堕落した淫魔は夢を見る

雪之丞 親実

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淫魔達のバレンタイン※バレンタインSS

ある男達の気合い

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  バレンタイン。
  それは、本命を頂けるチャンス。
  いや、本命ではなくとも、チョコを貰えるならば、それはそれで嬉しい。
  ボーイとて、例外では無い。
  身嗜みも念入りに。

「なぁなぁ。何でそんなに気合い入ってんだよ」

  鏡の前で髪型を必死にセットしている佐藤に、ヒーロはソファーで寝そべり、ポテトを食いながら聞いた。

「女の子からチョコを貰えるチャンスなんだ」
「なんだよ、チョコって」
「甘いお菓子だ」
「んなもん貰って嬉しいのか?」
「当たり前だっ!!バレンタインで貰えるのは、意味があるんだっ!!」

  佐藤は拳を握り締めた。

「俺は彼女が欲しいっ!」
「女、いたじゃねぇか。引っぱたかれたけど」
「君が泣きながら転がり込んで来たから、誤解されて振られたんだ」
「お前がちゃんと説明しなかったからだろ?引っぱたかれたショックで追いかけもしなかったのに」

  カグヤから拒否られたショックは大きかった。
  そして、ルシカに振られたショックも大きく、心がボロボロになったヒーロは佐藤宅に泣きながら転がり込んで来たのだが、強引に泣き付いかれた佐藤は玄関でバランスを崩して尻もちを着いた時に、ヒーロを抱き締める格好になってしまい、たまたま彼女が遊びに来たところに抱き合った男二人を見られ、誤解されてビンタを喰らい、彼女は別れを告げたのである。

「それに、気合い入れたって、そんなに変わらねーだろ」

  ヒーロはポテトの袋を片手にケラケラと笑った。
 
「君はいーよね。気楽でさ。ま、君の本命は恋人居るからチョコは貰えないか」
「……なんだよ、それ」
「バレンタインはね、大好きな人にチョコをあげる日なんだ。好きな人から貰えたら嬉しいじゃん?」
「それって、ルシカが俺にくれたら、ルシカは俺を好きって事かっ!?」

  ヒーロは身体を起こして、瞳を輝かせた。
  そう言う事では無いのだが、面白そうだからちゃんとした説明はしないでおこう、と佐藤は思った。

「そーなんじゃない?でも、後輩君が居るから、後輩君にあげるんじゃないの?」
「要はアイツよりカッコよくなれば良いんだろ?簡単じゃん」

  ヒーロはニンマリと笑顔を見せた。

「ほら、俺を今よりカッコよくしろよ」
「え?何で俺が」
「お前しか居ねぇじゃん?今」
「いやいやいや。外見を良くしたって、中身がさ……」
「ルシカは男らしいのが好きなんだろ?だったら中身は別にいーんじゃね?」
 
  佐藤が頑張ったとて、楼依に勝てないのは目に見えている。

「ルシカから貰えなかったら、テメェを一生こき使うからな」

  ほら、早くしろ、とヒーロは急かした。
  あぁ、どっちにしても自分は地獄を見るんだろーな、と悟ると、佐藤は一筋の涙を流しかけた。
  

  
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