堕落した淫魔は夢を見る

雪之丞 親実

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淫魔と正月※お正月SS

初初詣

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「なんなんだ、この人混み……」

  右に右に2列、左に3列、目の前と背後に長蛇の列。
  見渡せば、人、人、人……。

「正月だ、仕方ねぇ」

  千皇は相変わらず無表情でそう返した。
  列に並んで30分、2、3分に一歩しか進んでいない。

「何でこんなに並ぶんだよ。別の日にすりゃ良いのに」

  カグヤは飽きたのかムッとする。
  昨夜は千皇も仕事が休みで、日本酒を飲みながらツマミを食し、テレビを見ながら年越しうどんを食べ、除夜の鐘を聞き、再び日本酒を飲んだ。
  コタツが気持ち良く、そのまま寝てしまったらしく、「外に出してやる」と朝起こされた。
  久々の外出にカグヤは目を輝かせた。
  髪の毛を隠す様に帽子を被らされ、口許にはマスクを付けられた。
  マスクが煩わしい。

「正月だ。仕方ねぇ」
「そればっかじゃねぇか」
「まぁ、別の日でも良いが、新年の神様にお願い事する日。だから、人が多い」
「へー……」
「大抵叶わねぇけどな」
「意味ねぇじゃん」

  馬鹿らしい、とカグヤは呟く。
  参道にある屋台が気になったが、浅霧の連中が出店をしているとかで千皇が行かせてくれなかった。

「そもそも俺みてぇな魔族が神様なんか頼っていーのかね?」
「コイツ改心したんじゃね?くらいには思われるかも」
「んな軽くて神が務まるか」
「でも、天使の血だって流れてるだろ。気にしなくて良いんじゃね?」

  そう言われると、ちょっと嬉しい。
  目の前の人間が1歩歩いた。
  千皇もカグヤも一歩前に踏み出そうとした時、後ろの奴がカグヤにぶつかった。
  カグヤは小さく声を上げ、バランスを崩して前のめりになり、前の人にぶつかりそうになった。
  咄嗟に千皇の手が伸び、カグヤの肩を抱き寄せた。

「あ、すみませんっ!!」

  後ろの人間が謝って来た。
  どうやら靴紐が解け、踏んでしまったらしい。
  カグヤはチラッと振り向くと、ニコッと笑みを浮かべた。
  本当にすみません、ともう一度頭を下げられると、カグヤは視線を前に戻した。
  千皇の手は、カグヤの肩を抱いたままだ。
  後ろからヒソヒソと声が聞こえる。

「….…いつまで抱いてんだよ」

  ポツリとカグヤは呟く。

「さぁ?」
「……人前だし、恥ずいだろ」
「平気でセックスしよー、とか言う奴が何を」

  何故かは自分でも分からない。
  弾とかだったら平気だと思う。
  でも、千皇は何か恥ずかしくて顔が見れない。
  けど、離して欲しくはない。
  カグヤは肩に掛かる千皇の手を離させると、ギュッとその手を握り指を絡める。

「……こっちのが、隠せるだろ」

  それでもまだ恥ずかしい。
  少しそっぽを向いているカグヤの耳や項が真っ赤だ。
  仕方ねぇな、と千皇は呟くと握り返した。 
  一歩、また前進する。
  
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