……ここまで付きおうたんや。期待には添えられへんやろが出来る事はするつもりや」
チラッとヨゾラを見るが、ヨゾラは首を傾げている。
「……ほなら、俺らは行くで」
そう言うと、真幸はバーの出入口に歩き出し、ヨゾラも後を付いて行った。
「んじゃ、俺はあのヤンキーを呼び出すか……」
楼依はスマホを取り出した。
「楼依は大丈夫なんか?怪我してんじゃん。何なら俺がそっちに行くか?」
ジンは少し心配そうだ。
「これくらい大丈夫ですよ。1発くらいぶん殴れる」
スマホを操作しながら、楼依はそう答えた。
通知音が鳴ると、楼依はポケットにスマホを仕舞った。
「あ、俺の車は?」
思い出した様に、楼依は聞いた。
「ボロボロ」
そう千皇が答える。
マジかよ、と楼依は頭を抱えた。
「……仕方ねぇ。アイツらに買わせる」
そうボヤくと、一旦ルシカを自分から離した。
ソファーから立ち上がると、ルシカの手を取った。
「……まぁ、いろいろ遅せぇと思うが」
「また一から躾直す」
「……兄さん、神代さんの事はいろいろ嫌な方に考えちゃうみたいで……。……それが何なのかは、分かっては居るとは思う……」
千皇の前に来ると、ルシカは俯きながらそう言った。
分かってる、と千皇はルシカの頭を撫でると、楼依が不機嫌になった。
グイッとルシカを抱き寄せると、無言でバーを出て行った。
「楼依って、あんなに分かりやすい奴だったっけ?」
ちょっと面白げにジンは笑った。
「姫神がベタ惚れ。恋人じゃなくて奴隷だったか」
「何それ、彼氏君もベタ惚れに見えたけど」
エルの言葉に、千皇は小さく笑った。
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