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知識とハジメテと
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白い羽が羨ましいとは思う。
ヨゾラが天界側なのは、心から嬉しい。
それは、本音だ。
もしかしたら、楼依だって……、と思ってしまう。
自分の部屋のベッドに伏せると、何だか悲しくなった。
白い肌、金色の髪の毛は同じなのに、羽の色が違うだけで、こんなにも胸が締め付けられるとは思わなかった。
今に真っ白な羽になって、角やシッポも無くなるかも知れない。
(……きっと、もっと綺麗だろうなぁ)
背中から生えている自分の羽は黒い。
まるで、今のルシカの心の中みたいだ。
もし楼依が、やっぱり白い羽が良いと思ったら、ルシカはそれを耐えられない。
きっと楼依はそれでもルシカを選んでくれる、それは信じては居るが、でも、確証は無い。
ルシカ自身が、疑ってしまう。
自然と涙が流れてしまった。
ヨゾラは良い子だ。
兄である自分が弱いが為に、カグヤに代わって守ってくれている。
頭も良いし、腕っ節もある。
言いたい事もちゃんと言うし、ルシカやカグヤの事を真っ先に考えてくれる。
自分は今でもヨゾラに甘えているのに、そんな事を考えるなんて、自己中なのは分かっているけど。
そんな妬みを持っている自分も嫌だ。
「……楼依」
こんな嫌な感情の中、一人は辛い。
「呼んだか?」
ふと、背後から声が聞こえた。
驚いて後ろを振り向くと、部屋のドアに楼依が立って居た。
ルシカは慌てて、頭から布団を被った。
何で今ここに居るのか、と言う驚きより、嫌な感情を抱えている自分が恥ずかしくなった。
こんなぐちゃぐちゃな顔も見られたくない。
そして、一瞬頭を過ぎったのは、こんな感情を持った事で後ろに居る楼依が本当は魔族の誰かが化けてつけ込もうとしているのか、と思った。
不安と共に、恐怖が込み上げて来た。
「……ルシカ?」
声が先程より近い。
ルシカは布団を握り締め、プルプルと小さく震えた。
「そんなに怯えるなよ……」
布団を掴むルシカの手に重ねた楼依の手からは、安心する体温が伝わる。
魔族の様に冷たくもなく、本物だと安心する。
でも、今のこんな自分を見られるのは嫌だ。
「俺、白状な野郎に見えるか?」
布団の上から、そっと楼依が抱き締めた。
ルシカは何も言わない。
「怯える程不安があんなら、ちゃんと言ってくれ。言葉でも、態度でも示す様にするからさ」
楼依は優しい。
きっと、一時の安心はくれる。
でも、羽の色も自分が魔族である事も変える事は出来ない。
自分のワガママがこれ程、自分の中で情けなくて嫌だとは思わなかった。
こんな姿見せて、不安を口にしたら、楼依に嫌がられる。
せめて、楼依の前では良い子にしていたいのに。
楼依もルシカを抱き締めたまま、無言になった。
余計に気まづい。
ふと、楼依の手がもそもそ動き、勢い良くルシカとの間にある布団を引き取った。
「!?」
ルシカは驚いて、身体がビクッと跳ねた。
そしてまた、ルシカの背後から楼依が抱き締めた。
楼依の腕がルシカの細い腰に巻き付いた。
「……ルシカ」
耳元で、優しく低く名前を呼ばれた。
羽の付け根に、楼依は額を当てた。
黒い羽にルシカの身体が強ばった。
「や、やだ……、……羽が」
「ルシカ……」
逃げようと腰を浮かせたルシカの腰を引き寄せた。
床に尻餅を付くと、すっぽりと楼依の腕にルシカの身体が収まる。
「俺が大丈夫っつっても、お前は信じねぇとは思うけどさ」
「……」
「俺はルシカの事は羨ましいって思うんだ」
羨ましい?
その言葉に、ルシカは困惑した。
「お前達兄弟はそれで辛い思いをして来たんだろうけど。俺達ニンゲンとは違うもん持ってるって、凄い事なんだ」
凄い?
一体何の事だろう。
「大人になっちまえば、お前達を否定するヤツも多いんだろうけど、……俺は、お前を選べて良かった……」
楼依の言ってる意味が分からない。
ただ、楼依の切ない感情は伝わっている気がする。
ルシカの心は落ち着きつつも、頭が混乱して仕方がない。
「魔族とか天使とか、見た事もねぇモンスターとか、魔法みたいな奴とか、そんなもん想像しかなかった。まぁ、小さいガキとかは未だにそう言うの信じてるのもあったり、ファンタジーごっこみたいに遊ぶ奴らも居るだろうし。俺だって漫画やらゲームやらの世界に惹き込まれて、手から火が出ねぇかな、とか、空飛べねぇかな、とか、本気で考えた時期もあったし」
「……」
「もし、瑠依が今のルシカの姿見たら、目ぇキラキラ輝かせて、すげぇ羨ましがるぞ」
羨ましいがる?
しかも、目を輝かせてまで?
楼依に顔はそっくりだが、確かに楼依よりは表情豊かだ。
それが、目を輝かせるなんて。
「……俺、……そんなんじゃねぇもん」
楼依に背後から抱き締められながら、やっと声に出せたルシカは、余計に背中を丸ませた。
魔族のルームウェアなのか、背中がぱっくりと開いている為、丸くなった背中から背骨が浮き上がった。
その浮き上がった背骨に、楼依は唇を当てた。
ピクっとルシカの肩が窄まる。
「お前は親父さんとお袋さんの良いところしか譲り受けてねぇんだ。もっと胸張れよ」
そう呟く様に言う楼依の言葉に、ルシカは目を見開いた。
「……良い、とこ?」
「そんで、俺が惚れてんだ。自信持て」
表情は見えない。
でも、信じろよ、と言いたいのは伝わってくる。
背筋に当たる楼依の息が熱い。
「……俺、羽黒いよ?」
「夢で見た時から知ってるし」
「角もあるし……」
「知ってる」
「シッポだって……」
「全部引っ括めて」
楼依は一息吐いた。
「親父さんは、魔族のお袋さんに惚れたんだろ?だったら、羽の色とか関係ないんじゃねぇの?」
ルシカの腰を抱く力が少し強くなる。
「……楼依は嫌じゃない?白い羽のが綺麗だよ?」
「羽が白いからって、良い奴と限らねぇよ。俺は黒い羽でもルシカなら何でも良い」
ルシカの腰を抱いていた楼依の手が、ルシカの両頬に触れると、ぐっと上を向かせた。
油断した。
楼依と目が合った。
「俺が魔族だったら、好きにはなってくれなかったか?」
逆さに見える楼依の目は、真っ直ぐにルシカを見た。
切なげだ。
ルシカは無意識にも、首を左右に振った。
そっか、と楼依は安心した様に目を伏せた。
スルッとルシカの頬から、手を離した。
ルシカは、楼依から目線を外すと、顔を戻した。
「……俺、ヨゾラの羽の色が、……羨ましいよ」
「……おう」
「淫魔に、……ならないのも」
「……」
「でも、お兄ちゃんだから、ヨゾラには言えない。……嬉しいのは本音、だけど……」
ルシカは肩を落とした。
「……俺、ヨゾラに守って貰ってばっかなのに、……何にもしてないのに、……ワガママばっかだ」
「なぁ、ルシカ」
背後からの楼依の声は、寂しげだ。
そうさせてるのは、自分なのだと分かっている。
「俺にもし、黒い羽が生えてたら、……お前はどう思う?」
楼依が黒い羽を持って居たら?
そんなの……、
「きっと……、カッコイイ……」
決まってる。
きっと、どの魔族よりもカッコ良くて、雄らしい。
でも、きっと……。
「それなら問題ねぇだろ?」
問題ない?
何処が……。
「信じられないかも知れねぇけど、魔族とかそう言うのって、結構人気あるんだぜ?」
人気?
「非日常じゃねぇもんて、惹かれ易いし。かく言う俺も、昔から天使より魔族派だ。カッコイイじゃねぇか」
そう言うと、楼依は背後からルシカを強引に引き寄せ、自分の膝にルシカの頭を乗せると、ルシカは仰向けに楼依を見上げた。
「その人気な魔族を俺は独り占めしてんだ。お前がどんなに自分を否定しても、俺は否定しねぇよ」
ルシカの頬をむにっとつまむと、小さい笑顔を見せた。
ルシカの赤い瞳が潤み始める。
「……俺、羽が黒くても良いの?ヨゾラが白いのに、嫌いにならない?」
「なるかよ。俺にはお前だけだし、末っ子君は末っ子君だ……。あー……」
楼依はルシカの頬をむにむにしながら、目線を一瞬上に向けた。
「末っ子君は、親父さんの見てくれと、お袋さんの強さを受け継いだ。……ルシカは、お袋さんの見てくれと、親父さんの優しさを受け継いだ。それで良いんじゃね?」
ルシカにも天界の血はちゃんと受け継いでいる、楼依はそう伝えようとしている。
「……兄さんは?」
「あの人の良いところを見つけるのは俺じゃねぇよ」
確かに、カグヤはルシカやヨゾラよりも楼依と接触は少ない。
「まぁ、あんまり羽の事気にすると、悲しむぞ。お前の母さん」
「……母さん」
自分が魔族だと、隠れて泣いていたのは知っている。
「大好きなんだろ?」
ルシフェルは厳しい時もあったが、芯が強くて優しかった。
父で天使のグレィダの事も、ルシカ達も一番に考え、隠れて泣く事はあっても、大事に育てようとしてくれていた。
いつかは家族が幸せになれる様にと、毎日願っていた。
ルシカは小さく頷いた。
「……まぁ、俺みたいなニンゲンに捕まっちまったのは悪ぃと思ってんけど」
楼依は苦笑いを浮かべる。
「そんな事ねぇよっ!」
いきなりルシカが声を上げた。
「母さんは楼依を見たら絶対喜ぶよ。俺をこんなに大事にしてくれてるんだ。だから……」
「……だから、ルシカの黒い羽も、自慢だろ?」
楼依はルシカの頬から手を離すと、床に広がる黒い羽を撫でた。
小さめでも艶があり、綺麗だ。
「……性格とか内面は、自分じゃ気付かねぇからなぁ。でも、話を聞く限り、お袋さんだって魔王とかジジィとかと違う気がする。親父さんに惚れて、子供が出来て変わったかもしれねぇけど」
「俺は、このままでいいの?」
「当たり前だ。気にすんな、とは言えねぇけど。辛くなったら俺にぶつければ良いし」
楼依はルシカに優しく、兄弟以上に甘い。
それにズブズブと浸かってしまう自分が嫌なのに。
「……俺、ヨゾラにも、楼依にも甘えっぱなしだ……」
「だったら、甘えんのは俺だけにしとけ。末っ子君の分も受け止めてやる」
「俺、何にも出来ないよ……?」
「無理してする必要はねぇよ。俺の傍に居てくれるだけで十分」
楼依は、両手でルシカの頬を包むと、優しい眼差しで見下ろした。
楼依のちょっと高い体温のせいか、ルシカの顔も熱くなる。
胸がドキドキして、身体がウズウズし始めた。
ルシカも手を伸ばし、両手で楼依の両頬を包んだ。
ヨゾラが天界側なのは、心から嬉しい。
それは、本音だ。
もしかしたら、楼依だって……、と思ってしまう。
自分の部屋のベッドに伏せると、何だか悲しくなった。
白い肌、金色の髪の毛は同じなのに、羽の色が違うだけで、こんなにも胸が締め付けられるとは思わなかった。
今に真っ白な羽になって、角やシッポも無くなるかも知れない。
(……きっと、もっと綺麗だろうなぁ)
背中から生えている自分の羽は黒い。
まるで、今のルシカの心の中みたいだ。
もし楼依が、やっぱり白い羽が良いと思ったら、ルシカはそれを耐えられない。
きっと楼依はそれでもルシカを選んでくれる、それは信じては居るが、でも、確証は無い。
ルシカ自身が、疑ってしまう。
自然と涙が流れてしまった。
ヨゾラは良い子だ。
兄である自分が弱いが為に、カグヤに代わって守ってくれている。
頭も良いし、腕っ節もある。
言いたい事もちゃんと言うし、ルシカやカグヤの事を真っ先に考えてくれる。
自分は今でもヨゾラに甘えているのに、そんな事を考えるなんて、自己中なのは分かっているけど。
そんな妬みを持っている自分も嫌だ。
「……楼依」
こんな嫌な感情の中、一人は辛い。
「呼んだか?」
ふと、背後から声が聞こえた。
驚いて後ろを振り向くと、部屋のドアに楼依が立って居た。
ルシカは慌てて、頭から布団を被った。
何で今ここに居るのか、と言う驚きより、嫌な感情を抱えている自分が恥ずかしくなった。
こんなぐちゃぐちゃな顔も見られたくない。
そして、一瞬頭を過ぎったのは、こんな感情を持った事で後ろに居る楼依が本当は魔族の誰かが化けてつけ込もうとしているのか、と思った。
不安と共に、恐怖が込み上げて来た。
「……ルシカ?」
声が先程より近い。
ルシカは布団を握り締め、プルプルと小さく震えた。
「そんなに怯えるなよ……」
布団を掴むルシカの手に重ねた楼依の手からは、安心する体温が伝わる。
魔族の様に冷たくもなく、本物だと安心する。
でも、今のこんな自分を見られるのは嫌だ。
「俺、白状な野郎に見えるか?」
布団の上から、そっと楼依が抱き締めた。
ルシカは何も言わない。
「怯える程不安があんなら、ちゃんと言ってくれ。言葉でも、態度でも示す様にするからさ」
楼依は優しい。
きっと、一時の安心はくれる。
でも、羽の色も自分が魔族である事も変える事は出来ない。
自分のワガママがこれ程、自分の中で情けなくて嫌だとは思わなかった。
こんな姿見せて、不安を口にしたら、楼依に嫌がられる。
せめて、楼依の前では良い子にしていたいのに。
楼依もルシカを抱き締めたまま、無言になった。
余計に気まづい。
ふと、楼依の手がもそもそ動き、勢い良くルシカとの間にある布団を引き取った。
「!?」
ルシカは驚いて、身体がビクッと跳ねた。
そしてまた、ルシカの背後から楼依が抱き締めた。
楼依の腕がルシカの細い腰に巻き付いた。
「……ルシカ」
耳元で、優しく低く名前を呼ばれた。
羽の付け根に、楼依は額を当てた。
黒い羽にルシカの身体が強ばった。
「や、やだ……、……羽が」
「ルシカ……」
逃げようと腰を浮かせたルシカの腰を引き寄せた。
床に尻餅を付くと、すっぽりと楼依の腕にルシカの身体が収まる。
「俺が大丈夫っつっても、お前は信じねぇとは思うけどさ」
「……」
「俺はルシカの事は羨ましいって思うんだ」
羨ましい?
その言葉に、ルシカは困惑した。
「お前達兄弟はそれで辛い思いをして来たんだろうけど。俺達ニンゲンとは違うもん持ってるって、凄い事なんだ」
凄い?
一体何の事だろう。
「大人になっちまえば、お前達を否定するヤツも多いんだろうけど、……俺は、お前を選べて良かった……」
楼依の言ってる意味が分からない。
ただ、楼依の切ない感情は伝わっている気がする。
ルシカの心は落ち着きつつも、頭が混乱して仕方がない。
「魔族とか天使とか、見た事もねぇモンスターとか、魔法みたいな奴とか、そんなもん想像しかなかった。まぁ、小さいガキとかは未だにそう言うの信じてるのもあったり、ファンタジーごっこみたいに遊ぶ奴らも居るだろうし。俺だって漫画やらゲームやらの世界に惹き込まれて、手から火が出ねぇかな、とか、空飛べねぇかな、とか、本気で考えた時期もあったし」
「……」
「もし、瑠依が今のルシカの姿見たら、目ぇキラキラ輝かせて、すげぇ羨ましがるぞ」
羨ましいがる?
しかも、目を輝かせてまで?
楼依に顔はそっくりだが、確かに楼依よりは表情豊かだ。
それが、目を輝かせるなんて。
「……俺、……そんなんじゃねぇもん」
楼依に背後から抱き締められながら、やっと声に出せたルシカは、余計に背中を丸ませた。
魔族のルームウェアなのか、背中がぱっくりと開いている為、丸くなった背中から背骨が浮き上がった。
その浮き上がった背骨に、楼依は唇を当てた。
ピクっとルシカの肩が窄まる。
「お前は親父さんとお袋さんの良いところしか譲り受けてねぇんだ。もっと胸張れよ」
そう呟く様に言う楼依の言葉に、ルシカは目を見開いた。
「……良い、とこ?」
「そんで、俺が惚れてんだ。自信持て」
表情は見えない。
でも、信じろよ、と言いたいのは伝わってくる。
背筋に当たる楼依の息が熱い。
「……俺、羽黒いよ?」
「夢で見た時から知ってるし」
「角もあるし……」
「知ってる」
「シッポだって……」
「全部引っ括めて」
楼依は一息吐いた。
「親父さんは、魔族のお袋さんに惚れたんだろ?だったら、羽の色とか関係ないんじゃねぇの?」
ルシカの腰を抱く力が少し強くなる。
「……楼依は嫌じゃない?白い羽のが綺麗だよ?」
「羽が白いからって、良い奴と限らねぇよ。俺は黒い羽でもルシカなら何でも良い」
ルシカの腰を抱いていた楼依の手が、ルシカの両頬に触れると、ぐっと上を向かせた。
油断した。
楼依と目が合った。
「俺が魔族だったら、好きにはなってくれなかったか?」
逆さに見える楼依の目は、真っ直ぐにルシカを見た。
切なげだ。
ルシカは無意識にも、首を左右に振った。
そっか、と楼依は安心した様に目を伏せた。
スルッとルシカの頬から、手を離した。
ルシカは、楼依から目線を外すと、顔を戻した。
「……俺、ヨゾラの羽の色が、……羨ましいよ」
「……おう」
「淫魔に、……ならないのも」
「……」
「でも、お兄ちゃんだから、ヨゾラには言えない。……嬉しいのは本音、だけど……」
ルシカは肩を落とした。
「……俺、ヨゾラに守って貰ってばっかなのに、……何にもしてないのに、……ワガママばっかだ」
「なぁ、ルシカ」
背後からの楼依の声は、寂しげだ。
そうさせてるのは、自分なのだと分かっている。
「俺にもし、黒い羽が生えてたら、……お前はどう思う?」
楼依が黒い羽を持って居たら?
そんなの……、
「きっと……、カッコイイ……」
決まってる。
きっと、どの魔族よりもカッコ良くて、雄らしい。
でも、きっと……。
「それなら問題ねぇだろ?」
問題ない?
何処が……。
「信じられないかも知れねぇけど、魔族とかそう言うのって、結構人気あるんだぜ?」
人気?
「非日常じゃねぇもんて、惹かれ易いし。かく言う俺も、昔から天使より魔族派だ。カッコイイじゃねぇか」
そう言うと、楼依は背後からルシカを強引に引き寄せ、自分の膝にルシカの頭を乗せると、ルシカは仰向けに楼依を見上げた。
「その人気な魔族を俺は独り占めしてんだ。お前がどんなに自分を否定しても、俺は否定しねぇよ」
ルシカの頬をむにっとつまむと、小さい笑顔を見せた。
ルシカの赤い瞳が潤み始める。
「……俺、羽が黒くても良いの?ヨゾラが白いのに、嫌いにならない?」
「なるかよ。俺にはお前だけだし、末っ子君は末っ子君だ……。あー……」
楼依はルシカの頬をむにむにしながら、目線を一瞬上に向けた。
「末っ子君は、親父さんの見てくれと、お袋さんの強さを受け継いだ。……ルシカは、お袋さんの見てくれと、親父さんの優しさを受け継いだ。それで良いんじゃね?」
ルシカにも天界の血はちゃんと受け継いでいる、楼依はそう伝えようとしている。
「……兄さんは?」
「あの人の良いところを見つけるのは俺じゃねぇよ」
確かに、カグヤはルシカやヨゾラよりも楼依と接触は少ない。
「まぁ、あんまり羽の事気にすると、悲しむぞ。お前の母さん」
「……母さん」
自分が魔族だと、隠れて泣いていたのは知っている。
「大好きなんだろ?」
ルシフェルは厳しい時もあったが、芯が強くて優しかった。
父で天使のグレィダの事も、ルシカ達も一番に考え、隠れて泣く事はあっても、大事に育てようとしてくれていた。
いつかは家族が幸せになれる様にと、毎日願っていた。
ルシカは小さく頷いた。
「……まぁ、俺みたいなニンゲンに捕まっちまったのは悪ぃと思ってんけど」
楼依は苦笑いを浮かべる。
「そんな事ねぇよっ!」
いきなりルシカが声を上げた。
「母さんは楼依を見たら絶対喜ぶよ。俺をこんなに大事にしてくれてるんだ。だから……」
「……だから、ルシカの黒い羽も、自慢だろ?」
楼依はルシカの頬から手を離すと、床に広がる黒い羽を撫でた。
小さめでも艶があり、綺麗だ。
「……性格とか内面は、自分じゃ気付かねぇからなぁ。でも、話を聞く限り、お袋さんだって魔王とかジジィとかと違う気がする。親父さんに惚れて、子供が出来て変わったかもしれねぇけど」
「俺は、このままでいいの?」
「当たり前だ。気にすんな、とは言えねぇけど。辛くなったら俺にぶつければ良いし」
楼依はルシカに優しく、兄弟以上に甘い。
それにズブズブと浸かってしまう自分が嫌なのに。
「……俺、ヨゾラにも、楼依にも甘えっぱなしだ……」
「だったら、甘えんのは俺だけにしとけ。末っ子君の分も受け止めてやる」
「俺、何にも出来ないよ……?」
「無理してする必要はねぇよ。俺の傍に居てくれるだけで十分」
楼依は、両手でルシカの頬を包むと、優しい眼差しで見下ろした。
楼依のちょっと高い体温のせいか、ルシカの顔も熱くなる。
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